世界をめぐる、銀白の翼
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
なのは ~戦う理由がそこにあるの~
モニターに映し出されたひとりの女性
彼女についてクロノとエイミィの説明が入る
「名前、プレシア・テスタロッサ。私たちと同じ、ミッドチルダ出身の魔導師にして、研究者」
「専門は次元航行エネルギーの開発。かつての実験の失敗で、ミッドチルダの一部を吹き飛ばし、その身を追われた人物ですね」
「過去の登録データと、さっきの攻撃の魔力が一致したから、まず間違いなさそうです」
「そして・・・・フェイトちゃんのお母さん・・・」
「確かに、フェイトは母さん、と言っていたな。だが、とてもじゃないが良い顔はしてなかったな。むしろ怯えた感じだった」
「うん・・・・」
「エイミィ。彼女について、もっと情報を集めて」
「了解です!」
リンディがエイミィに指示を出す。
が、しかし
「・・・・・ダメです。家族構成やこれまでの足取りのデータは綺麗サッパリなくなっています。本局に申請したので、一両日中にはデータがそろうかと」
「そう・・・ありがとう」
「フェイトの背中には傷があった」
「え?」
蒔風の発言に皆が注目する。
「しかも魔法戦やジュエルシードの封印の際の怪我じゃない」
「それはどういう・・・」
「そういえばアルフさん、言ってました。フェイトちゃん、家に帰る度に辛いってみたいなこと・・・・」
「俺が見るに、傷の元は鞭によるものだと思う」
「ま・・・まさか!!」
「まさかだと・・・いいけどな」
「・・・・とにかく、今はあの二人とも、あれだけの魔力を使ってすぐには動けないはず。アースラのシールドも補強しないといけないし、なのはさんたちは一旦、帰宅した方がいいでしょう」
そう、あのときのプレシアの雷による攻撃は、アースラにもあったのだ。
「でも・・・」
「なのは、休むことも必要だよ」
「それに、アリサ・バニングスやすずかに連絡入れないと、心配させちまうぞ」
「うん・・・・」
ユーノと蒔風が説得する。
今焦ってもしょうがない。
そうして、なのはたちは一旦帰宅した。
-------------------------------------------------------
「フェイト・・・フェイト!!」
世界の狭間にある、プレシアの根城「時の庭園」
そこにアルフの叫びが響く。
駆け寄る先には傷つけられたフェイトが倒れて動かない。
つい先ほどまで、フェイトはプレシアに鞭打たれていた。
あれだけの好機に、なにをボケッとしていたのかと。
アルフには信じられなかった。
あれだけ頑張ったのに
あれだけ歯を食いしばってたのに
フェイトがそれでも頑張る、その理由であるアンタは
睨みつける先にはあの女の部屋がある
『フェイトのことを想うなら、時には主の命にも逆らえよ!!!あらゆる手段を使えよ!!!それが、命懸けってやつだろうがよ!!!』
あのときの・・・蒔風だっけ?
あの少年の言葉を思い出した。
そうだね・・・・
あのときは聞き流したけど、その通りだね・・・・
フェイト、ごめんよ
でも!もうダメだよ!我慢出来ない!
ドォン!!
考えたのは最初の一瞬だけ
あとはこの私の使命のままに!!
吹き飛ばした扉を潜り部屋に入ると、あの女がいた
「あああああ!!」
私はあいつに飛び掛かった。
障壁を張られたけど、関係ないね!
今のあたしは、いつもと違う!!
バキィ!
障壁を破り、胸倉を掴む。
ぶん殴りたい衝動を、言葉に変えて叫んだ。
「あんた!あの子の母親だろう!?あの子が何のために戦ってるのか、知ってんだろ!?あんなに一生懸命な子に、なんであんな事を!!」
フェイトがあんなにまで頑張ってるのはあんたの為なんだよ!
なんであんたはそんなあの子にあんな仕打ちするんだよ!
