英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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序章~特務支援課~ プロローグ
~クロスベル市・中央広場~
「うわ~………ずいぶん様変わりしたなぁ。デパートなんか完全に新しくなってるし。」
(そうね。たった数年でこれほど発展するなんて………)
(フーン、ここがロイドの故郷ねぇ………秀哉達の世界の劣化版か。)
鉄道でクロスベルに来た少年―――ロイドはビルだらけの風景に驚き、ロイドの身体の中にいるルファディエルもロイドの言葉に頷き、ギレゼルはロイドの身体の中から興味深そうな様子で広場を見つめた。
「あれ、そっちの建物は……?」
周囲を見回していたロイドは見慣れない建物を見て首を傾げて、鉄道内で知り合い、一緒にクロスベルに来た老夫妻に尋ねた。
「去年オープンいたばかりの”オーバルストア”じゃよ。最新の導力製品から導力車まで扱っておる店舗でな。両帝国製、共和国製、リベール製、エプスタイン製、全て扱っておるぞ。」
「は~、大したもんだね。それに………けっこう車も増えたみたいだ。3年前はほとんど見かけなかったんだけど………」
「ふふ、お金持ちにしか縁がないものだとは思うけど………導力バスの本数が増えたのは正直、ありがたいわねぇ。南にある病院方面なんか30分ごとに走っているのよ。」
「へえ、それは便利になったね。そうか………3年でここまで変わったのか。」
老夫婦の話を聞いたロイドは目を閉じて3年前のクロスベルを思いだしていた。
「さてと、ここまででいいぞ。就職先に顔を出すんじゃろ?」
「あ、うん………せっかくだから家まで運ばせてもらおうと思ったけど。」
「あらあら、ダメですよ。せっかくの初出勤、遅刻でもしたらどうするの?」
「そうそう。何事も始めが肝心じゃ。」
ロイドの申し出を聞いた老夫妻達は苦笑しながら注意し
「はは、確かにそうだね。」
老夫妻の言葉を聞いたロイドは苦笑した後、老人に荷物を渡した。
「しかし、戻ってきたばかりで住むアテはあるのかね?東通りでよければ下宿先を紹介できると思うが。」
「あ、気持ちはありがいけど寮が用意されているらしいんだ。送った荷物もそちらに届いているはずだよ。」
「ほう、そうじゃったか。」
「私達は、東通りの外れに方に暮らしているの。何か困ったことがあったらいつでも頼ってらっしゃいな。」
「うん、ありがとう。落ち着いたら挨拶に伺わせてもらうよ。」
「うむ、しっかりな。」
「それじゃあ、またね。」
そして老夫婦達は去って行き
「あれ………」
老夫婦達を見送ったロイドは周囲を見回した後、古い建物に気づいた。
「あの雑居ビル………ちゃんと残っていたんだ。たしかクロスベルタイムズが入っていたはずだけど………はは、懐かしいけどこの街並みじゃ浮いてるよな。さてと………そろそろ時間か。」
古い建物を見て苦笑していたロイドは気を取り直した後、懐から一枚の封書を取り出して読んだ。
「ロイド・バニングス殿
クロスベル警察本部、特務支援課への配属を命ずる。指定日時に警察本部へ出頭せよ。
クロスベル警察・人事課」
「特務支援課………警察学校のカリキュラムじゃ聞かなかった名前だけど。まだ制服を受け取ってもないし、どういう部署なんだろう……?」
封書の内容を読んだロイドは考え込んだが
「―――まあいい。とにかく行けばわかるよな。さすがに警察の場所までは変わってないだろうし……よし、初出勤と行きますか!」
すぐに気を取り直して、警察本部に向かった。
~クロスベル警察本部・受付~
「こんにちはー。ようこそ、クロスベル警察へ。どのようなご用件でしょうか?」
受付に近づくとピンクブラウンの髪を2房に分けたクロスベル警察の制服を着た受付嬢が笑顔でロイドに尋ね
「あ、いや………――――今日からここで働かせてもらう事になったロイド・バニングスといいます。どうかよろしくお願いします。」
尋ねられたロイドは一瞬戸惑った後、挨拶をした。
