英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第70話
~ジュライロッジ~
「リィン達、遅いわね……あれからもう1時間半は経っているわよ……」
「エーデル先輩を無事に助けられているといいのですが……」
リィン達を待っていたアリサとエマが心配そうな表情をしたその時、ベルフェゴールの転移魔術によってリィン達が戻って来た。
「あ、リィン達が戻って来たよ!」
「それにエーデル先輩もいるぞ……!」
ベルフェゴールの転移魔術によって戻った事に気付いたエリオットとマキアスは声をあげ、仲間達と共にリィン達にかけよった。
「エーデル部長……」
「髪と瞳が元の色に……あの……貴女はわたくし達が知っているエーデル部長ですわよね……?」
エーデルを見たフィーは心配そうな表情で見つめ、エーデルの髪や瞳の色が元に戻っている事に気付いたセレーネは明るい表情で尋ねた。
「フィーちゃん……セレーネちゃん……ええ、貴女達が知っている”私”よ。心配をかけてごめんね……」
「ん…………部長が無事なら別にいい。」
「はい……!部長が助かって、本当によかったですわ……!」
エーデルに抱きしめられたフィーとセレーネはそれぞれ嬉しそうな表情で抱きしめ返した。
「エーデル先輩が無事でよかったな、フィー、セレーネ。」
「後はあの亡霊と組んだあの馬鹿だけだな。」
「うふふ、皆さんでしたら必ずクロウ様も助けられますわ♪」
「ああ……!オレ達はその為にもここに来たのだからな。」
「まあ、正確にはクロウをぶっ飛ばして捕まえるんだけどね~。」
「君な……いい加減空気を読んで発言する事を覚えるべきだぞ。」
「アハハ……まあ、ミリアムの言っている事も間違ってはいないんだけどね。」
フィー達の様子を見たラウラは静かな笑みを浮かべ、微笑みながら呟いたシャロンの言葉にガイウスは口元に笑みを浮かべて頷き、ミリアムが呟いた言葉を聞いたマキアスは呆れた表情で指摘し、エリオットは苦笑していた。
「フフッ、さっきまで相当ヤバかったって聞いていたけど、無事で何よりよ。」
「サラ教官……ご心配をおかけしてしまい、申し訳ございません。」
「全くよ……幾らパトリック達を守る為とは言え、自分の身を省みない行為は感心しないわよ?フィー達もそうだけど、あたし達も相当心配したんだからね。もう2度と自分を犠牲にするような真似をしてはダメよ。」
「はい。」
エーデルに謝罪されたサラ教官は苦笑しながら答えた後注意し、エーデルは静かな表情で答えた。
「それにしても正直驚いたわね。”グノーシス”によって暴走していた彼女をたった一時間半であの状態にまで持ち直させるなんて……」
「ええ……一体どんな方法を使ったのか、本気で気になるわね……」
「兄様、一体どんな方法でエーデルさんを助けられたのですか?」
エーデルの様子を見て呟いたクロチルダとセリーヌの言葉を聞いてある事が気になったエリゼはリィンに尋ね
「そ、それは……」
「?どうしてそこで口ごもるのですか?」
「―――!…………兄様?どうして答えられないのですか??」
「…………」
大量の冷や汗をかいて口ごもるリィンの様子をエリスは不思議そうな表情で見つめ、リィンの様子を見て何かを察したエリゼは膨大な威圧を纏って微笑み始め、それを見たリィンは大量の冷や汗をかき始め
「姉様……?―――!に・い・さ・ま~~??」
「………リィン?まさかとは思うけど、私達が想像している方法じゃないわよね??」
エリスはエリゼの様子を見て首を傾げたがすぐにある事を察するとエリゼのように膨大な威圧を纏って微笑み始め、アリサも続くように膨大な威圧を纏って微笑み始めた。
「うふふ、あの様子だとそろそろバレるでしょうね♪」
「まあ、今までのパターンを考えたらね……」
「ハア…………そして今までのパターンからして、エーデルさんもセレーネやアリサさん達と”同じ状況”になった可能性が高いでしょうね。」
一方リィンの様子を見守りながらからかいの表情で呟いたレンの言葉を聞いたプリネは苦笑し、ツーヤは疲れた表情で溜息を吐き
