英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第75話
~ジュライロッジ~
「あ…………」
「か、勝ったのか……?」
二人の戦闘不能を見たエリスとマキアスは呆け
「ええ。――――わたくし達の勝利ですわ♪」
シャロンの言葉を聞くと安堵によってラウラ達と共に地面に跪いた。
「フン……俺達の力、思い知ったか……!」
「フー……フー……何とか勝てたね………」
「敵ながら天晴としか言いようがない凄まじい強さだったな……」
ユーシスは勝ち誇った笑みを浮かべ、フィーは息を整え始め、ラウラは疲れた表情で呟き
「レン姫達は私達以上に激しい戦いを繰り広げたのに、まだまだ余裕を残していますね……」
「ま、エヴリーヌ達とエリス達との実戦経験が違うから当然だよ。」
「非常識な存在である貴様にだけはそんな事を言われる筋合いはないぞ!?」
「全くだ!”魔神”の君が言っても説得力がないぞ!?」
苦笑しながら呟いたエリスの言葉に答えたエヴリーヌの答えを聞いたユーシスとマキアスはそれぞれ疲れた表情で指摘し
「うふふ、でも二人の言っている事も強ち間違ってはいないわね♪」
二人の様子を見たレンはからかいの表情で呟いた。
「―――どうやらそっちも何とかなったみたいね。」
「フィーちゃん、みんな……!」
「みんな、無事か……!?」
するとその時ヴァルカンを無力化した後バルディエルを戻したサラ教官やエーデル、リィンがラウラ達にかけより
「驚いたわね……”死線”達の協力があったとはいえ、”大陸最強”と恐れられていた猟兵団の連隊長を無力化するなんて。」
「フフ、見事です。」
更に幻獣を無力化したクロチルダとリアンヌもラウラ達に近づいた。
「部長……サラ……ヴァルカンの方は無力化できたの?」
「ええ、魔人化する前に何とか無力化できたわ。」
フィーの疑問にサラ教官は疲れた表情で答えた。
「!全員、構えなさい!まだ終わっていないわよ!?」
「へ………」
一方何かに気付いたセリーヌは仲間達に警告し、セリーヌの警告を聞いたマキアスは呆けた表情をした。
「………ギギ……ググ……………ガアアアアアアアアアアアアアッ!!」
するとその時地面に膝をついたヴァルカンは唸った後再び全身にすざましい瘴気を纏って立ち上がり、叫んだ!
「こ、これは………!」
「まさか………魔人化するつもり!?」
「そんな……完全に無力化できたと思ったのに、まだ戦える体力が残っているなんて……」
「チッ、”化物”が……!」
ヴァルカンの様子を見たラウラとクロチルダは驚き、エーデルは信じられない表情をし、ユーシスは厳しい表情でヴァルカンを睨んだ。
「……―――仕方ありません。皆さんは下がって下さい。私がすぐに彼に止めを刺します。」
「え……サ、サンドロッド卿。まさか……!」
「ヴァルカンを殺すつもりなの!?」
リアンヌの申し出を聞いたエリスは信じられない表情をし、サラ教官は厳しい表情で声を上げた。
「クッ……!」
一方リィンは唇を噛みしめてヴァルカンを睨み、そしてヴァルカンに怒鳴った。
「――――ヴァルカン!あんたは”パンダグリュエル”でこれからどうするべきか迷っている俺が答えを出し、そして戦場で出会ったその時こそ、改めて戦うと言った!なのにヨアヒムの介入によってあんたが所属している貴族連合の兵士達やあんたの部下達どころか、あんた自身までヨアヒムの傀儡になるという結果になった!俺に対してあれだけ大口を叩いていたのに、まんまと傀儡にされてしまった今の自分が恥ずかしいと思わないのか!?」
「兄様……」
「リィン、あんた………」
「……敵の心配をするとか、エステルに似ているね。エヴリーヌにはわかんない考えだけど。」
リィンの様子をエリスとサラ教官はそれぞれ辛そうな表情で見つめ、エヴリーヌは不思議そうな表情でリィンを見つめていた。
「ガアアアアアアッ………!………オオオオオオオ………!………ァアアアアア………オオオオ………ガハッ………ぐううっ………」
するとヴァルカンは何かを抑えこむかのように叫んだ後纏っていた瘴気を消して地面に膝をついて正気に戻った!
