青砥縞花紅彩画
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29部分:極楽寺山門の場その二
極楽寺山門の場その二
弁天「俺達の腕は知ってるな」
南郷「覚悟しやがれ。只ではすまさねえからな」
次郎「ちっ・・・・・・」
後ろにさがる。そしてそのまま逃げにかかる。
弁天「あっ、待て」
南郷「逃がすかこの野郎」
二人は追おうとする。だが右手から捕り手が現われる。
捕一「待て」
捕二「逃がさんぞ」
弁天「ちっ、こんな時に」
南郷「おい弁天」
弁天「おうよ」
南郷「おめえは悪次郎を追え。いいな」
弁天「わかった。それで兄貴は」
南郷「俺はここでこいつ等を引き受ける。いいな」
弁天「わかった。じゃあよろしく頼むぜ」
南郷「おう」
弁天は左手に消える。そして南郷は捕り手達と立合いをはじめる。二人はやっつけられ右手に下がろうとするがここで
新手が出て来る。
捕三「待てい」
捕四「逃がしはせぬぞ」
だが南郷はそれでも余裕である。
南郷「面白れえ、この南郷力丸の刀の錆にしてやらあ」
刀を抜く。だがここで左手から二人出て来る。
忠信「そこにいるのは」
赤星「南郷か」
二人は侍の格好をしている。変装である。
南郷「おう、おめえ等いいところに。悪いが助太刀してくれ」
忠信「わかった」
赤星「わし等に任せろ」
二人が出ると捕り手達は急に怯む。そして三人だけとなる。
南郷「悪いな、助かったぜ」
忠信「いや、礼はいい」
赤星「見たところ一人だが。弁天は何処か」
南郷「弁天か」
忠信「そうだ。この辺りにいると聞いたのだが。知っているか」
南郷「知っているも何もついさっきまで一緒だったんだ」
赤星「そうか。では今は何処にいる」
南郷「狼の悪次郎を追ってな。あっちに行ったぜ(そう言って左手を指差す)」
赤星「(それを聞いてぎょっとして)あっちか」
南郷「ああ、何か不都合でもああるのか」
赤星「不都合も何もわし等は今そこから逃れてきたばかりだ」
忠信「あちらには捕り手達がごまんといるのだ」
南郷「何っ」
赤星「しかも奉行まで来るという。如何に弁天といえど危ういぞ」
南郷「そうだな。こりゃいけねえ」
忠信「行くぞ。四人おれば何とかなるだろう」
赤星「そして香合も手に入れる。よいな」
南郷「わかった。じゃあ行くぜ」
忠信「わかった」
赤星「うむ」
三人は左手に駆けて行き消える。舞台は暗転。極楽寺の屋根上になる。弁天は右手、悪次郎は左手にいる。
弁天「さあ観念しやがれ」
次郎「糞っ、しつこい野郎だ」
弁天「しつこいのは盗人には褒め言葉、有難く受け取っておこう」
次郎「へん、そう言っていられるのも今のうちだ」
弁天「それは俺の台詞だ。さあ、もう何処にも逃げられねえぞ」
次郎「ちっ」
弁天「烏みてえに羽根を生やして逃げるか地獄に落ちるか。命が惜しけりゃさっさと出しやがれ」
次郎「出せと言われて出す馬鹿が何処にいる」
弁天「じゃあ手前を叩き軌って貰い受けてやる。覚悟しやがれ」
次郎「誰が」
二人は刀を抜き斬り合いとなる。だがやはり弁天は強く悪次郎は斬り捨てられる。
次郎「ぐはっ」
弁天は斬ると彼の身体を掴んでその懐から香合を取り出す。
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