「あ、そうだったんですか。ふふっ、嬉しいです。一緒に働くお仲間が増えて。あれ、でも………うーん、おかしいですね。今日、新人の方が来るっていう連絡は受けていないんですけど………その、警察本部じゃなくて警備隊の方ではないですよね?」
ロイドの話を聞いた受付嬢は嬉しそうな表情になった後、ある事に気づいてすぐに考え込み、尋ねた。
「いえ、警察本部で間違いないと思います。一応、警察学校の方で捜査官の資格を貰いましたし。」
「え~っ、捜査官試験に合格されているんですか!?凄いですね~!新人の方では珍しいですよ!」
そしてロイドの説明を聞き、驚いた様子でロイドを見つめた。
「い、いや~。運が良かっただけですよ。それに今回、試験を受けたのは自分だけだったみたいだし………」
「またまた~。謙遜しないでくださいよ。でも、おかしいですね。だったらこちらにも連絡が来てるはずですけど……あの、どちらの部署に配属される予定なんですか?」
「はあ、それが………『特務支援課』っていう部署らしいんですけど。」
「『特務支援課』…………?えっと………?そんな部署ありましたっけ?」
ロイドの話を聞いた受付嬢は考え込んだ後、首を傾げて尋ね
「………あの、無いんですか?」
(………どういう事かしら?新人で捜査官資格を持っていたら、それなりの待遇はあると思っていたけど………)
(なんだ~?いきなりトラブルか~?かかかっ!いきなり楽しませてくれるぜ!)
受付嬢の様子を見たロイドは冷や汗をかき、ルファディエルは眉を顰め、ギレゼルはおかしそうに笑っていた。
「ちょ、ちょっと待って下さい。……どこかでその名前を聞いた事があるような、無いような。」
「…………………………」
考え込んでいる様子の受付嬢を絶句したロイドが見つめていたその時
「………おー、来やがったか。」
「あ、セルゲイ警部………!」
(!セルゲイ………!?何故、彼が………)
一人の刑事――――セルゲイが2人に近づき、セルゲイを見たルファディエルは驚きの表情になった。
「フラン。こいつは俺が引き取ろう。ウチの新人なんでな。」
「あ、なるほど………警部が立ち上げた新部署の名前だったんですね。」
セルゲイの話を聞いた受付嬢―――フランは納得した様子で頷いた。
「ああ、よろしく頼むわ。ま、半年も経たないうちに無くなってるかもしれんがな。」
「あ、あはは………」
そしてセルゲイの冗談か本当かわからない言葉に苦笑し
「……えっと………」
ロイドは戸惑った様子でセルゲイを見つめ
「特務支援課課長、セルゲイ・ロウだ。ふむ…………お前がロイドか。」
見つめられたセルゲイは自己紹介をした。
「は、はい。ロイド・バニングスです。クロスベル警察・特務支援課への着任を報告させて――――」
セルゲイに見つめられたロイドも自己紹介をしようとしたが
「ああ、それはまだいい。」
「えっ………」
セルゲイに制され、固まった。
「着任報告をするのはまだ早いと言っている。付いて来い。他の連中を紹介しよう。」
そしてセルゲイは背を向けて歩き出し
「え、あ………?」
セルゲイの突然の行動にロイドは呆け
「え~っと………その、頑張って下さいね?色々大変だとは思いますけどガッツがあれば大丈夫ですよ!」
フランは苦笑した後、励ましの言葉を送った。
「は、はあ………(激しく不安だ………)」
フランの励ましを聞いたロイドは苦笑しながら頷いた後セルゲイに付いて行き会議室に入った。
~会議室~
会議室に入るとそこにはパールグレイの髪を腰までなびかせる娘、オレンジのコートを着た赤毛の男、水色の髪を持つ黒衣の少女がそれぞれ椅子に座っており
「あら………」
「おっと。おいでなすったようだな。」
「………………………」
入って来たロイドに気づくとそれぞれ視線をロイドに向けた。そしてセルゲイはロイド大きなホワイトボードの前まで連れて行き、娘達にロイドの紹介をした。
「待たせたな。こいつが現時点での最後のメンバーだ。おい、自己紹介。」
「あ、はい。」
セルゲイに促されたロイドは頷いた後一歩前に出て、3人の顔を見回し
(あれ………先輩にしては顔ぶれが………同じ新人………?いや、それにしたって若すぎる子もいるような………)
(何故、全員警察の制服じゃないのかしら………?)