「瘴気が……!」
「まさか……今ので正気に戻ったの!?」
「うふふ、まさかこの展開まで一緒だとはね♪」
ヴァルカンの様子を見たクロチルダとセリーヌはそれぞれ信じられない表情をし、レンは口元に笑みを浮かべて興味ありげな表情でリィンを見つめ
「がはッ………げほげほ………はあはあはあ………」
正気に戻ったヴァルカンは咳を何度もした後息を切らせていた。
「驚きましたわね……まさか気合で”グノーシス”を抑え込むなんて。」
「き、”気合”で薬物の効果を抑えつけるとか非常識な……」
「ま、猟兵としてはブランクのある”キリングベア”でも抑え込む事ができたんだから、元猟兵団の団長だったその男もできて当然かもしれないわね。」
気合でグノーシスの効果を抑えた事にシャロンは目を丸くしてヴァルカンを見つめ、マキアスは疲れた表情をし、サラ教官は苦笑しながら呟いた。
「………フン……ガキが偉そうな事を抜かしやがって…………だが………どうやら………礼を言う必要がありそうだな………」
息を整え終えたヴァルカンは鼻を鳴らした後呟いた。
「やはりかつての”キリングベア”のように”グノーシス”の原液を直接投与されたのですか?」
「ああ………直接注射して来やがった………あの野郎………貴族連合に残っていた同志達どころか、どうやって調べたか知らねぇが”帝国解放戦線”を抜けた同志達まで連れて来て実験に使いやがった……!そのせいで死んだ連中だっている……!」
リアンヌの問いかけに対し、ヴァルカンは悔しそうな表情で答えた。
「そ、そんな……」
「下衆が……!」
「例え元テロリストとはいえ、既に戦いから退いた者達まで巻き込むのは余りにも非道だぞ……!」
「その人達と比べると、私はまだマシな方なのでしょうね……」
「部長……」
ヴァルカンの答えを聞いたエリスは悲痛そうな表情をし、ユーシスとラウラは怒りの表情をし、重々しい様子を纏って呟いたエーデルをフィーは辛そうな表情で見つめていた。
「……帝都を奪還した事で内戦は既に終結している。貴族連合の”敗北”という形で。あんたにとっては納得できない結末かもしれないが、あんたにも今まで犯した罪を償ってもらうぞ。」
「………フン……カイエンの暴走によって貴族連合がおかしくなって、挙句の果てには不本意な形でテメェらとやりあったとはいえ、テメェらに負けたのは”事実”だ……今更言い訳はしねぇし、逃げも隠れもしねぇよ……リィン・シュバルツァー……できれば”S(スカーレット)”の時のように”C(クロウ)”にもいい落とし所を見つけてやってくれや……それと”S(スカーレット)”を救ってくれた事には感謝……している……ぜ…………」
リィンの言葉に対し、ヴァルカンは鼻を鳴らして答えた後静かな笑みを浮かべてそのまま気絶して地面に倒れた!
「……完全に気絶したようですわね。」
ヴァルカンの状態を確かめたシャロンは静かな表情で呟き
「恐らく魔人化に抵抗する為に力を使い果たしたのでしょうね。」
「ええ。その子の言葉が届かなかったら、間違いなく魔人化したでしょうね。」
「何はともあれ、私のように薬物を投与されておかしくなったその人の事も助ける事ができて本当によかったわ……」
クロチルダとセリーヌはそれぞれ静かな表情で推測し、エーデルは安堵の表情で呟いた。
「クク……まさかあの世に逝く前にあんなええモノを見せてもらえるとはな。冥土の土産としていいモノを見せて貰ったな。」
「―――敵であったにも関わらず、奴を救う為に必死に奴に正気に戻るように呼びかけたのは見事だ。さすがはフィーの”戦友”だな。」
するとその時ゼノとレオニダスの声が聞こえ、二人に視線を向けると二人は全身から光を放ち、透け始めた。
「な―――――」
「か、身体が透明に……!」
「一体何が起ころうとしているのよ……!?」
二人の姿を見たユーシスは絶句し、エリスとサラ教官は驚き
「―――”成仏”です。未練が無くなった事でようやく新たなる生を受ける為に今から”冥き途”に向かうようですね……」
「フィー様とお二人の本当のお別れの時という事ですわね……」
「……まさか彷徨いし魂が成仏するところをこの目にする時が来るとはね……」
「フィー…………」
「フィーちゃん……」
リアンヌの説明を聞いたシャロンは重々しい様子を纏って呟き、セリーヌは静かな表情で呟き、ラウラとエーデルは心配そうな表情でフィーを見つめた。
