FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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雷撃襲来
前書き
気付いたらもう7月なんですね、早いです。←何が?
この冥府の門編は実はハロウィンまでには終わらせたいと考えています。なんでかって?シリルとレオンでやりたいハロウィンネタがあるもので。いや、別に今年じゃなくてもいいんだけどね(笑)
第三者side
「あぁ?なんだ?」
シリルがノーランと交戦している頃、ナツとルーシィはフランマルスと交戦していた。フランマルスはアリエスとタウロスを吸収しその魔法を使っていたのだが、ナツにあっさりと殴られてしまい、怒った彼は自身の中で最高級の魂を使った姿に変貌するため、灰色の煙に包まれていた。
「う・・・ウソ・・・」
「どうなってんの?なんで・・・あいつの魂が?」
煙が晴れ姿を現したフランマルス。その悪魔の姿を見て、ルーシィとハッピーは戦慄する。
「マスターハデス!?」
「いや・・・微妙に変だ!!」
「ゲヘヘヘヘ」
右目を黒い眼帯で覆い隠した白髪とヒゲの老人に変化したフランマルス。それは七年前、天狼島で彼らを圧倒した悪魔の心臓のマスター、ハデスだった。
しかし、本物のハデスとフランマルスが彼の魂を用いて変身したその姿は、わずかではあるが、違っていた。
「体格おかしいだろ!!」
「怖くない」
威厳も何もありはしないほど変な形のハデス。それを見て戦慄していたルーシィも、威圧感のなさに普段通りの様子に戻っていた。
「見たくれなどどうでもいいのです。ハデス・・・あのハデスですそ?」
「って言われてもなぁ」
ハデスの恐ろしさは彼らはよくわかっている。だが、目の前にいるそれを見て、その時の恐怖を思い出すのには少々無理がある。
「ほほぅ。さてはよくお分かりではありませんね?マスターハデスの恐ろしさを」
「いや、そんなことねぇぞ」
「結構知ってるっていうか」
「お分かりでないのはそっちなんじゃないの?」
彼らがリアクションを取り辛そうにしている理由を理解できていないフランマルス。ナツたちはそれを説明するべきか否か、迷っていたりする。
「よろしい!!無知で愚かなあなた方に教えて差し上げます。
えーっと、かつて、最強の闇ギルドと言われた悪魔の心臓のマスターにして、闇へと深く潜りすぎた天才魔導士。それがマスターハデスです!!」
「だから知ってるってば」
「おい話聞いてる?」
ルーシィとハッピーは自分たちの言葉など耳に入っていない様子のフランマルスに突っ込みを入れるが、彼は全く気にしない。ここまで来ると、聞こえているのかどうかも少々怪しくなってくる。
「七年前、ゼレフ様を追っていた私が偶然この体を見つけたのです。人間でありながらもっとも悪魔に近い場所にいたこの男の魔力はおいくらか?おいくらか?」
自身の口癖で締めようとするフランマルス。そんな彼に、三人の妖精たちはある質問をぶつけてみる。
「なんでハデスがやられちゃったか知ってる?」
「え?いや・・・さすがの私もそこまでは」
どうやらハデスが誰の手によって倒されたのかまではフランマルスも調べていなかった模様。それを聞いたナツは、ニヤリと口角を上げる。
「そいつ、俺たちが倒したんだけどな!!」
「へ!?」
炎の拳を構えてハデスもどきに向かっていくナツ。フランマルスは彼の言葉に思わず間抜けな声を出していた。
「オラァ!!」
「げええええええ!!」
ジャンプ一番敵を殴り飛ばしたナツ。フランマルスは悲鳴をあげながら、後ろの壁に激突する。
「一度やっつけた奴が出てきても、怖くねぇんだよ」
「だよね、こっちはいっぺん勝ってるんだから」
得意気な笑みを浮かべるナツと胸を張って自信満々なハッピー。青年のその拳を受けた悪魔は衝突の反動で煙に包まれていた。
「お一人で?」
「!!」
煙が晴れると、フランマルスは自分を殴り飛ばした炎の竜を睨み付けていた。そのダメージをほとんど受けていないような彼の姿に、ナツは怯んでしまう。
「ふん!!とぉ!!」
今度はハデスもどきとなったフランマルスが攻撃をしかける。バネのような柔らかな印象を与える体を存分に使い、頭からナツに向かって突進していく。
「せおっ!!」
「くっ!!」
腕を横に広げラリアットをお見舞いするフランマルス。ナツは咄嗟に腕をクロスせて防ごうとしたが、勢いが乗っていた敵の攻撃に簡単に弾き飛ばされていた。
「ナツ!!」
