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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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絶対止める!!

 
前書き
56巻の表紙とかカバー裏とかウェンディとシェリア大活躍だな!!
大人になったシェリアのカラー・・・なんかエルザとかより年上に見えるのは気のせいか?
でも二人は子供のままが一番かわいい・・・成長するな!!天空シスターズ!!
「「変なお祈りしないでよ!!」」 

 
「ガハッ・・・ゴホッ・・・」

地面に手をつき、血を吐き出しながら体を起こそうとするノーラン。そんな彼を冷酷な目で見下ろしている水竜を見て、彼の姿を見ているものたちは寒気を感じていた。

「おい!!何があった!?説明しろ!!」

ただ一人、この状況が見えていないカミューニはラクサスたちに説明を求めるが、誰一人として反応を返さない。いや、シリルの変貌があまりにも衝撃的すぎて、深紅の青年の声など誰の耳にも聞こえていないのだ。

「バカな・・・攻撃が・・・見えなかった・・・だと・・・」

殴られた箇所を押さえつつ、足を震わせながらようやく立ち上がったノーラン。彼は先程までの少年の力とは桁外れなパワーに、何があったのかわからないといった顔をしている。

「うお!!」
「!!」

シリルの一撃により立つのもおぼつかなくなっているノーラン。そんな彼に、少年はまたしても一瞬のうちに加速し、懐へと入り込む。

「水竜の・・・鉤爪!!」

引いた右足に水と銀色の風を纏わせたシリルは、光のそれを凌駕するのではないかというほどの速度でノーランの顎を蹴り上げる。

「っ!!」

まともに入った蹴撃に反応することすら許されずに打ち上げられた悪魔は、その速さのせいで声すら上げられない。

「まだまだ」

宙に舞ったノーランを見上げ、地面を蹴った水竜。彼は突然のパワーアップで跳躍力も上がっており、ノーランよりも高い位置へと現れる。

「ふんっ!!」
「ごほっ!!」

空中で逃げ場のない悪魔に両手を握り合わせ、それを振りかざす。背中でそれを受けたノーランは、重力に引っ張られる力も加わり、元いた床へと急激に落下していく。

ドゴォン

ラクサスたちの真横に落ちたノーランは床を突き破り下の階層へと落下し続ける。シリルはそれを見て、全身を水と銀色の風に覆わせると、ラクサスの雷のごとき移動よりも速く、開いた穴へと飛び込んでいった。

「ラクサス!!どうなってんのか教えろ!!おい!!」
「ハッ」

雷竜の肩を掴み、そう避けんだのは波動使い。彼のその言葉で正気を取り戻したラクサスは、彼の方を向き直る。

「よく・・・わからねぇ・・・」
「はっ!?」

頭をかき、自分でもよくわかっていない状況を懸命にまとめているラクサス。すると、彼の視界・・・カミューニの背後の横壁がぶち抜かれたのに気が付いた。

「「「!?」」」

壁が破壊された音に気付いたカミューニとセシリーもラクサスと同じ方向を向く。そこには、ノーランを叩きのめしているシリルの姿があった。

「シリル!!」
「どうしたの~!?」

地面にうつ伏せに倒れたノーランはすでに意識が朦朧としており、呼吸も浅くなってきている。その男の頭に、少年は足を乗せてグリグリと踏み潰す。

「お前らの・・・お前らのせいで・・・」

歯をむき出しにし、怒りを露にしているシリル。彼は腕に魔力を集中させると、それを高く振り上げる。

「死んで償え」

強く拳を握り、足元にいる男にそれを降り下ろす。

「よせ!!シリル!!」
「ひゃっ!!」

その一打が悪魔の頭部に直撃する寸前、ラクサスが彼の背後に回り込み、体を拘束する。

「なんですか!?ラクサスさん!!こいつ殺したら困るんですか!?」
「いや・・・そうじゃねぇけど・・・」

ラクサスは何か考えがあって彼の動きを封じたのではない。ただ、嫌な予感がしたため、急いで彼の攻撃をやめさせたのであった。

「は?だったらいいじゃないですか」

ラクサスのその言葉を聞いた時、頬付近まで来ていた黒い模様が、少年の目元まで侵食していく。

「とっとと殺しましょうよ」

その時、ラクサスは背中に冷たいものが流れるのを感じた。シリルの目が今まで見たことがないほど、冷酷なものへと変わっており、まるで悪魔にでも取りつかれたかのようになっているからだ。

