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冬の恋

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第六章

「そして最高の冬のデートね」
「最高なんだ」
「ええ、こんないいデートこれまでなかったわ」
「ううん、そこまで言われると」
「どうしたの?」
「何か恥ずかしいね」
 顔を赤くさせてだ、スノッリはビクトリアに応えた。
「僕のことじゃないけれど」
「案内してくれたのはスノッリじゃない」
「けれどね」
「恥ずかしいの?」
「どうしてもね」
「そうなのね」
「じゃあまたここに来ようね」
「デートの時はね」
 ビクトリアはにこりと笑ってだ、ここで。
 スノッリとの距離をこれまで以上に狭めてだ、こう言った。
「じゃあ薔薇の後は」
「他のお花もだね」
「見ていきましょう、あと紅茶も飲みましょう」
「紅茶は外せないね」
「だってイギリス生まれだから」
 それでというのだ。
「やっぱり紅茶は外せないわ」
「それはだね」
「ええ、けれどあなたはね」
「コーヒーだよ」
 スノッリはこちらだ、イギリス生まれのビクトリアが紅茶派なのに対して。
「好きなのはね」
「そうよね、けれどね」
「けれど?」
「薔薇が奇麗だから」
 このことからだ、ビクトリアはここでこう言ったのだった。
「ローズティーにするわ」
「紅茶は紅茶でも」
「ええ、そっちの紅茶にするわ」
 ローズティー、つまり薔薇を入れた紅茶だというのだ。
「今日はね」
「それじゃあ僕も」
「ローズティーにするの?」
「いや、ミルクにしようかな」
「どうしてミルクなの?」
「だってビクトリアが薔薇が気に入ったって言ってね」
 それでとだ、スノッリは何故ミルクなのかということも答えた。
「それが外の雪と氷のこともあってって言うから」
「雪は白いから」
「だからなんだ、それでなんだ」
「そういうことね、じゃあ薔薇とミルクで」
「二人で楽しもう」
「それじゃあね、けれど半分こしましょう」
 ビクトリアはこうも言った。
「薔薇と白をね」
「そうだね、その二つの対比が最高だから」
「余計にね」
「それがいいね」
「それじゃあね」
 こうしたことも話してだ、二人は植物園でのデートを楽しんだ。そしてローズティーとミルクを半分ずつ飲んでだ、そちらも楽しんだのだった。アイスランドの冬の中で。


冬の恋   完


                          2015・10・25 
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