世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
とある魔術の禁書目録 ~とある最強の戦闘記録~
学園都市最強と世界最強の翼人が睨み合う。
「なンだァ、てめェ。やられたッてのになンも言わねェの?あれですか、お前はマゾですかァ?よォ!!」
ゴガン!
一方通行が近くの鉄骨を適当に殴る。
すると、殴った方向ではないにも関わらず、蒔風のほうへと飛んできたではないか。
学園都市最強のレベル5、一方通行の能力は彼の名と同じく「一方通行」
それはありとあらゆる力のベクトルを変更する能力。
故に、様々な方向に向く力を総べて束ねれば腕力以上の力が出るし、吹っ飛ぶ方向だって思いのままだ。
急に飛んできた鉄骨に驚く蒔風。
彼にはそこまでの情報は流れてきていないのだから、当然といえば当然か。
(学園都市最強の能力者「一方通行」、本名が来ないってことは普通にそう呼ばれてたからか。どうせなら能力まで教えろよ!!)
世界からの情報はその程度だったのだ。
仕事の精度にバラつきがありすぎて困る、と溜息を着く。
蒔風が飛来する鉄骨を獄炎で吹き飛ばし、土惺砲を一方通行に撃った。
太い土の柱が一方通行に迫るが、それは一方通行に触れる直前で吹き飛んだ。
(なンだこいつ?複数の能力使ッてンのか?・・・ま、関係ねェか。オレの能力の前じゃ無意味だからな)
蒔風は土惺砲を弾かれた反動でよろけるが、即座に今度は圧水弾を小さくいくつも投げつけた。
が、それも一方通行の力で反射される。
投げつけられた圧水弾はまっすぐ蒔風の方に帰ってきたのだ。
「反射!?くっ!!」
蒔風がかわし、圧水弾がさっきまで立っていた位置の地面を軽く吹き飛ばした。
飛んでくる医師に気をつけながら転がると、真風邪の言葉に一方通行がクックと笑い始めていた。
「反射かァ。まァ否定はしねェが、正解でもねェなァ」
「??」
「確かにデフォは「反射」に設定してるけどよォ、そンなものは能力の一部でしかねェンだわ」
「どういうことだ?」
「知りたきゃもッと面白おかしく愉快に踊れェ!!」
ドバッ!!!
叫びとともに、踏みつけられる地面。
すると、その地面が吹き飛び津波のように蒔風に襲い掛かってきた。
対し、蒔風はそのめくれ上がってくる地面の塊に向かい、獅子天麟を構え突っ込んでいく。
(反射してんのは事実なんだから、反射しきれないくらいの力で押し切れば!!!)
自身の推察に従い、蒔風が一方通行に突っ込む。
土塊に風穴を開け、無防備に突っ立ってるだけの一方通行は案山子だ。
なんの妨害もなく、蒔風の刃は一方通行へと到達―――したかに思えた。
「チッ」
だが、一方通行の身体にその刃がぶつかるかどうかの直前。
まるで見えない何かに阻まれるかのように、その刃の進行が止まった。
「おぉらあ!!」
だが、ここが反射のエリアだということだろう。
ならばこのまま、押し切るまで―――――
「なンだ?押し切ろォとしてんのか?全然駄目だな」
押し込もうと踏ん張る蒔風。
対し、一方通行はまるでテレビの中の光景を見ているかのような眼差しでそれを眺めていた。
少し感心したような声で、つぶやく。
「まァちッとだけでも持ちこたえたのはよかッたかもなァ」
バンッ!!
張り付き、押し切るべく踏ん張っていた蒔風が、ついに弾かれて後ろに転がる。
その蒔風を見て、一方通行は面白そうに叫び始めた。
「もしかしてお前、「相手の反射の許容量以上の攻撃で~~」とか思ってンじゃねェだろォなァ?」
「そうだけど、なにか?」
「ギャハハハ!!オレの能力はなァ、そんな漫画やゲームとは違ェンだよ!!!」
そして初めて一方通行が本格的に動き出した。
「オレの能力は「ベクトル変換」!!!てめェがどンな攻撃しようと、オレに届くことはねェンだよ!!」
ゴウッ!!ゴウッ!!ゴウッ!!ゴウッ!!
