英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第48話(第2部終了)
~トールズ士官学院・正門~
「クッ……!負けたというのですか!?”鉄機隊”の”筆頭隊士”であるこの私が……!」
リィン達との戦いで地面に膝をついたデュバリィは信じられない表情をし
「や、やった……勝ったの、わたしたち!?」
「ええ……そうみたいです。なんとか乗り越えることができたみたいですね。」
信じられない表情をしているトワの言葉にリィンは静かな表情で頷いた。
「はぁ、はぁ……!今まで戦って来た方達の中で一番手強かったです……!」
「フゥー……フゥー……さすがはあのレーヴェとも互角に戦った相手だけはあるね……」
「その名の通り現代の”鉄騎隊”と呼ばれるべき凄まじい使い手だった……フフ、私もまだまだ精進が必要だな。」
エリスとフィーはそれぞれ息を切らせてデュバリィを見つめ、ラウラはデュバリィの強さを称賛し
「さあ!勝ったんだから約束通り学院を――――」
「何故ですの!?」
サラ教官がデュバリィを睨んで何かを言いかけたその時、デュバリィは地面を殴って声を上げた。
「以前と違い相手が学生だからと言って、慢心もせず本気で挑みました!それこそユミルでNo.2と戦った時と同じ……いえ、あの時と違い最初から全身全霊で挑みました!なのに何故この私が負けるのですか……ッ!」
地面を殴りつけたデュバリィは悔しそうな表情で涙を流し始め
「そなた…………」
デュバリィの様子を見たラウラは静かな表情をした。
「―――悔やむ事はありません。敗北もまた、”真の強者”へと到る為に必要な事なのですから。」
するとその時リアンヌがリィン達の背後から現れ、リアンヌに続くように街道で戦いを繰り広げていたパント達やベルフェゴール達、そしてアルフィン皇女とセドリック皇太子、トマス教官、クレア大尉とナイトハルト少佐、ジョルジュが姿を現し
「皆さん………」
「……………我々軍人が不甲斐なかったばかりにまだ学生であるお前達に重荷を背負わせてしまって本当にすまなかった………」
「みんな、お疲れ様。本当によく頑張ったよ……」
クレア大尉は辛そうな表情でリィン達を見つめ、ナイトハルト教官は重々しい様子を纏って呟き、ジョルジュはリィン達を見回して労いの言葉をかけた。
「マ、マスター!?」
「パント卿や殿下達も……!」
「……もしかして街道の戦いは終わったの?」
リアンヌ達の登場にデュバリィやラウラは驚き、フィーは真剣な表情で尋ねた。
「ああ。トリスタ近郊に展開していた貴族連合軍は”殲滅”した。」
「殲滅後は戦いを見守っていた”第四機甲師団”や”鉄道憲兵隊”が戦後の処理を申し出て、現在戦死者たちの処理をしています。」
「……それとこちらでの戦いが終わり次第彼らもこちらに来てトリスタや学院内にある兵士達の死体の処理もするとの事です。」
「そうですか…………」
「兄様……」
「………………」
パントとルイーズ、シグルーンの答えを聞いたリィンとエリスは辛そうな表情をし、サラ教官は重々しい様子を纏って黙り込んだ。
「……儂らの力不足によって、君達には本当に辛い選択をさせてしまったようじゃな……」
するとその時学院からヴァンダイク学院長とベアトリクス教官、そしてハインリッヒ教頭とマカロフ教官が現れた。
「が、学院長……それにハインリッヒ教頭、ベアトリクス教官とマカロフ教官まで……!?」
「軟禁されていたんじゃ……」
ヴァンダイク学院長達の登場にリィンやトワは驚き
「……彼女達が貴方方が到着するよりも先にトリスタと学院内にいた貴族連合軍の兵士達を殲滅したおかげで、貴方方が来る前に私達は既に自由の身になっていたのです。」
「ええっ!?何故そのような事を……」
ベアトリクス教官の話を聞いたエリスは信じられない表情でデュバリィを見つめた。
「……これ以上学生であるお前らの手を血で汚させない為だとよ。」
「あ……………」
「あんた…………」
マカロフ教官の口から語られた驚愕の事実にトワは辛そうな表情をし、サラ教官は複雑そうな表情でデュバリィを見つめた。
「なっ!?ま、まさか貴女は”槍の聖女”!?わ、私は夢でも見ているのか……!?」
