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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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外伝~”放蕩皇子”の嘆願~後篇

同日、21:10―――――





~セントアーク市・宿酒場”トバ”・客室~



「……改めて自己紹介をしよう。私の名はオリヴァルト・ライゼ・アルノール。エレボニア皇子の一人だ。遥か昔からゼムリア大陸全土が崇めつづけて来た存在である貴女に出会えた事に貴女自身に感謝する、”空の女神”エイドス殿。」

エイドスと対面したオリヴァルト皇子は恭しく会釈をして挨拶をし

「フフ、感謝をするのならば”イース”に感謝してください。―――改めまして。私の名はエイドス・クリスティン・ブライト。”冒険家”アドル・クリスティンと”自由の女神”フィーナの娘にして、大変不本意ですが人々から”空の女神”と称えられている者です。」

エイドスは苦笑した後自己紹介をし、エイドスの自己紹介にエステル達は冷や汗をかいて脱力した。



「エ、エイドス……」

「こんな時くらい、真面目に自己紹介をして下さいよ……オリビエさんですらも真面目に自己紹介をしたんですから……」

「というか、何でそんなに”空の女神”って呼ばれる事を嫌がっているんだよ……」

アドルは表情を引き攣らせ、ヨシュアとトヴァルは疲れた表情で呟いたが

「え?だって、”空の女神”なんて二つ名、痛々しくありませんか?」

エイドスの発言によって、エステル達と共に再び冷や汗をかいて脱力した。



「ア、アハハ……ケビンさん達が聞いたら卒倒しそうだよね……」

「まあ、自分達が崇めつづけて来た存在の名を痛々しいと思われたら、聖職者なら間違いなくショックを受けるでしょうね……」

「ハア……本当に何があって、こんな性格になったのよ……」

「というかいきなり、シリアスな雰囲気を台無しするんじゃないわよ。」

「エステル、君もその発言で台無しにしているよ……」

(まさに似た者同士ですわね……)

ミントとエレナは苦笑し、フィーナは疲れた表情で頭を抱え込み、ジト目でエイドスを見つめるエステルにヨシュアは疲れた表情で指摘し、エステルの棒の中にいるフェミリンスは呆れた表情をしていた。



「―――さてと。”空の女神である私”に用があるとの事ですが、一体何の御用でしょうか?」

「……ッ!それが”女神として”のお前さんの顔って訳か……」

突如神々しい雰囲気を纏い、真剣な表情になったエイドスに驚いたトヴァルは目を細めてエイドスを見つめ

「……その前に確認したい事がある。女神殿はリウイ陛下達―――メンフィルからの依頼―――”ハーメルの悲劇”を世界中に公表した際、リベールは完全に被害者であるような事を公言する依頼を請けたという話は(まこと)だろうか?」

「あ…………」

「オリビエ。あんた、まさか………」

「………………」

オリヴァルト皇子のエイドスに対する問いかけを聞いたミントは辛そうな表情をし、エステルは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめ、ヨシュアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



「―――ええ。メンフィル帝国の方々には”今のゼムリア大陸”で活動する為に、色々と便宜を図って貰えましたからね。その”対価”として私は彼らの依頼を請けただけですが……何か反論でもおありなのですか?」

「いや、あの件によって起こった”百日戦役”は事実リベールは完全に被害者の為、エレボニアは反論のしようがない。……他国の領地欲しさに守るべき民達を虐殺し、あろうことかその罪を侵略する他国によるものにして戦争を仕掛けると言った罪深き所業はこのゼムリア大陸の”女神”であるエイドス殿や、エイドス殿の母君も許せない所業だろう。」

「……………」

「フィーナ…………」

エイドスの問いかけに答えたオリヴァルト皇子の話を聞いて複雑そうな表情をしているフィーナをアドルは辛そうな表情で見つめ

「……もしかして私に用とは、”ハーメルの悲劇”を公表した際リベールをフォローする発言の件に関する事ですか?」

目を伏せて考え込んでいたエイドスは静かな表情で問いかけた。



「……ああ。できれば、エレボニアの事もフォローする発言を”空の女神”である貴女に公言して頂きたい。確かに”ハーメルの悲劇”はエレボニア帝国自身によって行われた事だが、実際に”ハーメル村”を襲わせるようにした真の黒幕は”結社”の”蛇の使徒”―――”白面”ゲオルグ・ワイスマンの仕業だ。」

