英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第51話
~バリアハート・クロイツェン州統括領主の城館・執務室~
「昨日のクロスベルの拘置所を悪魔達に襲撃させた犯人が父さん達を助ける時に現れた”教団”の司祭――――ヨアヒム・ギュンターだって!?」
「なるほど。わたし達が探している人物って言っていたけど、”そっち”だったんだ。」
「しかもクロウがあの亡霊と手を組んだだと……?」
クロチルダの話を聞き終えたマキアスは信じられない表情で声をあげ、フィーは真剣な表情で呟き、ユーシスは目を細めて考え込み
「クロチルダさん、念の為に聞いておきたいのですけどクロウの過去にヨアヒム・ギュンター―――いや”D∴G教団”との接点は……」
「当然ないわ。第一”D∴G教団”は”結社”も危険視していた組織で、秘密裏に各国や”星杯騎士団”も見つけていなかった”教団”の”ロッジ”を潰していたくらいよ。もし私が知っていたら間違いなく手を切らせていたわ。」
リィンの質問にクロチルダは静かな表情で答えた。
「何故クロウさんは何の接点もない”D∴G教団”の司祭と手を組んだのでしょう……?」
「状況を考えれば脱獄の為に”取引”を持ちかけられて、その”取引”に応じたと思うのだけど……―――!ちょっと待って……ヨアヒムと手を組んだという事はまさかとは思うけどクロウは”グノーシス”を使ったのかしら!?」
不安そうな表情をしているエマの疑問を聞いたサラ教官は考え込んでいたがある事に気付き、血相を変えてクロチルダに尋ね
「ええ……あの身体能力や纏っている”瘴気”を見る限り間違いなく”グノーシス”を使っていたわ。そのせいで脱獄の際にクロウを制圧しようとしていた”キリングベア”も相当苦戦していたしね。」
クロチルダは疲れた表情で答えた。
「”キリングベア”ですって!?」
「え………何でガルシアがクロウを捕まえようとしていたの?」
「えっと……お二人はもしかしてその人の事を知っているのですか?」
クロチルダの話を聞いて血相を変えたサラ教官と目を丸くしているフィーの様子を見たエリスは不思議そうな表情で尋ねた。
「”キリングベア”ガルシア・ロッシはかつてクロスベルで暗躍していたマフィア―――”ルバーチェ”の若頭を務めていた者だ。」
「それと”キリングベア”は”西風の旅団”から”ルバーチェ”の会長――――マルコーニに引き抜かれた”元猟兵”なんです。」
「”西風の旅団”だって!?」
「じゃあその人もユミルで亡くなった猟兵達同様フィーの………」
レーヴェとプリネの話を聞いたマキアスは驚き、リィンはフィーに視線を向け
「……ん。ガルシアといた期間は短かったけど、わたしにとっては”家族”。ゼノ達みたいに可愛がってもらったし、色々と教えてもらった。」
「フィーちゃん………」
「……………………」
静かな表情で答えたフィーをエマは辛そうな表情で見つめ、エヴリーヌは何も言わず静かな表情で見つめていた。
「なおガルシア・ロッシを含めた”ルバーチェ”のメンバー全員はヨアヒム・ギュンターによるクロスベル襲撃事件解決の際に全員逮捕され、現在は拘置所で服役中の身です。」
「なに……?ならば何故服役中の者がクロウを捕えようとする事ができたのだ?」
エリゼの説明を聞いてある事に気付いたユーシスは眉を顰めて尋ねた。
「クロスベル警察の報告によると、元国防軍の兵士達が悪魔達と戦っている時に投げた手榴弾がたまたま”キリングベア”がいる部屋の扉の前に転がってそのまま爆発して”キリングベア”が出て来て、”ルバーチェ”の減刑の為に元国防軍の兵士達に加勢する事を決めたそうだから、多分拘置所の襲撃犯と思われる”C”をクロスベル警察に引き渡す為に”C”を捕えようと戦ったのだと思うわよ?」
「え……何故襲撃犯と思われるクロウさんを捕えたら”減刑”できるのですか?」
「―――犯罪者が何らかの形でその国に貢献すれば、”特例措置”として減刑される事があるのよ。実際リベールでクーデターを引き起こした”情報部”も”リベールの異変”の際にリベールの窮地にかけつけて劣勢だったリベール軍の救援や逃げ遅れた市民達の救助や避難活動を行った事によって、その事に感謝したアリシア女王が”恩赦”を出して”情報部”の罪を”減刑”して釈放した例があるわ。」
レンの推測を聞いて不思議そうな表情をしているエリスの疑問にサラ教官は静かな表情で答えた。
「ちなみにクロウと戦ったガルシアは無事なの?」
「ええ。クロウさんとの戦いで負った傷は既に治療されていて、今は拘置所で大人しく服役しているとの事です。」
