世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
なのは ~終わってからの始まりなの~
「て・・・「庭園」崩壊・・・消滅、しました」
「次元震、停止しました。断層発生は、ありません・・・」
「そう・・・了解(あれだけの力・・・・なんとも恐ろしいわね。[翼人、救世主にして破滅の者]とはよく言ったものね)」
管制室で報告を受けるリンディ。
改めて蒔風の力の恐ろしさを体感したところであった・・・・
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医務室
クロノ達はここで怪我の治療をしていた。
蒔風には怪我など一切なかったので壁に寄りかかっているが、表情が多少暗く見える。
「フェイトちゃんは?」
「護送室だ。彼女たちはこの事件の重要参考人だからね。残念だけど・・・」
「ま、仕方ないだろ。クロノが見ることになんだろ?なら安心だよ」
「でも・・・いっつ」
「なのは!ジッとしてよもう」
なのはが身を乗り出し、痛みに顔をゆがめる。
包帯を巻いていたユーノが注意した。
「今回の事件は一歩間違えれば次元断層すらも引き起こしかねなかったんだ」
「関係者の処遇には気をつけないとだからねーー」
「そうだ。でも大丈夫だ。彼女には酷い目には合わせないよ絶対にだ」
「クロノ・・・お前丸くなった?」
「誰の影響だと」
クロノがフッ、と笑いながら蒔風に言った。
「え?オレか?バカ言っちゃなんねえよ。そうなったのはあくまでお前の意志だ」
「・・・そうだね・・・というか、君が庭園を跡形もなく吹き飛ばしたから面倒なことに・・・」
「そうじゃなくても、あそこは崩れていたさ」
「一切の資料も持ち出せなかったし・・・」
「それは許さん」
「・・・プレシアか?」
「ああ・・・」
蒔風が天井を仰ぐ。
とても、悲しく、そして残念そうな顔で
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護送室
フェイトとアルフがここに拘留されている。
そこの通路に、なのはたちと別れた蒔風が入ってきた。
「あんた・・・」
「よう、フェイト。ちょっとお話ししよう」
「え・・・うん・・・」
そうして蒔風は話し始める。
話の内容は、これまでのこと。
最初に出会って、いきなり戦ったこと
ジュエルシードの暴走を抑え込んだこと
そして・・・プレシアの最後
「母さんが?」
「ああ。フェイトを・・・もう、一人の人間だって、言っていたよ。そして・・・」
蒔風がモニターに一枚の画像を出す。
「これは・・・・」
「プレシアの最後の・・・笑顔だ」
「・・・・」
「言っていたよ。この笑顔は人形には見せられない笑顔だって。でも、最後にプレシアが想っていたのは・・・きっと・・・」
「母さん・・・・」
「オレはプレシアを助けられなかった」
「そんなこと・・・ないよ」
「これはオレが背負わなきゃならない」
「・・・・」
「だからフェイト。お前は進んでくれ。決して立ち止まらないでくれ。お前の世界は、始まったばかりなんだからな」
「うん・・・うん!!」
「じゃ、オレはもう行くよ。ほんとはここ入っちゃいけないらしいからな」
「え?」
「いやぁ、どうしてもこれだけは見せたかったからな。話しておきたかったからな。「奴」もそろそろ来るだろうから、なのはのそばにいないとだし」
「「奴」?」
「ああ、話してなかったな。そうだな・・・・」
蒔風が五分ほどで説明した。
自身が翼人であることも含めて
「そんなことが・・・」
「というか、あんた本当に伝説の翼人だったんだね・・・」
「気にするなよ。ん?をう!そろそろ本気で見つかりそうだから、オレは逃げるよ。じゃあね」
「うん・・・じゃあ」
そうして蒔風は壁に向かって、手をかざす。
誰かの力でも借りたのか、物質情報の結合を解除、と呟くと、壁に穴があき、出ていくと、再びそこを閉めた。
「フェイト・・・」
「大丈夫だよ。アルフ・・・ありがとう」
フェイトの胸には、哀しみがあった。
でも、それよりも大きな、出会いがあった。
フェイト・テスタロッサはもう、大丈夫だった
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その後、蒔風、なのは、ユーノは事件に貢献した功績で、表彰を受けることになるらしい。
それを聞いて蒔風だけは、丁重にこれを辞退した。
「翼人の伝説がある世界で、オレなんかの記録を作っちゃまずいからな」
とのことらしい。
そうして、クロノも含め、四人になり、話題はフェイトのことになる。
