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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第30話

エレボニア東部を回って学生達との合流や依頼の消化をしていたリィン達はトワの突然の連絡によってカレイジャスに戻った。



連絡内容は今まで行方不明だったアンゼリカとの連絡が取れた事であり、アンゼリカは内戦終結を早める為に”四大名門”の一角であるログナー侯爵と”親子喧嘩”をしていた。



更にアンゼリカはアリサの母、イリーナ会長の居場所を知っていたが突如聞こえて来た銃声や戦闘の音に気付いた後通信を切り、アンゼリカやイリーナ会長の安否が気になったリィン達はアンゼリカが潜入している都市―――”ルーレ市”に潜入する事にした。



ルーレ地方を知り尽くしているグエンの助言によって無事ルーレ市に潜入する事ができたリィン達は何とかアンゼリカと再会する事ができ、情報交換を行った所ログナー侯爵の弟であり、”第一製作所”の取締役であるハイデル・ログナーがイリーナ会長を幽閉し、”ラインフォルトグループ”を牛耳っている事がわかった為、イリーナ会長を救出し、”ラインフォルトグループ”をハイデル取締役から解放する為にアンゼリカに協力する事にした。



そしてアンゼリカと共にイリーナ会長が幽閉されている場所――――”ザクセン鉄鉱山”の貨物ホームに停車している”アイゼングラーフ号”に向かう為にザクセン山道を進んでいたが、メンフィルとの国境付近―――ユミル方面から悲鳴や怒声が聞こえ、足を止めた。





12月21日――――





~ザクセン山道~



「ギャアアアアアアア――――――ッ!?」

「女神様―――――ッ!!」

「何だ、今の声は……!?」

突如聞こえて来た悲鳴を聞いたリィンは血相を変え

「悲鳴のように聞こえたわよね……?」

アリサは不安そうな表情をした。

「!待って……確かザクセン山道からユミルへと向かえるわよね!?」

「え、ええ……――――!!」

サラ教官の問いかけに頷いたリィンはある事に気付いて目を見開き

「皆さん、あれを見てください……!」

セレーネはユミル方面に視線を向け、リィン達も視線を向けるとユミル方面へと続く山道は貴族連合軍とメンフィル軍がぶつかり合う”戦場”となっていた!



「―――弓隊、射て!!」

弓に矢を番えたエイリークの号令により、弓を武器とする狙撃手(スナイパー)、馬を駆って弓を射る騎兵――弓騎将(アローナイト)、そして彼らを率いる将――神射手(サジタリー)白銀騎将(シルバーナイト)達が空に向かって弓を引き絞って、矢を放った!

「ガッ!?」

「ギャアッ!?」

メンフィル軍が放った矢の雨に刺さった敵達は悲鳴を上げ

「クッ……!怯むな!一気に詰め寄れ!」

「魔道部隊並びに機甲部隊!援護を!」

「ががっ!?」

「グアッ!?」

さらに魔術師(ウィザード)や、馬に乗って魔術を放つ騎兵――魔道騎将(マージナイト)や彼らを率いる将である大魔術師(アークウィザード)達が次々と魔術を放ち、メンフィル軍の銃を持つ機甲兵や”アハツェン”、更に魔導技術によって創られた地上型魔導装甲――――”パフォス”と”グロウ=ロウ”、そして”アシュラクナーナ”の軍団による一斉砲撃を放って、自陣に進軍して来た機甲兵達を次々と討ち取った!



「ハァァァァァ……!」

「グアッ!?」

その時ペガサスに跨って上空に滞空していたターナが奇襲して機甲兵の一体を討ち取り

「―――ターナ様に遅れるな!空を駆る我らへの対抗手段を用意しなかった事、心の奥底から後悔させてやりなさい!」

「ハッ!!」

「ががっ!?」

「うがっ!?」

更にシレーネを始めとした上空に滞空している飛行能力を持つ騎獣に乗った騎士達が次々と空からの奇襲を行って貴族連合軍を怯ませた。



「ク、クソ……ッ!撃ち落せっ!!」

銃を持つ機甲兵は奇襲しては空へと離脱するターナ達に銃口を向けたが

「そんな事はさせない。」

「えー――――ギャアアアアアアア――――――ッ!?」

凄まじい速さで一気に詰め寄って跳躍したマリカが振るった刀の斬撃によって装甲ごと斬られて絶命した。

「ヒッ!?ば、”化物”……!」

「この……潰れろ!!」

マリカの強さに貴族連合軍が恐怖を感じている中、”機甲兵”の中でも防御性能が高い”ヘクトル”がマリカに剛腕を叩きつけようとしたが

「―――遅い。」

「え。」

何とマリカは跳躍して攻撃を回避すると共に”ヘクトル”が振るった腕伝いに走り、跳躍して刀を振るった!