「……今度こそお別れなんだね……ゼノ……レオ…………」
「ああ。―――本来ならユミルで果てたあの時に俺達とフィーは”永遠の別れ”だったのだ。なのにこうして再びお前と会えた所か、成長したお前の力を知る事ができたのだから俺達は満足だ……もはやこの世にやり残した事はない。」
「先に逝った団長達へのええ土産話になったで。それと坊とそこの黒髪の嬢ちゃん。」
辛そうな表情で自分達を見つめているフィーにレオニダスと共に答えたゼノはリィンとエリスに視線を向け
「え………」
「……俺達に何か?」
視線を向けられたエリスは呆けた表情をし、リィンは不思議そうな表情で尋ねた。
「……大事な娘を誘拐した上更に故郷を襲撃して大事な息子までも誘拐した連中の仲間だった俺達の墓をわざわざ作って俺達の死体を弔った事に俺達が感謝してたって、坊達の親御さん達に伝えといてくれ。」
「―――本来なら俺達の死体はメンフィル軍によって処理されるはずだった。だが男爵夫妻の申し出のお蔭で俺達の死体はフィー達の手によって丁重に弔われ、更には墓まで立ててもらった。郷や男爵夫妻にとって忌まわしき存在であった俺達にそこまでする義理は無かったにも関わらずにだ。男爵夫妻の寛大な心遣い……俺達は心―――いや魂の奥底から感謝し、いつか必ずこの恩を返すつもりだと男爵夫妻に伝えてくれ。」
「あ…………―――わかった。」
「お二人の伝言、必ず父様と母様に伝えておきます。」
ゼノとレオニダスの話を聞いたリィンとエリスはそれぞれ静かな表情で頷いた。
「……”殲滅天使”。それと”魔弓将”。いつか再びやり合う日が来れば、今まで受けた借りを纏めて返させてもらうぞ。」
「”大陸最強”で恐れられていた”西風”の”連隊長”だった俺達の力、いつか必ず思い知らせたるで……!」
「うふふ、リターンマッチはいつでも受けてあげるわよ♪」
「ま、その時になればエヴリーヌ達はもっと強くなっているんだから、今度戦う時はもっと遊べるくらい強くなってね、キャハッ♪」
「き、君達なあ……」
「こんな時くらい、気の利いた事は言えないのか……」
ゼノとレオニダスの言葉に対してそれぞれ不敵な笑みを浮かべて答えたレンとエヴリーヌの答えを聞いたマキアスとユーシスは呆れ
「フフッ、気を利かせたからこそ、あのような言葉を口にしているのだと思うぞ。」
「確かにあいつらの関係を考えるとああいう別れの言葉のほうが似合っているかもしれないわね……」
ラウラは苦笑しながらマキアスとユーシスに指摘し、ラウラの指摘にサラ教官も苦笑しながら同意した。
「……貴方達が死ぬ原因を作ったのはメンフィルの事を軽んじて軽はずみな事をした私よ。謝っても許されない事だと理解しているけど、それでも謝らせて。――――本当にごめんなさい。」
するとその時クロチルダが前に出て二人を見つめて頭を深く下げた。
「クク、別に謝ってもらう必要はないで。俺達は”猟兵”やで?」
「”猟兵の最後”のほとんどは”戦場”だ。だが俺達はフィーに看取ってもらえた上、墓まで立ててもらった。俺達としては最高の形で死を迎える事ができた。だが……謝罪はありがたく受け取っておこう。”蒼の騎士”を救える事、俺達も祈っているぞ……」
「……ありがとう。貴方達の期待に絶対に応えて見せるわ。」
ゼノの後に答えたレオニダスの言葉にクロチルダは決意の表情で頷いた。
「ほなな、フィー……達者に生きるんやで…………」
「さらばだ…………」
そしてどんどん身体が透けていたゼノとレオニダスは光と共に消えた。
「さよなら……ゼノ…………レオ……………………」
辛そうな表情で二人が消えた場所をフィーは見つめた後やがて表情を戻してリィン達に振り向いた。
「―――行こう。全てを終わらせて”かけがえのない毎日”を手に入れる為に。」
「フィー………」
「本当に大丈夫なの?フィーちゃん……」
決意の表情になったフィーをラウラは辛そうな表情で見つめ、エーデルは心配そうな表情で声をかけた。
「ん……本当ならユミルで永遠のお別れをしたはずだった二人とまたこうして会えて言葉を交わせた……それだけで満足だよ。」
「そうか……フフ、相変わらずそなたは強いな。」
「フィーちゃん……私では力不足かもしれないけど、何か相談したい事があったら相談してね?私はフィーちゃんの先輩なのだから。」
