英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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外伝~”放蕩皇子”の嘆願~前篇
同日、19:40―――――
~メンフィル帝国領・セントアーク市・遊撃士協会・セントアーク支部~
「あら、こんな時間に依頼?―――って、トヴァルじゃない。どうしてあんたがここに……げ。」
遊撃士協会の受付に座って何かの事務作業をしていた銀髪の女性は支部に入って来たトヴァルに目を丸くしたが、トヴァルの傍にいる人物―――オリヴァルト皇子に気付くと嫌そうな表情をした。
「よお、”嵐の銀閃”。久しぶりだな。」
「おお、まさかこんなタイミングでシェラ君と再会できるなんて……!フッ、これも”女神の巡り会わせ”というものだね♪」
トヴァルは片手を軽く上げて挨拶をし、オリヴァルト皇子は酔いしれた様子で女性を見つめた。
「あー、はいはい。こんな状況でも、あんたのその戯言も相変わらずである意味安心したわ。……というかあんなハチャメチャ女神による巡り会わせとか、冗談抜きで勘弁してほしいわよ……」
女性――――リベールの遊撃士であるシェラザード・ハーヴェイは疲れた表情で溜息を吐いた。
「ハハ………その様子だとエステル達と一緒にこっちに来た自称”ただの新妻”とも会ったようだな?」
シェラザードの様子を見たトヴァルは苦笑しながら問いかけ
「ええ……ミント達と一緒に来たアドルさん達から話には聞いていたけど、何なのよあの性格!?まさか”空の女神”がエステルすらも比べものにならないくらい、無茶苦茶な性格をしているとは夢にも思わなかったわよ……両親はまともな性格なのに、一体何があってあんな性格になったのか不思議なくらいよ。」
問いかけられたシェラザードは疲れた表情で呟いた。
「フフ、どんな人物なのか会うのがますます楽しみになってきたね♪」
「ハハ……案外殿下でしたら話が合うかもしれませんね。―――そういや何でお前が受付をやっているんだ?」
オリヴァルト皇子の話に苦笑しながら同意したトヴァルはある事を思い出し、不思議そうな表情で尋ねた。
「受付の人は所要で席を外していて、あたしが留守番をしているだけよ。―――それで?1ヵ月もどこで何をしていたか知らないけど、ようやく内戦終結に向けて動き出したエレボニア皇族が内戦に巻き込まれたメンフィル領のギルドに何の用かしら?」
「あのー、シェラ君?所々に毒が入っているけど、ボク、君に何かしたっけ?」
シェラザードの問いかけを聞いたオリヴァルト皇子は冷や汗をかきながら問いかけ
「こっちはエレボニアの内戦のせいで、わざわざリベールから出張している上大忙しなんだから毒も吐きたくなるわよ。しかも内戦は終わる気配はないどころか、唯一貴族連合に捕らわれていない行方不明のスチャラカ皇子の行動が遅かったせいで、メンフィルまで介入してきて余計にややこしい事になって、その影響でこっちの仕事は更に増えたし。今度会ったら新しく覚えた技か魔術の練習台にしてやろうかと思っていたくらいよ。」
「ゴメンなさい。ボクが不甲斐なかった事は認めますので、鞭や魔術はマジで勘弁してください……」
(マジでどういう関係なんだ、この二人は……?)
