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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第40話

その後各地を回って依頼の消化や学院生との合流を果たしていたリィン達はトワから来た連絡―――カレイジャスに待機しているパント達がリィン達に知らせたい緊急の情報が手に入った為、その情報を知る為にカレイジャスに戻り、待機メンバーと共にブリーフィングルームに集まった。



~カレイジャス・ブリーフィングルーム~



「それでパント卿。俺達に知らせたい緊急の情報とは何なのでしょうか?」

「……実は先程貴族連合に潜入している諜報部隊から緊急の報告が来たんだ。」

「”緊急の報告”、ですか?」

リィンの問いかけに対して答えたパントの言葉が気になったエリスは不思議そうな表情で首を傾げた。

「まず一つは貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊は全員自分達がメンフィル軍の諜報部隊だと貴族連合軍に悟られた為、貴族連合から撤退したとの事だ。」

「ええっ!?今までずっと潜入していたのに、どうしてバレたんですか!?」

「しかも全員正体が判明するなんて、普通なら考えられないわよ。」

「そうだよね~。貴族連合に情報局(ボク達)みたいな存在はいないはずだし、さすがにボク達でも潜入している工作員全員の正体を判明させるには相当な日数がかかるよ?少なくても数週間程度じゃ、ボク達では無理だよ。」

パントの説明を聞いたアリサは驚き、セリーヌは目を細め、ミリアムは真剣な表情で呟いた。



「……実は貴族連合に”ある協力者”の姿が遠目だが確認されていてね。恐らくはその者の仕業だと思われる。」

「き、貴族連合の”ある協力者”ですか……?」

「その者は一体何者なのでしょうか?」

パントの話を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、ガイウスは真剣な表情で尋ね

「―――私やパント様達が”紅き翼”の皆さんの”協力者”として協力する事になった理由となった人物と言えば、おわかりになるかと。」

「パント卿達が僕達の”協力者になった理由となる人物”ですか……?」

「確かパント卿が僕達の協力者になった一番の理由は……」

ルイーズの話を聞いたセドリック皇太子とジョルジュは考え込んだ。



「亡霊となった”D∴G教団”の司祭を討伐する為だよね……?――――あ。」

「まさか……ついにヨアヒム・ギュンターが貴族連合の協力者になったって言うの!?」

ある事に気付いたトワが呆けている中、サラ教官は厳しい表情で尋ねた。

「ええ、その通りですわ。」

「クッ……!ついに再び姿を現したか……!」

「……まあ、ノルティア州が脱退してから以降の貴族連合の状況を考えればそろそろ現れるような気はしていたけどね。」

「フン、ようやくか。待ちくたびれていたぞ。」

「何で君はそんなに自信満々なんだよ……」

シグルーンの答えを聞いたラウラは厳しい表情をし、フィーは真剣な表情で呟き、鼻を鳴らして呟いたユーシスの言葉を聞いたマキアスは疲れた表情をした。



「で、ですが……どうしてかの”教団”の司祭が貴族連合の協力者になっただけで、貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊の正体が判明してしまったのでしょう?」

「相手は亡霊ですから、もしかして亡霊である事を利用して貴族連合の兵士がメンフィル軍の諜報部隊かどうかを確かめていたのでしょうか?」

「亡霊ですから当然姿を消すと言った芸当はできるでしょうけど……貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊の数は恐らく相当な数でしょうから、僅か2週間足らずで全員の正体を知るには時間が足りないと思うのですが……」

一方アルフィン皇女やセレーネ、エマはそれぞれ戸惑いの表情で考え込んだ。

「……恐らく諜報部隊の正体が悟られた原因は”グノーシス”かと思われます。」

「え……そこでどうして”教団”が開発したという薬が出て来るのでしょうか?」

「!!なるほどね……確かに”グノーシス”を使えば、貴族連合に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊がわかってもおかしくないでしょうね。」