3人の容姿を見て首を傾げ、ルファディエルも眉を顰めていた。
「おい、どうした?名前と出身だけでいい。」
一方ロイドの様子に気づいたセルゲイは自己紹介を早く始めるよう促した。
「す、すみません。――――ロイド・バニングス。ここクロスベル市の出身です。しばらくの間、外国で暮らしていたんですけど………この度、警察に入るにあたり戻ってくることになりました。これからよろしくお願いします。」
「おーおー、真面目だねぇ。俺はランディ。・ランディ・オルランドだ。趣味はナンパ、ギャンブル、グラビア雑誌の鑑賞って所だ。あとでお前さんには俺の秘蔵コレクションから取っておきを貸してやるよ。」
ロイドが自己紹介をすると続くように赤毛の男―――ランディが自己紹介をし
「ええっ!?」
(……いきなり、ロイドの教育に悪い男性が同僚………ギレゼル一人でも頭が痛いというのに………)
(かかかっ!男として普通の事を言っているだけじゃねえか!)
ランディの話を聞いたロイドは驚き、ルファディエルは顔を顰め、ギレゼルは笑っていた。
「………コホン。――――初めまして。エリィ・マクダエルです。あなたと同じクロスベル市の出身です。よろしくお願いしますね。」
一方娘―――エリィは咳払いをした後、自己紹介をし
「あ、ああ………」
エリィの自己紹介にロイドは戸惑いながら頷いた。
「え……………………」
一方黒衣の少女は驚きの表情で呟いてエリィを見つめ
「?私に何か?」
「…………いえ。何でもありません。」
見つめられたエリィに視線を向けられた少女は静かに答えた後、自己紹介を始めた。
「ティオ・プラトー。レマン自治州から来ました。………よろしく。」
少女―――ティオは名乗った後、軽く頭を下げた。
「よ、よろしく………えっと、セルゲイ課長………?」
「ん、なんだ?」
「『特務支援課』というのは一体どういう場所なんですか?その………自分も含めてずいぶん若い顔ぶれのような。」
「ま、色々あってな。ちなみに全員、お前と同じく期待のルーキーばっかりだ。クク、気楽でいいだろう?」
自己紹介を終えた後戸惑っている様子のロイドに尋ねられたセルゲイは静かな笑みを浮かべて答え
「は、はあ………」
「…………いいのかしら。」
「ま、口やかましい先輩がいないってのは有難いねぇ。」
「………………………」
セルゲイの答えを聞いたロイドは戸惑い、エリィは疲れた表情をし、ランディは気楽そうな表情をし、ティオは両目を伏せて黙り込んだ。
(な、なんだこの状況………何だか無性に不安になってきたぞ………)
周りの様子にロイドが戸惑っていたその時、何か音が聞こえはじめ、音が聞こえはじめるとセルゲイは懐からオーブメントが装着されてある機械を取り出して耳にあてた。
「こちらセルゲイ………おお、ご苦労さん。」
(あれは、携帯用の通信端末?そんなものまで実用化されているのか………)
セルゲイが持つ通信機を見たロイドは若干驚きながら黙って見つめていた。
「………ああ、了解だ。それじゃあ、後始末の方は任せてくれ。よし、喜べルーキーども。この『特務支援課』がどんな仕事をするのか………これから素敵な場所でじっくりと体験させてやろう。」
通信を切って、通信機を懐にしまったセルゲイは説明した後ロイド達をクロスベル市の鉄道の駅前の外れにある扉まで連れて行った……………
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