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正統後継者

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第二章

「勿論能力も必要だ」
「その間で国政を動かせる」
「それだけの方を、ですね」
「太子に選ばれる」
「そうされますか」
「何としてもだ」
 絶対にという言葉だった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「王家の血を引く方からです」
「これより探しましょう」
「そうした方を」
「誰でもいい」
 王家の血を引くならとだ、王は切実な声で言った。
「どの国にも門閥貴族にも宗派にも影響を受けずだ」
「優れた方なら」
「どなたでも」
「王家の血を引いているのならな」
 それこそと言うのだった、そしてだった。
 王は廷臣達にそうした者を実際に探させた、その結果いるにはいたが。
 しかしだ、その者はというと。
「モンフェラート侯のか」
「はい、ご長男です」
「アリアバート様がです」
「王家の血を引いていて」
「他国の血も入っていません」
「そして門閥貴族とも縁組がなく」
「宗派も偏っていません」90
 まずはこの条件が話された。
「しかもご領地もです」
「無事に治められています」
「善政で民も豊かに暮らしていまして」
「法は徹底しています」
「優れた者も抜擢していますし」
「多くの忠臣もいます」
「また軍を率いてもお見事です」
 軍事の方もというのだ。
「武勲も立てられていて」
「何の問題もありません」
「だからです」
「あの方ならばです」
「確かに陛下のご要望通りです」
「素晴らしい方です」
 廷臣達も太鼓判を押す、だが。
 王はその彼についてだ、こう言ったのだった。
「アリアバート卿か、彼は確かに立派だが」
「はい、しかしです」
「五代前の王の曾孫にあたられます」
「それではです」
 廷臣達も彼のその血筋に対して言った。
「あの方は、ですか」
「太子にはですか」
「されませんか」
「いや」
 ここでだ、王は彼等に強い声で言った。
「彼を太子にする」
「そうされますか」
「あの方にされますか」
「そうする」
 強い声での言葉だった。
「あの者でいい」
「そうですか、例え血縁が薄くとも」
「王家の血を引いておられる」
「しかも立場も中立ですね」
「どの勢力にも寄っていない」
「しかも有能なら」
「充分だ、次の太子はモンフェラート候だ」
 その彼だというのだ。 
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