リアンヌの推測を聞いたエリスが不思議そうな表情で首を傾げている中、サラ教官は血相を変えて厳しい表情で呟き

「サラ教官?それはどういう事なのですか?確か話によると”グノーシス”は大幅な身体能力の上昇や”魔人化(デモナイズ)”の効果があるとの事ですが……」

サラ教官の言葉が気になったアンゼリカは真剣な表情で問いかけた。



「…………かつてヨアヒム・ギュンターと対峙した”特務支援課”やエステル達はヨアヒムに自分達の”記憶”を読み取られたそうよ。恐らくヨアヒムや”グノーシス”を投与された領邦軍の兵士達によって、潜入していたメンフィル軍の諜報部隊の”記憶”が読み取られて、それで正体がバレたのだと思うわ。」

「ええっ!?他人の記憶を読み取る!?」

「ひ、非常識な……」

サラ教官の説明を聞いたエリオットは驚き、マキアスは疲れた表情で呟いた。

「問題となる”グノーシス”についてなのだが……エリゼの報告によるとヨアヒム・ギュンターは新型の”グノーシス”を開発したそうだ。」

「”新型のグノーシス”ですって!?」

「し、しかもどうして姉様がその事を……!」

「まさか……エリゼはクロスベルでヨアヒム・ギュンターと会ったのですか!?」

パントの話を聞いたサラ教官は厳しい表情をし、エリスは信じられない表情をし、ある事に気付いたリィンは血相を変えて尋ねた。



「ええ。エリゼさんの報告によると彼女が特務支援課の方々と共にディーター・クロイスを追い詰めた際にヨアヒム・ギュンターが現れ、ディーター・クロイスにその”新型のグノーシス”を投与して撤退したとの事です。」

「ええっ!?ディ、ディーター・クロイスって言ったら……!」

「”教団”の真の黒幕――――”クロイス家”の者にして、”大統領”としてクロスベル独立国を支配していた愚か者だな。」

「それで投与されたディーター・クロイスはどうなったの~?」

ルイーズの話を聞いたアリサは驚き、ユーシスは真剣な表情で呟き、ある事が気になったミリアムは真剣な表情で尋ねた。



「特務支援課の方々から話を聞いたエリゼの報告によるとかつて紅い”グノーシス”によって魔人化(デモナイズ)したヨアヒム・ギュンターやアーネスト・ライズと似たような姿―――巨大な魔人へと変化したとの事ですわ。」

「巨大な”魔人”……ですか……」

「どのレベルの魔人か気になるけど、最低でも上級悪魔クラスの強さになるのでしょうね……」

シグルーンの説明を聞いたエマは不安そうな表情をし、セリーヌは目を細めて考え込み

「ちょ、ちょっと待ってください!そうなると、その”新型のグノーシス”とやらを貴族連合軍が服用している可能性がある事になるじゃないですか!」

「……そうね。最悪もう貴族連合軍は悪魔の軍団と化しているかもしれないわね……」

ある事に気付いたマキアスは表情を青褪めさせて推測し、マキアスの推測にサラ教官は真剣な表情で頷いた。



「そ、そんな……」

「その……巨大な魔人へと変化した人達は元に戻るのでしょうか?」

話を聞いていたアルフィン皇女は表情を青褪めさせ、ある事が気になったセドリック皇太子は不安そうな表情で尋ね

「……”グノーシス”によって巨大な魔人化した事例はヨアヒム・ギュンターと”マクダエル市長暗殺未遂事件”の犯人であるアーネスト・ライズなのですが……その内ヨアヒム・ギュンターは特務支援課との激闘の末、肉体が崩壊し、最後は消滅したとの事です。」