「フッ、相変わらずこういう時に限って奴の隠し事はあまりにも露骨にわかりやすすぎるな。」
「フフッ、逆に考えればすぐに新しい女性を増やした事が判明する事になるのですから、ある意味その方がいいかもしれませんわね。」
「…………ッ!?(なに……?この悪寒は……!何でこんなにも嫌な予感がするの……!?)ガタガタブルブル……!」
レーヴェは静かな笑みを浮かべ、シグルーンは苦笑し、突如悪寒を感じたエヴリーヌは表情を青褪めさせて身体を震わせ始めた。
「………………パント殿。”彼女の今の種族”に気付いていますか?」
「…………ええ。目の前の彼女は”人間ではなく、完全な魔族です。”」
「エーデルさんもそうですが、リィンさんもその事について気付いておられるのでしょうか……?」
リアンヌとパントは重々しい様子を纏ってエーデルを見つめ、ルイーズは心配そうな表情でエーデルとリィンを見つめていた。
「これでエーデル部長は助けられましたけど……エーデル部長はどうしましょうか?また新しい拠点が見つかったら移動する事になって、最終的には全員でヨアヒムに挑む事になりますし……」
「えっと……パトリック達がいた所に待機してもらったらどうかな?」
セレーネの疑問を聞いたエリオットは提案し
「確かにあそこなら安全でちょうどいいな。」
「ならば探索班が先を進んでいる間に待機班の何人かで連中の所に護衛するのはどうだ?その方が効率的だろう。」
「そうね。それじゃあ何人かでエーデルをパトリック達の所まで護衛するわよ――――」
「え、えっと……その……」
エリオットの提案にラウラは頷き、ユーシスの提案にサラ教官が頷いてリィン達に指示を仕掛けたその時、エーデルは口ごもり
「部長……?」
「………その前に少しいいだろうか。」
「ガイウス、どうかしたのか?」
エーデルの様子を見たフィーは首を傾げ、突如申し出たガイウスをマキアスは不思議そうな表情で見つめた。
「ああ。……気のせいだとは思うのだが、エーデル先輩からプリネ達――――”闇夜の眷属”が纏っているのと同じ”風”を感じるのが気になるのだが……」
「え?…………――――!?これは……!」
ガイウスの言葉を聞いて首を傾げたプリネはエーデルを見つめて集中した後何かに気付くと目を見開き
「――――中々鋭いわね。エーデルお姉さん、だったわね?”今の自分の種族”が何なのか把握しているのかしら?」
「へ……」
「レンさん?一体何を?エーデル先輩は普通の人間ですが……」
レンの指摘を聞いたマキアスは呆け、ツーヤは不思議そうな表情で見つめた。
「…………!そ、そんな……!?一体何故……!?」
「…………考えられるとしたらやっぱり”グノーシス”が原因じゃないかしら。」
「………クロウも彼女のようになっていないといいのだけど……」
一方エーデルを見つめて何かに気付いたエマは信じられない表情をし、セリーヌは目を細め、クロチルダは辛そうな表情で呟き
「エマ?それにセリーヌとクロチルダさんまで……」
「一体何なのか、ボク達にも教えてよ~!」
エマ達の様子をアリサは不思議そうな表情で見つめ、ミリアムは不満げな表情でエマ達を見つめて言った。
「……単刀直入に言いますかと今のエーデルさんは”人間ではないんです。”」
「に、”人間ではない”って………」
「まさかレン姫のように半魔族化したのでしょうか?」
シグルーンの答えを聞いたアリサは不安そうな表情をし、ある事に気付いたシャロンは真剣な表情で尋ねた。
「それだったら、まだマシだったのだが……」
「……今の彼女は純粋な”魔族”です。」
「ええっ!?」
「!?どういう事よ、それは!?」
シャロンの問いかけにパントは言葉を濁し、リアンヌの答えを聞いたエリオットは驚き、サラ教官は血相を変えた。
「言葉通りの意味だよ。今のエーデル、完全に純粋な”魔族”だよ。だから普通の魔族みたいに大人になったら、若い姿のままで長生きするよ。」
「彼女がそうなってしまった原因は間違いなくヨアヒム・ギュンターの話にあったように彼女がヨアヒム・ギュンターに”人体実験”をされた事だと思われます……」
