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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第78話

~ジュライロッジ~



「ハア、ハア……!か、勝ったのか……!?」

「ああ……どうやらそのようだな……!」

「フウ、みんなの足手纏いにならなくてよかったわ……」

「へへ~ん!ボク達の力、思い知ったか~!」

ルーファスの戦闘不能を見届けた後安堵のあまり仲間達と共に地面に跪いたマキアスの言葉にガイウスは静かな表情で頷き、エーデルは安堵の表情でため息を吐き、ミリアムは勝ち誇った笑みを浮かべ

「ユミルでの時と違い、エリゼお姉様達の助力があったにも関わらずかなり手間取ってしまいましたわね……」

「ゼルギウス将軍はまるで赤子を捻るようにルーファスさんを簡単に制圧したけど……」

「ハハ、さすがに彼は”格”が違うから、比較対象にならないよ。」

「というか生身で近代兵器を破壊するような滅茶苦茶な人達と私達を比べる方が間違っていますよ……」

セレーネは疲れた表情で呟き、エリオットの言葉を聞いたパントは苦笑し、パントの指摘を聞いたアリサは疲れた表情で指摘した。



「ハア、ハア……!後はアイドス様達が戦っている”結社”の人ですね……!」

「いえ――――アイドス様達は既に終えられたようよ。」

息を切らせているエリスの言葉をエリゼは静かな表情で否定して自分達に近づいてきたアイドス達に視線を向けた。

「みんな、大丈夫?」

「どうやらユミルで受けた”借り”を返す事ができたようだな。」

「―――見事です。フフ、貴方達ならば近い内―――いえ、もしかすれば既に”特務支援課”を超えているかもしれませんね。」

アイドスは心配そうな表情でリィン達に声をかけ、レーヴェとリアンヌは感心した様子でリィン達を見つめていた。



(兄上…………)

「ユーシス…………―――勝負はつきました。俺達の”勝ち”です。道を譲って貰います、ルーファスさん。」

辛そうな表情でルーファスを見つめるユーシスを心配そうな表情で見つめていたリィンは表情を戻してルーファスに問いかけた。

「フフ……ハハ…………ハハハハハハハハッ!!」

するとその時ルーファスは大声で笑い始めた!



「あ、兄上……?」

「一体何がおかしいのよ……!?」

「ユミルで圧倒したアンタ達に負けたショックで頭がおかしくなったのじゃないかしら。」

「セ、セリーヌさん。」

突如笑い始めたルーファスにユーシスは戸惑い、アリサは不安そうな表情で声をあげ、セリーヌの言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかいた。

「これが笑わずにいられまい!卿らに敗北した事もまた、あの憎き零の御子の仕業だと思うとな!宰相閣下の崇高な計画や私がたてた綿密な計画が崩壊した事も、私達がこの世を彷徨う亡霊となり、そして最後は卿らに引導を渡される事もそうだ!我々は零の御子の掌の上で踊っていたただの道化だったのだ……!」

「そ、それって……」

「……オレ達がルーファスさんに勝ったのも、零の御子―――キーアという少女の仕業だと言いたいのか……」

「―――零の御子が持っていた能力を考えると全てとは言わないが、彼が言っている事は間違ってはいないだろうね。」

「”因果律の操作”か。」

「そ、それは……」

悔し涙を流しながら空を睨んで声を上げたルーファスの言葉を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、ガイウスは重々しい様子を纏って呟き、パントとレーヴェの話を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし

「兄上…………」

「哀れな人ね…………」

「………………」

ルーファスの様子をユーシスは辛そうな表情で見つめ、アイドスは憐みの目でルーファスを見つめ、リアンヌは目を伏せて黙り込んでいた。



「フフ………ハハ………―――――ユーシス、私を斬れ。」

そして笑い終えたルーファスはユーシスを見つめて信じられない事を口にした。

「…………ぇ…………………」

「なっ!?そんな事をしたらルーファスさんは……!」

「……魂でもある亡霊の彼を斬れば、彼は”冥き途”に逝く事すらできず消滅して、2度と転生できなくなるわ……」

「そ、そんな……」

「どうして血の繋がった弟にそんな事をさせるのですか、ルーファス卿……!」

「今ここでユーシスさんに斬られれば、自身は2度と生まれ変わる事はできず、”本当の意味”で自分は死んでしまう事を自覚しておられるのですか?」

ルーファスの言葉を聞いたユーシスが呆けている中、リィンは驚き、重々しい様子を纏って呟いたアイドスの説明を聞いたエリスは悲痛そうな表情をし、信じられない表情をしているエーデルと共にエリゼは真剣な表情でルーファスに問いかけた。



「私は新たな生を受けてまで憎き零の御子の仕業によって改変されたこの忌々しい世界で生きるつもりはない。もし零の御子の気分が変わったら、生まれ変わった私の運命まで弄ばれるだろうしな。」

「……その解釈は間違っています。”碧の大樹”が消えた事で御子殿の身に秘められる”零の至宝”としての力の大半は失われています。今の御子殿では因果律の操作等と言った”奇蹟”を起こす事は不可能です。」

