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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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終章~暁の若獅子達~  外伝~それぞれの降伏~

12月31日、同日10:00――――



リィン達がトリスタを奪還した翌日、クレイグ中将率いる第四機甲師団とゼクス中将率いる第三機甲師団は帝都ヘイムダルを奪還する決戦に挑む為に隊列を組んで帝都に向かっていると帝都方面から貴族連合軍が次々と姿を現した。



~帝都近郊~



「―――来たか。クレイグ中将、この戦いで全てを終わらせるぞ!」

「うむ!我ら軍人が不甲斐なかったばかりに学生達にあのような事をさせてしまったのだ…………彼らの為にも今日で内戦を終結させる……!」

ゼクス中将の言葉に力強く頷いたクレイグ中将は指示をしようとしたが

「!?中将閣下!き、貴族連合軍が白旗を……!」

「何だとッ!?」

ナイトハルト少佐の言葉に驚いて貴族連合軍を見ると何と貴族連合軍は次々と”降伏”の意味を示す白旗を掲げ、機甲兵や戦車からは次々と貴族連合軍の兵士達が現れた後それぞれ手に持っていた武器をその場で捨てて両手を挙げた。



「なっ!?白旗―――――こ、”降伏”だと……!?」

「まさか我らを油断させる為の罠か!?」

「いかがなさいますか、中将閣下!」

貴族連合軍の予想外の行動に正規軍は混乱し

「総員待機!別命あるまで決して貴族連合を攻撃するな!――――まさか向こうから降伏をしてくるとは想定外だったな……」

「うむ…………―――貴族連合軍の統率者よ、出て来るがいい!早急に今現在行っている貴族連合の降伏について聞きたい事がある!」

正規軍に指示をした後に呟いたゼクス中将の言葉に頷いたクレイグ中将は貴族連合を見つめて声を上げた。

「―――了解した。」

するとその時ウォレス准将が貴族連合軍から現れ

「貴公は……!」

「”黒旋風”―――ウォレス・バルディアス准将!」

ウォレス准将の登場にクレイグ中将とナイトハルト少佐は目を見開いた。そしてゼクス中将達はウォレス准将と対峙した。



「……貴公が帝都防衛の貴族連合を率いている統率者なのか?」

「ああ。―――これより帝都防衛の任に当たっている貴族連合軍は正規軍―――いや、”エレボニア皇家”に降伏する。俺の身はどうなっても構わん。断頭台に上がる覚悟もできている。その代わり部下達の命は奪わないで欲しい。エレボニアを混乱させ、更にメンフィルを介入させた事によってエレボニアに衰退の道を歩ませた我々貴族連合が助命嘆願をする資格はないと理解しているが、どうかこの通りだ……!」

ゼクス中将に問いかけられたウォレス准将は頷いた後何とその場で土下座をして頭を下げた。

「なっ!?」

「……―――顔をあげられよ。セドリック殿下とアルフィン殿下からは降伏した貴族連合軍の兵士達に関しては命を奪うなと厳命されている。貴公らの処罰を決められるのはユーゲント陛下達―――”エレボニア皇家”の方々だが、幾ら皇家に歯向かい、内戦を引き起こした愚か者達とはいえ、慈悲深き陛下達ならば処刑の判決は出さないと思われるし、私達の方からもとりなしておく。」

ウォレス准将の行動にナイトハルト少佐が驚いている中、クレイグ中将は静かな表情で答えた。



「……心遣い、感謝する。」

「―――ウォレス准将。今まで正規軍やメンフィル領に対して何度も襲撃を続けた貴公らが何故今になって降伏をしたのだ?」

立ち上がって頭を深く下げたウォレス准将にゼクス中将は質問をした。

「……今更言っても信じては貰えないだろうが、メンフィル領に対する襲撃は俺は反対していた。内戦も終結させていないのに、迎撃態勢が整った他国を攻める等愚の骨頂だ。だがカイエン公は”主宰”の権限で、何度もメンフィル領を襲撃させた。襲撃をするたびに生還者が一人もいないと理解していて、カイエン公は戦死者を無駄に増やしていたのだ……ッ!挙句の果てには我らの不利を悟って貴族連合から手を切ろうとする貴族達を掌握する為に貴族達の家族を人質にするという蛮行を働く始末!勝利の為に陛下達を幽閉し、利用した事や”灰色の騎士人形”を味方にする為にシュバルツァー卿のご息女を誘拐し、人質に取った事を黙認し続けていた我らがカイエン公の行動を攻める資格はないと理解しているが、それでも最近のカイエン公の行動は余りにも目に余りすぎる……!今の貴族連合は祖国の”誇り”を取り戻す為に戦う革命軍どころか、メンフィルの謀によってエレボニア全土にばら撒かれたあの新聞の通り民達を苦しみ続けているただの”賊軍”だ…………メンフィルによってもたらされた我が軍の被害は宣戦布告もせずにメンフィル領への襲撃を行った”報い”だと理解していた為カイエン公に従っていたが、同胞であった貴族達の家族を人質に取る等という同胞に対する裏切り行為を行った事を知った時、”誇り”すらも失った貴族連合は存続する価値もないと判断し、正規軍や”紅き翼”が現れた際降伏する事を決めていたのだ…………」

「……………………」

「―――ならば何故昨日殿下達がトリスタの返還を迫った際に抵抗をした!?もしあの時降伏をすれば、学生達もあのような重荷を背負う事は無かったのだぞ!?」

涙を流しながら無念そうな様子で語ったウォレス准将の話をゼクス中将は目を伏せて聞き、ナイトハルト少佐は厳しい表情で問いかけた。



「……当然トリスタの防衛部隊にも正規軍や”紅き翼”が現れた際に降伏し、トリスタを返還するように指示をしたがトリスタの防衛部隊はラマール領邦軍所属の者達だった為、所属が違い、カイエン公に忠誠を誓う彼らは俺の指示に従わなかったのだ…………」

