グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第51話:酒も料理も高価。でも一番の高価はスマイル。
(グランバニア城下町・オモルフィ:バル)
サガールSIDE
今夜は仕事が休みで官舎マッタリしてたら、突然プーサンが現れて『飲みに行こうぜ』と誘われた。
誘われたと言ったが、ほぼ拉致状態で拒否権は与えられてない。
因みに誘われた(拉致られた)のは俺を含めた何時もの4人。
とは言え、プーサンから誘われる(拉致られる)のは大変珍しい。
なんせプーサンは酒を飲まないし、他人に奢ったりしないからだ。
誘われた(拉致られた)時、クンドーさんが『俺等、今金無いんっすよ』と拒絶したが、プーサンは『金の事は気にするな!』と言ったので、奢りだろうと思ってる。珍しい……
そんな訳で、誘われる(拉致られる)まま訪れたのが、この店……“オモルフィ:バル”だ。
店構えからして予想はしてたけど、中に入って席に案内されて確信した。
ここ……凄くお高い高級キャバクラだ!
「あのぉ~プーサン……俺達、マジで金無いですよ。大丈夫なんですか、ここ高そうだけど?」
「大丈夫だ。僕も金持ってないから、恥ずかしがらなくて良いよ」
おいおいおい、アンタが誘った(拉致った)んだから金無いじゃ済まないんだよ!
「プ、プーサン! 恥ずかしいとかって意味じゃ無く、支払い出来るか如何かって意味で言ってるの!」
「あぁ……そういう事。うん、僕等に支払いは出来ないね……お金持ってないモン」
“モン”じゃねーよ!!
「じゃぁ何でこんな所に来たんですか!?」
隊長、言ってやって下さいよ!
この人、頭おかしいんですよ!
「金持ってる知人が、今晩この店で豪遊するって情報を得たんだ。乗っかっちゃおうゼ、それに(笑)」
「なるほどー! プーサンの知り合いが、この店に来るって知ったから俺等の事も誘ったんですね」
焦ってた隊長が嬉しそう頷いてプーサンの肩を叩く。
確かに、そんな事情があるのなら誘ってもらった事は大感謝だ。
「良いんすか、俺を誘っちゃって? プーサンのダチを破産させちゃいますぜ」
オーキッドさんが相変わらずのドSっぷりを感じさせる呟きを放つ。
「金持ちだから大丈夫だよ」
解ってないプーサンは何時もの笑顔で返事を返した。
「あ~あ、俺は知らねーよ。プーサンが友達を1人無くしても、俺は関知しねーからな」
副隊長までもニヤケながら悪ふざけのノリでプーサンを脅す。
「大丈夫、友達じゃないから。知人だから大丈夫」
だけどプーサンも気にしない。意味の解らない事を言って気にしようとしない。
「友達じゃない奴に集ろうって、如何いう神経してるだよ!?」
「うん。ちょ~親しい知人」
俺がツッコミを入れても、全然堪えない。本当に何を考えてるのか……
「まぁまぁ無料酒を飲めるのなら良いじゃないか! 気にするのは止そうぜ」
「クンドーさんがそう言うのなら俺等は構わないけど……」
「そうっすよ、気にしなくて良いんすよヒッカータさん」
「そうだぞトシー。折角プーサンが誘ってくれたんだから、ソウゴの言う様に気にしちゃダメなんだ」
「流石隊長は解ってる。……にしても、誰も俺等の席に来ないッスね? 他に客が大勢居る訳でもないのに」
そうなのだ……この店の開店と同時に入店した為、俺等以外の客は殆ど居ない。
こういう店はもう少し遅い時間帯になってから賑わいだす。
明日が週末で休みとは言え、未だ仕事してる人々の方が多いだろう。
でも開店してるって事は、女の子達も出勤してるのだろうし、何人かは同席してても良いはずなんだけど……
「仕様がないよ、見るからに金持ってなさそうじゃん僕達。女の子達も、金無い客に愛想振りまきたくないんだよ」
「なる程……哀しいですね、金無いのって」
プーサンを除く全員が俺の言葉で気落ちしてると、入り口付近が騒がしくなってきた。
「誰か来たみたいっすね? こことは違い女の子が大勢群がってら」
「あんなに居たのか女の子が……? ここに来ないから、誰も居ないのだと思ってた」
オーキットさんの嫌味に、隊長が哀しく応える。
そして全員で騒がしい方へと視線を向けた。するとそこには……
「あれぇ~ぃ? その鼻眼鏡……プーサンじゃねーんでかい? なぁ~にしてんの?」
「おっそいよ、カタクール候! 僕等も奢ってもらおうと思って、待ってたんだから」
ちょ、待って待って待って!!??
え、何!? 何でカタクール候が居る訳??