ルーファスの話を聞いたリアンヌは静かな表情で否定した。

「例えそれが事実だとしても、既に私達がいるこの世界は改変されている。人の意志の介入によって改変された世界等言い換えれば仮想世界だ。そのような世界で生きる等虫唾が走る。私は真の意味でこの忌々しい世界から解放される為に魂の消滅を求める!」

「そんな!その為だけにユーシスに辛い思いをさせて、自分を殺させるんですか!?」

「滅茶苦茶だ………!」

「狂っているとしか言いようがないわね……」

ルーファスの叫びを聞いたエリオットとマキアスは信じられない表情で声をあげ、セリーヌは呆れた表情で呟いた。



「あに………うえ………………………」

一方ルーファスの様子を見て辛そうな表情で顔を俯かせたユーシスは顔を上げ

「―――わかりました。不肖の弟である俺でよければ兄上の最後の介錯を務めさせて頂きます。」

「ユーシス…………」

決意の表情で鞘から聖剣を抜いたユーシスをガイウスは辛そうな表情で見つめていた。

「ですが兄上。一つだけ条件を付け加えさせてもらいます。」

「何……?」

「兄上の介錯には俺とリィンがする事を受け入れてもらいます。」

「え………………」

「ええっ!?一体何を考えているのよ、ユーシス!」

「ど、どうして兄様にまで…………」

ユーシスが出した条件を聞いたリィンは呆け、アリサは驚き、エリスは信じられない表情をした。



「いくら結果的に祖国の為になるとは言え、兄上は己の野望の為にリィン――――いや、”シュバルツァー家”を何度も利用しようとしていたのだ……本来なら兄上はリィンやシュバルツァー卿達に斬られるべき存在だ……」

「ユーシス君…………」

「……確かにその通りですね。」

「実際奴はリィン達―――シュバルツァー兄妹の”絆”を利用してメンフィルとの外交問題を解決しようとしていたからな。」

「彼の計画を考えると当事者であるリィン君やエリゼ君、そしてエリス君には当然彼を斬る権利はあるな……」

「―――いいだろう。好きにするがいい。」

ユーシスの説明を聞いたエーデルは辛そうな表情をし、リアンヌは静かな表情で頷き、レーヴェとパントは重々しい様子を纏って呟き、ユーシスの条件に同意したルーファスは背を向けてその場に座り込んだ。



「…………ッ………!ユーシスは本当にそれでいいのか……!?」

「ああ……兄上に”アルバレア公爵家”の者が行った”シュバルツァー男爵家”に対する数々の非道の責任を取らせる為にも頼む……どうかこの通りだ……」

「…………ッ……!」

「………………」

「ユーシス……」

「リィン……」

「お兄様………」

大切な兄を自分と共に殺すように嘆願する為に頭を下げるユーシスを見たリィンは辛そうな表情で唇を噛みしめ、マキアスやミリアム、アリサとセレーネはそれぞれ心配そうな表情でユーシスとリィンを見つめ

「……兄様、お辛いようでしたら私が兄様の代わりを務めます。」

「姉様……」

リィンの様子を見たエリゼは決意の表情で申し出、その様子をエリスは辛そうな表情で見つめていた。



「………いや、俺がルーファスさんの介錯を務めるから大丈夫だ。それにこれ以上お前に重荷を背負わせる訳にはいかない。」

「兄様…………わかりました。」

「――――アイドス、エーデル先輩。二人とも戻ってください。」

「……わかったわ。」

「リィン……せめてもの”慈悲”として、彼が痛みを感じる事無く一撃で逝けるように私も力を貸すわね。」

リィンの指示によってリィンが持つ神剣へとアイドスが戻ると神剣は膨大な神気を纏い始め、リィンはユーシスと共に落ち着いた様子で自分達に背を向けて座っているルーファスに近づいた。



「兄上……最後に言い残しておく事はありますか?」

「私が言い残したい事は私がメンフィルに処刑される前に既に終えている………だがこの私を破ったせめてもの褒美だ……このフロアを進んだすぐのフロアに”彼”が卿らを待っている。”彼”がかの司祭までの道のりを塞ぐ最後の”壁”だ。トールズの”常任理事”だった者として、互いに納得ができる決着になる事を祈っている。」

「!!わかりました…………――――ユーシス。」

ルーファスの言葉から次のフロアにクロウがいる事を察したリィンは目を見開いたユーシスに視線を向け

「ああ…………今までお世話になりました、兄上………!」

そして二人は同時に剣を振り下ろし、二人が持つ神剣と聖剣に斬られたルーファスは一瞬で消し飛んだ!



「「……………………」」

「リィン…………ユーシス…………」

ルーファスの消滅を確認した後それぞれ剣を鞘に収める事無くルーファスがいた場所を見つめているリィンとユーシスをアリサは仲間達と共に心配そうな表情で見つめていたが、やがて二人はそれぞれの剣を鞘に収めた。

「………パント卿、みんなをこちらに連れて来て下さい。この先は全員で進むべきです。」

「…………わかった。すぐに連れて来る。」

その後パントの転移魔術によって待機メンバー達はリィン達の元に現れ、待機メンバーと合流したリィン達は全員で先を進み始めた。 
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