「事情があったとしても、次元干渉犯罪の一端を担っていたことは事実だから・・・」
「ま、ただでは済まないよなぁ」
「うん・・・数百年以上の幽閉が、普通なんだが・・・・・・」
「そ、そんな!!!」
「ははん、クロノ。「なんだが」、でしょ?」
「ああ。前にも言ったが、絶対にそんなことはさせない。僕の正義が、許さない。何が何でも、上の人に理解させて見せる」
「クロノ君・・・」
「心配しないでくれ。彼女が自らの意志で加担していなかったことははっきりしている。それを、絶対に上の人間に伝えて見せる」
「頼んだぞ。クロノ」
「任せてくれ。そういったことは、得意なんだ」
「信頼してるぜ」
「なにも知らず、ただ母親のために一生懸命だった子に罪を問うほど、時空管理局は冷徹じゃないから」
「でも、見捨てようとしたよな~~あんとき」
「バッ、あのときのことはもう言わないでくれ!!!」
「ははーーーん。まーだ後悔してんのかーい?あのときすぐに助けにいけなかったのがっさ」
「う・・・うるさい!!」
「あははは!!!」
「笑うな!!!」
「うっ、ぷははははは!!くっくっく・・・ぷぁっはっはっは!!!」
「舜んんんんんん!!!!!」
「照れるな照れるっぷ!!!はははははは!!!」
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次の日の朝には、なのはたちは高町家に帰っていった。
戻ってきた日常、平凡な日々
なのはの胸にはフェイトのことが、まだ少し気がかりだった
そして蒔風は、だんだんピリピリしてきた
鋭い視線で、いつも周りを気にしている
さらに数日後
なのはの携帯に、時空管理局から連絡が入った
電波は世界を超えるのである
どうやら、フェイトは、これから身柄を本局に移され、裁判になるらしい。
しかし、ほぼ確実に無罪になるそうだ。
とはいえ、それには相当時間がかかることもあるために、始まったらしばらく会えなくなる。
その前に、今からフェイトに会えるのだそうだ。
なのはに、会いたいと言っているらしい。
そうして約束の橋の上に来たなのはたち。
クロノとアルフも来ていた。
「時間もないから、二人で話すといい。僕たちは、あっちにいるから」
「ありがとう、クロノ君」
「じゃ、行きますか」
「あ・・・」
「ん?なんだい?」
「あなたとも、話したいことが・・・・」
「・・・光栄だな」
周りが一瞬静かになる。
そうして、蒔風、なのは、フェイトが話し始めた。
「話したいこと、いっぱいあるのに・・・何話したらいいか、わかんないや」
「そうだね・・・私もうまく言葉にできない・・・」
「いろいろあったからねぇ・・てか、オレいなくてよくない?」
蒔風が蚊帳の外であることを危惧し始める。
「でも、嬉しかった。私と、真っ正面から向き合ってくれて」
「呼び止めたのあなたですよねー?なんでー?」
フェイトに話しかけるが、無視される。
「うん・・・私ね、フェイトちゃんと、お友達になれたらって、想ってるの!」
「あれー?なのはさん、あなたもシカトですかー?」
なのはにもスルーされ、いたたまれなくなってきた。
お前もうちょっと黙れ。
「でも・・これから、出かけちゃうんだよね」
「うん・・・少し長い旅になる」
「・・・・・」
蒔風が橋の反対側でいじけ始めた。
私は悪くない。
「また、会えるんだよね!?」
「ぁ・・・うん。まだ少し悲しいけど、やっと本当の自分を始められるから」
「フェイトちゃん・・・」
「あなたたちのおかげだよ」
「・・・え?オレ?やっと話題振られた?」
話題にやっと入れそうになり、蒔風が二人による。
「うん・・・貴女が私と対等に向き合ってくれたから、貴方が私と対等の立場で酷い言葉でも私のために叫んでくれたから、私はここにいられる」
「フェイト自身が見つけた現実だよ、それは。オレたちはきっかけでしかない」
「それでも・・・私の目を覚まさせてくれたのは、あなたたち二人だった・・・」
「フェイト・・・」「フェイトちゃん・・・」
「今日来てもらったのは、あのときの返事をするため」
「え?」
「君が言ってくれた、「友達になりたい」って」
「うん、うん!!」
「私にできるなら、私ででいいなら・・・って。だけど・・私・・・」
「どうしたらいいかわからないのかい?」
「うん・・・・だから教えてほしいんだ・・・どうしたら友達になれるのか・・・」
「簡単、だよ・・・・・」
なのはが言う。
それは、誰にでもできることだと。
「え?」
「名前を呼んで。初めはそれだけでいいの。君とか、あなたとかじゃなくて、ちゃんと相手の目を見て、ちゃんと相手の名前を呼ぶの」
