英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第56話
同日、10:40――――
~オーロックス峡谷~
オーロックス峡谷に急行したリィン達は迎撃ポイントを決め、カレイジャスを上空に待機させた状態で進軍して来る貴族連合の残党を待ち構えていると貴族連合の軍団が姿を現した。
「き、来た……!」
「なんて数……!」
「本当に私達だけで食い止められるのでしょうか……?」
「だが……これ以上犠牲者を出さない為にもオレ達がやるしかない。」
「……”機甲兵”や戦車の姿は見えないから、多分後方に控えているんだろうね。」
進軍して来る貴族連合の残党を見たエリオットやアリサ、エリスは不安そうな表情をし、ガイウスは決意の表情で呟き、フィーは警戒の表情で進軍して来る貴族連合軍を見つめていた。
「くふっ♪早速楽しめそうだね♪」
「うふふ、そうね♪さすがはロイドお兄さん達同様トラブルに愛されている”Ⅶ組”ね♪」
「僕達から望んでトラブルに巻き込まれている訳じゃないんですが……」
エヴリーヌとレンの言葉を聞いたマキアスは疲れた表情で指摘した。
「ま~、”殲滅天使”が言っている事も間違ってはいないよね~。実際今までの”特別実習”でもたくさんのトラブルがあったし♪」
「それを言わないで下さいよ、ミリアムさん……」
「そもそもそのトラブルの”原因”になった事もある貴様がそんな事を言える立場か?」
ミリアムの言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかき、ユーシスはジト目で指摘し
「フフ、IBCやクロスベル市での攻防を思い出すわね……」
「ええ。まあ、あたし達やセティさん達がかけつけてくるまで孤立無援状態だったロイドさん達よりはマシな状況だと思いますが……」
懐かしそうな表情をしているプリネの言葉にツーヤは苦笑しながら答えた。
「それにしても本当によかったのかしら?”鋼の聖女”やメンフィルの手練れの将達をセドリック皇太子達の護衛に回して。こういう時こそ”鋼の聖女”達の出番だと思うのだけど。」
「ああ。ユミルの時のように俺達が貴族連合軍と戦っている間に殿下達が誘拐される可能性も考えられるしな。もう2度と殿下達を誘拐されない為にも念には念を入れるべきだろう。」
「……確かにそうね。実際アルバレア公の暴走を利用して、アルフィン殿下とエリスを誘拐した例があるしねぇ?」
セリーヌの疑問に答えたリィンの推測に頷いて意味ありげな笑みを浮かべてクロチルダを見つめるサラ教官の言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「サ、サラ教官。姉さんもその事は反省していますし、蒸し返すのはさすがにどうかと思うのですが……」
「私の事は気にする必要はないわよ、エマ。エマも知っての通りエレボニアの遊撃士協会は2年前の襲撃事件で結社に煮え湯を飲まされているから、”紫電”が私を信用できないのも当然の反応よ。」
「やれやれ……当事者である本人やその家族達は”蒼の深淵”を許しているというのに、”部外者”であるにも関わらずまだその話を蒸し返すとは。2年前の件で”結社”に恨みを持っているとはいえ、さすがに既に加害者が謝罪し、その謝罪を被害者が受け入れた事で終わった話を”部外者”が蒸し返すのはどうかと思うがな。」
冷や汗をかいて指摘するエマに苦笑しながら答えるクロチルダの話の後にレーヴェは呆れた表情で呟き
「ああん!?その2年前の件を実行した猟兵達を鍛え上げた張本人がよくそんな事が言えるわよねぇ!?」
レーヴェを睨むサラ教官の様子を見たリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「全く……戦闘前だというのに、騒がしい所は相変わらずですわね。まあいいですわ。―――アルゼイドの娘と”灰の騎神”の乗り手!後”守護の剣聖”とNo.2!ちょうどいい機会ですわ……今まで貴女達から受けた屈辱を返す為にも、貴女達の倍以上の兵士達を制圧してやりますわ!貴女達はそれを見て、いかに自分が未熟であるかを思い知るといいですわ!」
リィン達の様子を呆れた表情で見守っていたデュバリィはラウラ、エリゼ、レーヴェを順番に見回して勝ち誇った笑みを浮かべて宣言したが
「え、えっと……」
「フム……元々私は自分自身をまだまだ未熟者だと思っているから、わざわざそんな事をしなくてもよいのだが……」
「―――私もラウラさん同様、エクリア様やカシウス様達と比べればまだまだ未熟者。”星見の塔”の時もカーリアン様の助力があったお蔭で、貴女に勝てたと思っていますので、わざわざデュバリィさん自身がそのような事をする必要はないと思うのですが……」