「そう……」
ガルシアの安否を聞いたフィーはツーヤから安心できる答えを聞くと僅かに安堵の表情をした。
「それにしても脱獄の為に薬物にまで手を出した挙句歴史上最低最悪とまで言われた”D∴G教団”と手を組むなんて、あのバンダナ男もカイエン公のように見境がなくなっているわね。」
「セリーヌ!」
「………ッ………!一体何を考えてそんな事をしたんだ、クロウ……ッ!」
「「兄様………」」
セリーヌの話を聞いたエマは声をあげ、辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているリィンをエリゼとエリスはそれぞれ心配そうな表情で見つめていた。
「―――でも結果的にはそっちの方がよかったかもしれないわね。クロウがヨアヒム・ギュンターを手を組んだという事はあたし達―――エレボニアがクロウを拘束する事もできるわ。」
「あ……ッ!」
「フン、俺達の手であの亡霊を滅するついでに奴を叩きのめしてひっ捕らえれば、万事解決という事だな。」
サラ教官が呟いた言葉を聞いてある事に気付いたマキアスは声を上げ、ユーシスは鼻を鳴らして呟いた。
「そう簡単にクロウを制圧できると思わない方がいいわよ……クロウは”グノーシス”の力で”オルディーネ自身”になる事ができるのだから以前戦った時とは比べものにならないくらいの”力”を得ていると思うわよ。」
「え……クロウが”オルディーネ自身”になれるってどういう事ですか!?」
クロチルダの忠告に一瞬呆けたリィンは血相を変えて尋ねた。そしてクロチルダは自分が知る限りの”グノーシス”に秘められた効果やガルシアに追い詰められたクロウが”魔人化”で”オルディーネ”の姿になった事を説明した。
「何ですって!?じゃあクロウはあのヴァルド・ヴァレス同様”グノーシス”に適正している体質だって言うの!?」
「ええ……状況を考えればそうとしか思えないわ。」
サラ教官の推測にクロチルダは疲れた表情で頷き
「クロウがオルディーネ自身になるなんて、滅茶苦茶だ……!」
「まさか”魔人化”で”騎神”の姿になるなんて………」
「”グノーシス”―――話に聞いていた以上にとんでもない薬物を開発したようね、”教団”は……!」
マキアスとエマは信じられない表情をし、セリーヌは目を細めた。
「うふふ、そんなに警戒する必要はないと思うわよ?例えオルディーネが出て来ても今度はエリゼお姉さんとレン――――ヴァイスリッターとパテル=マテルもいるしね。ヴァリマール、ヴァイスリッター、パテル=マテルの三体がかりなら、幾らオルディーネと言えど、ひとたまりもないでしょう?」
「レンさん、それは……」
レンの指摘を聞いたツーヤは複雑そうな表情をし
「え……その言い方ですとレン姫も私達に協力してくれるような言い方ですけど……」
ある事に気付いたエリスは不思議そうな表情で尋ねた。
「申し出るのが遅れたけどレンも今後はリィンお兄さん達―――”紅き翼”の”協力者”になるからよろしくね♪」
「ハアッ!?」
「レ、レン姫まで僕達の”協力者”になるだって!?」
「意味不明だし。今度は何が狙いなの?」
レンの申し出を聞いたサラ教官とマキアスは驚き、フィーはジト目でレンを見つめて尋ねた。
「や~ね、そんなに警戒して♪”今回は”何の見返りも求めない純粋な”好意”よ♪」
「今までの事を考えたら、全然信じられないね。」
「フィ、フィーちゃん。レン姫に対して失礼ですよ……」
笑顔で答えるレンを警戒の表情で見つめるフィーをエマは諌め
「その……できればレン姫も俺達に協力してくれる”本当の理由”を知りたいのですが……」
リィンは複雑そうな表情でレンを見つめて尋ねた。
「フウ、メンフィルとの戦争の回避に成功したのに何でレンをそんなに警戒するのか理解できないわ。」
「まあ、暗躍や脅迫が得意のレンだから仕方ないよ、キャハッ♪」
溜息を吐いているレンにエヴリーヌは無邪気な笑顔を浮かべ、エヴリーヌの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「む~、レンやセオビットお姉様同様虐殺が得意のエヴリーヌお姉様に言われるなんて、ちょっとショック。」
そして頬を膨らませたレンの答えを聞いたリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
(な、なんてとんでもない物騒な会話だ……)
(さすがはメンフィルの”最凶の姉妹”と恐れられているだけあって、会話の内容も物騒過ぎね。)
(セ、セリーヌ!)
