魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Eipic2チーム海鳴~Prologue for Episode Ⅳ vol.2~
†††Sideフェイト†††
「それじゃあ咲耶、午後の授業のノートお願い!」
「ごめん、咲耶ちゃん! 行ってくるね!」
「ええ、任せてくださいな。フェイトさん、なのはさん、お気を付けて」
3年2組のクラスメイトで、小学校からの友達である咲耶に、私となのはは授業の代筆をお願いした。中学校に入ってから何度も繰り返してるやり取りだ。たぶん今頃は、1組のアリサとすずかも同じようにクラスメイトの依姫に、6組のアリシアとシャルとはやては天音に、それぞれ代筆をお願いしてると思う。
「「ありがとう、行ってきます!」」
机横に提げてた鞄を手にとって、なのはと一緒に教室を出る。お昼休みということもあって多くの生徒が廊下を行き来したり談笑したりしてる。そんな中で「なのは、フェイト!」アリシア達が手を振って、私たちと合流した。
「よーし! 全員揃ったし、わたしの家にゴー!」
ここから一番近いのがハラオウン邸だからね。アリシアが先頭に立って駆け出す。私たちも続いて、校舎を出てそのまま私たちの家であるマンションへ直行する。自宅に着いて習慣の「ただいまー!」挨拶をするけど誰からも返って来ない。母さんとクロノとエイミィはアースラに、そしてアルフは無限書庫でユーノの手伝いをやっているはずだ。
「鞄はリビングに置いておいて。一度に転送してもらえるように屋上へ」
家の中にもトランスポーターがあるけど、一度に転送できるのは3人までが限度って大きさだ。みんなが「うん!」頷き返してくれて、今度は私が先頭に立ってマンションの屋上へと上がる。制服はそのままでいいや。どうせアースラで私たちそれぞれの局の制服に着替えるんだから。
『みんな、転送ポートをそこに開くから、その場から離れないでね』
アースラのエイミィからの通信に「はーい!」みんなで応じて、すぐに転送が始まる。足元に展開された大きなミッド式魔法陣の発光が一際強くなり、視界は一瞬だけ真っ白に染まって浮遊感を得る。光が治まって目を開ければ、そこはもうアースラ艦内。で、ミーティングルームに向かう前にまずは更衣室。
そこのロッカーには、エイミィが私たちみんなの替えの制服を用意してくれている。みんなそれぞれの制服に着替えてから、今回の任務についてクロノ達から話を聴くためにブリーフィングルームへと向かう。
「みんなと同じ任務で同じ空を飛べるって聞いて、わたし嬉しくて夜眠れなかったんだよね~」
「私もシャルちゃんと同じ~。私は技術部の内勤職だから、任務としてみんなと同じ空を飛ぶなんてまず無いから。ちょっと不謹慎だけど、今回の任務が発生して嬉しい」
「最近は模擬戦も少ないしな~。ちょう体が鈍ってきてるわ」
「それじゃあ正局員になる前に一度、模擬戦のスケジュール立てておく? 中学校を卒業したら今の嘱託から正式な局員になるし。ルシル君にも参戦してもらえるようにして」
「なのはの意見にさんせー! わたしとフェイトも、執務官として長期任務なんかに就くことが多くなるだろうし。・・・あ、それでね、本局の局員寮に部屋を取るつもりなんだよ」
「うん。ちなみにルシルと同じマンションだから、遊びに来てくれたらルシルとも逢えるかもだよ、はやて、シャル」
「そうなんかぁ~。 それはちょう羨ましいな~」
「くぅ~! わたしだって寮暮らししたいのにぃ~! 卒業したら実家暮らしなんだもんなぁ~」
「そういやシャル、あんたって聖王教会や教会騎士団の仕事も入れてるらしいじゃない」
「そうなんだよ~。やっぱりザンクト・オルフェンを統治する評議会のトップだからね、フライハイト家って。一人娘ってことで、わたしもいつまでも管理局には居られないみたい。なんとか30歳までは局員で居られるようにしたんだけど、30歳になったら局員辞めて、教会の聖職に就くことになるよ。今はそのための修行中って感じ」
シャルが管理局を辞める日が確定していたことが結構ショックで、私たちは「残念だね・・・」心から落ち込む。ずっとみんな一緒に、そう思っていた節があったから。
「シャルちゃんがたとえ管理局を辞めたとしてもわたしらチーム海鳴、そして友情は不変で不滅や。だから大丈夫や」