「ナメてんじゃ・・・ねぇぞ!!」

全身ズタボロになっているノーラン。彼は二人が会話している隙を突き、雷の槍を投じる。

「それはこっちのセリフだ!!」
「!!」

彼の攻撃が向かってきていることに気付いたシリルは、自分を拘束しているラクサスを振り払うと、全速力でそれに向かっていく。

「水竜の・・・咆哮!!」

頬を大きく膨らませ、水と風のブレスを放つ。ノーランの槍はシリルのブレスにより、一瞬で消し飛ばされてしまった。

「うわああああああ!!」

少年の攻撃は敵のそれを打ち破るだけに留まらない。そのまま、ノーランを飲み込んだ水と風の一打は、数メートル先にある壁を粉砕し、悪魔の魔導士は外に投げ出されていった。

「待てコラァ!!」

外に放り出されたノーラン。シリルは彼が飛び出た穴から外へと飛び込む。

「シリル!!」
「待って~!!」

我を忘れ、冥界島(キューブ)から出ていったシリルを慌てて追いかけようとするラクサスとセシリー。だが、

「お前らが待て!!」
「うおっ!!」
「ふぎゃっ!!」

そんな二人をカミューニが首もとを掴んで引き止める。

「だから状況を説明しろよ!!何がどうなってんのかこっちはわからねぇんだからよぉ!!」

現在目が見えていないカミューニはシリルが暴走していることを知らない。激しくぶつかり合っているのは魔力で感じ取れるが、それ以上のことは何もわからないままだ。

「シリルが暴走してるんだよ~!!」
「暴走だぁ?」
「そうだ。よくわかんねぇけど、腕の模様が顔まで伸びてきたかと思ったら、ドラゴンフォースまで発動しててノーランを圧倒してやがるんだ」

見たままを伝えるセシリーとラクサス。カミューニはその様子を頭の中でイメージしてみる。

「ノーランの野郎・・・天空の滅悪魔法がどうのって言ってなかったか?」
「そういや・・・」

シリルが元議長の裏切りにより捕まった際、ノーランの実験台として天空の滅悪魔法を植え付けられそうになっていたシリル。しかし、復活したミラが彼を救い出し、そのせいで完璧にその魔法が体内に取り込まれなかったとノーランが話していた。

「まさかとは思うが・・・」

自分の推測がどの程度当たっているのか確証を持てずにいるカミューニ。彼はしばらく考えを張り巡らせる。

「とりあえず追いかけるか。もっと色々情報がほしい」
「わかった」
「了解~!!」

もっと現時点での正確な情報を手にいれるため、三人はシリルたちが飛び出していった穴から冥界島(キューブ)の外へと飛び出していった。
























「くっ・・・」

三人が動き出す少し前、シリルのブレスによって外へと投げ出されたノーランは、懸命にアンダーキューブの方へと手を向けていた。

(今はアンダーキューブに重力場が展開されてるはず。それでうまく体勢を立て直せれば・・・)

ハッピー、シャルル、セシリー、リリーといったエクシード隊がカードになった妖精の尻尾(フェアリーテイル)冥界島(キューブ)へと連れてくる際に、彼らの(エーラ)を無力化するために展開された重力場。ノーランはそれを利用しようと考え、手を伸ばし、そちらに向けていたのだった。