ナイトハルト少佐の問いかけに対し、ウォレス准将は肩を落として疲れた表情で答えた。

「―――全ての元凶であるカイエン公は今どこにいるのだ?」

「わからない……情けない話だが昨日から全く連絡が取れない状況なのだ。それどころか残りの部隊とも全く連絡が取れないのだ…………」

「まさか国外に逃亡し、亡命したのでしょうか?」

ゼクス中将の質問に答えたウォレス准将の答えが気になったナイトハルト少佐は考え込みながらクレイグ中将に尋ねた。



「いや、カイエン公個人ならまだしも軍隊を引き攣れて国外へと逃亡すれば絶対に目立つ為、それはありえん。第一亡命すると言っても今の状況でどこに亡命するというのだ?いつでもメンフィルと共にエレボニアに侵攻するつもりでいるクロスベルは不可能の上カルバードは先日のクロスベル・メンフィル連合軍によって滅びた。更にメンフィルの盟友であり、またオリヴァルト殿下とも親交があるリベールもカイエン公達―――貴族連合の亡命を受け入れないだろうし、そもそもハーケン門に最も隣接している領地―――”パルム”は先日第七機甲師団が奪還したから、リベール方面に亡命する等不可能だ。後はノーザンブリアだが……貧困や飢餓に苦しみ続けているノーザンブリアに亡命等論外だ。」

「となると国内に潜伏しているという事になりますね………」

「………ウォレス准将。カイエン公の指示によって捕えられ、幽閉された貴族の家族の方々の行方について何か知っている事はあるか?」

クレイグ中将の推測を聞いたナイトハルト少佐が考え込んでいる中、ある事を思い出したゼクス中将はウォレス准将に尋ねた。

「俺が知っている情報は捕えられた貴族の家族達はカイエン公の専用艦に集められたという情報だけだ。当然カイエン公の専用艦が今どこにいるかわからない。恐らくは俺が独断で人質達を救出し、離反する事を警戒したカイエン公が情報を規制したと思われるが…………」

「……何にせよ、帝都を奪還した事で内戦を終結させた事になる。行方がわからないカイエン公達については、メンフィルに”戦争回避条約”によって設けられた猶予期間を守った事を知らせてエレボニア侵攻を中止してもらってからだな。」

「うむ。」

こうして、ウォレス准将率いる帝都ヘイムダルを防衛する貴族連合軍は正規軍に降伏し、帝都であるヘイムダルを奪還した事で、”戦争回避条約”の猶予期間を守る事ができた。





同日、12:00――――



~バリアハート~



ウォレス准将率いる帝都ヘイムダルを防衛する貴族連合軍が正規軍に降伏していたその頃、ある人物―――クロチルダがバリアハートに近づいてきた。

「止まれ。現在は特別警戒体制の為、検問をしている。バリアハート市内に入りたければ通行証を見せろ。」

近づいてきたクロチルダを見た見張りのメンフィル軍の兵士はクロチルダに声を掛けた。

「……通行証は持っていないわ。私はメンフィル帝国に”投降”をする為にここに来たのよ。」

「と、”投降”だと……?」

「待て。この女、手配書で見た事がある顔だぞ……?」

クロチルダが告げた予想外の言葉に兵士は戸惑っている中、もう一人の兵士が懐から手配書らしき紙の束を出して手配書の束をめくりながらヴィータを見比べていた。

「―――私の名はヴィータ・クロチルダ。貴方達の”皇”―――”英雄王”達によって滅茶苦茶にされた”結社”の”蛇の使徒”――――”蒼の深淵”よ。」

数分後クロチルダが”投降”して来た事がツーヤとレーヴェにも伝えられ、その報告に驚いた二人は事実を確認する為に投降したクロチルダがいる領邦軍が使っていた詰所に向かい、クロチルダから事情を聞いた後ツーヤはプリネに知らせる為にプリネの元に向かった。



~バリアハート・クロイツェン州統括領主の城館・執務室~



「マスター、少しよろしいですか?」

「ツーヤ?ええ、構わないわよ。」

「―――失礼します。」

「それで……何かあったのかしら?」

「はい…………――――先程”蒼の深淵”が”投降”をして来ました。」

執務室に入ったツーヤはプリネにとって驚愕の事実を伝えた。



「え……………それは本当なの!?」

ツーヤの報告を聞いたプリネは呆けた後信じられない表情で尋ねた。

「ええ、信じられない事に本人です。今はレーヴェさんがクロチルダさんの事情聴衆を続けています。」

「………………一体何の為に彼女は自分から投降して来たのかしら?間違いなく厳罰を降される立場であると理解しているでしょうに……」

クロチルダの投降が真実である事にプリネは困惑の表情をしていた。

「その件についてなのですが――――」

そしてツーヤはプリネにクロチルダが投降して来た理由を説明した。



「そう………………――――とりあえずまずはリィンさん達に知らせないとね。先日のクロウさんの脱獄も関係があるし……―――それとお父様にも連絡を取らないとね。」

「クロチルダさんの処遇の件ですね。」

「……それもあるけど、肝心な事を忘れていないかしら?」

「え……肝心な事ですか?」

プリネの問いかけの意味がわからなかったツーヤは不思議そうな表情で尋ね

「―――私達も”Ⅶ組”の一員。帝都が解放された事で内戦が一応終結した事でメンフィル・クロスベル連合がエレボニア侵攻を中止した今なら、”Ⅶ組”の一員である私達のする事も決まっているでしょう?」

プリネは微笑みながら答えた。 
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