「斬!!」

「グギャアアアアア――――――ッ!?」

「ヒィィィィッ!?ヘ、”ヘクトル”まで斬りやがった!?」

操縦者ごと斬られた事によってヘクトルから噴出した絶命した操縦者の血を見た機甲兵を操縦する兵士達は恐怖の表情になった。



「おお……!さすがは”緋閃”!」

「我らも彼女に続け――――ッ!!」

「メンフィルの恐ろしさ、エレボニアに見せつけろ――――ッ!!」

「オォォォォォォ――――ッ!!」

マリカの活躍によって士気を高めたメンフィル軍は次々と猛スピードで貴族連合軍を撃破し続けた!



「こ、これは……!」

「ユミルの防衛部隊とユミルを襲撃しようとしている貴族連合軍がぶつかり合っているみたいだね。」

始めて見る”本物の戦場”を見たラウラは目を見開き、パントは静かな表情で答え

「やれやれ……後何回戦力を減らされたら気がすむのだろうね、カイエン公は。」

アンゼリカは疲れた表情で呟いた。



「なっ!?という事は貴族連合軍をユミルへと差し向けているのはカイエン公なのですか!?」

「ああ、協力してくれている兵士達からはそう聞いている。」

血相を変えたリィンの問いかけにアンゼリカは重々しい様子を纏って答え

「リィンがパンダグリュエルに向かうことを条件にユミルには2度と手を出さないって言っておきながら、約束を破っているじゃない……!」

「……やはりレン姫の推測通り、失った”切り札”である”騎神”を補う為にシュバルツァー卿達の確保に必死になっているようだな。」

アリサは怒りの表情で貴族連合軍を見つめ、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた。



「……アンゼリカ。この戦いは頻繁に起こっているのかしら?」

「ええ……そしてその度に襲撃した貴族連合軍は一人も生還していないと聞いています。幸いノルティア領邦軍は父の意向によって参加していませんから、ノルティア領邦軍からは被害は出ていませんが……」

サラ教官の質問にアンゼリカは重々しい様子を纏って答え

「ひ、一人も生還していないという事は……!」

「………もしかして全員メンフィル軍によって”殲滅”されたのですか?」

アンゼリカの話を聞いたセレーネは信じられない表情をし、リィンは複雑そうな表情でパントを見つめて尋ねた。



「ああ。ちなみに諜報部隊の報告によれば貴族連合軍がメンフィル軍と戦闘している間に”猟兵”達にユミルを襲撃してシュバルツァー男爵夫妻を確保する事を命じているそうだが、その度にメンフィル軍によって全員ユミルどころか、山の中腹に辿り着く事もできずに討ち取られている。確か今日の戦いでは残っている”猟兵”達全てを投入したと聞いている。今日の戦いによって”猟兵”達は殲滅させられるだろうから、ユミルへの襲撃も収まると思うよ。それにユミルを含めたメンフィル帝国領への襲撃の為に投入した兵士達の戦死者の数も相当膨れ上がっている事はカイエン公もわかっているだろうから、そろそろメンフィル帝国領への襲撃も収まると思うのだが……」