「そ、そんな……ッ!?」
「部長……」
「下衆が……ッ!」
「許せん……ッ!」
「…………ッ!それでエーデルを人間に戻す方法は!?」
エヴリーヌとルイーズの話を聞いたセレーネは悲痛そうな表情をし、フィーは辛そうな表情をし、ユーシスとラウラは怒りの表情をし、唇を噛みしめたサラ教官はプリネ達に尋ねた。
「……エーデル先輩には大変気の毒な話ですが……純粋な魔族と化した者を人間にする方法はありません。例え神々でも、魔族を人間にするような”奇蹟”は起こせません。その逆――――人間が魔族化する方法はいくつかあるのですが…………」
「そ、そんな………それじゃあエーデルさんは…………」
プリネの説明を聞いたエリスは悲痛そうな表情をし
「えっと……私は私が魔族になった事を受け入れたから、みんなは気にしなくていいわよ?こうして命が助かって正気を取り戻したのもみんなリィン君のお蔭よ。」
「え……兄様のお蔭、ですか?」
エーデルの答えを聞いたエリゼは不思議そうな表情をした。
「うん。えっとね…………今の私、リィン君の”使い魔”なの。だからそのお蔭で今こうして正気を保った状態でいられるの。」
「エ、エーデル先輩!」
そしてエーデルの答えを聞いたリィンが慌てたその時、空気が凍りついた!
「えっと…………今、エーデル先輩の口からとんでもない言葉が聞こえたよね……?」
「エーデル先輩がリィンの”使い魔”になったと言っていたが……」
我に返ったエリオットは表情を引き攣らせ、ガイウスは困惑の表情をし
「エーデル先輩を助けるどさくさに紛れて使い魔契約までしていたのですか…………」
「何故後の事を考えずに使い魔契約までしたのですか……助けるだけでしたら、使い魔契約までする必要はないでしょう……」
「うふふ、何だか面白い展開になってきたわね♪」
「やれやれ……さすがに今回ばかりは、色々と不味いのではないか?」
「そうですわよね……特に彼女のご両親が今の彼女の状況を知ればどういう反応をするのやら。」
「大切な娘が魔族になった上、知らない男性の使い魔になったなんて事を知ったら、卒倒するかもしれませんね……しかも彼女を助ける為とは言え、女性として最も大切なものも既に奪われているでしょうし……」
プリネとツーヤはそれぞれ疲れた表情で頭を抱え込み、レンはからかいの表情になり、呆れた表情で呟いたレーヴェの言葉に続くようにシグルーンとルイーズは苦笑しながら呟いた。
「えっと……エーデル先輩、先輩がリィンさんの使い魔になったというのは本当なのでしょうか?」
「うん。今その証拠を見せるね。」
表情を引き攣らせているエマに問いかけられたエーデルはその場で集中して光の玉になり、リィンの身体の中に戻った。
「…………………」
「な、なななななななっ!?」
「ほええええええええ~~~~ッ!?エーデルがベルフェゴール達みたいに、リィンの身体の中に戻った~!?」
「そ、それじゃあ本当にエーデル部長がお兄様の使い魔に……」
「…………幾ら巨乳好きだからって、ほとんど接点のないエーデル部長まで使い魔にするなんて節操がなさすぎだと思うんだけど。」
「全く持ってその通りね。」
「ちょっ!?何でそうなるんだよ!?誤解を招くような事は言わないでくれ!今回ばかりは本当に仕方なかったんだ!」
それを見ていたサラ教官は口をパクパクさせ、マキアスとミリアムは混乱のあまり声をあげ、セレーネは呆然とし、ジト目で見つめて来るフィーと呆れた表情で呟いたセリーヌの言葉を聞いたリィンは慌てた様子で反論したが
「リ・ィ・ン~~~~??」
「エーデルさんが兄様の使い魔になったという事は、やっぱり私達が想像していた”方法”でエーデルさんを助けたのですね~~~??」
「エーデルさんを助けた”方法”に関しましては見逃しますけど、さすがに使い魔にした事は見逃せないのですが~~~??」
「………………」
「ヒィッ!?ガタガタブルブル……!」
(ヒッ!?リィン~、こんな時でもアリサ達を怖くするなんて、何考えているんだよ~!?)