「しょ、”消滅”…………」

「……サラ教官。もう一人の方はどうなったのですか?」

サラ教官の話を聞いたトワは信じられない表情をし、アンゼリカはサラ教官に尋ねた。

「アーネスト・ライズも消滅寸前だったけど、その際に駆け付けた”星杯騎士”の”法術”によって元の人間の姿に戻って、命は助かったそうよ。」

「”星杯騎士”……!」

「……七耀教会の裏組織に所属している騎士達の事だな。」

予想外の存在の名前が出るとラウラは目を見開き、ガイウスは静かな表情で呟いた。



「それで……その”新型のグノーシス”を投与されて巨大な魔人化したディーター・クロイスはどうなったのでしょうか?」

「彼の者も”特務支援課”との戦いによって消滅寸前でしたが、その場に駆け付けた”空の女神”の術によって元の姿に戻り、命を取り留めたとの事です。」

「ええっ!?エイドス様が!?」

「まあ、”あんなの”でも”空の女神”だからね。そのくらいの事もできるだろうね。」

「え、ええ……(どうして皆さん、女神様の事をそんなぞんざいな扱いにするのでしょう……?)」

ジョルジュの質問に答えたリアンヌの話を聞いたセレーネは驚き、静かな表情で呟いたフィーの言葉にエリスは内心戸惑いながら頷いた。



「ちなみに”空の女神”が駆け付けてくるまでに”特務支援課”と共にいた”星杯騎士”に加えて後から駆け付けて来た”守護騎士(ドミニオン)”がかつてアーネスト・ライズを救ったように同じ”法術”をかけたそうだが、元の姿に戻らなかったとの事だ。――――以上の事から、”新型のグノーシス”を投与された者達はどうなるか、わかるだろう?」

「……つまり”新型のグノーシス”によって巨大な魔人へと変化した連中を現状助けられるのは”空の女神”だけって事になるわね……」

「そ、そんな………!それじゃあ最悪その”新型のグノーシス”を投与された領邦軍の方々は全員助からないという事になりますわよね……!?」

「あのふざけた女神がいれば、解呪も可能だとの事ですが……」

「エイドスさんはクロスベルにいるから無理だよね……」

パントの話を聞いてある結論が出たサラ教官は重々しい様子を纏って呟き、アルフィン皇女は悲痛そうな表情をし、ユーシスは複雑そうな表情で呟き、エリオットは暗い雰囲気を纏って呟き

「あ、あの………でしたら女神様に事情を説明して、いざという時の為に私達に協力して頂く事はできないでしょうか?」

エリスは不安そうな表情で提案した。



「―――確かに良い案だが、少なくても”碧の大樹”をどうにかしない限りは”空の女神”は君達に力を貸さないだろう。彼女がゼムリアに降り立った理由はクロイス家の暴走を止める為だからね。ディーター・クロイスは拘束されたが、まだマリアベル・クロイスが残っていて、あの碧の大樹にいる。その事から考えるとクロイス家の真の目的は”碧の大樹”だろう。」

「そ、そんな……」

「クロイス家の暴走を止める為という事は”碧の大樹”をどうにかした後なら交渉の余地はあるって事よね?こうなったらもう、”特務支援課”やエイドス達が”碧の大樹”をさっさと何とかする事を祈るしかないわね……」