「………………」

パントの推測を聞いたリィン達はそれぞれ重苦しい空気を纏って黙り込んだ。

「!貴様は……!」

するとその時北の猟兵達がリィン達の前に現れた。

「………………!」

「ユミルを襲った猟兵達と同じ鎧……と言う事は”北の猟兵”か!俺達に何の用だ!?」

北の猟兵達の登場にサラ教官とリィンは厳しい表情をした。



「用は貴様だ、リィン・シュバルツァー。貴様を拘束する事ができれば、カイエン公爵から莫大な報酬が支払われる事になっている。」

「本来の依頼はシュバルツァー男爵夫妻の拘束だったが、忌々しきメンフィル軍がユミルまでの道のりを阻み、多くの仲間達の命を奪い、依頼の達成は不可能となった。」

「無念に散って逝った”我らが故郷(ノーザンブリア)”の同胞達の為にも貴様を拘束し、カイエン公に引き渡す!」

「―――やれやれ。相変わらずみたいね。」

呆れた表情で呟いたサラ教官がリィン達の前に出ると猟兵達は血相を変えた。



「サラ・バレスタイン……!」

「……貴様も一緒だったか。”紫電”の異名、遊撃士として聞き及んではいたが……」

「士官学院の教官になったという情報は確かだったらしいな。」

「え……」

「サラさんのお知り合いなのですか?」

サラ教官を知っている様子で話す猟兵達の言葉を聞いたリィンは呆け、セレーネは不思議そうな表情で尋ねた。



「ええ、ちょっとした腐れ縁って奴ね。――――あんたたちのやり方は否定しないわ。団の送金で故郷のみんなが助かっているのも確か。でも―――今のあたしはこの子達の担任教官よ。あたしの生徒に手を出そうって言うんだったら、容赦はしない―――2度と悪さができないよう叩きのめしてあげるわ!あたし一人の手でね……!」

「へ……」

「まさか……一人で戦うのですか!?」

「幾ら教官でも、さすがにあの数相手に一人は無謀すぎます!」

サラ教官の発言を聞いたアリサは呆け、ラウラは信じられない表情で尋ね、アンゼリカは真剣な表情で警告した。



「教官、俺達も―――」

「―――いいえ。ここはあたしに任せて頂戴。6年目につけ損ねたケジメ……そのケリを付けるという意味でも!」

「どうしてそんな………」

「……………」

リィンの申し出を断ったサラ教官の様子をセレーネは心配そうな表情で見つめ、パントは重々しい様子を纏って黙り込んだ。



「いいだろう!サラ。バレスタイン!」

「団を抜け、故郷を捨てたこと後悔させてくれる―――!ガハッ!?」

サラ教官に猟兵達が襲い掛かろうとしたその時、突如猟兵の一人が背後から投擲された槍で心臓の部分を貫かれた!



「え…………」

突然の出来事にサラ教官は呆け

「な……一体何が…………グフッ!?」

槍で心臓を貫かれた猟兵は絶命して地面に崩れ落ちた!

「隊長!?」

「クッ……まさかもうメンフィル軍が追いついてきたのか!?ガアッ!?」

「あがっ!?」

上司が死亡した事に仲間達と共に驚いた猟兵が背後へと振り向いた瞬間、騎馬に跨っているエイリークと並んで騎馬に跨って猟兵達目掛けて突進しているゼトが投擲した槍が頭に命中し、ゼトに続くようにエイリークは背中に背負っている矢筒から矢を取りだして弓に番えて矢を解き放って猟兵の眉間に矢を命中させ、二人の攻撃を受けてしまった猟兵達は絶命して地面に倒れた!



「!彼らは……!猟兵達を殲滅し、”Ⅶ組”の方達を助けますよ、ゼト!」

「御意!」

リィン達の姿を確認した後武器を弓矢から細剣に変更したエイリークの指示に頷いたゼトはエイリークと共に馬のスピードを更に速くして猟兵達へと突撃し

「ク、クソ――――ッ!」

「銃で牽制しろ!」

突撃して来る二人に焦った猟兵達はそれぞれ銃撃を二人に放ったが、二人は同時に馬を跳躍させて回避し、猟兵達の前に着地させた!



「え―――」

「な―――」

突如目の前に現れたエイリークとゼトに猟兵達は呆け

「ハアッ!!」

「あ――――」

「セイッ!!」

「がふっ!?」

エイリークが振るった細剣に首を刈り取られ、ゼトが突き出した槍に喉元を貫かれた猟兵達はそれぞれ即死し

「うあああああぁぁぁっ!!」

「お、おのれ―――――!!」

「止めなさい――――ッ!!」

仲間達の無残な死に恐怖や怒りに震えた残りの猟兵達はサラ教官の制止の声を無視してそれぞれエイリークとゼトに襲いかかった。

「―――ハッ!」

「―――遅い!」

「え――――」

「しま―――」

しかし二人は巧みな馬術で猟兵達の攻撃を回避しながらそれぞれの武器に闘気による光を宿らせ

「「奥義――――太陽!!」」

猟兵達に怒涛の連続攻撃を叩きつけた!

