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兎を追い掛けて 

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第五章

 整った身なりでだ、落ち着いた表情のその男性は。
「ルイス=キャロルさん」
「アリスの単行本に出てたわね」
「あの人もいるなんて」
「これは意外ね」
「あれっ、君達は」
 そのキャロルさんからもだ、言って来た。
「お客さんかな」
「現代のイギリスから来たね」
「お客さんになるわ」
 姉妹でキャロルさんに答えた、それも笑顔で。
「兎さんを追い掛けてここまで来たの」
「不思議の国にね」
「それは何より、お客さんは大歓迎だよ」
「すいません、遅れました」
 兎はキャロルさんに頭を下げて謝罪した。
「折角のお招きに」
「気にしなくていいよ。何事も予定通りにいくとは限らない」
 キャロルさんは兎の謝罪を笑ってよしとした。
「私だって遅れる時があるからね」
「だからですか」
「いいよ」
 そうしたことはというのだ。
「誰でもだからね」
「それでは」
「うん、とにかくね」
「これからお茶会ですね」
「新たなお客さんが二人来たから」
 だからと言ったキャロルさんだった。そして。
 あらためてだ、こう言ったのだった。
「席を二つ出してくれるかな、お茶とティーセットもね」
「はい」
 トランプの兵士が一人出て来てだ、そのうえで。
 実際に席を二つにそれとだった。
 カップにティーセットも出して来た、キャロルさんは全てが用意されてからあらためてメアリーとキャロルに話した。
「それではね」
「はい、宜しくお願いします」
「これから」
 二人は微笑んで応えてだ、そのうえで。
 お茶会に参加した、ティーセットは三段で上はスコーン中はサンドイッチそして下はケーキとフルーツだった。
 その三段のセットを楽しみつつだ、そのうえで。
 キャロルさんは二人にだ、ミルクティーを片手に尋ねた。
「l君達がここに来た理由は聞いたよ」
「はい、兎さんについてきました」
「自分達で勝手に」
「そうだね、そしてだけれど」
「私の着てる服と全然違うわね」
 アリスがにこりと笑って二人に言ってきた。
「それもかなり」
「というかだよ」
 今度はハンプティダンプティが言う。
「君達は今の時代の娘達だね」
「ええ、二十一世紀のイギリスのね」
「その時代の女の子よ」
「そうだな、、女の子も時代と共に変わる」
 神妙な顔でだ、ハンプティダンプティは紅茶を飲みつつ述べた。
「そういうことだな」
「ふむ、しかしだ」
「アリスとは全く違うわね」
 トランプの王と女王も言う。
「最初アリスを見て随分驚いたものだが」
「貴女達の格好も驚くわ」
「二十一世紀の服装は聞いているが」
「女の子がズボンを穿くのね」
「ええ、そうよ」
「見ての通りね」
 二人は姉妹でだ、不思議の世界の住人達に答えた。 
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