リィンは疲れた表情をし、呆れた表情をしているセリーヌの小声を聞いたエマは慌てた。
「レン。」
「は~い、わかっているわよ。―――レンがリィンお兄さん達―――”紅き翼”に協力する理由は”D∴G教団”に対する”報復”よ。」
静かな表情をしているプリネに視線を向けられたレンはリィン達に協力する理由を説明した。
「ほ、”報復”……ですか……?」
「……そう言えば以前プリネ達から軽く話には聞きましたがレン姫は幼い頃”D∴G教団”に……」
レンの口から出た物騒な言葉にエリスが不安そうな表情をしている中、ある事に気付いたユーシスは複雑そうな表情でレンを見つめた。
「そ。レンの人生を滅茶苦茶にした”D∴G教団”に関係している人達が生きていたら一人残らず”報い”を受けさせたいと思っているのよ。現存している”D∴G教団”の関係者――――ディーター・クロイスはヴァイスお兄さん達が生かす事を決めたし、マリアベル・クロイスはケビンお兄さんに”狩られた”からせめてこの世から抹消したと思っていたけど、亡霊になってまでしつこくこの世に留まっているヨアヒム・ギュンターを魂ごと滅しようと思っているのよ。」
「何ですって!?マリアベル・クロイスが”狩られた”ってどういう事よ!?」
レンの話を聞いたサラ教官は血相を変えて尋ね
「………話によりますと”碧の大樹”にて”星杯騎士団”によって”外法認定”されていたマリアベル・クロイスはロイドさん達に同行していた”星杯騎士”によって抹殺されたとの事です。」
エリゼは静かな表情で答えた。
「し、七耀教会の関係者が暗殺を実行するなんて……!」
「……七耀教会に”外法認定”される程、その人物は”墜ちていた”という事ね。」
「恐らく”歴史”をも変えかねないその所業が許せず、そのような事をしたのでしょうね……」
「……………………」
エリゼの話を聞いたマキアスは信じられない表情をし、セリーヌは静かな表情で呟き、エマは重々しい様子を纏って呟き、クロチルダは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「うふふ、レンもマリアベル・クロイスが殺される所を見たけど、七耀教会もあの”白面”ゲオルグ・ワイスマン同様マリアベル・クロイスの事を相当抹殺したいと思っていたみたいよ♪何せワイスマンの時同様”塩の杭”を使ったのだからね♪」
「”塩の杭”ですって!?」
「サ、サラ教官……?どうかしたのですか?」
レンの話を聞いて血相を変えたサラ教官が気になったマキアスは戸惑いの表情で尋ねた。
「――”塩の杭”とはかつて”ノーザンブリア旧大公国”に突如現れた”天災”クラスの”古代遺物”だ。それによってノーザンブリアの大地や民達の大半は塩と化し、ノーザンブリアは貧困と飢餓に苦しむ事になり、ノーザンブリアにとって全ての”元凶”に当たる。」
「あ…………」
「………………」
「サラ教官……」
レーヴェの説明を聞いたリィンとユーシスは複雑そうな表情で、エマは心配そうな表情でサラ教官を見つめ
「……アタシもその話は知っているわ。確か触れるだけで塩と化するとんでもなく危険な”古代遺物”だったわよね?」
「ふ、触れるだけで塩と化するって……!」
「余りにも恐ろしい古代遺物ですね……」
セリーヌの説明を聞いたマキアスは表情を引き攣らせ、エリスは不安そうな表情で呟いた。
「……皮肉な話よね。まさか”教授”の後釜であった彼女の抹殺の為に”教授”の時同様”塩の杭”が使われたなんて……」
「何ですって!?まさかマリアベル・クロイスは”結社”の”蛇の使徒”になる予定だったの!?」
重々しい様子を纏って呟いたクロチルダの言葉を聞いてある事に気付いたサラ教官は信じられない表情で尋ねた。
「ええ、本当なら”碧の大樹”の決着がついたら彼女は”結社”入りし、”教授”が”外法狩り”に抹殺された事で空席となった”蛇の使徒”の”第三柱”になる予定だったのよ。―――最も自分が殺される前に”結社”は既に崩壊しているなんて、彼女も私同様夢にも思わなかったでしょうね……」
「姉さん……」
疲れた表情で肩を落としているクロチルダをエマは心配そうな表情で見つめ
「……それで?色々と話は逸れてしまったけど、結局アンタは何で脱獄したバンダナ男の為にメンフィル軍に”投降”したのよ?」
セリーヌは複雑そうな表情でクロチルダを見つめて尋ねた。
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