「はやて・・・」
「ま、ルシル君はわたしのお婿さんになってもらうから、シャルちゃんは他の男の人を捕まえとかな行かず後家になってまうよ?」
「っ! ほ、ほう・・・。良い話で終わるのかと思えば、最後の最後で仕掛けて来たね・・・! はやては良いじゃん! すでにヴィータとかリインとか娘のような家族が居るんだから! わたしには誰も居ないんだよ? だったらルシルと結婚して、2人の子供を儲けたって良いじゃんか・・・!」
「それはそれ、これはこれ♪」
「むぅ・・・。良いもん、最終的に選ぶのはルシルだし。負けないから!」
「わたしかて負けへんよ!」
ガシッと握手を交わすシャルとはやてを置いて先を往く私たち。そしてミーティングルームに到着、自動でスライドドアが開いて室内に入る。ミーティングルームにはクロノやエイミィ、シグナム達、そして予想外の「ルシル君、アイリ・・・!?」の2人が居た。
「よう。少しぶりだな」
「少しぶり~♪」
「本日の任務には、特別捜査官としてのルシリオンとアイリにも参加してもらうことになった。挨拶はとりあえず後にしてくれ。まずは任務の詳細を伝える」
クロノからそう言われた私たちはそれぞれ席に着いて、「それじゃあ任務内容を説明するね」エイミィの操作の下、テーブル上にモニターが展開された。
「第162観測指定世界にある遺跡発掘現場2ヵ所に行って、発掘されたロストロギアを回収。そしてアースラまで護送。以上これが任務だよ」
「アースラまで? 本局までではなく、ですか?」
「本局までの直通転送ポートのポイントに到着後、クロノ君が移送することになってるから」
「なーんか平和な任務だね~」
「仮にも護送するのは詳細不明のロストロギアだ。舐めて掛からないようにしてくれよ、アリシア」
「はーい。でも実際、チーム海鳴が久しぶりに勢揃いしてるんだよね。このメンバーならロストロギアの暴走すら止められそう」
「あはは、言えてるけどやっぱり慎重にね。どんなロストロギアか判らないから。万が一に発動したら即惑星破壊~みたいな兵器とかだったりしたら大変だから」
「エイミィの例えは極論だが、ロストロギアはそれだけ危険な代物だと言うことだ。みんなも、ただの護送で平和な任務なんて思わないように」
クロノからの注意に「了解!」アリシア含めてみんなで首肯した。それから、観測指定世界へと転移した後はまず最寄りの観測基地に向かい、そこで現地局員から遺跡の場所を聴いて、2チームに分かれて回収に向かうことなどを話した。そして・・・
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
「リイン!」
「はいです!」
「フレイムアイズ!」
「スノーホワイト!」
「フォーチュンドロップ!」
「キルシュブリューテ!」
「レヴァンティン!」
「グラーフアイゼン!」
「クラールヴィント♪」
「・・・あ、俺もか。エ、エヴェストルム・・・!」
それぞれ待機モードのデバイスを掲げて、「セットアップ!」変身するためのトリガーを口にして、局の制服姿から防護服へと変身する。チーム海鳴の中で防護服のデザインが変わったのは私となのはの2人で、ルシルが早速そのことに触れてきた。
「なのはとフェイトの防護服、デザインが変わったんだな」
今のなのははアグレッサーモードという名前の形態。軽量で汎用性に優れていて、魔力の消費もかなり抑えられているから、教導などの長時間の活動が可能になっている。そしてもう1つ、完全戦闘特化のエクシードモードがあるけど、大体は今のアグレッサーモードだ。
「うん。というか、結構前だよ?」
私はと言うと、インパルスフォームという名前の形態だ。攻・防・速をバランスよく調整していたブレイズフォームの発展型。かつてのライトニングフォームは廃止して、なのはのエクシードと同じように、私にもソニックフォームという別の形態への換装システムを採用している。
「私のも随分と前からこのインパルスフォームかな」
「防護服を着た状態でルシル君と逢うことなんてホントに久しぶりだから」
「そうか、もうそんなに一緒の空を飛んでいないのか」