「まあ”碧の大樹”に挑むメンバーを考えたら、そんなに長くかからないと思うけど。」

パントの話を聞いたトワは辛そうな表情をし、重々しい様子を纏って呟いたサラ教官の言葉を聞いたフィーは静かな表情で推測した。

「もし”新型のグノーシス”によって大型の魔人へと変化した者達と相対する事があれば、滅しなさい。―――それが私達ができるその者達を”救う”唯一の方法です。」

「………………」

リアンヌの助言を聞いたその場にいる全員は何も言葉を口にできず、重苦しい空気を纏って黙り込んでいた。



「……パント卿。俺達に教える情報は以上でしょうか?」

「いや……まだ最悪の情報が一つ残っている。」

そしてリィンに訊ねられたパントは重々しい様子を纏って答えた。


「最悪の情報が一つ残っているって……!」

「い、一体どのような情報なのでしょうか……?」

「……先程の話以上に”最悪”と言える話って、どんな話よ。」

パントの答えを聞いたアリサは信じられない表情をし、セレーネは不安そうな表情で尋ね、セリーヌは目を細めた。

「それを答える前に……君達は貴族連合から脱退する貴族達が増えている話は覚えているかい?」

「は、はい……ノルティア州が貴族連合から脱退した事をきっかけに、西部の貴族達も貴族連合からの脱退や貴族連合への出資を中断している話ですよね?」

「それとパント卿が仰った”最悪の情報”がどう関係するのでしょうか?」

パントの問いかけにトワは戸惑いの表情で頷き、ジョルジュはパント達を見つめて尋ねた。



「……諜報部隊の報告では貴族連合軍は貴族達の家に踏み込んで、貴族達の家族を拘束して、様々な場所に軟禁しているとの事です。」

「なっ!?」

「そ、それって……!」

「人質かっ!」

ルイーズの話を聞いて仲間達と共に血相を変えたリィンは驚き、エリオットは信じられない表情をし、ユーシスは厳しい表情で声をあげ

「そ、そんな……どうして貴族連合軍が自分達の味方の貴族の方々を拘束して軟禁しているのですか!?」

「それに一体誰がそのような事を命じているのですか!?」

アルフィン皇女とセドリック皇太子はそれぞれ怒りの表情で尋ねた。



「まあ~、状況を考えたら貴族連合が負けたら絶対に自分は破滅するって確信している貴族連合軍の総指揮権を持っている人の仕業だろうね~。」

「―――間違いなく”主宰”のカイエン公だね。」

「愚かな……!自分と共に皇家に刃を向ける事を決めた同志である貴族の方々に対する裏切り行為をする等、カイエン公はどこまで愚かになれば気が済むのだ……!?」

疲れた表情で推測するミリアムの言葉に続くようにフィーは真剣な表情で呟き、ラウラは厳しい表情をし

「……ノルティア州が貴族連合から脱退した事で、カイエン公は疑心暗鬼に陥って、そのような凶行を実行したのかもしれませんね……」

「………………パント卿、シグルーン中将閣下。まさかとは思いますが貴族連合軍は”裏切り者”のノルティア州に襲撃してノルティア州を支配下に置いて、再び貴族連合に加担させる準備やノルティア州の貴族達を人質に取る準備もしているのでしょうか?」

「アンちゃん………」

エマは複雑そうな表情で推測し、パント達に尋ねるアンゼリカをトワは心配そうな表情で見つめた。



「すまないがそれについては何とも言えない。さっきも言った通り貴族連合軍に潜入していたメンフィル軍の諜報部隊は全員撤退したからね。今話した全てが諜報部隊が持ち帰った貴族連合の”最後の情報”だ。」

「ですが今の話を聞けば、皆さんにとっても他人事で無く、”最悪の事態”に陥ってしまった事は理解したかと思います。」

「貴族連合が貴族達の家族を人質にしている事がオレ達にとって”最悪の事態”とはどういう事なのですか……?」

パントの後に答えたシグルーンの話を聞いたガイウスは不思議そうな表情で首を傾げて尋ね

「貴族達に引き続き協力してもらう為にも、貴族連合は自分達が占領したドライケルスが建てた学び舎にいる者達にも手を伸ばしている可能性が高いという事です。」

「!!まさか……!」

「士官学院にいる貴族出身の生徒や教官達が危ないよ……!」

「……メンフィルに占領されたバリアハートとオルディス、後は正規軍に占領された都市や町の領主をしていた貴族達が親の生徒達は大丈夫だと思うけど、それ以外の貴族生徒達が危ないだろうね。」

リアンヌの指摘を聞いたリィンは目を見開き、トワは表情を青褪めさせ、ジョルジュは辛そうな表情で推測し

「………貴族出身の教官はメアリー教官とハインリッヒ教頭。ルーレに滞在しているメアリー教官は大丈夫でしょうけど、学院に残っているハインリッヒ教頭はわからないわね……」

