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龍が如く‐未来想う者たち‐

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冴島 大河
第二章 裏切者
  第五話 3人を超える者

深夜1時を過ぎても、東城会本部の騒ぎは収まらなかった。
真島と冴島2人がかりでも、宮藤の猛攻は止まらない。
それどころか力を増す宮藤に、少し押され気味だった。

負ける訳にはいかない。
ここで負けてしまっては、大吾が殺されてしまう。
ただその意志だけで、踏ん張っていた。


「どうした!?伝説の男はそんな程度か!?」
「俺は、伝説とちゃうわ!!」


勢い任せの、大振りの拳。
その拳は当たるはずも無く、虚空を切り裂いた。
そしてそれは、大きなチャンスも生み出してしまう。
目を光らせチャンスを見出した宮藤は、ナイフを逆手に持った。


「使えない駒は、みんな死ねばいいっ!!」
「冴島ぁっ!!」


真島の声が、遠くから聞こえた気がした。
しまった……。
そんな考えが頭をよぎった瞬間、後ろにいたはずの宮藤の気配が一瞬で消える。
ドカッと大きな音が聞こえ、顔を上げた時には奴は壁にもたれ座り込んでいた。
隣には真島ではなく、違う男の姿が。


「6代目……」
「大丈夫ですか?冴島さん」
「ありがとうございます、助かりました」


体を起こし、宮藤に詳しく聞こうと近づく。
だが座り込む奴に、異変を感じた。
右手で頭を抱え、怯えているのだ。
体を小刻みに震わせ、携帯を持つ左手がダラリと力なく垂れている。
左手から携帯を奪うと、そこに映るモノに目をやった。


『やはりお前は使えない。もう俺の前に姿を現わすな。現した瞬間、お前を殺す』


ぶっきらぼうな文面は、宮藤の怯える理由だった。
誰が送信したのか書かれておらず、Yとしか表示が無い。
携帯を覗き見る冴島以外の3人も、ただ首を捻るだけ。


「6代目、幹部の中にYとつく奴は……」
「何人かいます。それにYが苗字ではなく名前だとしたら、更に増えますよ」


宮藤の言っていた、あの人からのメールに間違いは無い。
ただそれが誰かは、これ以上迫れなかった。


「殺される……殺される!!」


突然立ち上がった宮藤は、とられた携帯を奪い返すことも無く部屋から飛び出した。
追おうとした冴島だが、真島に阻止される。


「もう宮藤は何もせんやろ。ほっとけ」
「せやけど、宮藤も怯える程のYっちゅう奴は一体何者や」
「ワシにもわからん。やけど今は、桐生ちゃんの居場所わかったんや」
「わかったわ、先に桐生を助けろっつう事やな」


真島は再びニコリと笑う。
どうやら、正解だったらしい。
だが大吾は、何処か難しそうな顔を見せた。


「どないしたんや、6代目」
「いえ……Yの名前に引っかかる人を思い出しまして」
「誰や?」
「いえ、確証を持てるまでは伏せておきたい。ただもしこれが予想通りなら、厄介な人が相手になりますね。喜瀬、宮藤、足立の3人の兄弟分になるので」
「兄弟分……」
「あの3人が認めた男です。そして3人を軽く超える力もあります」


浮上する、Yという男。
宮藤が怯える、兄弟分。
厄介な相手の存在に、胸がざわつく。
これが本当なら、3人を超える存在なのだ。
宮藤で苦戦した冴島に、戦える自信は無い。
やはり今は……。


「桐生を助けに行くしかあらへんな」


秋山を含む3人が、同時に頷く。
見知らぬ山奥に、桐生がいる。
行くしか無い、そう考えた瞬間。


「あっ秋山さん!冴島さん!」


慌てて部屋に入ってきた、1人の男。
大量の汗を流す、麻田だった。
足立とともに、事務所に残っていたはずだったのに。


「どうした!?」
「じ、事務所が燃やされて!!気付いたら、組長も居なくて……」


心が締め付けられる。
嫌な予感が、冴島を襲う。

足立の言葉は、いろいろと怪しかった。
大吾を助けに行こうとした際も、先に行っててくださいと言ったきり合流もしてこない。
裏切られるのは、勘付いていた。
だがそれは、足立の裏に誰かいるという事を示している。

まさか、Y?


「一旦、ワシの事務所行こうやないか」
「神室町ヒルズですね。冴島さん、麻田、秋山さん行きましょう」


今は一回、この考えを忘れよう。
冴島は、桐生奪還に向けて動き出す。
 
 

 
後書き
次回6/9更新 またしても番外編になりますが物語に関わってくるので読んでいただけると幸いです 
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