「ちょっと待てプーサン! アンタの知り合いってカタクール候だったのか!?」
「うん、そうだよ。みんなも知り合いでしょ」
知り合いも何も、俺等の上司っすよ!! いや、未だ仕官してないから正確には上司じゃないんだけど、俺等の恩人には違いないから、集るなんて出来ないよ!
「何で貴様が居るんだコラ!」
「ウルフ君、落ち着いて……彼は単なる一般人のプーサンだから。怒っちゃダメだよ」
カタクール候と共に入店した2人の金髪イケメンは、プーサンの事を知ってるらしく怒りを露わにしてる方と、それを宥めてる方とでプーサンに詰め寄ってる。
「あ、もしかしてウルフさんではないですか!? 以前に官舎の方でお会いした事ありますよね」
隊長が金髪の怒ってる方を見て、以前の事を思い出したらしく話しかける。
あれ……ウルフさんってもしかして……結構なお偉いさん!?
「あ、どうも。そのゴリラ面……クンドーさんでしたっけ?」
凄いな……ウルフさんはオーキットさんと同じくらいの年齢だけど、その口の悪さも同じくらいのレベルだ。
しかし……カタクール候とウルフさんは、相当な国の重鎮だ。もう一人の金髪は、一体誰なんだろう?
「とっつぁん……もう一人はどなたですか?」
隊長も気になったのか、もう一人の事を聞き出そうとする……ありがたい。
「ないなに? カタクール候って“とっつぁん”って呼ばれてんの? ゼニガタって改名する(笑)」
「言ってる意味、よ~く解らんから遠慮する」
プーサンの意味不明な言葉に、流石のカタクール候も少し困り気味。
どうやら立場的なのは、プーサンの方が上みたいだ。如何いう関係なんだろう?
「そ~んな事よりぃ、今晩の主役は殿下だからぁ、皆で飲める席に行こーぜぇ」
「え、何とっつぁん? 今“殿下”って言った? 何“殿下”って! か、彼の渾名かな?」
隊長の質問に答える素振りはなく、合計8人になった俺達は店員等の許可も得ずに席を広い方に移す。“殿下”って事は、マジで殿下なんですか!?
そして上座に当たる場所に“殿下”と呼ばれたお方を座らせ、突然現れた女の子を各人の間に一人ずつ座らせ(自分の隣にはお気に入りの娘を座らせ)、「と~りあえずぅ水割り」と勝手に注文する。まぁ俺等は無料酒なら何でも良いですけど……
「ねぇねぇパパぁ……そっちのお兄さんが主役って言ったけど、何かイベントがあったのぉ? パパの下で出世したとかぁ」
「“パパ”!? カタクール候の娘さんだったんですか?」
この“殿下”は大丈夫か? あまり常識がなさそうだけど、本当に本物なのか?
「違ーよ。“パパ”って呼んで、普段モテない醜男を喜ばせて、持ち金をふんだくろうとしてるんだよ」
「な、何だそれは!? 悪質じゃないか、ここは」
「悪質だけど、ティミーさんも生まれたばかりの可愛い娘に『パパぁお金頂戴』って言われたら、鼻の下伸ばしてあげるだろ」
「……なるほど。確かに!」
「「納得するんかい!」」
ほぼ同時だった……俺と副隊長のツッコミは、ほぼ同時に発声された。
「……っていうか、本物の王子様ですか?」
女の子の一人が“殿下”の正体に気が付いたらしい。
「そ~なんよぉ。このティミー殿下にぃ娘が産まれたぁんだ。だ~からお祝いに、こ~こへ来たちゅ~訳なんさ」
やっぱりぃぃぃ!!
本物! 正真正銘の王子様ぁ!
「「きゃぁ~、王子様でしたのねぇ♥」」
先刻まで常連のカタクール候にしか色目を使ってなかった女共が、急に殿下に色目を使い始めた。俺等だけの時は近寄りもしなかったのに……
「ね! ね!! お金持ちでしょ!? これなら破産させる程に飲んでも、大丈夫でしょぉ!」
「ちょ、プーサン……何を言ってるんすかぁ!!」
先程言ったとんでもない発言を蒸し返され、流石のオーキットさんも大分焦っている。
「ダ~メだよぉプーサン。殿下はぁ、今晩主役なんだってばさぁ。金出させる訳いかねーでしょぉ」
「そうだそうだ、ティミーさんは主役だぞ。一番金持ってる奴が出せ馬鹿野郎!」
どういう訳か、何かを怒っているウルフさんがプーサンにクレームを付けている。
でもプーサンは金持ってないだろうに……
「そっか……一番金持ってる奴かぁ……って事は、宰相に就任する事が確定してるウルフちゃんが払うべきだよね! 僕等みたいな貧乏人じゃなくて、国家の重鎮が支払うべきだよね! ごちそうさまで~す」
え、宰相になるの!? 宰相って言ったら、国家のナンバー2じゃん!