「ちょっ!?な、何でですの!?自分が未熟者と言われて悔しくないのですか!?」
それぞれ自身が予想した反応とは正反対の反応をするリィンとラウラ、エリゼの答えを聞くと慌て始めた。
「やれやれ……騒がしいという点では、”神速”も人の事は言えないと思うがな。」
「全く。同じ鉄機隊のメンバーとしてこっちが恥ずかしいわよ……」
「フフ、まあそれがデュバリィの良い所でもあるがな。」
デュバリィの様子を見たレーヴェとエンネアは呆れ、アイネスは苦笑していた。
「貴族連合の兵達に告ぎます!これより先はメンフィル軍が迎撃態勢を取って、貴方達を待ち構えています!”アルノール”の名に置いて命じます!直ちに停止し、武装解除して投降しなさい!」
「内戦は既に終結しました!貴方達がこれ以上戦って、無題に命を散らす必要はありません!投降してください!」
するとその時カレイジャスからアルフィン皇女とセドリック皇太子の宣言が聞こえたが、貴族連合軍は怯む事無く進軍し続けていた。
「……今までと違って、全然効果がないね。」
「あの様子では恐らくアルフィン殿下達の声すらも耳に入ってこないのでしょうね……」
「ええ……やっぱり連中は既に”グノーシス”によってヨアヒムの傀儡になってしまったようね。」
進軍し続けている貴族連合軍を見て呟いたフィーとセレーネの言葉に頷いたサラ教官は重々しい様子を纏って呟いた。
「姉さん……姉さんの”子守唄”で彼らの意識を奪って、無力化する事はできないかしら?」
「無理よ。彼らは”グノーシス”によって相当強い暗示をかけられているから、”子守唄”で彼らを無力化する為には更に強い暗示で上書きする必要がある上、数人程度ならともかくあんな大人数だと、効果はせいぜい数分程度だろうだからやっても無駄だと思うわ。」
「結局は”力づく”で無理矢理無力化させるしかないって訳ね……」
エマの推測にクロチルダは疲れた表情で答え、クロチルダの答えを聞いたセリーヌは溜息を吐いた。
「―――問題ない。元々そうなる事を想定していたし、学院のみんなもいるんだ。みんなで協力すれば絶対にしのげる……!」
「ええ!」
「兄様達が離れ離れになったあの時と違い、今度は私達もいます……!今回の防衛戦……絶対に成功させましょう……!」
リィンの言葉にアリサは力強く頷き、エリゼは決意の表情で呟いた。
「ふふ、ようやく私の努力の成果をアリサにも見せる時が来ましたわね!」
「ハーッハッハ!我が華麗なる槍に心の底から感服するがいい!」
「お二人とも、実戦は初めてなのですから、無理は禁物ですよ。」
リィン達と共に貴族連合軍を食い止める士官学院生達の一部―――フェリスとフェリスの兄、ヴィンセントがそれぞれ戦意を高めていると二人の実家―――”フロラルド伯爵家”に仕えているメイド、サリファは双銃を構えて二人に警告し
「フフ、ようやくトリスタを占領した”借り”を返す時が来たわね。カレイジャスの砲術士として待機しているアラン君や貴族連合に誘拐されたパトリック君の分も含めて、貴族連合に私達の怒りを叩きつけるわよ、ロギンス君。」
「ああ。俺達を離れ離れにした”元凶”の上、俺達の生意気な後輩を誘拐した連中なんだから、全員叩きのめす……!」
「やれやれ……どいつもこいつも少し見ない内に成長したな。」
「いや~、みんな本当に頼もしくなりましたね~。(それにしても……まさかこの私が”結社”の使い手達と共に戦う時が来るとは。これもまた女神のお導きなのでしょうか。)」
フェンシング部の部長である貴族上級生―――フリーデルの言葉に副部長を務めている平民上級生―――ロギンスは力強く頷いて貴族連合軍を睨んだ。そしてリィン達と共に貴族連合軍と戦う他の士官学院生達もそれぞれ自分達の決意を答えて、自分達自身の戦意を高め、その様子を見守っていたマカロフ教官は苦笑し、トマス教官は呑気な様子で生徒達を見つめた後目を細めてレーヴェやクロチルダ、そしてデュバリィ達”鉄機隊”を見回した。
「―――まずは進軍して来る貴族連合の兵士達の迎撃並びに制圧。そのまま正規軍が到着するまで貴族連合の兵士達を足止めする。女神の加護を!みんな、くれぐれも気を付けてくれ!」
「おおっ!!」
そしてリィンの号令にその場にいる全員は力強く頷き
「―――”トールズ士官学院”並びに”協力者”一同。これより貴族連合軍との戦闘を開始する。行くぞ、みんなっ!!」
「おおっ!!」
リィンの号令を合図にそれぞれ進軍して来る貴族連合軍へと向かい、貴族連合軍との戦闘を開始した!
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