英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第62話
~オーロックス峡谷~
「ハア……何故俺の周りには一癖も二癖もある奴等ばかり集まるのだ。」
「え、えっと……皆さん、”戦”になれば心強い存在になるのですから、多少の癖は仕方ないかと思います。それよりも今は”D∴G教団”の動きを気にするべきかと。」
「…………ああ。まさかキーア欲しさにリベールまで巻き込むとはな……」
呆れた表情で溜息を吐いたリウイにペテレーネは苦笑しながら慰めの言葉を送った後気を取り直して指摘し、指摘されたリウイは真剣な表情で考え込んだ。するとその時オリヴァルト皇子達が前に出てリウイを見つめて頭を下げた。
「……お久しぶりです、リウイ陛下。謝罪が遅くなりましたが、メンフィル帝国をエレボニアの内戦に巻き込んでしまった事をこの場でお詫びを申し上げさせて下さい。エレボニアとメンフィルの国交を回復させる為にプリネ姫を始めとした多くのメンフィルの有望な若者たちの貴重な時間を頂いて留学させて頂いたにも関わらず、このような結果となってしまい、本当に申し訳ございませんでした……」
「僕達エレボニア皇家の不甲斐なさに内戦と関係ない貴国まで巻き込んでしまい、本当に申し訳ございません……!」
「申し訳ございませんでした……!わたくしがユミルに滞在しなければ、あのような出来事は起こらなかったというのに……!」
「―――申し訳ございません!父が雇った猟兵達によるユミル襲撃を知った時、父を処刑してでも父の身柄と共にメンフィル帝国に自首していれば、メンフィル帝国の怒りがここまで膨れ上がる事もありませんでした……!」
「殿下……」
「姫様……」
「ユーシス……」
それぞれリウイに謝罪するエレボニア皇族達やユーシスをラウラやエリス、ガイウスは辛そうな表情で見つめていた。
「全員、頭をあげろ。”戦争回避条約”で設けられている猶予期間内に内戦を終結させた時点でメンフィル帝国はエレボニア帝国侵攻を中止し、残りの条約内容をエレボニアが実行する事で和解する事になっている。今更過去の出来事を蒸し返すつもりはない。」
オリヴァルト皇子達の謝罪に対して静かな表情で答えたリウイは懐から通信機を取り出し、通信を開始した。
「―――俺だ。エクリア、少々事情があってエレボニアの皇族達をグランセルに送らせる事になった。大至急ロレント大使館の守りについている竜騎士達の中から数名招集し、いつでも飛竜で飛びたてるように準備をしておいてくれ。必要な竜騎士達の人数はお前を含めて……4……いや、5人だ。」
「え…………」
「リベールの王都に向かう竜騎士って事は……!」
リウイの通信内容を聞いていたアルフィン皇女は呆け、アリサは明るい表情をし
「エレボニア皇族達と護衛、後は念の為に遊撃士協会の保証も必要と思いギルド関係者をグランセルまで送らせる竜騎士達を用意した。バリアハートの転移門まではペテレーネの転移魔術で送ってやる。大使館にはエクリアを含めたグランセルまで向かう竜騎士達を用意させた。どれだけ遅く見積もっても今から1時間以内には王都に着くはずだ。それとアリシア女王にもエレボニア皇族達がアリシア女王達に今回の事態に関しての緊急の報告と説明をする為にメンフィルが用意した竜騎士達でグランセルに向かっていると伝えておいてやる。」
「あ、ありがとうございます……!」
「メンフィル帝国――いえ、リウイ陛下の寛大なお心遣いに心から感謝いたします……!」
「内戦の件でメンフィル帝国に多大な迷惑をかけたというのに、本当にありがとうございます……!」
「わざわざ第三者である俺の分まで用意して頂き、本当にありがとうございます……!」
早急にリベールの王都、グランセルまで行く手段を用意したリウイにセドリック皇太子を始めとしたエレボニア皇族達やトヴァルはそれぞれ明るい表情で頭を下げた。
「礼は不要だ。戦争を望まぬアリシア女王――――リベール王国と盟を結んでいる身としての義務を果たしたまでだ。」
「もう、お父様ったら…………」
「うふふ、パパったらレーヴェみたいに素直じゃないわね♪」
「レ、レンさん。」
「やれやれ。何故そこで俺まで出て来るのか、小一時間程問い詰めたいな。」
リウイの答えを聞いたプリネは苦笑し、からかいの表情で呟いたレンの言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかき、レーヴェは呆れた表情で呟いた。