フィーの答えを聞いたラウラは感心し、エーデルは優しげな微笑みを浮かべてフィーに言葉をかけ
「ん……その時が来たら是非頼むね、部長。」
フィーは静かな表情で頷いた。その後待機メンバーを呼び寄せたリィンはメンバーをアリサ、エリオット、ユーシス、マキアス、ガイウス、ミリアム、セレーネ、レーヴェ、エリス、エリゼ、パント、リアンヌに編成し直し探索を再開して先へと進み続けていると大きな広間に出た。
「かなり広い場所に出ましたね……」
「随分と奥まで来たけど、終点まで後どのくらいあるのでしょうね……」
「それに待ち構えている残りの亡霊を考えると気が重いよね……」
「ああ……”怪盗紳士”や”西風の旅団”の猟兵達も出てきたし、アルティナはリィンの使い魔になったから、残っているのはリウイ陛下に討ち取られたあの化物だけだぞ……?」
「後はユーシスのお兄さんもいるかもしれないね~。」
「……………」
広間に出たエリスやアリサは周囲を見回し、ある事に気付いたエリオットとマキアスは不安そうな表情をし、ミリアムの推測を聞いたユーシスは辛そうな表情で黙り込んでいた。するとその時何かの気配に気付いたリィン達は血相を変えた。
「誰かいます……!」
「この気配は……」
「”死者”の気配……それも二人か。」
「……………………」
「状況を考えると恐らく先程話にでた二人でしょうね。」
気配に気付いたエリゼとガイウスは周囲を警戒し、パントは真剣な表情で推測し、レーヴェは目を細め、リアンヌは静かな表情で呟き
「いるんだろう……?結社”身喰らう蛇”の執行者、No.Ⅰ――――”劫炎”のマクバーン。そして……貴族連合軍の”総参謀”にして”鉄血の子供達”の筆頭――――”翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)”ルーファス・アルバレア。」
リィンは静かな表情で前を見つめて呟いた。
「クク………」
「フッ、やはりメンフィルから私の正体を知らされていたか。」
するとユミルでリウイに討ち取られた執行者―――”劫炎”のマクバーンとメンフィルの帝都ミルスで公開処刑されたユーシスの兄―――ルーファスが柱の陰から姿を現した!
「ユミルの時以来か。お前らの事だから、絶対来ると思っていたぜ。」
「久しいなトールズの諸君。ユーシスも壮健そうで何よりだ。」
「兄上…………やはり兄上もそこにいる男同様、この世に未練を残していたのですね……」
マクバーンと共に自分を見つめるルーファスをユーシスは複雑そうな表情で見つめていた。
「フッ、何を当たり前の事を。愛する祖国がメンフィルとクロスベルによって多くの領地を奪い取られて衰退し、挙句の果てには伝統を誇ってきた”四大名門”たる我が”アルバレア公爵家”まで取り潰されるのだから、未練を残さない方がおかしいだろう?」
「へ~、全てはギリアスのオジサンの為に動いていたのに、アルバレア公爵家が取り潰される事は嫌なんだ?オジサンはエレボニア帝国から貴族を無くして、みんな平民にするつもりだったんだけどな~。」
「ええっ!?エレボニア帝国から貴族を無くす!?」
「オズボーン宰相はそんなとんでもない事をしようとしていたの!?」
「父さんはその事について知っていたのだろうか……?」
ルーファスの答えを聞いて意味ありげな笑みを浮かべてルーファスを見つめるミリアムの話を聞いたエリオットとアリサは驚き、マキアスは複雑そうな表情で考え込んでいた。
「……兄上。エリゼから受け取った兄上の遺書で兄上が本当にしたかった事等が書かれてありましたが……今一度聞きます。本当にあのような夢物語を実現できると思っていたのですか?」
「”夢物語”……?」
「……一体どのような事が書かれていたのでしょうか……?」
ルーファスへの問いかけを聞いたガイウスは不思議そうな表情をし、エリスはユーシスを見つめて尋ねた。
「……エレボニアがゼムリア―――いや、異世界を含めた全ての地の覇権を握り、平等な世界を創る事……それが”鉄血宰相”が最終目標としていた事で、エレボニアから貴族制度を廃止する事こそがエレボニアを繁栄させられると思っていた兄上が”鉄血宰相”の最終目標を知り、”鉄血宰相”に忠誠を誓ったとの事だ。」
そしてユーシスは驚愕の事実を口にした!
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