グッ

「お?」

その彼の狙いは成功の方向に動いていた。伸ばした腕がかろうじて重力を受ける範囲に届き、そちらに体が引っ張られ始めた。

「よし。これなら・・・」

なんとかできると考えていたノーランだったが、彼の上から降ってくる影が視界に入り、そちらへと視線を向ける。

「ノーラン!!」

その影とは、彼を追ってきたシリルだったのだ。

「うおおっ!!」
「ぐはっ!!」

アンダーキューブの方に体が向かっていたノーラン。しかし、そんな彼の胸元にシリルの拳が叩き込まれ、二人はそのまま地上へと落下していく。

(バカな・・・重力場の引力を・・・パンチ一つで押しきったっていうのか!?)

人間や悪魔、彼らが何人いても絶対に落ちていくことがない重力場。その力はノーランも引き寄せるはずだった。しかし、シリルの拳によって、アンダーキューブにたどり着くはずの悪魔は、少年と共に地上へと落下していく。

「・・・シリル?」

その時アンダーキューブでは、魔障粒子に犯されたフリードたちを守るべく戦闘を繰り広げていたマカロフが、その姿を確認していた。























地上へとみるみる近づいていくシリルとノーラン。二人はマグノリアの南側、森になっている場所に落下する。

「ぐあっ・・・」

凄まじい爆音を周囲に響かせて地面に落ちた二人。彼らが叩きつけられたその場所は、まるで隕石が直撃したかのように、大きくへこんでいた。

「水竜の・・・」
「やらせるか!!」

下になっているノーランに拳を振りかざそうとしたシリル。しかし、悪魔はそれをギリギリのところを彼を張り飛ばし回避していた。

「くっ・・・」

押されたシリルは空中で体を一回転させると、足から着地して衝撃を最低限に押さえる。

(水じゃあいつには効かない。炎もダメ。だったら・・・)

ノーランは腕を引き、自分を見据えるシリルの首もとへと照準を合わせる。

(物理攻撃しかねぇだろ!!)

合わせた照準目掛けて腕を振るうノーラン。それはラクサスに原理を見破られてしまった技だったが、シリルは一度も避けることができてない。そのため、もっとも有効な攻撃だと彼は考えた。

「ほっ」
「なっ!?」

しかし、それは小さく体を反らせたシリルの前にあっさりと交わされてしまう。

「なんだ。ちゃんと見るとずいぶんスローな魔法だな」

瞳を水色に輝かせ、魔水晶(ラクリマ)の力を解放したシリル。彼の動体視力の前に、ノーランの一撃は無力となってしまった。

「ふざけんなぁ!!」

己の呪法を回避されたノーランは、何度も何度も腕を振るい敵を攻め立てる。しかし、目を解放したシリルには到底当たるはずもなく、少年はゆっくりとした足取りで悪魔の方へと歩み寄っていく。

「よくも・・・ウェンディとシャルルを・・・」
「っ・・・」

ノーランの目の前までやってきたシリル。ノーランは大切なものを失う原因を作り出した冥府の門(タルタロス)の怒りで震えていた。
そして、その彼を見たノーランも、少年の現在の姿に言葉を見失う。
目元まで侵食している黒い模様。それは少年の片目を黒くさせている。シリルの小さな体の半分が、彼らの手によって入れられた滅悪魔法の印に飲み込まれてしまっているのだ。

(怒りの力で・・・不完全だったはずの滅悪魔法を自分のものにしたのか・・・?)