「先程リウイ陛下が殿下達の護衛の分の竜騎士も用意したと仰っていたが殿下達の護衛を務める人物はやはり子爵閣下だろうな。」
「というかこの中で殿下達の護衛を一人で受け持つ事ができる人は子爵閣下以外適任者はいないものね。」
ガイウスの推測にエリオットは苦笑しながら頷き
「二人の言う通り、護衛は子爵閣下に務めてもらおうと思っているのだが……お願いしてもいいだろうか?」
「私でよろしければ、殿下達の護衛の任、喜んであたらせて頂きます。」
「ふふっ、アルゼイドのおじさまが護衛なら安心ですわね♪」
オリヴァルト皇子の言葉にアルゼイド子爵は会釈をして答え、アルフィン皇女は微笑みながらアルゼイド子爵を見つめた。
「後はハーケン門方面への援軍とジュライ特区への救援か……殿下、”パンダグリュエル”を含めた多くの戦艦を保有するメンフィル帝国でしたら残りの二つについても解決できる上リウイ陛下でしたらメンフィル全軍の総指揮権をお持ちな為、当然戦艦への指示も可能です。いかがなさいますか?」
パントは静かな表情で考え込んだ後セドリック皇太子に視線を向けて問いかけ
「……リウイ陛下。陛下もご存知の通り3時間後ヨアヒム・ギュンターによって貴族連合の残党がリベールに侵攻する事になっており、更にヨアヒムに操られた貴族連合の残党や悪魔達によってジュライ特区は占領されており、ジュライの民達に未曾有の危機が訪れています。内戦の件で散々メンフィル帝国に迷惑をかけたにも関わらず、こんな頼みをするなんて厚かましいかと思われますが、これ以上この西ゼムリアに戦乱を起こさない為……そしてジュライの民達を救う為にどうかお力添えをお願いします……!」
「お願いします……!」
「今のエレボニアにとって頼れるのはリウイ陛下だけなのです。先程セドリックが言っていたように、”代償”も後で必ずお支払する所存ですので、どうか御力添えをお願いします……!」
そしてセドリック皇太子がリウイを見つめて頭を下げると、アルフィン皇女とオリヴァルト皇子も続くように頭を下げた。
「………………”D∴G教団”によって窮地に陥ったエレボニアにメンフィルが力添えし、その事によってエレボニアはリベールとの戦争を回避し、”D∴G教団”に占領されたジュライの民達を救えた事を公表しろ。―――”パンダグリュエル”を始めとしたメンフィルが保有する大型の飛行戦艦で正規軍をハーケン門方面、ジュライ特区へ移送する”代償”はそれで構わん。」
「え…………」
「本当にそのような容易な条件でよろしいのでしょうか?」
「正直、メンフィル帝国にとっての”利”は無いに等しい”代償”になりますわよね……?」
リウイが出した余りにも簡単な条件にセドリック皇太子は呆け、クレア大尉は信じられない表情で尋ね、セレーネは不思議そうな表情で呟き
「うっそだ~!戦争回避条約でエレボニアから滅茶苦茶搾り取ったメンフィルがそんな簡単な条件を出すなんて、ありえないよ~!」
「同感。本当は何が狙いなの?」
「口を謹んで下さい、ミリアムちゃん!我々の教育が行き届いてないせいで、陛下に対するご無礼をしてしまい、申し訳ございません……!」
「フィーちゃんもです!二人はまだ幼い為、どうか陛下に対する失言をお許しください……!」
「このガキ共は……」
「頼むから、君達は黙っていてくれ……」
信じられない表情でリウイを見つめて声を上げたミリアムとジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたクレア大尉とエマは慌てた様子で指摘した後リウイを見つめて頭を下げ、ユーシスは顔に青筋を立ててミリアムとフィーを睨み、マキアスは疲れた表情で指摘した。
「ふう……この二人を見ていて度々思うが目上の者に対する礼儀も弁えていない事も担任教官による悪影響だろうな……」
「……言ってくれますね。さすがは上の命令がなければ何もできない頭の固い軍人の考えですね?」
「む……」
「二人ともお願いしますから今は喧嘩をしないで下さい……」
互いに睨みあうナイトハルト少佐とサラ教官を見たリィンは呆れた表情で指摘し
「アハハ……さっきまでの緊迫した状況が完全に吹き飛んだよね。」
「フフッ、ある意味大物ね。」
「うふふ、どんな状況でも自分達のペースを崩さない所もさすがは皆様ですわね♪」
