先輩
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第三章
「飛び出ています」
「そうだな、何処にチームプレーがある」
「ありません」
やはりはっきりと言う。
「何処にも」
「そうだな、朝に言ったから多くは言わないが」
それでもという言葉だった。
「始末書書け、いいな」
「わかりました」
こうして潤は始末書を書くことになった、その彼にだ。
隣の席からだ、酔っ払いを一緒に取り押さえそのうえ共に警部に怒られた彼にだった。横溝宗男は言ったのだった。
「始末書はな」
「書いてますけれど」
「もう一人で書けるか」
「ずっと書いてますからね」
実際に書きながらの言葉だった。
「もうこれで」
「そうか、じゃあいいな」
「前まで先輩に色々教えてもらってましたけれど」
下書きの書き方、それをというのだ。
「今はもうです」
「一人で書けるか」
「はい、任せて下さい」
やはり書きながら言う。
「書いて警部に提出しますので」
「そうか、じゃあな」
「じゃあ?」
「これ飲め」
宗男はカップに入ったコーヒーを出してだ、潤の横に置いた。
「もの書いてると喉渇くだろ」
「先輩が淹れてくれたんですか」
「ついでだからな」
自分もカップの中のコーヒーを飲む、砂糖も何も入っていないブラックコーヒーだ。
「インスタントだけれどいいな」
「有り難うございます」
これが潤の返事だった。
「いつもすいません」
「いいさ、まあ始末書書いたらな」
「今度はですね」
「パトロールだ、行くぞ」
「はい、お願いします」
潤は宗男に応えてだ、そしてだった。
始末書を書き終えると警部に提出して宗男と共に車でパトロールに出た。二人はいつもこんな感じであった。
そしてだ、それはこの時もだった。
警部は電話を受けてだ、やり取りの後で苦い顔で刑事課にいる者全員に言った。
「悪いニュースだ」
「警察に来るニュースだから」
「当然のことですね」
「ああ、いつもの悪いニュースだ」
部下達に応えてこうも言ったのだった。
「しかも今回はとびきりの悪いニュースだ」
「コロシですか?」
「それともテロですか?」
「どっちもでないが最悪だ」
これが警部の返事だった。
「銀行強盗だ、しかも立て篭ってる」
「それはまた最悪ですね」
「実際に」
「ああ、それでだ」
警部は部下達にさらに言った。
「手空き全員で行くぞ」
「刑事課もですね」
「俺達も」
「機動隊にも連絡がいってるそうだ」
現場、それも火事場を受け持つ彼等にもというのだ。
「俺達も行ってな」
「はい、事件の解決ですね」
「それですね」
「さて、今はパトロール中だがな」
警部は空いている二つの席を見て言った。
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