少年の圧力に一歩後ずさるノーラン。シリルはそんな彼との距離を縮めようと、同じように一歩前に出る。

(勝てない・・・殺される・・・)

初めて直面した死の恐怖に、ノーランは怯え、足を小刻みに震わせていた。























カミューニside

「見つけた~!!」
「あそこだ!!」

冥府の門(タルタロス)の本拠地から飛び出し、シリルとノーランのもとへと向かっている俺たち。セシリーが目の見えない俺を連れ、ラクサスは雷を纏い、地上へと向かっている。

「どうなってる?」

二人がシリルを見つけた周辺へと降り立つと、すぐに二人に状況を確認する。

「シリルの奴・・・目まで変色してやがんぞ」

すると、どうやらシリルの体を蝕む悪魔の印は、先程までよりも侵食を進めているらしい。

「シリル~!!」

セシリーが少年の名前を叫ぶが、反応があるようには感じない。声が聞こえてすらこないってことは、セシリーの声は聞こえていないってところだろうか。

「がっ・・・あぁ・・・」

すると、微かにではあるが、何か声のようなものが聞こえる。それがノーランが苦しみ悶えている声だとわかるのに、そう時間はかからなかった。

「俺は・・・お前らを・・・」

泣いているように聞こえるシリルの声。シリルはノーランの首を掴み持ち上げ、締め上げているみたいだ。

「シリル!!もうよせ!!」
「どうしちゃったさ~!!シリル~!!」

ラクサスとセシリーが必死に呼び掛けるが、ここでもシリルの返事は帰ってこない。これは・・・

「滅悪魔法が原因だな」
「え?」

あまり情報がないから確実にそうとは言い切れないが、十中八九そう考えていいだろう。

「シリルはノーランの実験で滅悪魔法を体内に取り込まされた。ただ、その実験が完了する前に助けられたことで、元ある滅竜魔法を邪魔するだけで、何も奴には影響を与えていなかった。
だが、ウェンディとシャルルが死んだと聞いて、あいつの心の中にある“悪” の要素が膨れ上がり、滅悪魔法の力を完全に引き出しているんだ」
「マジかよ」

俺の予想を聞いてラクサスが信じられないといった声を出す。だけど、今はそれくらいしか考えられないだろう。

「おまけに、シリルの体に滅竜魔法(別の魔法)が元からあるせいで、それと滅悪魔法(新しく埋め込まれた魔法)がぶつかり合い、制御ができなくなってるんだ」

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は別属性を食らうと体調が悪くなるってラクサスに前に聞いた気がしたが、今回は属性も種類も違う魔法。いくらシリルでも、そんなものが体内で混じり合ったらおかしくなるのは当たり前だ。

「そんな~!!じゃあシリルはどうなっちゃうの~!?」

大切な友達の暴走に取り乱すセシリー。本当は彼女を落ち着けるための言葉をかけるべきなんだろうが、最悪の事態の覚悟だけはしておいてもらった方がいいかもしれん。

「たぶん・・・ノーランを殺したら、シリルは完全に悪に染まる」
「そんな~!?」

奴の心が悪に染まり切ったら、きっとこいつは俺たちの敵になる。いや、こいつは誰の味方でもない状態で、生き続けなければならないかもしれん。

「俺たちがなんとかするしかねぇな」

俺がどうしようもなくうつ向いていると、突然ラクサスがそんなことを言い出す。それを聞いた時、驚いた俺は顔を上げた。

「もし、止めに入った俺たちが殺されても、シリルは悪になるぜ?」

手負いのラクサスに目の見えない俺、そして戦力になり得ないセシリー。そしてこの三人で止めるのは、万全な状態の俺やラクサスと同等の実力を保有するノーランを圧倒しているシリル。
普通に考えたら無理だ。間違いなく俺たちが死ぬのは目に見えている。だけど・・・

「それでもやるしかねぇ。やれるのは俺たちだけなんだからよ」
「だな」

一切の迷いのない彼の声に、俺も賛同する。死ぬわけにはいかねぇ。だけど命懸けだ。

「絶対止める!!」
「もちろんだ!!」

大切なギルドの仲間を守るため、そして、正しい道へと戻してくれた彼を救うため、俺とラクサスは決死の挑戦へと動き出した。












 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
シリル暴走からのラクサスとカミューニでこれを止める。とりあえず考えてた構想を順調に進められてるぞ!!
次はラクサスとカミューニがシリルのために頑張ります。 
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