エリオットとクロチルダは苦笑しながら呟き、シャロンはからかいの表情で呟いた。
「ハア…………―――先程のセレーネの疑問についてだが、メンフィルにとっても一応”利”はある。」
「え……それは一体どういう事なのでしょうか?」
周囲の様子を見て呆れた表情で溜息を吐いた後に答えたリウイの話の意味がわからなかったセレーネは不思議そうな表情で尋ねた。
「―――窮地に陥ったエレボニアに救いの手を差し伸べた事で、ゼムリア大陸の国家からすれば数々の暴虐を行ったメンフィルは寛大な心も持っているという事を世間に印象付ける事ができ、結果的にはメンフィルとの友好を求める国家を増やす可能性を高める事ができる……という事でしょうか、陛下。」
「その通りだ。さすがはカシウスやエクリアに鍛えられているだけあって、思慮深くなっているな。お転婆娘の専属侍女長としても勿体ないくらいだな。」
「リ、リウイ様。リフィア殿下が今の言葉を聞けば、怒ると思いますよ……?」
「なんだかんだ言ってもリフィアはエリゼの事を気に入ってるものね。」
「それにエリゼさんでければ、リフィア殿下のお目付け役は務められませんものね。」
「フフ、そうですわね。エリゼはリフィア殿下にとって………そして未来のメンフィルにとってなくてはならない存在ですもの。」
エリゼの推測を聞いたリウイは感心した様子でエリゼを見つめ、リウイの言葉を聞いたペテレーネは冷や汗をかき、エヴリーヌとルイーズの意見にシグルーンは苦笑しながら答えた後静かな笑みを浮かべた。
「エ、エリゼ……」
「フフ、さすがはエリゼさんね。」
「もう専属侍女長としてはエリゼさんに抜かれているような気がしてきました……」
「うふふ、エリゼお姉さんの縁者のリィンお兄さんとエリスお姉さんの成長も期待しているわね♪」
リウイ達に自分の予想以上の高評価を得ているエリゼをリィンは冷や汗をかいて見つめ、プリネは微笑み、ツーヤは疲れた表情で呟き、レンはからかいの表情でリィンとエリスを見つめた。
「はい。レン姫のご期待に添えるように精進するつもりです。」
「俺もメンフィル帝国は当然として、陛下達から信頼を寄せられているエリゼに誇ってもらえるような男になる為に精進するつもりです。」
「兄様……エリス……」
レンの言葉にそれぞれ答えたエリスとリィンをエリゼは嬉しそうな表情で見つめ
「フフッ、陛下のお優しい所も相変わらずですね。」
「…………例え戦争をした相手であろうと国際的にも問題になった犯罪者によって窮地に陥った国の弱味を付け込むような薄汚い真似等誇り高き”闇夜の眷属”のする事ではない上、メンフィルが掲げる理想が遠のくと判断しただけだ。」
リアンヌに微笑まれたリウイは静かな表情で答えた。
こうして……メンフィル帝国の協力を取り付ける事ができたエレボニアはヨアヒムによって引き起こされた数々の問題解決に向けて行動を開始した。
オリヴァルト皇子を始めとしたエレボニア皇族達と護衛のアルゼイド子爵、仲介役のトヴァルはバリアハートの転移門でロレント郊外のメンフィル大使館に転移した後エクリア達が操る飛竜たちによってグランセルまで送られ、アリシア女王達に説明を行う事になり……ガレリア要塞跡に駐屯しているクレイグ中将率いる”第四機甲師団”は”グロリアス”によってエレボニアとリベールの国境であるハーケン門近郊まで移送される事になり……ナイトハルト少佐率いる”第四機甲師団”の部隊は”パンダグリュエル”によってジュライ特区近郊まで移送される事になった。
そして――――リィン達”Ⅶ組”を含めた”トールズ士官学院”とクレア大尉率いる”鉄道憲兵隊”はカレイジャスに乗船し、正規軍より先行してジュライ特区の救援を行う事になり……リィン達”Ⅶ組”とエリゼやシャロンを始めとした”協力者”達はジュライ特区郊外にあるヨアヒム・ギュンターが潜伏している”ジュライロッジ”に突入し、ヨアヒムの討伐並びにヨアヒムの元にいると思われる人質達の救出とカイエン公の拘束を行う事になり……リィン達を乗せたカレイジャスはヨアヒムの手によって占領されたジュライの市民達を救う為……そして真の意味で内戦を終結させ、再びゼムリア大陸を混迷に導こうとする”D∴G教団”を今度こそ滅ぼす為にジュライ特区に急行した……!
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