Ｂｌｕｅ　Ｒｏｓｅ

「その時にならないとね」
「このことはわからないんだね」
「そう思うわ」
「ううん、僕が男の人を好きになって」
「その人の子供を産むかもね」
「そしてお母さんになるんだね」
「そうなるかも知れないわ」
「信じられないよ」
　とても、という返事だった。
「そんなことは」
「そうよね、けれどね」
「僕が赤ちゃんを産む」
「そうなるのよ」
「わかったよ、このこともね」
　優花は姉の言葉に答えた。
「僕女の子になるから」
「そうなってね、これからのことは姉さんも考えていくから」
「うん」
「任せてね」
「そうさせてもらうね」
「優花で出来ないことでも」
「姉さんがなんだ」
「私がやるわ」
　こう言うのだった。
「だから任せてね」
「それじゃあ」
「これからのことも安心してね」
「お願いするわ」
　こう言うのだった、そしてだった。
　優花は姉に頼ることにしたままにした、優子もその優花に応えてだった。これからのことを考えていた。そのうえで。
　院長にだ、こう言ったのだった。
「弟の身体が本格的に、今以上に女性化すれば」
「その時はですね」
「もう学校にはいられないですね」
「そうですね」
　院長も優子のその言葉に同意して頷いた。
「そのことはその通りです」
「やはりそうですね」
「はい、そうなられた時はです」
　優花がというのだ。
「一つ考えがあります」
「そのお考えは」
「休学されてはどうでしょうか」
「休学ですか」
「はい」
　そうだというのだ。
「その間は一旦」
「そして女性化していく間は」
「何処か静かな場所で時を過ごされて」
「難を避けるべきですね」
「学校に通学されているままですと」
「それではですねね」
「どうしても人目についてしまいます」
　院長は優子に深く考える顔で述べた。
「そうなってしまいますね」
「はい、確かに」
「ですから目立ってきたと思ったら」
「すぐにですね」
「休学されてです」
「弟が完全に女の子になるまで、ですね」
「静かな場所で時を過ごされる方がいいかと」
　院長はこう優子に話した、自分の考えを。
「如何でしょうか」
「そうですね、しかし」
「しかし？」
「弟はその間何処に行けばいいでしょうか」
　優子が気にしているのはその場所のことだった。
「静かな場所といいましても」
「そこは心当たりがあります」
「院長先生に」
「八条グループの保養地があります」
「八条グループのですか」
「はい、八条グループの企業及び関連施設に務めている方ならば誰でも利用出来ますね」
「八条グループの施設なら」
　八条大学付属病院にしても同じである、優子が務めている。
「それなら私もそうですし」
「弟さんもですね」
「家族ですから」
　優子自身が答えた。