「ギャアアアアァァァア―――――ッ!?」

「グアアアアアアアア―――――ッ!?」

馬を駆る騎士の奥義――――太陽をその身に受けた猟兵達は大量の血を噴出しながら絶命して地面に倒れた!


「…………ッ……!」

「サラさん……」

唇を噛みしめて無残な死体となった猟兵達を見つめるサラ教官をセレーネは辛そうな表情で見つめた。

「皆さん、ご無事でしたか?」

エイリークは武器を鞘に収めた後馬から降りてリィン達に話しかけ

「…………はい。危ない所を助けて頂き、本当にありがとうございます。エイリーク皇女殿下、ゼト将軍閣下。」

リィンは複雑そうな表情で答えて会釈をした。



「先程の見事な騎馬術と戦い……お見事でした、殿下。」

「フフ、ありがとうございます、リグレ候。―――あら?貴女は確かレンの秘書を務めているアンゼリカさん、でしたよね?」

パントの称賛の言葉に微笑んだエイリークはアンゼリカに気付くと目を丸くし

「お久しぶりでございます、エイリーク皇女殿下。麗しの皇女殿下に顔を覚えて頂いて恐悦至極でございます。」

「クスクス、相変わらずお上手な方ですね。行方不明と聞いておりましたが、ご無事で何よりです。機会があればレンにも連絡してあげてください。何だかんだ言って、あの子は貴女の事を気に入っていますから。」

恭しく会釈をしたアンゼリカにエイリークは微笑んだ。

「はい、機会があれば必ず連絡するつもりです。」

「………エイリーク様、よろしいでしょうか?」

アンゼリカがエイリークを見つめて頭を下げた時誰かとの通信を終えたゼトがエイリークに話しかけた。



「何でしょうか、ゼト?」

「今回襲撃して来た貴族連合軍並びに猟兵達の”全滅”を確認したとの事です。」

「ぜ、”全滅”って……!」

「………これで貴族連合軍は更に戦死者を増やしてしまった……と言う事になるな。」

「………ッ………!」

ゼトの報告を聞いたアリサは信じられない表情をし、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、リィンは辛そうな表情で唇を噛みしめて黙り込んでいた。



「そうですか……今回の襲撃で貴族連合軍が雇っている残りの猟兵達も全て殲滅しましたから、ユミルを含めたメンフィル帝国領への襲撃が少しは収まるといいのですけどね…………」

「その可能性は恐らく低いと思われます。カイエン公はウォレス准将の反対を無視して、メンフィル帝国領に何度も襲撃を繰り返し行わせていますから、カイエン公をどうにかしない限りメンフィル帝国領への襲撃は収まらないと思います。」

重々しい様子を纏っているエイリークにゼトは静かな表情で助言し

「え…………」

「ウォレス准将がメンフィル帝国領への襲撃を反対しているとはどういう事でしょうか?」

二人の会話が気になったアリサは呆け、ラウラは真剣な表情で尋ねた。



「諜報部隊の報告ではどうやらウォレス准将は何度もメンフィル帝国領への襲撃を止めるようにカイエン公に進言しているそうだが、カイエン公は耳に貸さず、”主宰”の権限で貴族連合軍にシュバルツァー男爵夫妻の拘束を含めたユミル襲撃、オルディスの奪還やユーゲント皇帝の救出を命じているとの事だ。」

「……つまりはカイエン公の暴走という事ね……ルーファス卿や”黄金の羅刹”がいなくなった事で領邦軍の中で唯一頼れる存在である”黒旋風”の進言も無視するという事は、相当追い詰められているようね。」

「愚かな……!何故差し向けた兵達を何度も殲滅されながらも、メンフィル帝国領への襲撃を止めないのだ!?」

「メンフィル帝国領への襲撃によって出た貴族連合軍の戦死者はどのくらいの数に膨れ上がっているのでしょうね……」

「………………」

パントの説明を聞いたサラ教官は重々しい様子を纏って推測し、ラウラは厳しい表情をし、セレーネは辛そうな表情をし、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「……エイリーク皇女殿下、一つだけ訊ねたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

「え……私にですか?ええ、構いませんよ。一体何が聞きたいのですか?」

「何故撤退する猟兵達まで追撃して、殲滅したのですか……?彼らは貴族連合に雇われただけの存在で、多くの仲間達が殺され、既に戦意を折られて撤退していたのですから、殺す必要はなかったはずです……!」