「……”ハーメルの悲劇”の真相や真の黒幕等についてもリウイ陛下達より話には聞いています。エレボニア帝国だけに非がある訳でない事は理解していますが……それでも、碌に調べる事もせずにリベール王国に侵攻する事を決めた政府や皇家の方々に罪がないとは言わせませんよ?」

「勿論理解している。だが何も知らないエレボニアの民達に罪はない。どうかエレボニアの民達の為にも”ハーメルの悲劇”の件でエレボニア帝国の事もフォローする発言を公言して頂けないだろうか?――――どうかエレボニアに御慈悲を。」

エイドスの言葉に静かな表情で頷いたオリヴァルト皇子は何と土下座をして頭を床につく程深く下げ

「オリビエ………」

「オリビエさん…………」

「………………」

皇族としてのプライドを捨ててまでエイドスに嘆願するオリヴァルト皇子の様子をエステルとミントは心配そうな表情で見つめ、ヨシュアは辛そうな表情で黙り込み、アドル達はそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「…………フゥ。第三者である私に頭を下げて頼み込む前に、まず頭を下げて謝るべき人物がこの場にいると思うのですが。」

自分に嘆願するオリヴァルト皇子の様子を黙って見つめていたエイドスは軽く溜息を吐いて指摘し

「エイドスより前に頭を下げて謝るべき人物だと?」

「当事者であるヨシュアさんの事ですね……」

「あ……」

「ヨシュア…………」

エイドスの指摘にトヴァルが不思議そうな表情をしている中、複雑そうな表情をしているエレナの言葉を聞いたミントは不安そうな表情をし、エステルは辛そうな表情でヨシュアを見つめた。



「……確かにその通りだね。―――自国の安寧を優先し、守るべきハーメルの民達を虐殺した所か”ハーメルの悲劇”を闇に葬った私達エレボニア帝国の事を許してくれとは言わない。だがそれでも謝らせてくれ……――――すまなかった。君やレーヴェ君が望むのならばエレボニアが存続しようが、滅亡しようが父上達にも君とレーヴェ君の前で謝罪をさせるつもりだし、賠償もするつもりだ。」

エイドスの指摘に頷いたオリヴァルト皇子は土下座をした状態でヨシュアを見つめた後再び頭を下げ

「…………頭を上げてください。確かに僕とレーヴェはあの件についてエレボニア帝国政府に対して色々と思う所はありますが……あれが切っ掛けとなって、僕は第2の故郷であるリベールの人々やエステルと出会う事ができ……レーヴェは姉さんとも再会できました。憎しみを抱えたままではお互い幸せになれない事は理解していますし、あの件の首謀者は全員”報い”を受けました。レーヴェはわかりませんが……僕はエレボニア帝国政府や皇家の方々を恨むつもりはありませんし、故郷であったエレボニアもかつてのように平和を保ち続けて欲しいと今でも思っています。」

「ヨシュア……」

「ヨシュア君…………―――ありがとう。」

ヨシュアの答えを聞いたエステルは明るい表情をし、オリヴァルト皇子は感謝の言葉を述べ

「………それで。オリヴァルト皇子の依頼はどうするのかしら、エイドス?」

フィーナは静かな表情でエイドスを見つめて問いかけた。



「…………いくつか条件があります。その条件を全て呑むのであれば、”ハーメルの悲劇”を公表後”空の女神”としてリベール同様エレボニアの事をフォローする発言を公言致しましょう。」

「条件だと?」

エイドスの答えにトヴァルは眉を顰めた。

「一つ目は”ハーメルの悲劇”によって亡くなった”ハーメル”の民達全員分のお墓をハーメル村跡に建て、エレボニア皇家と政府の方々は今後永遠に毎年彼らのお墓参りをしてあげて下さい。特にエレボニアの”皇”はその日は必ず出席するようにしてください。それとお墓は慰霊碑等ではなく、個人のお墓にしてあげて下さい。」