「自分の為に頑張ってくれている娘に、どうしてあんな事できんだよ!!」
しかし、プレシアはなにも言わない。
ただ、目だけが語っていた。
--クダラナイ--
その瞬間、プレシアの魔法が腹を撃ち抜いた。
「ぐっ、ああああ!!」
部屋の隅まで吹き飛ばされる。
口の中に血の味が広がる。
「全く・・・あの子は使い魔の作り方が下手ね。感情剥き出しじゃないの。それに、あなたわかってるの?私はあの子の母親よ?」
「関係、ないね」
「なに?」
「あたしの主人はあんたじゃない、フェイトさ!フェイトの為なら、あたしは何でもする。そのためならフェイトの母親でも、あんたは私の敵だ!!」
「・・・・はぁ、ダメね。やっぱり、人形が作った使い魔なんて、不完全極まりないわね」
「え?」
「あなた、もういらないわ・・・消えなさい」
(まずい・・・消される!)
思った瞬間、アルフのいた場所が粉々になった。
プレシアの攻撃で部屋の一部が吹き飛び、穴が開く。
そこにはアルフの姿はなかった。
とはいえ、プレシアはアルフを消し去るつもりで攻撃していたので、それがないところで得に疑問を抱くことはなかった。
プレシアはフェイトにアルフは逃げ出したと伝えた。
フェイトは信じてはいなかったが母の言うことに口答えは出来なかった。
しかし、そう思われていたアルフはとっさに防御して逃げていた。
それでもダメージは深刻だ。
(どこでもいい・・・転移しなきゃ・・・ごめんねフェイト。必ず助けるから・・・・)
そしてアルフは転移した。
その先でひとりの少女に拾われるまでに、そう時間はかからなかった。
-------------------------------------------------------
学校
なのはは久しぶりの友人と、実に楽しそうに会話をしている。
こう見ていると、本当に年相応の小学三年生らしい。
「ねぇ、久しぶりにうちに遊びに来ない?新しいゲームもあるし」
「いいねいいね!」
「うん、行こう!」
「・・・あんたも、来たければ来てもいいのよ?」
ふと、アリサが蒔風にも声をかける。
え?と言う風に目を開く蒔風だが、すぐに飛びついて
「マジで?でじま、マジでじま!?」
「古いわよ!!」
「行かせていただきます!!お嬢様!!」
「お?いいわね!!もっと崇めなさい!!」
「ははーーー」
「あっはっはっはっは!!!」
蒔風がいつのまにか大きな葉っぱのうちわを取り出し、アリサを扇いでいる。
「アリサちゃん、ノリノリすぎ・・・・」
「あ、そうそう。あと、大きな犬拾ったのよ」
「どんな犬なの?」
「えっとね、オレンジ色で、額に宝石見たいのが付いてた」
『舜君』
『間違いないな・・・・』
『『アルフ(さん)だ』』
----------------------------------------------------------------------
『まさか、こんなに早く会えるとはね・・・』
バニングス家の庭
そこに置いてある檻の中に、アルフはいた。
その体には包帯が巻かれ、あまり万全とはいえないようだ。
「あんまり元気ないみたいだね」
「うん・・・結構ひどい怪我だったしね・・・・」
檻の前でアリサとすずかが話している。
その横から、ユーノを抱えながらなのはが、少し後ろに蒔風が立ってる。
『なのは、彼女からは僕が話を聞いておくよ』
『オレも。何があったのか聞きたいんだ』
『うん、お願い』
なのはが二人と家に入る。
蒔風はもうちょっと様子を見てみたいと残った
そして蒔風は普通に、二人は念話で話す。
『どうして君がここにいるんだ?』
「フェイトはどうした。何かあったんかい?」
『・・・・この会話、管理局の連中も聴いてるんだろ?』
『・・・・ああ、管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。正直に話してくれるなら、悪いようにはしない』
クロノがアルフに通信で話しかける。
その言葉は純粋な想いから来ていた。
『・・・・わかったよ。話すよ。代わりに、フェイトを、フェイトを助けてやってくれ・・・・』
「「「当たり前だ」」」