一方通行が両手を振り回して蒔風を追い詰めていく。
触れただけであらゆるベクトルの向きを変えるその腕は、今や凶器だ。
もし当たれば瞬時に血流や神経内の電気信号を滅茶無茶にされ、殺されてしまうだろう。
(ベクトル変換?デフォが反射?・・・そりゃいいや、まさに学園都市最強だな。だがいいのかい?そんなに自慢げに語っちまってよ)
迫る一方通行の眼前に畳返しをし、視界をふさぐ。
一方通行の前にそんなものは無意味だが、粉砕される間に距離をとる。
そしてスッと屈み、地面に手を当てまっすぐに見つめて短く告げた。
「それだけじゃあ、お前の勝因にはならないぜ?」
「ああ?愉快なこと言ッてくれンじゃねェか!!!」
挑発だと理解してなお、一方通行が蒔風に向かって駆け出す。
この男の能力は、どのような原理かは知らないが炎、水、土などを操作する能力だろう。
ならば、自分の能力の前では無意味に等しい。
そうして一歩で接近しようと踏み込んだ一方通行の足元から。
その足元から、本当にまっすぐ足の裏の地面から炎が噴き出した。
「ンがァ!?」
当然
一方通行に炎などは効かない。
一切の熱をカットすればいいのだから。
にもかかわらず、彼の足の裏は焼けていた。
「なン・・・だとォ!?」
「考えてみりゃ簡単なこった。デフォが反射ならなんでお前さんは歩く度に浮かないんだ?」
そう
もし一方通行が全身に反射を効かせているならば、歩く度にその衝撃で浮きあがるはずだ。
足の裏だけ別方向にして浮かないようにしていると言う仮説もあったが、蒔風はこれを却下した。
なぜなら、そんな歩き方をすれば変なところの足の筋肉が発達しているはずだし、目の前の人物がそんなこといちいちするような人間にも見えなかったからだ。
ならば話は簡単
足の裏の一点のみ、一方通行は能力を切っているだけのこと。
といっても、本当に片足ずつに一点のみだ。
蒔風はその一点を一方通行の歩き方一つ一つで見極めていた、ということ。
肩で息をしながら、蒔風が汗をぬぐう。
そのころ、一方通行は足の裏の痛みに動けずにいた。
「で、これだ。獄炎弾!!!」
ゴッ!!ズア!!
蒔風が灼熱の球を投げつける。
一方通行に当たる寸前で、獄炎弾が膨れ上がり一方通行を飲み込んだ
(なンだァ?この程度じゃァオレは・・・まさか・・・クソッタレ!!そういうことか!!!)
一方通行は獄炎の中でも平気だった。
一切の攻撃は彼を傷つけることはできない。
しかし、確実に彼は焦っていた。
「どうだ。はたしてその中に、呼吸するだけの酸素は残されているかな?」
獄炎弾の持久時間は実を言うと混闇陣に次いで長い。
その中に閉じ込め、酸素を燃焼し、呼吸を奪う。
本来はこうすることで焼き尽くすものだが、今回は状況が状況だ。
この変則的な攻撃。これが蒔風の最後の手段だった。
一方、中では一方通行がそこから抜け出そうとしていた。
足の裏はやけどで歩けないので、重力を「反射」して宙に浮いて移動する。
しかし、「反射」しているということは獄炎弾の中にはぽっかりと穴があいているということ。
蒔風にそれが感知できないということはない。
その空洞が移動すると、それに合わせて獄炎弾を動かし、真ん中に来るように操作する。
(頼むぜ・・・・)
内部の一方通行は、ついに呼吸ができなくなり、脳に酸素がいかなくなる。
この世界の超能力は科学の産物だ。
つまり、能力を行使するには演算を組む必要がある。
オートになるとまた藩士は違うのだが、この状況ではどちらにしても変わらないだろう。
何せ、発動するための脳が機能していかないのだから。
(クソ・・ッタレ・・・・なン・・・だ・・・こいつ・・・・)
内部の動きがだんだんと緩慢になり、ついに止まってから二秒。
蒔風が獄炎弾を消し払うと、黒焦げた地面の真ん中の、きれいな地面。その真ん中に、第一位の身体が転がっていた。
「やばい。やりすぎたかも」
蒔風は荒い息を整えようと深呼吸してから、恐る恐る近づいて脈をとる。
止まってはいないことを確認して、ほっと安どの声を上げる蒔風。
「学園都市最強の能力者、か。くそっ・・・どうしてこう俺は対抗心燃やしちまうのか・・・・」
普段から最強であると、言い聞かせるように叫んでいる蒔風。
その男の前に別の最強が現れては、自分の中のそれを維持するために負けられないと思ってしまったのだろう。
「最近なんか暴発多いなぁ・・・」
胸のあたりをさすって、落ち着かせるように大きく呼吸をする。
そうしながら、やっと、今度こそ、間違いなく、上条の病室に帰っていった。
・・・・・・・ホントだよ!!!
誰にも絡まれなかったよ!!