「ハハ……」
「ったく、心配して損したわね……」
「というか混乱するなら、空気を読んでから混乱すべきだよね。」
「フィ、フィーさん。」
リアンヌを見て混乱しているハインリッヒ教頭を見たリィンとサラ教官は苦笑し、ジト目で指摘したフィーの言葉を聞いたエリスは冷や汗をかいた。
「フフ、どうやらそっちも終わったようだね。」
「よかった……そっちも勝てたのね……!」
「あ……アンちゃんたち!」
「アリサ達も……!」
「それに”神速”と同じその鎧……という事はそなた達が”神速”以外の”鉄機隊”か……」
するとその時アンゼリカ達B班とアリサ達C班はそれぞれアイネスとエンネアと共に現れた。
「フフ、こちらもついさっき勝利を収めることができてね。」
「本当に苦労したわよ…………」
「ア、アハハ……戦闘の後、彼女達もそれぞれお兄様達と戦っているデュバリィさんの勝負の行方を知りたくて一緒に来たのです。」
アンゼリカの後に答えたアリサの話を聞いて苦笑したセレーネは説明を続けた。
「いやぁ、何はともあれどうやら決着はついたみたいですね~?」
「ええ。――――デュバリィ。」
トマス教官の言葉に頷いたリアンヌがデュバリィに声をかけるとデュバリィはビクリと身体を震わせた。
「一通りの事情は彼らから連絡を受けた殿下達から聞きました。」
「マスター……―――内密で勝手にこのような事をしてしまい、申し訳ございません……!今回の件は私の独断で、アイネスとエンネアは私の我儘に付き合ってもらっただけですわ!どうか処罰は私だけにして下さい………!」
リアンヌがデュバリィに声をかけるとデュバリィはその場で土下座をして頭を下げ
「いいえ、マスター。我々も”自分の意思”で今回の件を実行しました。どうか我々にも処罰を。」
「―――此の度はマスターに内密で勝手な行動をしてしまい、その事によって場をかき乱し、マスターが力を貸している相手である”紅き翼”の方々にご迷惑をかけてしまい本当に申し訳ございませんでした。」
デュバリィに続くようにアイネスとエンネアもその場で土下座をして頭を下げた。
「皆、頭を上げてください。謝るべきは貴女方の気持ちも考えずに一方的に”鉄機隊”の解散を申し出てリウイ陛下達―――メンフィルに降り、それでも私についていくという貴女方の好意に甘えていた私に一番責があります。今でももっと早くに私の事を説明し、いずれはメンフィルに降る事を説明すべきでした。本当に申し訳ございません……」
「そんな!?マスターは何も悪くありませんわ!マスターは”盟主”への”義理”を果たした上で”結社”から抜け、メンフィルに降ったですから!」
「それどころか”英雄王”達と共に”盟主”を討ち、その代わりにメンフィルの元敵であった私達に”英雄王”と”聖皇妃”の独立護衛部隊という栄誉ある立場にしてくれるように”英雄王”達に嘆願しました!」
「それに”執行者”は”盟主”が定めた”掟”によってあらゆる行動の自由が認められています。”執行者”より遥かに上の地位である”蛇の使徒”も同様に行動の自由が認められていてもおかしくありません!」
頭を深く下げたリアンヌの行動を見たデュバリィ達は慌てて頭をあげてリアンヌに言葉をかけた。
「―――ありがとうございます。”紅き翼”の方々にも本当にご迷惑をかけてしまいましたね……―――申し訳ございませんでした。」
「い、いえ。何となくですけど俺達も彼女達の気持ちはわかりますので、気にしていません。」
「それに現代の”鉄騎隊”とやり合えたのだからな。こんな貴重な経験は滅多にできんだろう。」
「き、君な………」
リアンヌに謝罪されたリィンは苦笑しながら答え、腕を組んで呟いたユーシスの言葉を聞いたマキアスは呆れた。
「フフ……―――デュバリィ、エンネア、アイネス。今回の件ですが……罪には問いません。そして貴女方さえよければ、私と共にリウイ陛下達の”覇道”を支えてください。」
「マ、マスター……!勿論ですわ!」
「マスターの寛大な心遣いに心から感謝致します……!」
「今回のような勝手な行動は2度としない事、この場で誓います!」
リアンヌの言葉に感激したデュバリィ達はそれぞれ明るい表情で頷き