「ねぇパパぁ~、“サイショウ”ってなぁに?」
カタクール候の隣に居る娘(お気に入りの娘)が、頭悪そうに宰相の意味を聞く。
「宰相ってのはぁ、この国で王族の次に権力を持ってるヤツってこと」
時と場合に依れば王族よりも権力を握る存在も有り得るのだ。
「うそー♥ ちょ~エリートじゃーん!!」
「そうそう、ちょ~エリート。しかも未だ独身(笑)」
ウルフさんの地位に驚いた女の子に対し、プーサンが楽しそうに追加情報を与えた。
「えー独身なの!?」「格好いいのにぃ!?」「やだぁ~、どんな娘が好み!?」
入店直後はカタクール候に向かってた女の子達の興味が、王子様へと移行したと思ったら既婚者である事がそれとなく判り、若くてイケメンの独身エリートへと移行する。
「何だお前等の、その解りやすい反応は? お前等みたいに金と権力しか見てない女共に、俺が貢ぐと思うなよ。お前等に金をやるくらいなら、札束燃やして暖をとった方が有意義だ。貧相な胸を押し付けるんじゃねー馬鹿」
入店時から機嫌の悪いウルフさんは、女の子達のあからさまな態度に更なる不快感を露わにする。
殿下とカタクール候の表情を見る限り、普段から毒舌を振りまいてる見たいに感じるけど、そんな事判らないキャバ嬢等に浴びせるのは如何なモノだろうか?
「……や、やだぁ~。ちょークールぅ♥」「……わたしぃ、好みのタイプかもぉ~♥」
流石はプロのキャバ嬢だ。
ここでキレて金づるを手放す訳にはいかないのだろう。懸命に好意を寄せるフリしてる。
「わたしぃ、お前等の事がぁ、タイプじゃないんでぇ~、背中の肉を寄せて盛った偽巨乳を押し付けるの止めてもらえますかぁ~」
だがウルフさんには効果がなく、彼女等の口調を真似して更なる口撃を浴びせかける。なんでそんなに機嫌が悪いんだろ?
「……ま、まぁまぁ。そ、そんな事よりさ、僕の娘の絵を見てよ! 超可愛いんだよ」
空気の悪さを感じた殿下が、慌てて話題を変えようと懐から手帳サイズの絵を何枚か取り出し、キャバ嬢達に見せ付ける。
「やだ、この絵ちょー上手い!」
数枚在る絵を見た女の子の一人が、本気で絵の上手さに驚いてる。
俺等も見させてもらったが、確かに上手すぎる絵だ。
殿下のご息女を直接拝見した事はないけど、奥様は数回ほど遠目でお見受けした事があるので、一緒に描かれている絵でこの絵が生き写しレベルの上手さだと理解出来る。
だからご息女が本当に可愛いお方だと認識出来た。
「パパぁ、この絵の女の子が殿下の娘さんなのぉ?」
「そ~なんだよぉアーネちゃぁん」
アーネと呼ばれた候のお気に入りが、候に気を遣いながら殿下へも色目を配りまくる。
「じゃぁ、殿下と可愛い娘さんの為にぃ、乾杯とかしちゃわない?」
「良いねぇ、しちゃお。乾杯しちゃおう」
お気に入りの娘に胸を押し付けられて、候はデレデレ顔で乾杯に同意する。
「でも私ねぇ、今シュワシュワした飲み物しか受け付けない喉になってるのぉ」
「シュワシュワ? って事はぁ、いっちゃう? ドンペリいっちゃう!?」
「きゃー流石パパ、太っ腹ぁ♥ 可愛い娘さんの為の乾杯だしぃ、女の子らしい色が良いと思うのぉ」
「じゃぁ色はピンクかなぁ~?」
ハッキリ言えよ。
高い酒を頼めってハッキリ言えよ!
ピンクのドンペリを注文しろって言っちゃえよ。
「ちょっと待ってカタクール候。僕、酒はあまり得意じゃないんだけど……」
「だ~いじょうぶ、だ~いじょうぶ。吉事の時に飲む酒だからぁ!」
吉事だから大丈夫って意味が解らない。
「パパぁ、ピンドンをボトルで頼んじゃって良い?」
「おぅ、モチのロンでボトルよぉ!」
ピンドンって1本1000Gくらいするんだろ? 良いのかよ、そんな高い酒頼んで!
「店長~、ピンドンをボトルで人数分!」
え、人数分? ボトルで人数分!?
本当に大丈夫!? 俺等金持って無いからね!
サガールSIDE END
後書き
わたしぃ、キャバクラとかぁ、全然分からないからぁ、上手に書けな~い!
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