英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第21話
~旧市街~
「さあ、レースの開始です!第一組、ワジ&ヴァルドチーム、素晴らしいスタートを切りました!今、第一チェックポイントを通過し、第二チェックポイントへ向かいました!」
ワジとヴァルドが第二チェックポイントへ向かった瞬間、次の空砲が鳴り、ロイドとランディがスタートした!
「第二組、ロイド&ランディチーム、スタートしました!ランディ選手、軽快な走り!ロイド選手もなかなかの早さです!今、第一チェックポイントを通過!」
ロイドとランディが第二チェックポイントへ向かった瞬間、最後の空砲が鳴り、エステルとヨシュアがスタートした!
「第三組、エステル&ヨシュアチーム、スタートです!チームワークは折り紙付き!遊撃士としての実力もAクラス!今、第一チェックポイントを通過!先行チームの追撃を開始します!」
ロイド達が第二チェックポイントに近づくとそこにはドラム缶を持ち上げたヴァルドと、静かにただずんでいるワジがいた。
「おおっと~!ヴァルド選手いきなり大技だ!さあロイドチーム、どうする!?」
(くっ………)
(判断は任せた………!)
それを見たロイドは唸り、ランディは目を細めてヴァルド達を睨みながら小声でロイドに指示を促した。
(このまま突っ込むぞ……!)
「おらあっ!!」
ヴァルドがドラム缶をロイド達に投げた時、ロイド達はそのまま突込み、ワジの攻撃を回避した!
「ハハ、なかなかやるじゃない!」
攻撃を回避されたワジは感心した後、第三チェックポイントに向かった。
「ロイド選手、ランディ選手!なかなかの度胸でドラム缶を回避!ワジ選手のアタックも通過し、第二チェックポイントを通過します!」
第三チェックポイントまで来たロイドとランディはワジとヴァルドに追いつき
(どうする………!?)
「(………仕掛けよう………!)行くぞ、ランディ!!」
「合点承知だぁっ!!」
2人はワジとヴァルドを挟み撃ちにして、怒涛の連撃を放ち
「「バーニング………レイジ!!」」
すれ違うと同時に大爆発を起こした!
「なっ………」
「へぇ………やるねぇ。」
ロイドとランディが放った敵を挟み撃ち、双方から息もつかせぬ連撃を繰り出す協力技―――バーニングレイジを受けたヴァルドとワジは地面に膝をついた!
「悪いな………!」
「先に行くぜ……!」
そしてロイドとランディは第三チェックポイントを通過し、2周目に突入した!
「さあ2周目です!ロイド&ランディ選手、順位を繰り上げて………第一チェックポイントを通過!おおっと!ここでエステル&ヨシュア選手がとんでもないスピードで追い上げてきた!」
「くっ………!」
「チッ……追いつかれるな………!」
迫って来るエステル達に追いつかれないように走っていたロイドが第二チェックポイントの装置を叩いた瞬間!
「おい、ロイド!」
「え………?」
近くにあったゴミ箱が爆発を起こし、周りに白い煙が舞った!
「なっ……!?」
「石灰か……!」
「おおっとお!?なんだなんだこの白い煙は~!?ひょっとして、エステルチームが仕掛けたトラップだったのか~!?」
石灰の煙にロイド達が驚いている中、エステルとヨシュアが背後に現れ
「ゴメンね~!」
「お先に!」
第二チェックポイントの装置を叩いた後、第三チェックポイントに向かった!
ロイド達はエステル達を追うかのように第三チェックポイントに向かった!すると第三チェックポイントにはエステルとヨシュアが武器を構えて待ち構えていた!
「来たわね………!」
「突破するよ……!」
(くっ………!)
エステル達と武器を交えたロイド達はそれぞれ防戦一方で、エステル達は攻撃しながらロイド達の背後をすり抜けた!
「ナイスファイト!」
「先に行くよ!」
「くっ……!」
走り去って行くエステル達をロイドは睨んだ後、ランディと共に第三チェックポイントに振り向いた。
「チェックポイントを押さえてとっとと追いかけるぞ―――」
そしてランディがロイドに指示をしたその時!
「ハハハッ!よそ見厳禁だね……!」
「死ねや―――ッ!!」
「ぐはっ……」
「がっ……」
ワジとヴァルドがロイドとランディに奇襲して二人を吹っ飛ばし、そして第三チェックポイントの装置を押した後、ヴァルドとワジは去って行った!