さっきのフランマルスのように壁に衝突したナツは、砂煙でどこにいるのか、安否すらも不明な状態になっており、ルーシィが心配して彼の名前を叫ぶ。
「見てくれはさておき、この魔力は本物」
強き力を体内に秘めたフランマルスはその場に仁王立ちして敵が飛んでいった先を見ている。すると、ナツは無事だったらしく、壁を走りながら余裕を見せる悪魔に駆けていく。
「魔導の深淵に近づいた者の魔力ですぞ。ぬお!!」
七年前にハデスが使っていた魔力の鎖。それと同じものを近づいてくる竜に投じる。ナツはその動きを見極め交わしたが、それすらもフランマルスの思惑のうちであった。
「シャアア!!」
「うわぁっ!!」
鎖を放った腕とは反対の腕をナツ目掛けて伸ばしていく。予想しようのないフランマルスの奇襲にナツは驚きの声をあげ、足を掴まれながら引き込まれていく。
「そぉれ、接続」
伸ばした腕を火竜の肩に移動させガッチリと握る。
「その魂もらいますぞ」
「やるか!!」
「ぶおっ!!」
しかし、ナツは体を回転させてあっさりとその腕を引き剥がすと、続けざまにフランマルスの顔面に炎を打ち込む。
「モード雷炎竜!!雷炎竜の・・・咆哮!!」
「どおおおおおお!!」
雷と融合した炎のブレス。それは彼らが戦っている通路幅いっぱいに広がっており、ハデスもどきはなす統べなく飲み込まれる。
「「わああああああ!!」」
ついでに味方であるハッピーとルーシィも吹っ飛んでいたが。
「いい魂ですな」
「あぁ?」
炎と雷の合わせ技。荒々しいその魔法の一撃をまともに受けているはずの敵は、なぜか笑みを浮かべていた。
「吸収!!」
炎と雷に飲み込まれているフランマルスは腕を広げると、なんとナツの放った魔法を体内へと取り込み始めたのであった。
「えぇ!?」
「ウソ!?」
彼のその行動には打ち込んだ本人も、吹き飛び地面に叩き付けられていた少女も動揺を隠せないでいる。
「魔法の魂を吸収した?てか魔法の魂って何!?」
適格な突っ込みを入れるハッピー。フランマルスはナツの魔力を吸収し終えると、全身を炎で覆わせて笑い声を発している。
「そんなのアリかよ・・・」
「あなたですよね?ジャッカルさんを倒したのは。でもね、ウチらをあまり甘く見ないで頂きたいですな。
私たちはゼレフ書の悪魔!!その昔、ゼレフが書き上げた悪魔の書から生まれた生物兵器。我々は一人で一国の軍隊に匹敵するということをお忘れになるな!!」
「っ・・・」
相手の計り知れない強さに奥歯を噛み締める三人。魂を吸い込む彼の呪法を前に、三人は苦戦を強いられることとなった。
シリルside
カッカッカッカッカッ
通路に響き渡る足音。それは次第にこちらに近づいてきているのがはっきりと聞いて取れる。
「ったく、どこいったんだ?あいつら」
足を止めて周囲を見回す緑の髪をした青年。俺たちは彼の足元にある空となった酒樽の中で、ひっそりと息を潜めていた。
「シリル・・・大丈夫~?」
小さな樽の中で抱え込んでいる茶色の猫が心配そうに顔を覗き込みながらそう言う。
「わかんない・・・けど、たぶん大丈夫・・・」
胸を押さえながら彼女の言葉に呟くように答える。ノーランの攻撃を至近距離で受けた俺。動くことすらままならない状態にあった俺を助けてくれたのは、実はセシリーだったのだ。
セシリーはどこからか酒樽を持ってきてノーランに被せると、俺を連れてその場から離れた。そして、偶然見つけた酒樽に小さくなって入り込み、体力の回復と痛みが引くのを待っているのである。
「外の様子は?」
「まだあいついるよ~」
酒樽に小さく開けられた穴から外の様子をセシリーに見てもらっている。後にわかったことだけど、今俺たちが入っているこの樽、ハッピーがナツさんが捕まった時に外へと逃げ出すまでのチャンスを伺う時に入っていた酒樽だったらしい。彼がこの周辺で脱ぎ捨ててくれたおかげで、今なんとか休むことができているのである。
「まぁ、おおよそ検討はついてるんだけどなぁ」
ノーランがそう言うと、彼の方を覗いていたはずのセシリーが穴からばっと顔を避ける。それと同時に、彼の足音がこちらにゆっくりと近づいてくる。
「「!!」」
徐々に近づいてくる足音に、俺とセシリーは身を縮め、息を殺す。
「ここにある不自然な酒樽。これに隠れてると考えることができるよな」
この近くに食堂があるようには見えなかったし、ごみ捨て場のようにも見えなかった。ただ、力が出ない俺をセシリーが持って動いていると、どうしても追い付かれそうになってしまっていたため、早めに身を隠して体制を整えようと考えたわけ。
「それに、樽から血が出てきてるしね」
(え!?)