「リィン……あんた……」

「リィン…………」

唇を噛みしめて悲痛そうな表情でエイリークを見つめて問いかけるリィンをサラ教官は驚きの表情で見つめ、アリサは心配そうな表情で見つめていた。



「……この世界―――ゼムリア大陸の”猟兵”という存在は逃がせばいつか”猟兵崩れ”となって、犯罪を犯す事が多いと聞いています。後の災厄となる”種”を刈り取る事も”皇族の義務”です。」

「……ッ………!」

「実際その通りですから反論できませんけど、さっき殲滅したこいつら――――”北の猟兵”達は自分たちの評判を落とすような真似はしない事はそちらの調べでわかっている筈ですよね!?」

エイリークの正論にリィンが反論できない中、サラ教官は厳しい表情で問いかけた。

「戦場で猟兵達を見分ける等余程特別な事情がない限り普通ならそのような事はしない。元故郷の同胞達を庇う貴女の言動は当然と言えば当然だが、実際先程その猟兵達は貴女達に危害を加えようとした。恐らくリィン・シュバルツァーの拘束が目的だったのではないか?」

「……ッ……!それは……ッ!」

しかしゼトの指摘に反論できないサラ教官は唇を噛みしめた。

「貴方達”紅き翼”の活躍はリグレ候達からの報告で存じています。”双龍橋”では自分達の”敵”である領邦軍の命を奪わず、無力化で済ませたとの事ですが……一つ忠告をしておきましょう。例え敵であろうと命を奪わず、生かして罪を償わせるという方法は理想的な方法ですが、そんな”甘い考え”では”戦争”を終結させる事は”不可能”です。”戦争回避条約”によって設けられる猶予期間を守り、エレボニアを存続させたいのであればそのような甘い考えは捨て去るべきです。それに貴方達は士官学院生―――つまりは”兵の見習い”です。しかも貴方達はユーゲント皇帝達を救出する為にリフィア殿下達の部隊に同行する為には私が近衛兵達を殺す覚悟が必要と口にした時、オリヴァルト皇子達は貴方達にその覚悟はあると仰っていました。ですから当然今も”敵を殺す覚悟”も持っている筈ですよね?」

「それは…………」

「………………」

「そのくらいの事は私達もわかっています!でも他のやり方で内戦を終結させる事を探るのが私達―――”第三の風”なんです!」

「アリサさん……」

エイリークの忠告にラウラは複雑そうな表情をし、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込み、辛そうな表情で身体を震わせながら反論するアリサをセレーネは心配そうな表情で見つめていた。

「自覚をしているのならば結構です。ですが”戦争”に関わる限り、いずれ自分達の身や大切な存在を守る為、そして目的を果たす為に”敵を殺す必要がある事”が訪れる可能性がある事を頭の片隅に留めて置いて下さい。」

「……はい。それでは俺達はこれで失礼します。」

エイリークの言葉にリィンは複雑そうな表情で会釈をした後、仲間達と共にその場から離れた。



「ふふ……どうやら秘密もバレちゃったわね。」

エイリーク達が見えなくなった後サラ教官は寂しげな笑みを浮かべた。

「……何となく、察してはいました。やはり教官はフィーと同じ……?」

「ええ―――元猟兵よ。6年前、遊撃士になる前に”北の猟兵”に所属していた。ある一件でベアトリクス大佐に助けられてようやく抜け出せるまでね。」

「なるほど……だからサラ教官はベアトリクス教官に頭が上がらないんですね。」

サラ教官の答えを聞いたアンゼリカは静かな表情で答え

「……もしかしてフィーはサラ教官が元猟兵であった事を知っていたのですか?」

ラウラは複雑そうな表情でサラ教官を見つめて尋ねた。



「ええ。あの子には士官学院に来る前に話していたからね。」

「……やっぱり教官も色々と抱えていたんですね。」

「ふふ、昔の話ではあるんだけどね……さ、そんな事よりもザクセン鉄鉱山に急ぎましょう。」

アリサの言葉に答えたサラ教官は無理矢理話を終わらせてリィン達に先を進むように促した。



今起こり続けている事が紛れもなく人が互いの命を奪い合う”本物の戦争”である事をその目で見てしまい、現実を突きつけられたリィン達は内戦終結を早める事を改めて決意し、ザクセン鉄鉱山に急いで向かった。 
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