「ぁ・・・」
だから、何度もなのはは名前を呼んでいた。
フェイトと友達になるために
あとは、もう片方が、手を伸ばすだけ
「私、高町なのは。なのはだよ!!」
そして
「なのは・・・」
手が、届いた
「うん、そう!!」
「な、の、は」
一文字ずつを、かみしめるように言う。
決して、間違わないように。
「うん!!」
「オレは、蒔風舜な」
「舜・・・」
「いきなし下か」
「あ・・・」
「いや、大丈夫だよ。ありがとう、フェイト」
「うん・・なのは、舜!!」
「うん!!」「ああ!!」
「ありがとう、なのは、舜」
フェイトがなのはと蒔風の手をとる
三人が笑う
そして
その瞬間、水中から、何者かが飛び出してきた。
「温かいねぇ~~~~~。美しい友情だねぇ~~~~!!」
「「!?」」
「おいおい、空気読めよ。普通ここで出くくるかよ。てめぇ!!!」
「奴」が、来た。
二人を庇うように、蒔風前に出る。
「奴」はというと、その態度を見るに何かにイラついているように見える。
「よかったな、そこな少女よ。そいつが最主要人物でよ」
「舜君!!あいつは!?」
「「奴」だよ。全く、長い長いプロローグだったぜ・・・・」
「え?」
「そうだなぁ!!こっからが、オレたちの!!!」
「この世界での!!物語だからな!!!」
「舜!!!」
「なんだいあいつ!?」
アルフとその肩に乗ったユーノ、それとクロノが三人に駆け寄る。
「アルフ、ユーノ。結界を頼む」
「え?」
「開翼・・・」
バッサ!!!ブォア・・・
結界が張られたことを確認すると、蒔風が飛びあがり、「奴」と同じ高さまで上がる
「あーーーくっそ。計算し続けてあったま痛いわ」
「休んでくりゃよかったじゃないか」
「は!!あんな、最主要人物が相手だったからまともになれたような幸運野郎見てたら、腹立ってきたんだよ」
「なんだそりゃ。前々から思ってたけどよ、てめえのそれはもうただの僻みじゃねぇか!!」
「黙れ!!主人公だからという理由だけで成功してきた者にはわからない!!必ず努力が実るような、うまくいくようなやつにはなぁ!!」
「どう言ってもしょうがないみたいだな」
「わかってただろ?」
「まあ・・・な」
「舜君!!私も!!!」
「僕も!!」
「私も・・・!!!!」
なのは、クロノ、フェイトが蒔風の横にまで飛んでくる
「お前ら・・・フェイトはいいのか?クロノ」
「僕が与えた。この状況で、規則とか言ってられないからね」
「いや危ないんだけど・・・ま、止めて止まる奴じゃないし、しょうがないか」
なのは、クロノ、そしてフェイトの三人が、デバイスが握って敵を見据える。
「は!!ぶっ殺すぞ!!!主人公どもが!!!!」
「させないよ・・・絶対に!!」
「友達になったのに、終わりになんて、させない!!!」
「わたしはまだ、始まったばかりなんだ!!!」
「いきなりやってきて「ぶっ殺す」とは何て言い草だ・・・・時間がないんだ、早く終わらせよう」
「終わるのは・・・どっちかなぁ?」
なのはたちが叫び、蒔風が意志を固める
そうして、「奴」も構える
川の水がうねりをあげ、空には雷鳴がとどろく。
「終わらせねえよ・・・今!オレのこの世界での話は、始まったんだからな!!!」
そうして一つの話が終わり、ひとりの少年の「この世界」での物語が始まる。
長過ぎたプロローグは、ここから短い本編に入る。
to be continued
後書き
アリス
「ついに「奴」の登場ですね。いやー、空気読めてないですね」
でも「奴」にとってして見ればやっと計算が終わったところなんです。
早く終わらせたいのでしょうね。
アリス
「さて、ここでプロローグだとかそこらへん聞きたいのですが?」
ああ
なのはにとっては、この話は丸々本編でした。
フェイトにとっては、自身の存在を見つけ出したところから、始まりでした。
では蒔風にとっては?
蒔風の物語は、各世界での「奴」との戦いです。
それまでの物語は、正直すべてがそれまでの時間つぶしなんですよねぇ
アリス
「あの話を時間つぶしだとか言ったら、ファンに殺されちゃいますよ?」
時間つぶしとはいっても、蒔風は本気で取り組んでますから。
「奴」が動き出すまであれだけのことがあったら、そりゃほっとくわけにはいかないでしょう。
アリス
「まあ、そうですね」
だから、ここからが本編なんです。蒔風にとっては
じゃ、この辺で
アリス
「次回、「奴」との戦い。なのはの世界ももう終わりですね」
ではまた次回
魔法少女、はじめました
ア「今更キャッチコピー!?」
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