「なんとなんと!追いついたワジ&ヴァルド選手、ロイドチームへの奇襲成功!そして第三チェックポイントを押さえ、エステルチームの追撃に移ります!
「ぐっ………!くそっ、このままじゃ……!」
地面に膝をついたロイドがランディと共に立ち上がり、悔しそうな表情で呻いたその時
「クックククク………ハハハハハハハッ………!」
ランディは凶悪な笑みを浮かべて笑いだし
「ハアアアアアアアアッ!!」
ランディは大声で叫びながら全身に凄まじい闘気を纏った!
「ラ、ランディ?」
ランディの突然の変貌にロイドは戸惑い
「いいねぇ!熱くなってきたぜ!こうなりゃとことん、楽しませてもらおうじゃねえか!」
ランディは凶悪な笑みを浮かべて声をあげた。
「さあエステルチーム、広場を通過して三周目に突入!このまま独走を許せば彼女達の勝利となりますが………おっと~、やはりそうは問屋が卸さないようですっ!」
「来たわね―――って。え、何で一人なの………!?」
第二チェックポイントへの道を阻むヴァルドを見たエステルは棒を構えたが、ヴァルド一人である事に驚いた。
「―――まさか!?」
一方何かに気付いたヨシュアが声を上げたその時!
「―――当たり。」
静かな笑みを浮かべ、建物の屋根にいるワジが跳躍して強襲して来た!エステル達とワジ達の戦いは一進一退の攻防だった!
「やるじゃない!」
「ハッ、そっちこそな!」
「フフ………相当やるね、お兄さん。」
「君の方こそ………―――エステル、行くよ!」
「うんっ!」
互いの健闘を称えあったエステルとヨシュアは第二チェックポイントに向かい
「ヴァルド、追撃だ!」
「言われるまでもねぇ!」
ワジは第一チェックポイントの装置を光らせた後、ヴァルドと共にエステル達を追って行った!
「激しいデッドヒートを始めた両チーム!もうこれで、この2チームに勝利は絞られてしまうのでしょうか――――」
その様子を見ていたグレイスが解説をしていたその時!
「おおおおおおおおっ………!せいっ!!」
なんとランディが凄まじいスピードで装置に近づいて思い切りたたき、ランディに叩かれた装置は煙を出していた!
「す、凄い………!凄まじいパワーです、ランディ選手!というかあの装置………完全に壊れちゃってない?」
その後エステルを筆頭に3人が第三チェックポイント目掛けて走っていた。すると4人は何かに引っかかって転倒した!
「な、なんだァ!?」
「ワイヤートラップ!!」
転倒したヴァルドやヨシュアが驚いたその時!
「―――引っかかったな!」
ロイドが建物の屋根を走って跳躍してエステル達の前に着地した後、第三チェックポイントの装置を叩いて光らせた!
「くっ………!」
「行かせるかあ、こらあっ!!」
それを見たエステルとヴァルドが立ち上がって武器を構え
「待った………!」
「もう一人は―――!?」
ランディが居ない事に気付いたヨシュアとワジが声をあげたその時!
「ヒャッハ――イッ!油断大敵だぜ!喰らいなっ!!」
ランディが建物の階段を昇って、エステル達の中心地にスタンハルバードを叩き付けて、凄まじい衝撃波を発生させて怯ませた!