ノーランの言葉に驚いた俺は傷口に手を当てる。その際・・・
ガタッ
腕が樽にぶつかり、音を立ててしまった。
「まぁ、冗談なんだけどね」
舌を出して動揺している俺たちを見ているノーラン。彼がしたかったのはカマをかけて自分たちに居場所を教えさせようとしていたらしい。それに気付かず、相手の思惑に乗ってしまうとは・・・
「このぉ!!」
「うぉ!!」
悔しい気持ちもあるが今はそれどころではない。被っていた酒樽を敵がいる方向に投げつける。それをノーランが交わしている隙に、セシリーに掴んでもらってその場から離れていく。
「もう!!シリルが小さくて助かったと思ったのに~!!」
「ごめんセシリー・・・」
あの酒樽は俺たちだから入れた。たぶんグレイさんやナツさんだったら、中に入ることなどできやしなかっただろう。エルフマンさんレベルになれば、頭くらいしか隠れないんじゃないだろうか?ただ、俺とセシリーだと入れたからその場に潜んでいたのだが、ノーランにはあっさり看破されてしまい、結局逃げ惑うことになってしまった。
「シリルのそれ、消えないの~?」
「何度も擦ってるけど、全然ダメなんだよ」
コーナーを攻めながらノーランから遠ざかろうとしているセシリーの問いに、腕を触りながら答える。力が出ない原因と思われるこの模様。消せるものなら消したいのだけど、どういうわけか消えない。薄くなってるから消えかけなのかとも思ったんだけど、全然消えてくれる気配がない。
「待てよ、お二人さん」
「「プギャッ!!」」
力が出ないため、真っ正面から戦うことなどできない。元通りの力が戻ってくるまでは、なんとか逃げて好機を待とうと考えた俺たち。しかし、後ろからノーランの攻撃を受け、地面に落下する。
「クソッ!!」
「ごめんシリル~」
ただ、どこかをケガしたわけではなかったため、すぐに立ち上がり、セシリーを抱えて走り出す。もうこれ誰かと合流しないと本当にやられちゃうんじゃないの!?
「だから待てって」
「うわっ!!」
「ひゃうん!!」
数メートル先にあるコーナー。そこを曲がってもう一度曲がり角があれば振りきれると思っていた。だが、走り出してすぐに足に銃弾が掠り、持っていたセシリーが前方に吹っ飛びながら再度転倒する。
「いっ・・・」
弾丸が掠った箇所を押さえて苦痛に顔を歪める。直撃したわけではないのに、なぜか凄く足が痛い。普段ならこれよりも強い攻撃を受けても、なんとか動けるのに、今日は全然動けない。何もかもが調子がおかしくなっている気がする。
「やれやれ、やっと捕まえたぜ」
額に軽く浮かんだ汗を拭いながらこちらにやってくるノーラン。迫ってくる彼に、せめてもの抵抗と思い倒れたまま後ろに下がってみるが、案の定意味がなく追い付かれてしまった。
「不完全な状態で外に出たから、本来の魔法も中途半端になっちまったんだな。いいデータが取れた」
ブツブツと何かを言いながら小さなノートにペンでメモを始めるノーラン。なめてるのかと思いブレスを放とうとしたが、腹部を踏まれ、魔力を溜めることができなかった。
「模様は出てきてるし、後数時間くらいで完了するだろう。ラボに連れ戻るとするか」
そう言って俺の頭に手を伸ばしかけた青年は、何かを思い付いたらしく、その腕を引っ込める。
「その前に、また逃げられても面倒だ。後で治せばいいだろうし、腕と足くらい折っておくか」
そう言って右腕を思いきり踏みつけるノーラン。その一撃で激痛が走り、逃げようともがく。しかし、ここでも予想通りの力が発揮できず、逃れることができない。
「やめて~シリルが~!!」
地に伏したまま大声で泣き叫ぶセシリー。すると、ノーランは彼女の方を見て笑みを見せる。
「安心しろ。お前にも後で同じことをしてやるから」
「っ・・・!!」
セシリーにもこれと同じことを?それだけはやらせないと全身に力を入れていく。
「うっ・・・」
しかし、全く体勢を変えることができず、ただ力を消費していくだけだった。
メキメキ
踏まれた部分から嫌な音が聞こえてくる。それに伴い痛みが増していき、やがて力を入れることすらできなくなっていく。
「シリル~!!」
目から雫をボロボロとこぼしている茶色の猫。もうダメかと思った。しかし、俺を踏みつけるノーランの肩に、落雷が直撃した。
「ぐあっ!!」
なぜ屋内なのに雷が落ちてきたのか。理解できぬまま、その場から一度離れて距離を空ける悪魔。彼と入れ替わるように、後ろから前に大きな背中がやってくる。
「え?」
「なんで~?」
その背中の主を見て、倒れている俺もセシリーも目を見開く。それは、ノーランも同じだった。
「お前・・・どうやって・・・」
短く整えられた金色の髪の毛。裸の上半身にコートを羽織っている筋肉質な体。そして、
「また俺の仲間を気付けやがったな・・・ふざけやがって・・・」
全身を包み込む帯電した魔力。
「ぶっ殺してやる・・・!!」
歯を剥き出しにして怒りに染まる雷の竜、ラクサス・ドレアー。動けぬはずの青年が、傷つけられた仲間のために牙を向く
後書き
いかがだったでしょうか。
アニメだとラクサスはガジルのとこに現れるのがありましたけど、ここではシリルのとこに・・・それも早くやって来てもらいました。
次はもう一人合流するかな?わかんないけど。
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