「”フロラルド伯爵家”の実家はメンフィルに占領されたバリアハートだから、多分フェリス達は大丈夫だと思うけど……」

「………セレーネ、エーデル部長って、確か西部の貴族じゃなかったっけ?」

「はい……確かそう聞いていますわ。」

サラ教官は厳しい表情で考え込み、アリサは不安そうな表情をし、辛そうな表情をしているフィーの疑問にセレーネは心配そうな表情で頷き

「……ランベルト部長も西部の貴族だから、部長にも危機が迫っているだろうな。当然残りの”四大名門”の三男であるあの男も例外ではないだろうな。」

「”ハイアームズ侯爵家”のパトリックか…………」

「そ、そんな……同じ”四大名門”であるのですから、さすがにパトリックさんには危害を加えないと思うのですが……」

ユーシスの推測を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし、エリスは不安そうな表情をした。



「いや、唯一残った”四大名門”の子息である彼はむしろ真っ先に狙われる対象だと思う。しかもハイアームズ侯爵は貴族連合が敗北しても自分達への被害は最小限で済ませるようにしていたからね。今のカイエン公にとってハイアームズ侯は一番警戒すべき相手だ。」

「え……」

「ハイアームズ侯爵は貴族連合が敗北しても、自分達への被害は最小限で済ませようとしているとはどういう事でしょうか?」

パントの推測を聞いたアリサは呆け、ラウラは真剣な表情で尋ねた。

「ハイアームズ侯爵は内戦に巻き込まれ難民と化した民達を手厚く保護しているという話は皆さんもご存知ですが……あれは恐らく貴族連合が敗北した際の為ですわ。」

「それがどういう意味を示しているのかわかりますか、セドリック殿下。」

「はい……貴族連合が敗北した際皇家であるアルノール家(僕達)に情状酌量の余地ありと判断してもらい、自分達の処罰を軽くしてもらう為……という事ですよね……」

「それは………」

「………………」

シグルーンの推測の後に問いかけたパントの言葉に頷いたセドリック皇太子の答えを聞いたリィンとアルフィン皇女はそれぞれ複雑そうな表情をしていた。



「そして”ハイアームズ侯爵家”はサザーランド州の統括領主。ノルティア州に続いてサザーランド州までもが貴族連合から脱退すれば、メンフィルどころか正規軍ともまともに戦う事もできない事は明白。よって”ハイアームズ侯爵家”は真っ先に人質を取って、協力を強いるべき相手です。」

「………むしろ”四大名門”の関係者だからこそ、パトリック君は真っ先に狙われる対象だという事か……」

「フン……貴族連合に協力していた貴族達どころか”四大名門”すらも信じられなくなり、そのような凶行に走るとは墜ちる所まで墜ちたようだな、カイエン公は。」

リアンヌの推測を聞いたアンゼリカは重々しい様子を纏い、ユーシスは鼻を鳴らして静かな表情で呟いた。

「―――パント卿。パント卿はかつてメンフィル軍の”総参謀”としてメンフィル帝国を勝利に導いたとの事。どうかわたくし達エレボニア皇家の為に力を貸してくださっているⅦ組―――いえ、”トールズ士官学院”の為に知恵を貸して頂けないでしょうか?お願いします……!」

「僕からもお願いします、パント卿……!」

「姫様……」

「殿下……」

パントを見つめてそれぞれ頭を下げて嘆願するアルフィン皇女とセドリック皇太子をエリスとリィンは心配そうな表情で見つめた。



「…………貴族連合が既に手を出した貴族生徒達を救う方法はまだ思いつかないが、トールズ士官学院―――いや、トリスタを貴族連合から奪還する方法なら二つある。」

「ええっ!?トリスタを奪還する方法があるんですか!?」

「それも二つもあるなんて……」

「……それでトリスタを奪還する方法ってどんな方法なのでしょうか?」

パントの口から語られた驚愕の話にアリサとセレーネは驚き、ラウラは真剣な表情で尋ねた。



「一つは正規軍―――第三、四機甲師団、そして”鉄道憲兵隊”を総動員してトリスタを奪還してもらう事だ。」

「と、父さんやクレア大尉達にですか!?」

「……勝算はあるのかしら?トリスタは帝都近郊の影響もあって防衛線は未だ厚いままよ。」

パントの話を聞いたエリオットは驚き、サラ教官は真剣な表情で尋ね

「機甲師団には”対機甲兵戦術”がある上、例の”妥協案”のお蔭で補給の心配もなくなり、ノルティア州が貴族連合から脱退した事で合流も容易くなった第三、四機甲師団ならトリスタで防衛線を敷いている貴族連合軍に対して互角以上の戦いを繰り広げられる事は可能だろう。そして機甲師団が貴族連合軍を引きつけている間に”鉄道憲兵隊”がトリスタを奪還し、トリスタ奪還後挟撃すれば、トリスタの防衛部隊は壊滅するか降伏するかのどちらかだろう。」