シェラザードの答えを聞くと疲れた表情で謝罪し、その様子を見つめていたトヴァルは冷や汗をかいた。
「ハア……それで?話を戻すけどメンフィル領のギルドに一体何の用なのよ。」
「ギルドというか、ギルドに協力している”とある人物”に用があるんだ。」
「ギルドに協力している……?―――!…………もしかしてメンフィルに半ば脅迫に近い形で契約させられた”戦争回避条約”の内容を”空の女神”にもう少し緩和する事を進言してくれる事を頼み込むつもり?確か話によるとあんたの妹―――アルフィン皇女が”灰の騎士”とやらの乗り手に嫁ぐ事で、エレボニアにとって一番ヤバイ内容は相殺される事になったのでしょう?なのにまだそれ以上の緩和を望んでいるのかしら。」
オリヴァルト皇子の目的を察したシェラザードは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて問いかけた。
「”空の女神”に用があるのは確かだけど、その件ではないよ。あの件は父上が契約書にサインした以上もうどうしようもないし、エレボニアがメンフィルにしてきた事やそれらによって膨れ上がったメンフィルの怒りを考えればあの内容に従うのが”筋”だし、リィン君やエレボニアの為に必死に”救済条約”を考えてくれたエリゼ君に対して、そんな失礼な真似をするつもりはない。私が”空の女神”に頼みたい事とは―――――」
その後シェラザードからエイドスがいる場所を教えられたオリヴァルト皇子とトヴァルはその場所へと向かった。
~宿酒場”トバ”~
「ゴク……ゴク……―――ん~♪やっぱり仕事が終わった後のお酒は最高ですね♪」
グラスに注がれてあるお酒を一気飲みしたエイドスは幸せそうな表情をした。
「あたしはまだお酒が飲めない年だから、わからないけど……さすがに一気飲みはどうかと思うわよ?あんた、一応”女神”でしょうが。」
「アハハ……エイドスさん、サラさん達みたいな凄い飲みっぷりだよね~。」
「ケビンさんとリースさんが今のエイドスさんの姿を見たら、絶対頭を抱えるでしょうね……」
「お願いしますから、これ以上貴女の信者達が幻滅するような事をしないで下さい。」
「……まあ、貴女の事ですから、その信者達の事も何とも思っていないでしょうね……」
ジト目でエイドスを見つめるエステルの言葉を聞いたミントと騎士装束を纏った娘――――エレナ・ストダート・クリスティンは苦笑し、ヨシュアは疲れた表情をし、フェミリンスは呆れた表情をしていた。
「もう、この娘ったら……お酒を飲むのは別に構わないけど一気飲みなんて、はしたないわよ。」
「フフ、こういった場だからこそ一気飲みができるんですよ、お母様♪あ、すみませーん!ビールのお代わりをお願いしまーす♪」
自分自身と容姿や髪などが似ていて、一対の美しき白い翼を生やしている女性―――フィーナ・クリスティンの指摘に微笑みながら答えたエイドスは近くの店員を呼んで注文をし
「ハハ、確かにエイドスの言う事も一理あるね。」
「エイドスを甘やかさないで下さい、アドルさん。エイドスは女神なんですから、自分自身が人々にとってどんな存在であるかを自覚させませんと。」
エイドスの言葉に苦笑しながら頷いた赤毛の青年―――アドル・クリスティンにフィーナは呆れた表情で指摘した。
「フフッ、お母様?”今の私”は”ただの新妻”ですから、”女神”ではありませんよ♪というか私は自分の時代では”女神業”は引退していますから全然問題ありません♪」
そして微笑みながら答えたエイドスの言葉にその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。
「前々から疑問に思っていたけど、一体いつまでその滅茶苦茶な設定を通すつもりなのよ。」
「アハハ……元の時代に帰るまでじゃないかな?」
「ミント………それ、冗談になっていないよ?」
「それ以前に”女神業”という仕事はありませんし、貴女は”神”を何だと思っているのですか。」
ジト目でエイドスを見つめるエステルに苦笑しながら答えたミントの推測を聞いたヨシュアは疲れた表情をし、フェミリンスは呆れた表情でエイドスを見つめ
「う、う~ん……やっぱりどう考えてもフィーナでもないし、レアでもないね、この性格は……」
「ううっ、一体何があってこんな性格になったのかしら……」
「ま、まあまあ。恐らく長い年月の間に色々あったんですよ。」
アドルは困った表情でエイドスを見つめ、疲れた表情で頭を抱え込んでいるフィーナにエレナは苦笑しながら慰めの言葉を送り
「うっ!?な、何の事ですか?私は正真正銘24歳の”ただの新妻”ですよ?」
エレナの言葉にショックを受けた後冷や汗を滝のように流しながら答えるエイドスの言葉にエステル達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。