「ナイス、ランディ!」
「おお!このままゴールするぞ!」
そしてロイドとランディはゴールのラインを走り抜け
「ゴールッ!!激しいレースを最後に制したのはロイド&ランディチームでした!ここで他の2チームもゴール!あら、どっちが先なのかしら………?まあいいや!とにかくみんなお疲れ様~っ!観客の皆さん、惜しみない拍手を~!」
そのすぐ後に残りの2チームがゴールラインを走り抜け、観客達は大喝采の拍手をした。
「はあっ、はあっ、はあっ………」
「はっ、はっ、はっ、はっ………」
レースを終えたロイドとランディはそれぞれ地面に寝転がって息を切らせていた。
「ふふっ。お疲れ様。」
「………凄いレースでした。おめでとうございます。」
「うふふ、どんな形であれエステルとヨシュアのコンビ相手に勝てたなんて凄いじゃない♪」
「いや………全部………ランディの、作戦勝ちだよ……はあっ、はあっ………」
「いや……お前がいなけりゃ………最後の仕掛けは………成り立たねぇさ………ぐうっ………さ、さすがに飛ばし過ぎたぜ………」
エリィ達が2人の勝利を称えている中、2人はそれぞれ息を切らせながらお互いを称えていた。
「ふう、これだから男の子は………」
「単純というか、意地っ張りというか………まあ女の子も一人いましたけど。」
「うふふ、エステルは男勝りな部分もあるからむしろあの場にいて当然の存在よ。」
「ふふ、そうね。そうだ………私、冷たい飲み物買って来るわね。」
「あ、わたしも付き合います。東通りの屋台でいいですよね?」
「ええ、そうね。レンちゃんはどうする?」
「レンも喉がちょっと渇いたし、自分の飲み物も欲しいからレンも付き合うわ。」
「わかったわ。二人ともちょっと待ってて。」
エリィ達は飲み物を買いに東通りへと向かった。
「あー………うー………そういえば………何で俺達こんなことしたんだっけ………?」
「はは………どうでもよくなっちまったな…………………………」
エリィ達が東通りに向かった後、ロイドは息を切らせながら眉を顰め、ランディは苦笑した後、黙って自分の手を見つめ続けた。
「ランディ………?」
「―――正直、引いただろ………あんな風にキレちまってよ……」
「あ………………………」
「自分でも………よくわからねぇんだ。いつもヘラヘラ笑っている俺が”今”の本当の俺なのか………それともあんな風にキレちまうのが俺の本質なのか………この2年間で……すっかりわからなくなっちまった。」
「ランディ…………その、警備隊に入る前にはどこにいたんだ?クロスベル出身じゃないことは聞いているけど………」
複雑そうな表情で語るランディを見つめて考え込んでいたロイドは尋ねた。
「クク………どこにいたか………煉獄のように熱く………冥府のように寒いところかね。」
「え………」
「血も魂も沸騰し………凍り付くような世界………あらゆる生命の輝きと………クソのような汚泥が入り混じったようなところ………それが、俺のいた場所だ。」
「ランディ………」
目を細めて、声を低くして語るランディをロイドは真剣な表情で見つめ続け
「―――なーんてな。ははっ、それっぽかったろ?俺の過去なんざ、そんな大層なもんじゃねえさ。今はただの、夜遊びが大好きなクールでハンサムなナイスガイだ。それ以上でも、以下でもねえ。」
「…………………………」
起き上がっていつもの調子で語るランディを同じように起き上がったロイドは黙って見つめ続け
「あのさ、ランディ。前にも話したけど………俺には兄貴がいたんだ。」
やがてランディを見つめ続けたロイドは唐突に話し始めた。
「え…………」
「ガイ・バニングス………捜査一課に所属していた捜査官。とんでもなく破天荒で、あり得ないくらい前向きで………事故で両親を亡くした後、男手一人で俺を養ってくれて………憧れてた女性を取られても嫉妬すら沸いてこないような………とにかく”凄い男”だったよ。」
「そっか………はは、お前も大変だな。そんなスゲエ兄貴の背中を追いかけてるってわけか。」
「……まあね。でも、少し白状すると………ランディってさ………ちょっと兄貴に似てるんだよな。」
「へ………」
「もちろん顔とか全然、似てないんだけど………いつも俺とか、エリィ達をさり気なくフォローしてくれるだろう?そんな所がちょっと似てるんだ。」
「お、おいおい………こっ恥ずかしいこと言うなよ。お兄さん、顔が赤くなっちまうぜ。」