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「ただいま~~」
「おう・・ってお前どうしたんだよ!映像切れてから丸々十分は経ってるぞ!?」
「あーー、風紀委員とかいうのが存外しぶとくてな」
「・・・・・」
なんとなくわかる気がした上条だが、あまり突っ込まないことにした。
この男はそれを察すれば、どこまでもぼけ倒してくる気がしたのだ。
「で、オレがこの世界とは違う力の持ち主ってのはわかった?」
「まあな。一人につき能力は一つだからな。それはわかった。インデックスは?」
「うん・・・いかなる魔術にも該当しない・・・しゅんの力はこの世界のものではないと思うよ?」
「ありがとさん・・・あれ?土御門は?」
「ああ。なんか仕事が入ったとか言って出ていっちまった」
「ふ~~ん」
「そういえばお前怪我大丈夫なのか?」
「大丈夫さ。たいしたことない。ただ滅っっっっ茶苦茶に疲れたな・・・・おまさんは今日はこのまま病室?」
「当たり前なんだよ!!とうまはボロボロなのに私を置いて飛び出して行ってあろうことかあの後方のアックアにケンカ売りに行ったんだよ!?絶対安静なんだから!!!」
「・・だそうです」
「じゃあ・・・どうしようか・・・インデックスさんはどうするんで?」
「え?」
「このままここにいても飯は出ないだろうし。学生寮に住んでるんだっけ?同居人がインデックスだけじゃ帰ってもやっぱりなにも喰えないぞ?」
「・・・・とうま?」
「いやに頭の中であなたがこれから何を言うのかわたくし容易に想像できるのですが、とりあえず言ってみなさい」
「家にご飯は?」
「・・・ない」
「と~~~~ま~~~~~~!!!!!」
「うひゃあインデックスさん!?オレは絶対安静なのではーーー!?」
インデックスが大きな口を開け、上条に迫る。
それを唖然と眺める蒔風だが、思いついたように言った。
「あーーー。じゃあオレが飯用意しようか?」
「オブァ!!!?」
途端にインデックスがわけのわからない言語を発した。
興奮しすぎて、もはやヒロインが出していい声ではない。
・・・・ヒロイン、この子だよね?
「上条。彼女は何を伝えたいんだ?」
「あーー。たぶん、『やったーーー!!!御飯だーーーー!今更なしとかはないんだよ?』ってことかと」
上条が彼女の言葉を、経験則から何とか読み取る。
それにしても、男の声でその口調は言い難い苦しみを伴うのでもういいですか。
「納得。でもオレ飯作るというか持ってるもの出すだけなんだが・・・」
「大丈夫なんだよ!!食べれる物を用意してくれるならとうまよりしゅんだよ!!!」
「うわひでえ。いつもこうなん?」
「いや。お前がいてくれなきゃオレが噛みつかれてた」
「あーー。それはなんというか・・・ふこ「言うな」ごめん」
「ほら!!とうまは絶対安静なんだから、私たちはご飯のために帰るんだよ!!」
もう彼女の頭にはそれしかないのか。
とうまとうまと心配していた姿はどこに行ったのか、今はただ食欲に支配された獣にしか見えなかった。
病室を飛び出していくインデックスを見て、蒔風が聞く。
「あいつ、シスターだよな?」
「らしいな」
「物欲におぼれすぎじゃない?」
「今までがすげぇ質素だったんだよ。きっと」
「そっかー。じゃあ食わせてやらないとな。にしてもいまの本音はひどかった」
「それはもう秋為輝・・・・じゃ、これ寮の鍵」
「ああ・・・というかよくいきなり知り合った人間を部屋に入れられるな」
「うーーーん。大丈夫なんだろ?」
「まあな」
「ならいいじゃん・・・ッて感じだな」
「そんなもんか。上条さんパネェっすね」
「はは・・ほら、行かねえと、あの極悪シスターがオレに噛みつく前に行ってくれ」
「ああ。これは置いていく」
そう言って、蒔風は獅子天麟の三本を護衛代わりに壁に立てかけていく。
「ありがとな」
「お互い様だ。じゃな」
そうして蒔風は外で待つインデックスを追って、上条の寮の部屋まで行った。
そしてそこで料理をふるまい、インデックスがベッドで眠りにつくと、蒔風も適当なところで眠りについた。
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アレイスター・クロウリーは考える
あの男は我々の手に余る
が、幻想殺しに迫る脅威を追い払ってくれるならこちらとしても僥倖
ならばこれ以上手は出さず、静観するのが一番か
依然『プラン』に変動なし
侵入者「蒔風舜」の行動に一切の介入を禁ずる
to be continued
後書き
やーーっと戦いが終わりました
アリス「これはらは日常パートですね!?」
・・・・・
ア「おい答えろ」
・・・・どうしよっか?
ア「まさかまた・・・」
次回!!どうなるのかな!?
ア「私の台詞うううう!!!!」
ではまた次回
祈りは届く。人はそれで救われる。私みたいな修道女は、そうやって教えを広めたんだから!
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