「ったく、こっちでも相変わらずだな……この自称”ただの新妻”は。」
するとその時トヴァルとオリヴァルト皇子がエステル達に近づいてきた。
「あ、トヴァルさん!それにオリビエさんも!」
「げっ。スチャラカ皇子までいるじゃない。ちょっと~。まさかとは思うけど面倒事をあたし達に持ってきたんじゃないでしょうね?」
「今の状況ですと、内戦終結の件かメンフィルとの件のどちらかについてでしょうね。」
「エ、エステル。オリビエさんも忙しい中わざわざ僕達を訊ねて来たんだから、そんなに邪険にしなくてもいいんじゃないかな?」
二人の姿を確認したミントは目を丸くし、嫌そうな表情でオリヴァルト皇子を見つめるエステルの言葉を聞いたフェミリンスは真剣な表情で推測し、ヨシュアは冷や汗をかきながらエステルに指摘した。
「ハハ、どちらでもないし、今日はエステル君達じゃなくて別の人物に用があるから、そう警戒しないてくれたまえ。それより……―――3人共、久しぶりだね。また会う機会が訪れるとは思わなかったよ。」
エステルとフェミリンスの言葉を聞いたオリヴァルト皇子は苦笑しながら答えた後懐かしそうな表情でアドル達を見回し
「久しぶり、オリビエさん。」
「フフ、私達もまたこのような機会が訪れるとは思いませんでした。」
「内戦の影響で行方不明と聞いていましたが、元気そうで何よりです。」
かつての仲間との再会にアドル達は懐かしそうな様子でオリヴァルト皇子を見つめながら軽い挨拶をした。
「フッ、みんな元気そうで何よりだよ。そう言えばナユタ君達の姿が見えないが……」
「ナユタ君達は今アネラスさんと一緒に泊まりの仕事をしていて、今夜はセントアークに戻って来ないわよ。」
「そうか…………少し残念だな。それで……挨拶が遅れたが、貴方がアドル君達の娘でもあるかの”空の女神”なのだろうか?」
「違います♪お父様達の娘である事は否定しませんが、私は”空の女神”と名前が似ているだけの”ただの新妻”のエイドス・クリスティンです♪貴方は確かお母様が持っていた写真に写っていたお母様達が”影の国”で出会った仲間の方―――皇子でありながら”演奏家”を名乗るオリビエ・レンハイムさんでしたっけ?」
オリヴァルト皇子の問いかけに笑顔で答えてエステル達を脱力させたエイドスはオリヴァルト皇子を見つめ
「フッ、その通り。エレボニア皇子という姿は世を欺く仮の姿。ボクの真の姿は漂泊の詩人にして不世出の天才演奏家であり、そして愛の伝導師たるオリビエ・レンハイムさ♪」
対するオリヴァルト皇子は髪をかきあげて笑顔で答えてエステル達を再び脱力させた。
「こ、このスチャラカ演奏家は……!」
「ア、アハハ……エイドスさんのあの自己紹介を普通に受け止めて、それどころかエイドスさんみたいな自己紹介をするなんて、さすがはオリビエさんだよね……」
「……私達は出合わせてはいけない二人を出合わせてしまったのかもしれませんわね。」
「あー……その意見には俺も同意だ。」
「フェ、フェミリンス。それ、冗談になっていないよ?」
顔に青筋を立てて身体を震わせるエステルはオリヴァルト皇子を睨み、ミントは苦笑し、疲れた表情をしているフェミリンスの言葉を聞いたトヴァルは頷き、ヨシュアは表情を引き攣らせ
「ハハ、そう言う所も相変わらずだね。」
「ええ……それに故郷が窮地の状況でありながらも自分を見失わないのは立派ですね………」
「フフ、そうですね。」
アドルは苦笑しながらオリヴァルト皇子を見つめ、フィーナとエレナは微笑みながらオリヴァルト皇子を見つめた。
「クスクス、お母様の話通り本当に面白い方ですね。―――”影の国”ではお母様達がお世話になりました。」
「ハハ、むしろお世話になったのはボクの方だけどね。…………というかできれば貴女にお世話になりたいのだけどね。」
「?それはどういう意味でしょうか。」
「………………」
「!もしかして……エイドスさん―――いえ、”空の女神”である彼女を頼る為に僕達を訊ねて来たんですか?」
オリヴァルト皇子の言葉にエイドスが首を傾げている中、トヴァルは複雑そうな表情で黙り込み、ある事に気付いたヨシュアは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめ
「……フフッ、難しい話は後にして今はこの内戦の最中お互い無事に再会できた事を祝おうじゃないか。」
オリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて答えた。その後オリヴァルト皇子とトヴァルはエステル達と共に食事を取り、エステル達が泊まっている客室で対面して話を始めた。
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