「エイドスさん…………」

「……承知した。その日は毎年国を挙げて、”ハーメル”の民達に対する追悼をするように父上に進言し、実行する。」

エイドスの言葉にヨシュアが驚いている中、オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って会釈をした。



「二つ目は現エレボニア皇帝――――ユーゲント・ライゼ・アルノールは死後、ハーメル村跡に建てられたハーメルの民達の墓地の中に彼の墓を建て、その墓に葬ってください。」

「ええっ!?」

「ちょっ、エイドス!?一体何を考えているの!?皇族は死んだら普通、皇族専用の墓地みたいな所に葬られるのよ!?」

エイドスの出した驚愕の条件にミントは驚き、エステルは信じられない表情でエイドスに問いかけ

「”ハーメルの悲劇”が起こったのは当時のエレボニア皇帝――――ユーゲント・ライゼ・アルノールにも当然責任があります。彼が亡くなったハーメルの民達に対して唯一できる贖罪はそれしかないと思います。」

「それは…………」

「……確かに死者に対してする贖罪はその方法が一番いいかもしれませんね。」

エイドスの答えを聞くと複雑そうな表情で黙り込み、エレナは静かな表情で同意した。

「……承知した。他にも条件はあるのだろうか?」

一方エイドスの説明に納得したオリヴァルト皇子は続きを促した。

「ええ。三つ目はリベール王国に自作自演で”ハーメルの悲劇”を引き起こして”百日戦役”を起こした賠償として、謝罪金並びに賠償金、そして領地の一部を贈与してください。」

「な―――――」

「何だと!?謝罪金や賠償金はわかるが、何で領地の一部までリベールに贈与する必要があるんだ!?」

エイドスの口から出た予想外の条件にオリヴァルト皇子が絶句している中、トヴァルは厳しい表情でエイドスを睨んだが

「―――領地欲しさに自作自演で自国の領民を虐殺し、挙句の果てには戦争を起こしてリベールに住まう多くの民達の命を奪ったのですから、その”対価”として自らの領地を差し出すべきだと私は思っています。つまりは”因果応報”という事です。」

「それは………」

「エイドス………」

「………………」

エイドスの正論を聞くと複雑そうな表情で黙り込み、フィーナは辛そうな表情でエイドスを見つめ、アドルは重々しい様子を纏って黙り込み

「で、でも……エレボニア帝国はメンフィル帝国との戦争を回避する為に調印した契約書――――”戦争回避条約”によって、半分以上の領地が削り取られるんだよ?それなのに、まだ領地を減らすなんてことをするのは可哀想だと思うのだけど……」

ミントは不安そうな表情でエイドスに指摘した。



「それとこれとは別問題です。――――本来なら”百日戦役”終結後にリベールに賠償すべきでしたのに、そんな当然の事すらも怠ったエレボニアの”自業自得”です。」

「ハハ……さすがは”白面”をも言い負かせたエステル君の先祖だけあって、正論かつとんでもなく厳しい意見だね……」

「何でそこであたしが出て来るのよ。」

「今は黙っておこうよ、エステル……」

エイドスの言葉を聞いて疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子をジト目で睨むエステルをヨシュアは呆れた表情で指摘した。



「……わかった。”ハーメルの悲劇”公表後、必ずリベールに謝罪金並びに賠償金を支払うし、エレボニアの領地の一部を贈与する事を父―――現エレボニア皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールの息子、オリヴァルト・ライゼ・アルノールの名において確約する。ちなみにどのくらいの領地をリベールに贈与すればいいのだろうか?」

「それは貴方方で考えてください。―――最も、差し出した領地が例えば辺境ばかりだったのならば、ただでさえ”ハーメルの悲劇”によって落ちた各国のエレボニアに対する評価が更に落ちる事も考えられますが。」

「エイドスの言う通りリベールに対する賠償が大した事が無かったら、下手をしたら”百日戦役”を起こした事をエレボニアは反省していないように見られるかもしれないね……」

「そうですね……それどころかまた”ハーメルの悲劇”のような事を引き起こして、失った多くの領地の分を取り戻す為に今度は自分達の国に戦争を仕掛けられるのではないかと警戒される事もあるでしょうね。」

