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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第100話

~トールズ士官学院・グラウンド~



「………………」

「―――そこまで!勝者、特科クラス”Ⅶ組”!」

リィン達がリアンヌに勝利した事に呆けているサラ教官の代わりにレーヴェがリィン達の勝利を宣言した。

「………………」

自分達の勝利を宣言され、仲間達と共に武器を収めたリィンは呆けた表情をしていた。

「は、はは……」

「……ふふっ……」

「……やったね。」

「ああ……”我ら”の勝利だ。」

マキアスやアリサ、フィーとラウラはそれぞれ静かな笑みを浮かべた。



「これで……終わりか。」

「……はい。これで本当の終わりです……」

「フフ、今でも信じられないですね……わたくし達があの方相手に一本取れるなんて……」

「ま、エヴリーヌやプリネ達もいるんだからむしろ当然の結果だね。」

「もう、エヴリーヌお姉様ったら……」

「あたし達がいても、ギリギリ勝てたのですよ……?」

口元に笑みを浮かべるユーシスの言葉にエマは頷き、セレーネは微笑み、エヴリーヌの言葉を聞いたプリネとツーヤはそれぞれ苦笑していた。



「忘れられない……”最後の実技テスト”となったな……」

「うん……本当に……」

「へへっ、ヴァルカン達へのいい土産話にもなったぜ……」

微笑んでいるガイウスの言葉にエリオットは頷き、クロウは満足げな笑みを浮かべた。

「あー……楽しかったぁ!」

そしてミリアムは嬉しそうに背伸びをしたが

「あれ………なんでボク……」

ふと涙を流し始め、悲しそうな表情になった。



「……ミリアム……」

「お前……」

「ミリアムさん、もしかして……」

「あはは、やだな……ボク、オジサンに言われて潜りこんだだけだったのに……なんで……こんな……」

涙を流す自分が信じられない思いを抱えているミリアムにアリサは近づき、背中から優しく抱きしめた。

「いいの……いいのよ。」

「……そなたも我らの仲間だ。」

「哀しい時は……泣いていいんだと思います。」

「そだね……わたしたちも。」

「うううっ……あああっ……!わああああんっ……!」

女性陣の優しげな言葉を切っ掛けにミリアムは大声で泣き始めた。



「……ううっ……」

「……う……あぁ……」

「……………っ…………」

「……グス…………」

「……っく……ああ……」

「……ねえ、プリネ……エヴリーヌ、何でこんなに胸が締め付けられるみたいに痛いの……?エヴリーヌ、病気になったの……?」

「いいえ……それは決して病気ではありませんよ、エヴリーヌお姉様……」

「はい…………その痛みも……エヴリーヌさんが……成長した証ですよ……」

そしてミリアムの泣き出すとアリサ達も涙を流して声を押し殺しながら泣き始め、僅かに辛そうな表情をして自身の胸を抑えているエヴリーヌをプリネは涙を流しながら優しく抱きしめ、ツーヤも涙を流しながらエヴリーヌに微笑んだ。



「き、君達……いいかげんにしたまえ……」

「うううっ……僕達だって……」

「フン……最後にこんな……」

「へへ……俺までこのザマかよ……」

「だが……我慢は無用だろう……」

「……そう……だな……」

更に女性陣の涙に釣られるかのように男性陣も次々と涙を流し始めた。



「……みんな……」

「はは……参ったな……」

「ああ……でもこれで……」

一方その様子を見守っていたトワは涙ぐみ、アンゼリカは静かな笑みを浮かべ、ジョルジュは優しげな微笑みを浮かべ

「ううっ……ああっ……」

「ぐすっ……うううっ……」

「ひっく……ううっ……」

「フフ……私までもらい泣きをするなんてね……(よかったわね、クロウ……)」

「それは私も……同じです……グスッ……」

「まったく……どうしてアタシまで……」

エリスやアルフィン皇女とセドリック皇太子、クロチルダとエリゼはそれぞれもらい泣きし、セリーヌはリィン達から視線を逸らして小声で呟いた。



「……ずっと……我慢していたんでしょうね。」

「ええ……それでも強がって前だけを見据えて……」

「それぞれの道を歩いていく……」

「ったく……大したヤツらだぜ。」

「間違いなく奴等は全員大物に成長するだろうな……」

クレア少佐やサラ教官、シャロンとトヴァル、レーヴェはそれぞれ優しげな微笑みを浮かべてリィン達を見守っていた。



「……………………”有角の若獅子達”に”獅子心皇帝”と”軍神(マーズテリア)”の加護があらんことを。」

それぞれが感慨に浸っている中いつの間にか立ち上がってリィン達に背を向けてリィン達から離れたリアンヌは静かな笑みを浮かべてグラウンドの出入り口である階段をのぼりながらリィン達に対する祝福の言葉を口にした。