「フフッ、将来はある意味リウイ陛下やヴァイス殿を超える大物になるかもしれませんね。」
「そうね♪この調子だと冗談抜きでパパやヴァイスお兄さんが射止めた女性達の数を超えるかもしれないし♪」
それぞれ膨大な威圧を纏って微笑み始めたアリサとエリス、エリゼに微笑まれた事によって表情を青褪めさせて身体を震わせ、その余波を受けたエヴリーヌとミルモは恐怖の表情で身体を震わせ、苦笑しながら呟いたリアンヌの言葉にレンはからかいの表情で同意した。
「……!なるほどな………………みんな、君達が混乱する気持ちはわかるが一端落ち着くんだ。エーデル君が言っていた話――――彼女がリィン君の使い魔になる事で正気を保っていられる理由を私が説明しよう――――」
一方理由を察したパントは混乱し始めている場を諌めた後、エーデルが使い魔になる必要があった理由を説明した。
「リィンさんの使い魔になる事でエーデル先輩が魔族と化した事で身についてしまった”魔の衝動”を抑え込む為ですか………」
「……なるほどね。道理で暴走状態だった彼女をこんな短時間で正気にさせられた訳よ。」
「今の彼女にとって、”主”であるリィン君は魔族と化した事で不安定になっている彼女の暴走する力を抑える制御装置でもあるから、今すぐにはリィン君との使い魔契約の破棄はしない方がいいでしょうね。」
事情を聞き終えたプリネは複雑そうな表情をし、セリーヌは真剣な表情で考え込み、クロチルダは心配そうな表情でエーデルを見つめていた。
「……だが幾らエーデル先輩が正気を保ち続ける為とは言え、このままエーデル先輩がリィンの使い魔であり続ける事は色々な意味で不味いだろう。特に結婚に関してとなると間違いなく支障が出てしまうだろうしな………」
「貴族の子女は家を存続させる為に婿を取るか、もしくは他の貴族に嫁いでその貴族を存続させる為に子孫を産むのが”義務”と言ってもおかしくないからな。」
「まあ、今回の内戦で貴族連合が負けたし、セドリック皇太子の様子を見る限りその貴族が存続できるかどうか微妙だけどね~。」
「ミ、ミリアムさん。」
「君な………確かにセドリック殿下は貴族達の特権を排除するべきだというお考えだけど、償いの期間も与えるべきとも仰っていたから、さすがに今すぐにエレボニアの貴族全てが滅ぶという訳ではないだろう……」
ラウラとユーシスは重々しい様子を纏って呟き、ミリアムが呟いた言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかき、マキアスは呆れた表情で指摘した。
「あ、私の結婚に関しては心配はいらないわ。リィン君が責任を取って私もリィン君のお嫁さんの一人にしてくれるって言ってくれたし。」
「「「何ですって!?」」」
「お、お兄様……さすがにこんな非常事態で増やすのは幾ら何でも非常識だと思うのですが……」
「……エーデル部長がリィンの使い魔になった話を聞いた時から、どうせそんな事になっているだろうと思っていたよ。」
「う”っ…………」
そしてエーデルの口から出た爆弾発言にアリサやエリゼ、エリスは声を上げ、セレーネは疲れた表情をし、フィーはジト目でリィンを見つめ、リィンは唸り声をあげて表情を引き攣らせていた。
「リ・ィ・ン~~~~??」
「「に・い・さ・ま~??」」
「フフッ……今回の件を解決して状況が落ち着いたらクレア大尉やトワ会長にも事情を説明して、みんなで”お説教”ですね。」
「……………………」
「ふふ、さすがはこの私をもハーレムの一員にしたリィン君ね♪リィン君は双界一の女殺しかもしれないわね♪」
「うふふ、そしてリィン様は後何人増やすおつもりなのでしょうね♪」