オリヴァルト皇子の質問に答えたエイドスの話を聞いたアドルとエレナはそれぞれ重々しい様子を纏って答え

「…………忠告、感謝する。それで他にも条件はあるのだろうか?」

オリヴァルト皇子は静かな表情で会釈をした後エイドスを見つめて問いかけた。



「ええ。これが最後の条件になるのですが……最後の条件は他国の領土を手に入れる為の暗躍を2度としない事です。なお期間は永遠で、当然その中には”ハーメルの悲劇”のような自作自演の暗躍も入っていますよ。」

「へ……それって、どういう事??」

エイドスが出した条件の意味がわからなかったエステルは不思議そうな表情で首を傾げたが

「―――衰退が確定しているエレボニア帝国は2度と暗躍によって領土を広げられないって事だよ。」

「あ…………」

ヨシュアの説明を聞くと複雑そうな表情でオリヴァルト皇子を見つめた。



「今は信じてもらえないだろうが、私達皇族は”ハーメルの悲劇”を今でも後悔し、ハーメルの民達にもいつか償いをしたいと思っている。それに私自身2度とあのような悲劇を繰り返す事を許さないし、私個人としても暗躍をして他国の領土を手に入れるというやり方も許せない。」

「……ちなみにもしその条件を破ったらどうなるんだ?」

オリヴァルト皇子が決意の表情で語った後、トヴァルは真剣な表情でエイドスを見つめて問いかけた。

「その時は…………―――私―――”空の女神”を崇めている宗教団体の裏組織―――”星杯騎士団”、でしたか。その暗躍をした愚か者達を”外法”扱いし、”星杯騎士団”の皆さんに”狩って”もらいます。」

「ええっ!?ケ、ケビンさん達に!?」

「ちょっと、エイドス!?さすがにそれはやり過ぎじゃないの!?そりゃ、あたしも個人的に暗躍をして領土を手に入れるなんてやり方は許せないけど……」

エイドスの話を聞いたミントは驚き、エステルは信じられない表情で声を上げた後真剣な表情でエイドスを見つめて指摘した。



「女神である私自身を味方にし、更に私が現代を去った後に衰退した自国の領土を広げる為にまた同じ事を繰り返す等虫が良すぎる話の上、都合の悪い時だけ私を利用したという事にもなるでしょう?”女神”である私の出した条件を守らず、私を利用した愚か者は”外法”としか思えないのですが?」

「それは………………」

(……確かにその通りですわね。”神”との契約を破る等、”神格者”が”神核”を授けてもらった神の意志に逆らった際の末路同様万死に値しますわ。)

エイドスの正論を聞いたエステルは複雑そうな表情で黙り込み、フェミリンスは静かな表情でエイドスの正論に同意していた。

「エイドスさん。もし、後でエレボニアが暗躍で他国の領地を手に入れた事が判明した場合はどうするのですか?」

「エレボニア帝国による暗躍で他国の領土を手に入れた事が判明した際は直ちにその国に返還すると共に賠償をし、暗躍をした者達を七耀教会に引き渡し、その者達を七耀教会に”狩って”もらいます。当然例外は認めませんので、その暗躍をした者達が貴族や皇族でも七耀教会に引き渡してもらい、”狩って”もらいます。」

「ハハ……最後の最後にある意味とんでもない条件を出されたね……”情報局”にとっては真っ青な条件だろうね。」

「確かに今までの暗躍で手に入れた領地の件にあいつらが必ず関わっていたそうですからね……」

エレナの質問に答えたエイドスの話を聞いて疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の言葉を聞いたトヴァルは複雑そうな表情をしていた。



「―――わかった。先程出した4つの条件を全て実行する事を私――――オリヴァルト・ライゼ・アルノールが現皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールの代わりに確約する事を宣言する。だからその代わり……」

「ええ、わかっています。私は自分の”目的”を果たしても、”ハーメルの悲劇”を公表するまでは現在のゼムリア大陸に留まるつもりです。その時は”空の女神として”リベール同様エレボニアの事もフォローする発言を公言致しましょう。」

こうして………目的を果たす事ができたオリヴァルト皇子はエステル達に別れを告げ、内戦終結に向けての活動を再開した………… 
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