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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第63話

同日、12:45――――



それぞれが行動を開始している中、リベール王国の女王――――アリシア・フォン・アウスレーゼ女王は孫娘であり、自分の跡継ぎであるクローディア姫と共に昼食を取っていると扉がノックされた。



~リベール王国・グランセル城・女王宮~



「―――女王陛下、クローディア殿下!お食事中の所、申し訳ございません!早急に報告する事がある為、入室してもよろしいでしょうか?」

「え……」

「―――構いません。―――ヒルダさん。」

「はい。」

「失礼します。」

ノックの音に気付き、クローディア姫と共に昼食を中断したアリシア女王は女官長であるヒルダ夫人に視線を向け、ヒルダ夫人が扉を開けるとユリア准佐が入室した。

「それで……報告とは何でしょうか?」

「ハッ!ロレント郊外のメンフィル大使館のリウイ陛下より通信が来ており、早急に女王陛下に知らせたい事がある為陛下との通信を求めておられます!」

「リ、リウイ陛下がですか!?」

「……わかりました。すぐに向かいます。クローディアもついてきなさい。」

「は、はい!」

ユリア准佐の報告を聞いたクローディア姫が驚いている中、尋常ではない事が起こった事をすぐに察したアリシア女王はリウイとの通信をする事をすぐに決め、席を立った後画面端末がある部屋にクローディア姫と共に向かい、リウイとの通信を開始した。



~通信室~



「お待たせして申し訳ございません。」

「こちらこそ食事時に突然の通信をしてしまい申し訳ない。―――だが、リベールにとって非常事態の為早急に知らせるべき事だと思い、こうして連絡をさせてもらった。」

「え……メ、メンフィルではなくリベールにとっての非常事態ですか……?」

「……一体どのような内容なのでしょうか?」

予想外のリウイの要件にクローディア姫が戸惑っている中、アリシア女王は真剣な表情で尋ねた。

「時間が惜しいので単刀直入に言わせてもらう。エレボニア帝国の”貴族連合軍”が数時間以内にリベールとの国境―――”ハーケン門”に進軍し、リベールに侵攻する可能性がある。」

「ええっ!?」

「なっ!?エ、エレボニア帝国がリベールに侵攻!?一体何故エレボニアがリベールに侵攻するのですか!?”百日戦役”以来リベールとエレボニアに外交問題等発展した事はない上、今回の内戦にも一切介入していないのに何故……!?」

驚愕の事実にクローディア姫と共に驚いたユリア准佐は厳しい表情で声をあげ

「そ、それに……確か今のエレボニア帝国は内戦がようやく終結して、メンフィル・クロスベル連合との戦争も回避できたばかりなのに何故リベールに……」

クローディア姫は不安そうな表情で呟いた。



「……リウイ陛下。一体何故そのような事になったのか……そしてそのような情報をどこで手に入れたのか詳細な説明をして頂きたいのですが。」

「あ、あの、リウイ陛下。先程”貴族連合軍”と仰いましたが……もしかしてユミル襲撃の件のようにエレボニア皇家や政府の判断ではなく、”貴族派”の独断によるものなのでしょうか……?」

一方アリシア女王は冷静な様子でリウイを見つめて問いかけ、アリシア女王に続くようにクローディア姫は不安そうな表情で問いかけた。

「そちらが疑問に思っている事については現在そちらに向かっているオリヴァルト皇子を含めたエレボニア皇家の者達が説明をする事になっている為、詳しい話はオリヴァルト皇子達に聞くといい。」

「なっ!?」

「ええっ!?オ、オリヴァルト殿下達が王都(グランセル)に向かっているのですか!?」

「…………リウイ陛下。オリヴァルト殿下を含めたエレボニア皇家の方達と仰いましたが……オリヴァルト殿下以外にエレボニア皇家のどなたがグランセルに向かわれているのでしょうか?」