「そして増やす度にエリゼ達がどんどん怖くなっていくんだろうね……リィン、お願いだからこれからはエヴリーヌがいないところで新しい女を増やした事をエリゼ達に怒られてよ……!」
「この場合はもうこれ以上増やさない事を願うべきですよ、エヴリーヌお姉様……」
それぞれ膨大な威圧を纏って微笑むアリサとエリゼ、エリスとエマに見つめられたリィンは表情を青褪めさせて身体を震わせ、クロチルダとシャロンはからかいの表情でリィンを見つめ、身体を震わせながらリィンを見つめて呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたプリネは疲れた表情で指摘した。
「というかよくアンタは他人事のように、そんな事が言えるわよね……油断していたらアンタもその内リィンに落とされるのじゃないかしら?」
「しかもお前はラインフォルトに仕えているメイドだからな。シュバルツァー達の将来を考えるとお前とシュバルツァーの距離が縮まる事になるのだからその可能性は十分にあるだろうな。」
シャロンの様子を見たサラ教官は呆れた表情で指摘し、レーヴェは静かな笑みを浮かべてシャロンを見つめ
「お二人の仰る通り確かにわたくしにとっても他人事ではありませんね。ですがもしそんな事になればプリネ様がおられるレーヴェ様はともかく、サラ様は焦るべき立場だと思うのですが♪何せ教え子であるお嬢様達だけでなく、過去の出来事で複雑な思いを抱えている人物であるわたくしやクレア大尉にも先を越される事になるのですから♪」
「グッ……!?余計なお世話よ!それにあたしは婚期に焦るあまり年下で、しかもまだ学生のリィンで妥協したあの女と違って、相手は選び放題なんだからね!?」
困った表情をした後からかいの表情で反撃して来たシャロンの言葉に唸ったサラ教官は必死の様子で答えた。
「アハハ……今の言葉をクレア大尉が聞けば、間違いなく怒るだろうね……」
「それ以前にクレア大尉はそんな理由でリィンを将来の伴侶に選んでいないと思うが……」
「幾ら図星とは言え、大人気ないにも程があるぞ。」
「全くだな。というか実際シャロンさんの言っている通り、サラ教官は相手がいない事に焦るべき立場だろう。」
一方その様子を見守っていたエリオットとガイウスは苦笑し、ユーシスとマキアスは呆れた表情で呟いた。
「そこっ!聞こえているわよ!?」
するとその時サラ教官は怒りの表情で二人を睨んだ。
「え、えっと……エーデル部長は本当にお兄様でよかったのですか?幾ら貴族の子女としての”義務”を果たす為とは言え、ほとんど接点の無かったお兄様といきなり婚約するなんてエーデル部長には抵抗が無かったのでしょうか?」
そしてセレーネが困った表情でエーデルを見つめて問いかけた。
「心配してくれてありがとう、セレーネちゃん。でも貴族の結婚って言ったら、大概はお見合いで全く知らない人と結婚するのが普通でしょう?」
「それはそうですが……」
「私にも色々と考えがあって、リィン君と結婚する事にしたの。それにセレーネちゃん達みたいなとっても魅力的な女の子達がみんなで仲良くリィン君と結婚するんだから、それだけリィン君が凄く魅力的だという事でしょう?」
「え、えっと……確かにそうなのですが……」
「まあとんでもない欠点が一つあるけどね。」
「ええ。私達のような寛大な心を持つ女性でなければ、受け入れられない欠点ですね。」
「はい。エーデルさんがその欠点を受け入れられるのかどうかが唯一の心配ですね。」
「………………(な、何でそこで俺を見るんだ!?)」
エーデルの答えを聞いたセレーネが口ごもっている中、それぞれジト目で見つめて来たアリサやエリス、エリゼの視線に耐えられなかったリィンは大量の冷や汗をかいていた。
