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Three Roses

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第三話 幸福と孤独その三

「旧教徒であります」
「宗派の違いね」
「はい、このことが気になりますが」
 マリーに顔を向けて言った言葉だ。
「どうしても」
「気にし過ぎではなくて?」 
 微笑んでだ、マリアは不安な顔になったセーラに言った。
「そのことは」
「そうでしょうか」
「ええ、私達の宗派が違っても」
 それでもというのだ。
「私達は同じ王族、特にマリーはね」
「姉妹だと」
「血を分けたね」
 例えだ、母親が違えどというのだ。
「だからね」
「何かあるとはですか」
「思えないわ」
「だといいのですが」 
 セーラは眉を曇らせたままマリアに応えた。
「マリア様のお言葉通りに」
「貴女はこう考えているのね」
 マリーはセーラにあえて言った、彼女の立場から。
「若しマイラ姉様が王位に就かれたら」
「お言葉ですが」
 この一言にだ、セーラは幼いながらも頭を使って自分の言いたいことを全て込めてそのうえでマリーそしてマリアに伝えた。
「それは」
「そうなのね、けれどね」
「王位は」
「太子がおられて」
 マリー、マイラの弟である彼がというのだ。
「そして叔父様がおられるのよ」
「お父様が」
「お二人が王位の継承権を持っておられるから」
「お二人が王になられるので」
「太子も叔父様も新教徒でしょ」
「はい」
「私とマリアもよ」 
 自分と彼女の名前も挙げた、ここで。
「第三、第四のね」
「そのことはその通りですね」
「それではね」
「マイラ様が」
「そうよ、大丈夫よ」
 そのことは絶対にというのだ。
「貴女のその心配は杞憂よ」
「あの方が王位に就かれることは」
「ないわ、まずはね」
「それでは」
「旧教のお姉様は王位に就かれないわ」
「では」
「私達に何かが起こることはないわ」
「そうですね、言われてみれば」
 ここまで聞いてだ、セーラは表情にある不安気なものを消した。そのうえでこう言ったのだった。
「その通りです」
「そうよね、だからね」
「このことはですね」
「何も心配がいらないわ」
「では」
「今日のお話は忘れましょう」 
 マリーは微笑んでセーラに言った、そしてマリアにも。
「あまりよくない部分もあったから」
「だからですね」
「そう、よくないお話はね」
「忘れるべきですか」
「忘れないといけない時はね」
「そして今のお話はですね」
「忘れないといけないから」
 そうした時でもあるからだというのだ。 
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