リウイの話にユリア准佐とクローディア姫が驚いている中、一瞬の間呆けた表情をしていたアリシア女王は気を取り直し、真剣な表情で尋ねた。



「オリヴァルト皇子以外にはセドリック皇太子とアルフィン皇女。そしてオリヴァルト皇子達の護衛であるヴィクター・S・アルゼイド子爵と正遊撃士トヴァル・ランドナーが向かっている。」

「ええっ!?オリヴァルト殿下に加えてセドリック殿下とアルフィン殿下までこちらに向かっているのですか……!?」

「しかも遊撃士に加えてアルゼイド子爵と言えばかの”光の剣匠”ではありませんか……!」

「…………それで殿下達はいつごろグランセルに到着―――いえ、一体どのような手段でグランセルに向かわれているのでしょうか?」

予想外の人物達がグランセルに向かっている事に二人が驚いている中、アリシア女王は落ち着いた様子で問いかけた。

「オリヴァルト皇子達はメンフィルが用意した竜騎士達でグランセルに向かっている。先程ロレントの大使館から飛び立ったから恐らく後30分以内にはグランセルの正門に到着するだろう。」

「あ、後30分以内にオリヴァルト殿下達がグランセルに到着するのですか!?」

「そ、それ以前に……どうしてエレボニアと戦争状態に陥るまで国家間の関係が悪化したメンフィルがわざわざオリヴァルト殿下達の為に竜騎士を用意したのでしょうか?」

「――――今はそれよりもエレボニアの件です。色々と伺いたい事はありますが、エレボニア皇家の方達による突然の訪問の対処やエレボニア方面から侵攻して来る貴族連合軍の対処をする必要がある為一端失礼いたします。」

「ああ。もし、メンフィルの救援が必要ならばいつでも連絡してくれ。メンフィルが無条件でリベールを救援する件は後一回残っているしな。―――それでは失礼する。」

「大至急エレボニア皇家の方達を迎え入れる準備をして下さい!それとカシウスさんとモルガン将軍にも今の話を伝え、帝国方面の警戒を強める事と、万が一貴族連合軍がリベールに侵攻した際迎撃できるようにハーケン門に軍を集結させるようにと伝えてください!」

リウイとの通信を終えたアリシア女王はユリア准佐に指示をした。

「ハッ!!」

「……一体エレボニアで何が起こっているのでしょう……?」

指示をされたユリア准佐が退室するとクローディア姫は不安そうな表情で呟いたが

「……オリヴァルト殿下達が今回の件についての説明の為にこちらに向かっているという事は恐らくユミルの件同様”貴族派”の暴走によるものでしょうね。―――とにかく今はオリヴァルト殿下達からどんな話が聞かされてもいいように覚悟を決めておきなさい、クローディア。」

「はい……!」

アリシア女王の言葉に力強く頷いた。



同日、13:10――――



数十分後、オリヴァルト皇子達を乗せた竜騎士達やエクリアが次々と飛竜を地上に着地させると竜騎士達の背後にいたオリヴァルト皇子達やエクリアの背後にいたアルフィン皇女がそれぞれ飛竜から降りた。



~王都グランセル・正門前~



「本当に城までお送りしなくてよかったのですか?」

「ああ。さすがにそんな事をすればリベールに無用な混乱を陥らせてしまうかもしれないしね。王都(グランセル)まで送って貰えただけでも本当にありがたかったよ。まあ欲を言えば、アルフィンには天馬(ペガサス)を乗せてもらいたかったけどね♪伝説の存在である天馬(ペガサス)に乗ったアルフィンはさぞ素晴らしい絵になっただろうし♪」