「はは、そういう照れ隠しもちょっと似てるかも。」
「うっ………」
「だから俺も、ランディのことを尊敬してるところがあるんだよな。ちゃんと”自分”をわかっていて他人にも気を遣えるところ………同僚っていうより、一人前の”男”としてさ。」
「………………………………」
ロイドの自分に対する印象を聞いたランディは呆けた様子でロイドを見つめ続けていた。
「……正直、俺はまだまだだ。多分、ランディの話を聞いても間の抜けた言葉しか出てこないんじゃないかと思う。―――だからさ。いつか俺が、兄貴やランディと肩を並べられるようになったら……その時は、聞かせてくれないか?」
「………ロイド………………ハハハハ………」
そしてロイドに視線を向けられたランディは口元に笑みを浮かべた後、ロイドの頭を撫で始めた。
「ラ、ランディ………?」
「いや~、参った参った!お嬢もこぼしてたけどお前、天性の女たらしかもな。おっと、この場合アニキたらしってところか?」
「な、なんだそりゃ………ていうか、半人前なのは確かだけど子供扱いはさすがにやめてくれよ。」
「ククッ………ははははっ!」
ランディの言葉にムキになったロイドがランディを睨み、その様子をランディが笑いながら見ていたその時
「はあ………何やってるんだか。はい、冷たい飲み物。」
「ラムネの屋台があったので買ってきました。」
エリィ達が戻り、それぞれ飲み物をロイド達に渡した。
「お、ありがたいねぇ。」
「ああ、マジで助かるよ。」
「「んくっ、んくっ、んくっ………ぷはああああああっ!」」
渡されたロイド達はそれぞれお礼を言った後一気飲みをして、大きな溜息を吐いた。
「まったく男の子ときたら………消耗したばかりなんだからあんまりジャレ合わないの。」
その様子を見ていたエリィは呆れたが
「エリィさん、妬いています?」
「クスクス、確かにエリィお姉さんって嫉妬深いように見えるものね♪」
「ちょ、そんなわけあるはずないでしょう!?それにその………男の子同士になんて………」
ティオとレンに視線を向けられ、顔を赤らめて慌てた。
「聞いた話だと、そういう特殊な趣向もあるそうですし………これはもうフラグが立ってしまったのかもしれませんね。」
「そ、そうなの………?」
「というかロイドお兄さんの場合、ほおっておいたら老若男女関係なく色んなフラグを乱立させるんじゃないかしら♪」
「フッ、悪いなお嬢……!この世界は弱肉強食!喰うか喰われるかが全てなのさ!」
ティオの話を聞いたエリィが戸惑っているとそこにレンとランディがダメ押しした。
「あ、あなたねぇ………」
「はあ………何の話をしてるんだか。」
ランディの様子を見たエリィとロイドが呆れていたその時
「―――フフ、賑やかだねぇ。」
ワジがヴァルド達と共に近づいてきた。
「やあ………そっちはもう回復したのか?」
「ふふ、まあね。今日の所は素直に負けを認めておこうかな。」
「ケッ………ふざけた結末だったぜ。―――おい、赤毛。今度はガチで勝負しろよ………?あの最後の爆発力……てめえ、猫かぶってやがったな?」
「あー………別にそういうわけじゃねえよ。あんだけ一気に力を出すとその分、消耗も激しくってな。奥の手みたいなもんだから、あんま、やりたくねーだけさ。」
ヴァルドに睨まれたランディは疲れた表情で答えた。
「チッ、あの黒髪の小僧といい………まあいい、さすがに疲れた。てめぇら、引き上げるぞ。」
「ウーッス!」
「フフ、それじゃあ僕達も失礼しようかな。アディオス。なかなか楽しかったよ。」
「―――撤収だ。」
「了解!」
そしてヴァルドとワジはそれぞれ声をかけた後、青年達を連れて去って行った。
「は~………”レイヴン”たちよりもずいぶん統率されてるわねぇ。えへへ、お疲れさま。」
するとその時エステルとヨシュアが近づいてきた。
「ははっ………そっちこそお疲れ。」
「なんだ、もう帰んのか?」
「はい、元々仕事で来ていた事もありますし。」
「それを言うならわたし達も同じですけど………」
「ふう………もう夕方になっちゃったわね。」
「まあ、今日の分の支援要請は全部終わらせたんだからいいんじゃないかしら?」
ヨシュアの話を聞いて呆れた表情で溜息を吐いたエリィとティオをレンがフォローした。
「あはは。楽しかったからいいじゃない。せっかくのお祭りなんだしちょっとくらいは楽しまないとね!」
「げ、元気だなぁ。」
「はは、まあそれがエステルの取り柄だから。―――でも、ランディさん。身体の方は大丈夫なんですか?」