「―――ご苦労だったな、リアンヌ。」

するとその時階段を登った校舎がある丘でイリーナ達と共にリィン達を見守っていたリウイがリアンヌに労いの言葉をかけた。

「陛下。来ていらっしゃっていたのですか。もしかして陛下もクロチルダ殿やエリゼのように?」

「……最初は行くつもりはなかったのだがな。イリーナがどうしても行けというから仕方なくだ。」

「もう、あなたったら……あなたも”Ⅶ組”の最後を締めくくる”最後の実技テスト”が気になっていたのだから来たのでしょう?」

リアンヌの疑問に答えたリウイの答えを聞いたイリーナは苦笑しながら指摘した。

「う、ううっ……よかったわね、プリネ……ひっく……グスッ……」

一方二人の傍にいたペテレーネは声を押し殺して泣き続け、その様子にリウイ達は冷や汗をかいた。

「ほら、ペテレーネも。そろそろ泣き止みなさい。貴女も母親なのだから。」

「す、すみません、イリーナ様……ひっく………ぐすっ……」

「やれやれ……それにしてもまさか本当にお前相手に一本取るとはな。幾らプリネ達がいるとは言え、正直勝率はほぼゼロと言ってもおかしくなかったからな。」

イリーナに慰められているペテレーネの様子を呆れた表情で見守っていたリウイはリィン達に視線を向けた。



「ふふっ、先に言っておきますが手加減は一切していませんよ?」

「そのくらいの事はわかっている。―――――フッ、エステル達と言い、エリゼや”Ⅶ組”と言い、最近の俺の周囲の人間達は皆、驚く程成長が早いな。これも別次元の”零の御子”の仕業か?」

「フフ、それを知るのは別次元の御子殿のみですよ。……ところで、デュバリィに一体何があったのですか?」

苦笑しているリウイの疑問にリアンヌは静かな笑みを浮かべて答えた後ベンチでエンネアとアイネスに介抱されているデュバリィに視線を向けてデュバリィを介抱している二人に訊ねた。

「それが……マスターの敗北を見た瞬間、ご覧の通りになってしまって……」

「マスターを心酔しているデュバリィの事ですから、恐らくショックのあまり気絶したのかと。」

「う、う~ん……ありえませんわ……マスターは絶対無敵………幾ら相手が私達を破った者達とはいえ……マスターが敗北するなんて……ありえませんわ……」

リアンヌの疑問にアイネスとエンネアはそれぞれ呆れた表情で答え、気絶しているデュバリィはうなされながらブツブツと呟き、デュバリィの言葉を聞いたリウイ達は冷や汗をかいて脱力した。



「フフ、まさか本当に貴女相手に一本取るとはね。下手したら僕やロイド達を超えているかもしれないね。」

「”かも”じゃなくて、既に超えていると私は思いますよ?だってワジさん達の時はエリゼさん達と言うとてつもない使い手の方々の助力があって、ようやく勝利したとの事でしょう?」

「ハハ、中々鋭い所を突いてくるじゃないか。さすがは”空の女神”だね♪」

「ヘミスフィア卿……感心する所が間違っていますよ……」

するとその時ワジとエイドス、そしてルフィナがリウイ達に近づいてきた。



「まあ……貴女方は……」

「……一体何の用でこの学院に来たのだ?」

「もしや”匣使い”殿に用ですか?」

エイドス達の登場にイリーナは目を丸くし、リウイとリアンヌはそれぞれ訊ねた。

「フフ、確かに副長にも用があるけど、そっちは”ついで”だよ。」

「今日はリィンさん達―――いえ、特科クラス”Ⅶ組”に”最後の特別実習”である”依頼”をしに来たのです。」

「え…………」

「”最後の特別実習”だと?そんな話は聞いていないが。」

ワジの後に答えたエイドスの答えを聞いたペテレーネは呆け、リウイは眉を顰めて訊ねた。

「フフ、聞いていなくて当然ですよ。だって今さっき、オリヴァルト皇子と一緒に決めた事ですから♪」

「まあ…………」

「…………あの放蕩皇子も関わっているのか。一体何の”依頼”をするつもりだ。」

エイドスの説明を聞いたイリーナが目を丸くしている中、オリヴァルト皇子も関係している事を聞いた瞬間猛烈に嫌な予感を感じていたリウイは頭痛を押さえるかのように片手で頭を抱え込みながらエイドスに訊ねた。

「それは―――――」

その後エイドスはリウイ達に”最後の特別実習”の依頼内容を説明した。



「…………ハア。さすがはあのエステルの先祖だけあって、非常識や規格外な所もまさに神がかっているな。こんな女神を主神にしている七耀教会には同情するぞ……」

エイドスの説明を聞いたイリーナ達がそれぞれ絶句したり表情を引き攣らせて黙り込んでいる中、リウイは疲れた表情で大きな溜息を吐いた後ルフィナに同情の視線を向け

「ううっ、同情してくれるのでしたら、エイドスさんにほんの少しでも自重して頂けるように説得してください……それとエイドスさん、お願いしますから彼らへの依頼はせめて一端彼らが落ち着いてからにしてくださいよ……?」

「今の状況で姿を現して依頼をしたら間違いなく色々とブチ壊しになるからねぇ?」

視線を向けられたルフィナは疲れた表情で答えた後口元に笑みを浮かべているワジと共にエイドスに視線を向けた。

「むっ、そのくらいの事はわかっていますよ。夫やかつての仲間達から呼ばれていた呼び名の一つ――――”KY女神”なんて不名誉な称号で呼ばれたくありませんし。」

ルフィナとワジの指摘に対して真剣な表情で答えたエイドスの答えにリウイ達は再び冷や汗をかいて脱力した。



そして――――リィン達”Ⅶ組”が士官学院を去る日がついに訪れた。 
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