「フフッ……―――話を戻しますが、貴女はどうするつもりですか?先程の様子からしますと、既に我々が見つけた安全地帯に避難する事にあまり乗り気でない様子でしたが。」
「え……そうなんですか、部長?」
状況を微笑ましく見守った後表情を戻したリアンヌの言葉を聞いて呆けたセレーネはエーデルに尋ねた。
「うん。できれば私もみんなの力になりたいと思っているの。………望んでいなかったとはいえ、今の私はみんなのお手伝いをできるくらいの力を手に入れたし。私も帝国貴族の一人なんだから、祖国の危機を救う為に何かしたいの。」
「部長……」
「……そのお気持ちは私達も理解できますが……」
「俺達の助力をできる力を手に入れたと言っていたが……まさか”グノーシス”によって身についた魔族の力も既に使いこなせるのか?」
エーデルの説明を聞いたフィーは驚き、ラウラは複雑そうな表情をし、レーヴェは真剣な表情で尋ねた。
「はい。…………えいっ!」
レーヴェの言葉に頷いたエーデルはその場で集中した。するとエーデルは先程戦ったように銀髪赤眼になった!
「わわっ!?エ、エーデル先輩の髪と瞳の色が”力”を解放したリィンやレン姫みたいに……!」
「しかも纏っている”風”も凄まじいな……!」
変わり果てた姿のエーデルを見たエリオットとガイウスはそれぞれ驚き
「エーデル先輩、何かを壊したいとか傷つけたいという衝動はありませんよね?それと御自分で元の姿に戻る事はできますか?」
「うん、大丈夫。…………フウ。」
プリネに尋ねられたエーデルは答えた後元の姿に戻った。
「……どうやらリィンさんの使い魔になった事で、力を解放しても問題なく戦えるようになったようですわね。」
「うふふ、これで彼女もレンみたいに”グノーシス”の力を自由自在に扱える事がわかったんだから、よかったじゃない♪彼女も強力な戦力になるわよ?」
「た、確かに強力な戦力にはなりますけど……エーデル先輩はまだ病み上がりですし……」
「そっかな~?様子を見る限り全然大丈夫そうだし、難しく考えないでボク達の戦力が更に上がった事に喜ぶべきだと思うんだけど~。」
エーデルの様子を見たシグルーンは静かな表情で呟き、レンの説明を聞いたマキアスは困惑の表情をし、ミリアムは首を傾げて呟き
「…………念の為に言っておくけど、これから起こる戦いは生死をかけた”実戦”よ。それはわかっているわよね?」
サラ教官は真剣な表情でエーデルを見つめて尋ねた。
「はい。私は帝国貴族の一人として……フィーちゃん達の先輩として……みんなと一緒に戦う所存です。」
「エーデル部長……」
「部長のあんな顔、初めてみた……」
「……わかったわ。でも決して無理はしない事。それだけは絶対に守りなさいよ?」
凛とした表情をしているエーデルをセレーネとフィーは驚きの表情で見つめ、サラ教官は静かな表情で頷いて念押しをした。
「はい。―――それじゃあ私もベルフェゴールさん達のようにリィン君の身体の中で休んでいるから、私の力が必要になったら呼んでね、リィン君。」
そしてエーデルはリィンの身体の中に戻り
「―――さてと。話もまとまった事だし、そろそろ探索を再開しようか。」
「わかりました。次の探索班のメンバーは―――――」
パントの提案に頷いたリィンは探索班を編成し直した。
その後ラウラ、ユーシス、マキアス、フィー、エヴリーヌ、サラ教官、シャロン、クロチルダ、エリス、レン、リアンヌを探索メンバーに編成し直したリィンは探索を再開した。
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