「え………」
「へえ………同じ匂いはしなかったがお前もそっち絡みなのか?」
ヨシュアの質問を聞いたロイドは驚き、ランディは意外そうな表情をした後尋ねた。
「いえ、正確には違います。ですが多少、知識の方は………」
「そうか………ま、ガキの頃から慣れっこにはなってるからな。後に残るダメージはねぇさ。」
「そうですか………すみません、差し出がましい事を。」
「いや、気にすんな。」
「「「「?」」」」
「うふふ…………」
ランディとヨシュアの会話を聞いていたロイド達がそれぞれ首を傾げている中レンは意味ありげな笑みを浮かべていた。
「ランディ………?」
「ちょっとちょっと。なに2人でわかりあってるのよ?」
「はは、大した話じゃないよ。それよりエステル、そろそろ帰ろう。アリオスさん達も帰ってくる頃だろうし。」
「あ、うん………そういえば………ヨシュア、例の話!」
ヨシュアの答えに戸惑いながら頷いたエステルだったが、ある事を思い出して真剣な表情になった。
「ああ………そうだね。せっかくだから聞いてみようか。」
「例の話………?」
「なんだ、何かあんのか?」
エステルとヨシュアの会話を聞いてロイド達と共に首を傾げたランディはエステル達に尋ねた。
「うん………あのね。”黒の競売会”って知ってる?」
「黒の(シュバルツ)………」
「競売会……ですか?」
「どうやら、このクロスベルのどこかで開かれる競売会らしいの。何でも毎年、記念祭の期間中に開かれているらしくって………―――で、ここが肝心なんだけど盗品ばかり扱ってるって話なのよ。」
「と、盗品………!?」
「本当なのか……!?」
エステルの話を聞いたエリィとロイドは表情を厳しくして尋ねた。
「いや、あくまでも噂だよ。途方もない価値のついた表に出せない由来の品ばかりが出品されるという話だけど………―――でも、その様子だと聞いたことはないみたいだね?」
「ああ………初めて聞いたよ。」
「………警察のデータベースでも見かけたことはありませんね。」
「”黒の競売会”か………なかなか洒落た名前だけどな。」
「…………………………」
(うふふ、これはひょっとしたらまさかの展開になるかもしれないわね。)
ヨシュアの説明を聞き、尋ねられたロイド達はそれぞれ不思議そうな表情をしている中、エリィは考え込み、レンは興味ありげな表情をしていた。
「そっか~………あなた達なら何か知ってると思ったんだけど。やっぱりただの噂なのかな?」
「うーん、そうだね………ナイアルさんの情報ソースだから確かだとは思うんだけど………レンは何か知らないかい?」
「うふふ、知っていたとしてもタダではあげられないわねぇ?今のレンにとってエステルとヨシュアは”商売敵”だし♪エステルみたいに敵に塩を送る程レンは甘くないのはよく知っているでしょう?」
「ぐっ………相変わらず小生意気な妹ね~。というかいつあたしが、敵に塩を送った事があるのよ!?」
「まあまあ、レンの言う事も一理あるよ。もしレンがその情報について何か知っていたとしても、その情報を手に入れる過程の労力も間違いなくあるから、その”対価”も支払わずに情報を提供してもらおうなんて虫が良すぎる話だよ。」
からかいの表情のレンに問いかけられて唸り声を上げた後レンを睨むエステルをヨシュアは苦笑しながら諫めた。
「む~……というか前々から疑問に思っていたけど、何で突然遊撃士協会に”特例”を認めてもらってまでなった遊撃士を休業して”特務支援課”に出向したのよ?」
「あら、前にも言ったじゃない。”社会勉強”の為だって♪」
「社会を舐めた事をしているあんたが言っても全然説得力がないんだけど?」
「ハハ…………」
レンの答えを聞いてジト目でレンを睨むエステルの様子をヨシュアは苦笑しながら見守り
「………………」
エステル達の話が気になっていたロイドは真剣な表情で考え込んでいた。
「はは……そうだな。」
「それじゃあ、僕達はこれで。皆さん、おつかれさまでした。」
「おう、そちらもお疲れさん。」
そしてエステルとヨシュアはロイド達から去って行った。
こうして………記念祭2日目は過ぎて行った。支援課に戻って来たロイド達は報告書を纏め、皆で夕食を取ってから、明日の為に早めに休むことにした―――――
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