「フフ、まさか伝説の存在たる”槍の聖女”と”鉄騎隊”をこの目にする時が来るとはな……長生きはするものじゃな。」
「ええ……それで、彼らとの雌雄は決した貴女方はこれからどうされるのですか?」
ヴァンダイク学院長の言葉に頷いたベアトリクス教官はデュバリィ達に問いかけた。
「………………”紅き翼”との雌雄を決したのですから、邪魔者は退散致しますわ。エンネア、アイネス。行きますわよ――――」
ベアトリクス教官の言葉を聞いて目を伏せて黙り込んでいたデュバリィは目を見開いて答えた後二人に指示をしようとしたが、リィンがデュバリィに近づいて手を差し伸べた。
「リ、リィン!?一体何を……!?」
「……まさかとは思うけどそいつらも仲間に加えるつもりなのかしら?」
「フフ、恐らくそうだろうな。」
「というか間違いなくそうでしょうね……」
「だって、リィンだもんね~。」
リィンの行動を見たエリオットは驚き、セリーヌは目を丸くし、ガイウスは静かな笑みを浮かべ、エマは苦笑し、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべていた。
「……何のつもりですの。敗者でしかも敵である私に手を差し伸べるなど、正気ですか?」
「いや―――――俺達は今日、初めて真正面から全力でぶつかり合えたと思う。オーロックス峡谷やパンダグリュエルの時と違って……互いを好敵手と認め合えた上で。それに貴女達は俺達の代わりに学院長達を先に解放してくれたんだ。今の貴女達は俺達の”敵”ではない。エレボニアを救う為に………かつての”鉄騎隊”のようにサンドロッド卿と共に力を貸してもらえないだろうか?」
「「リィンさん……」」
「「(お)兄様…………」」
デュバリィに対するリィンの言葉を聞いたアルフィン皇女とセドリック皇太子、そしてセレーネとエリスはそれぞれ静かな表情で見守っていた。
「全く……歯の浮くようなことを言うのも相変わらずですわね…………………………」
デュバリィは呆れた表情で溜息を吐いて考え込んだ後エンネアとアイネスとそれぞれ視線を合わせ、視線を合わせられた二人はデュバリィの意思がわかっているかのようにそれぞれ頷いた。
「……まさか逆に軍門に下る側になるとはあの時の私は想像もしていなかったでしょうね…………―――いいでしょう。我々、”鉄機隊”はこれより偉大なるマスター―――リアンヌ様と共にかつての”獅子戦役”のように”獅子心皇帝”の意思を継ぎし貴方方”紅き翼”と共に剣を振るうことを誓いますわ!」
そしてデュバリィはリィンと握手をして、エンネア達と共にリィン達―――”紅き翼”の仲間になる事を宣言した!するとその時学院から平民、貴族問わず生徒達が出て来てリィン達の勝利を喜び合うと共に次々と自分達もリィン達の仲間になる事を申し出、またいつの間にか駆け付けていたカレイジャスの船員である士官学院生達も明るい表情で士官学院生達の意志が一つになった事を喜んでいた。
「うふふ、さすがご主人様ね♪」
「ふふふ、次はその女性を落とすおつもりですか?」
「リ、リザイラ様……リィン様の場合だと冗談になりませんわよ……」
「全く持ってその通りですね。」
「実際アルティナという例があるものね……」
リィン達の様子を見守っていたベルフェゴールはウインクをし、静かな笑みを浮かべるリザイラの言葉を聞いたメサイアは表情を引き攣らせ、アルティナはジト目で呟き、アイドスは苦笑していた。
「……フン。」
「フフ、ようやくここまで辿り着けたね。」
「ぐすっ……うん!ようやくみんなで学院に戻ってこられた……”トールズ士官学院”が、やっと一つになれた……!」
「ええ、会長。―――行こう、みんな。あとは俺達の―――かけがえのない毎日を取り戻すだけだ……!!」
新たなる決意をしたリィンは号令をかけ
「おおっ!!」
リィンの号令に仲間達はそれぞれ力強く頷いた!
―――こうして、リィン達は全員でトールズ士官学院を取り戻した。学院生達の声援はしばらくの間止む事はなく……誰もが士官学院の一員であることに誇りと喜びを感じながら―――この内戦の空に、強い意志と明日への希望を抱くのだった。
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