三人の声が揃う。
そしてアルフが話しだす。
フェイトがジュエルシードを集める理由。
それは彼女の母親、プレシア・テスタロッサの指示だった。
プレシアは何らかの目的のためにジュエルシードを集めている。
フェイトは、母親のためと一生懸命に頑張った。
しかし、プレシアはそんなフェイトを見ようともしない。
さらには集まりが悪いと、鎖で吊るし、鞭を打ち、フェイトに仕置きをしていた。
だがいくらなんと言おうとも、アルフから見ればお仕置きとは言うばかりの、ただの虐待。自らの憂さ晴らしにやってるようであった。
そんなフェイトにアルフは何度もこんなことはやめよう、と訴えていた。
だが、フェイトは母さんのためだから、母さんを困らせちゃ駄目だから、と今まで頑張ってきたのだ。
アルフは、そんなフェイトを救うためについにプレシアに牙を剥く。が、返り打ちにあい、ここまで逃げてきたのだそうだ。
「なんでそんな無茶したんだ」
『あんたの言葉さ』
「オレの?」
『あんた言ったろ?主人のために命懸けでってさ。だからあたしはフェイトのために、やっと立ち上がったんだ・・・でも・・・・』
その声が、悔しさにわなわなとふるえていく。
『でも・・なにもできなかった・・・フェイトを守るんだって言っても、結局負けて、フェイトを置き去りにして・・・・今、フェイトは一人ぼっちなんだよ・・・なんで・・・なんであたしは弱いんだ・・・使い魔なのに・・・あの子を・・・守れない・・・』
「守れるさ」
『え?』
「そもそも、お前がこういう行動をとらなきゃ、こっちにゃプレシアの手がかりもなかったんだ。お前の行動が、フェイトを救い出す第一歩になってるって考えれば、お前は十分、フェイトを守れているじゃないか」
『そうか、な・・・・』
「それにな、弱いなら頼れ。管理局は立場上難しいかもしれないが、オレやなのははフェイトを助けるつもりでいるんだからな。頼れる仲間は、おまえの強ささ」
『舜、見くびらないでくれ。管理局だって、彼女を救うために全力を尽くす』
『僕もだ。僕の力は弱いかもしれない・・・でも、この思いは誰にも負けないつもりだ』
「はは。どうだ?あっという間に味方ができたぜ?」
『あ・・・う・・・うっ・・・・』
「世界ってのはさ、確かにクソったれなことがたくさんあるさ。でも、絶望するほど救いがない世界なんて、ないんだ」
『あああ・・・・』
「大丈夫だ、安心しろ。救いは確かにここにある」
『うっ、うっ・・・ありがとう・・・フェイトを・・・頼む!!・・・・』
『なのは、聞いていたかい?』
『うん』
通信で話を聞いていたなのはが会話に入る。
『管理局はこれより、プレシア・テスタロッサの逮捕及びフェイト・テスタロッサの保護に全力を注ぐ』
『私たちは?』
『僕たちはプレシアを追うから、もしそれまでにフェイトが現れたら、君に一任する』
「お、クロちゃん太っ腹」
『それが一番いいと、僕も思う。なのはにしか、できないと思う』
『彼女と一番長く戦い、話し、出会ってきた君なら、彼女を救える。任せたよ』
『はい!!!!』
そして翌日の、夜が明けるころ
なのはたちは家を出た。
昨晩にもう家族に話してはあるので、問題はない
なのはは駆ける。
フェイトに、答えを聞くために。
途中でアルフも合流した。
己の主を救い出すために。
ユーノはそれを見届ける。
これからのことが、確かにあったと証明するために。
蒔風はなのはを見守るつもりでいる。
何者にも、これから起こることの邪魔をさせないために。
そして、海に面した公園につく。
そこで心を澄まして待っていると、やって来た。
フェイトがそこに現れる
大切な人の笑顔が戻ると信じて
そして二人は言葉を交わす。
お互いのジュエルシードをすべて賭け
最初で最後の本気の勝負
そして、想いを伝えるために
二人の魔法少女の、最後の戦いが始まる。
しかし、ここまで来ても、まだ
この物語はプロローグにもなっていない
to be continued
後書き
今回はこの辺で
アリス
「次回、決着、そして・・・・」
ではまた次回
この手にあるのは、撃ち抜く魔法。涙も痛みも、運命も
ページ上へ戻る