「なるほどね~。クレア達なら数で劣っていても領邦軍の兵士達が相手なら最後は勝つだろうね~。でも、どうやって機甲師団や鉄道憲兵隊を動かすの?」

パントの答えを聞いたミリアムは納得した様子で呟いた後ある事に気付いて真剣な表情で尋ねた。

「―――彼らを動かす方法は到って簡単だ。セドリック殿下とアルフィン殿下が彼らにトリスタを奪還するように”勅命”すれば、彼らはその”勅命”に従う。」

「そ、それは………」

「………………」

パントの説明を聞いたアルフィン皇女とセドリック皇太子はそれぞれ複雑そうな表情をし

「で、でも、それは……」

「僕達の”大目標”がなくなってしまうな……」

一方ある事に気付いていたエマとマキアスは複雑そうな表情をしていた。



「……――パント卿。こちらから知恵を貸す事を申し出ていながら申し訳ありませんが、その方法は絶対に取りたくありません。」

「リィンさん……」

「………何か理由があるのでしょうか?」

リィンの答えを聞いたアルフィン皇女は心配そうな表情をし、ルイーズは真剣な表情で尋ねた。

「はい。士官学院の奪還は俺達”Ⅶ組”の悲願です。いや、俺達だけじゃない。このカレイジャスに集まった士官学院生全員の果たすべき”使命”と言っていい。他のどんな勢力にも任せるわけにはいきません。」

「リィン君………」

「兄様…………」

「フム………」

リィンの話を聞いたその場にいる全員がリィンに注目している中、パントは試すような視線でリィンを見つめていた。



「わたくしも同じ気持ちですわ。トールズ士官学院は大帝が設立した皇立学校……できれば士官学院の皆さんの力で決着をつけるべきでしょう。」

「――殿下の仰る通りさ。……最後の最後まで人任せというのはどうにも示しがつかないね。」

「アンゼリカさん、他のみんなも……」

「フフ、想いは同じなようだ。」

「アルフィン……皆さん……―――パント卿、大変厚かましいと思いますが彼らの力だけでトリスタを奪還する方法を考えて頂けないでしょうか?お願いします……!」

それぞれが自分達の力でトリスタを奪還する事を決意している様子を見たセドリック皇太子はパントを見つめて頭を下げた。



「頭をお上げ下さい、セドリック殿下。第一私はまだ”もう一つの方法”を提示していないのですから、まずはそれを聞いてから判断してください。」

「あ……!そ、そう言えばもう一つの方法があるって言ってましたよね……!?」

「ちなみにその方法はどんな方法なの?」

パントの説明を聞いたトワは声をあげ、フィーは真剣な表情で尋ねた。

「もう一つの方法は君達が望む方法―――君達自身の手で士官学院を奪還する方法だ。」

「ほ、本当ですか!?」

「一体どんな方法なのよ?さすがにその子達だけじゃ、トリスタの防衛部隊を相手にするなんて無謀だと思うのだけど。」

パントの話を聞いて仲間達と共に血相を変えたリィンが明るい表情で声をあげている中、セリーヌは不思議そうな表情で尋ねた。

「いや、正確に言えばトリスタの防衛部隊を相手にするのは彼らと”契約”している異種族達だ。そして君達は彼らが陽動部隊として防衛部隊を引きつけている間にトリスタやトールズ士官学院を守護する守備兵達を撃破してトリスタを奪還する。―――それがもう一つの方法だ。」

そしてパントはリィン達にとって驚愕の方法を口にした。 
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