エクリアの問いかけに対し、オリヴァルト皇子は静かな表情で答えた後いつも浮かべているような親しみのある笑みを浮かべた。

「うふふ、ちなみにわたくしは皆さんと活動をしていた時にシグルーン中将の愛馬であるペガサスに乗せて貰った事がありますわ♪」

「ア、アルフィン。」

「ハハ……ちゃっかりしてますね。」

微笑みながら答えたアルフィン皇女の答えを聞いたセドリック皇太子は冷や汗をかき、トヴァルは苦笑していた。

「フフ…………―――それでは私達はこれで失礼します。」

その様子を微笑ましそうに見守っていたエクリアは竜騎士達と共に飛竜を飛び上がらせ、グランセルから去って行った。



「さてと……ここからならばグランセル城まで徒歩でも十分間に合える距離だが、できる限り早く到着する為に走って向かうよ。」

「「はい……!」」

オリヴァルト皇子の言葉にアルフィン皇女とセドリック皇太子はそれぞれ頷き

「!いや……どうやらその必要もなくなったようです。」

ある事に気付いたアルゼイド子爵がグランセルの正門に視線を向けると正門から一台のリムジンが現れ、オリヴァルト皇子達の前で停止し、停止したリムジンからユリア准佐が現れた。

「おや、君は……」

「―――お久しぶりです、オリヴァルト殿下。事情はリウイ陛下よりある程度知らされております。城までお送りしますのでどうぞお乗りください。」

ユリア准佐の登場にオリヴァルト皇子が目を丸くしている中、ユリア准佐は静かな笑みを浮かべて会釈をした後後部座席の扉を開けて乗車するように促した。その後リムジンでグランセル城まで送ってもらったオリヴァルト皇子達はアリシア女王達との会談を始めた。



一方その頃貴族連合軍がリベール侵攻をする可能性があるとの情報を伝えられたレイストン要塞でもハーケン門に援軍を送る為に既に動き始めていた。


同日、13:20――――



~レイストン要塞~



オリヴァルト皇子達がアリシア女王達との会談を始めたその頃、カシウスは副官であるシード・マクシミリアン大佐と共に次々と離陸し、ハーケン門に向かう攻撃艇を見送っていた。

「…………それにしても貴族連合の行動が理解できませんね。確かリシャールさん達からの情報によると貴族連合はもはや風前の灯火の状況だというのに、何故リベールに侵攻しようとするのでしょう……?」

「……さてな。正規軍やメンフィル・クロスベル連合軍には敵わないが、リベール軍なら勝てると判断し、敗北寸前の自分達の状況を立て直す為に侵攻したのかもしれんな。”総参謀”のアルバレア公爵家の長男はメンフィルに処刑され、”黄金の羅刹”と”黒旋風”もそれぞれ降伏した事で貴族連合の有能な将を全て失った今の貴族連合軍の中で判断ができ、指示ができる者はカイエン公しか残っていないしな。」

シード大佐の言葉を聞いたカシウスは目を伏せて自身の推測を答えた。

「まさか我らが”機甲兵”に対する対策を持っていないとでも思っているのでしょうか?そもそも我らリベール軍の主力は空軍なのですから、対戦車用に作られた機甲兵では空軍を圧倒できない事等子供でも分かる事ですが……」

「……フム…………(後は考えられるとすれば、メンフィルからの情報――――”D∴G教団”の亡霊が関係しているだろう―――いや、確実に関係しているな。クロスベル襲撃事件の時の状況と余りにも似過ぎている。となると目的は”教団”の御子である”零の至宝”を手にする為にリベールとエレボニアの国際問題の発展を盾にしようとしている……と言った所か。)そう言えば旧カルバード共和国に出向していたリシャール達は既にリベールに戻ってきているのだったな?」

既に今回の事件の真相を予測し終えたカシウスは対策を取る為にシード大佐に質問をした。

「?はい、昨日の夕方頃に戻って来たとの事ですが…………!まさか……!?」

カシウスの突然の質問に首を傾げたシード大佐だったが、ある事に気付くと驚きの表情をした。

「帰国して早々に悪いがリベールと……そしてエレボニアの為にもリシャール達にも働いてもらわないとな。―――直ちに”R&Aリサーチ”に繋げてくれ。」

「ハッ!」

カシウスの指示に答えたシード大佐は急いでその場から離れ

「”空の女神(エイドス)”よ……もし、今もクロスベルに……いや、この混迷に満ちたゼムリア大陸のどこかにいるのであれば、我らにどうかお導きを。」

カシウスは空を見上げて祈りを捧げた後シード大佐の後を追って行った。 
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