最初はお菓子
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1部分:第一章
第一章
最初はお菓子
松坂恭子の好物はだ。お菓子全般である。
それこそお菓子なら何でもござれである。だから部活も料理部だ。
そこでお菓子ばかり作ってだ。それで食べているのである。
「あんたまたお菓子なの」
「お菓子作ったの」
「うん、そうよ」
こうだ。友人達に能天気な声で返すのである。
眉を丁寧に整えており睫毛が多く長い目をしている。目力があり強い視線を放っている。
鼻は高く唇が引き締まっている。顔立ち自体はいい。黒髪を奇麗にショートにしている。容姿そのものは整っていると言える。
しかしだ。そのスタイルはというと。
まず肩幅がある。そして全体的に丸い。どう見てもなスタイルである。
その彼女にだ。周囲は言うのであった。
「それでそんなに食べて」
「大丈夫なの?」
「よくないんじゃないの?」
「大丈夫よ」
恭子は楽しげに笑ってそのお菓子を食べながら応える。
「だってこのお菓子苺使ってるから」
見ればだ。苺のタルトである。苺をかなり使っている。
「全然平気よ」
「だから。健康のことじゃなくて」
「まあ健康のことではあるけれど」
「だからあんたね」
「そんなに甘いものばかり食べていいの?」
友人達が言うのはこのことだった。
「太るわよ」
「それでもいいの?」
「太っても」
「恭子デブじゃないもん」
しかしだ。恭子自身は平気であった。
言いながらだ。その間もタルトを食べ続けている。
「元々こうしたスタイルだもん」
「太ってないっていうのね」
「そう言うのね」
「うん、そうだよ」
天真爛漫そのものの表情と返事であった。
「全然。そんなことないから」
「まあねえ」
「本人が言うのならいいけれどさ」
「けれど食べ過ぎよ」
「そうよ、食べ過ぎよ」
友人達は今度はこのことを注意した。しかしである。
恭子はそのことについてもだ。満面の笑顔でこう返すのだった。
「育ち盛りだもん」
「育ち盛りって」
「そう言うのね、今度は」
「だって恭子身体大きいし」
一六二程だ。背は普通位だ。
だがやはり身体が丸い。それでの言葉だった。
「食べないともたないから」
「だから。そこで少し我慢したらね」
「違うんじゃないの?」
「あんた可愛いんだし」
「そこで少しね」
確かに顔はよかった。実はスタイルもそれ程悪くはない。しかし誰がどう見てもなのだ。そのスタイルはというとなのだ。
「食べるの控えたら」
「男の子だって放っておかないのに」
「あんた結構噂になってるのよ」
「可愛いってね」
「可愛いのは嬉しいけれど」
それは二の次、そんな言葉だった。
「恭子の青春はそこにはないのよ」
「じゃあ何処にあるのよ」
「一体何処にあるっていうのよ」
「可愛いのがそこにはないっていったら」
「何処なのよ」
「お菓子にあるのよ」
そこにあるというのだ。恭子の青春はだ。
「それにあるのよ」
「つまり今なのね」
「エプロン着けてお菓子作ってそれを食べる」
「それがあんたの青春なのね」
「それなのね」
「そう、恭子お菓子があって食べられればそれで幸せなの」
無欲と言えば無欲である。食べる量はかなりのものであるが。
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