エントランスのトランスポーターへと向かう道中でそんな会話をルシルと交わす。ルシルがそう思えてしまうほどに、私たちが同じ空を飛ぶ機会がなくなっていた、ということだ。でもだからこそ、今日みたいに一緒に飛べることが親友として嬉しい。
「みんな、帰って来たら同窓会パーティだからね! 美味しいご飯を作って待ってるから!」
「まぁそういうわけだ。だからみんな、何事にも油断なく、無事に戻って来い」
クロノとエイミィに見送られながら私たちチーム海鳴は、任務地である第162観測指定世界へと転移した。そこは一面が殺風景な荒野で、緑らしい緑は見えない。とにかく最初の目的地の観測基地を目指して空を翔ける。そして2班に分かれるためのジャンケンをするんだけど・・・
「だぁー! ルシルと違う班かぁー!」
ルシルと違う班になっちゃったことで、シャルがバレルロールしながら頭を抱える。決まったチーム分けは、私、シャル、すずか、はやてとリイン、シグナム、ザフィーラ。アリシア、なのは、アリサ、ルシル、ヴィータとアイリ、シャマル、となった。
「わたしも違うし、今回は運が悪かったって話やよ、シャルちゃん」
「はやて・・・。うん、そうだね。ルシルも最近は特捜課にも顔を出してくれるようになったし、今日はみんなに譲ってあげよう」
「何よルシル。あんた、特捜課の仕事もまた始めたの? シャルもそうだけどぶっ倒れやしないか心配するわよ」
「ん? あぁ、内務調査部の仕事も安定し始めたからな。手が空いた時には顔を出すようにしているんだ」
「でもその分、疲労度の上がり方が大きくなったから、体調を崩さないように気を付けてね、ルシル君」
「大丈夫だよシャマル! ルシルの体調は、この本妻たるアイリがちゃ~んと毎日見てるんだからね♪」
「「本妻・・・?」」
「そうだよ。だって毎日おはようもおやすみもするし、一緒にご飯食べるし、家事も分担し合うし、まるで夫婦!」
小学6年生くらいにまで身長が高くなっているアイリ(本来の大きさはリインと同じ30cmほどだけど)が朱に染めた頬に両手を添えて、まるではやてとシャルを煽るかのような流し目で2人を見た。アイリも何気にルシル争奪戦に参加しちゃっているんだよね。しかもアプローチのレベルはシャル並に激しい。
「モテモテで羨ましいですな~」
「そうですな~」
アリシアとアリサが口に手を添えてニヤニヤとイタズラッ子っぽい笑みを浮かべる。2人もルシルとは本当に久しぶりだから、今までの分で溜まったイタズラ心のようなものを吐き出し始める。眉がピクっと動いたルシルが「アリサ姐さん」ボソッと呟いた。
「んな・・・!」
「アリシアさん。年上と思えない小ささと可愛らしさ、それでいていつも元気いっぱいなあなたが好きです。友達からで良いので付き合って下さい」
「ぶふっ!?」
「それ、アリシアが男子校の2年から受けた告白・・・」
アリシアだっていつまででも小さいわけじゃない。まぁ私よりはまだ小さいけど。そんなアリシアに先日、聖祥中学男子校の生徒が告白した。もちろんアリシアは断ったんだけど、初めての真剣な告白ということもあってその話をされると、顔を真っ赤にして狼狽する。
「モテモテで羨ましいですな~♪」
ルシルの反撃を受けたアリシアとアリサは「ぅぐぐ・・・」さらに手痛い反撃を警戒して黙った。ルシルは「情報収集では俺には勝てないよ」と言って笑い声を上げた。
「一体どこから仕入れたのよ・・・!」
「アリサ姐さんについては、ヴァイスから直接だな。仕事でクラナガンに降り立った時、非番だった彼に会ってさ。そこで妹、ラグナの目について経過報告を受けたんだ」
「そ、そう。シグナムからも聞いてるけど、ラグナの目、何も問題ないんでしょ?」
「ああ、俺もヴァイスからそう聴いたぞ。治療のお礼に昼食を奢ってもらった」
「しかし、妹を誤射したというトラウマは拭えず、ヴァイスはスナイパーから離れヘリパイロットに従事するようになってしまった。今では私と同じ首都航空隊の一員だ」
シグナムが寂しそうに言った。身内を誤射してしまったことで武器を置いた武装隊員。その話は、アリサ姐さんの話をすでに聞いていたこともあって感情移入が出来た。実際に私はお姉ちゃんであるアリシアの誤射を受けたこともあるし。アリシアは何とか立ち戻ってくれたけど、やっぱり身内を撃っちゃうとダメな人も居るんだよね・・・。
「わ、わたしの告白のことについては誰から聞いたの・・・?」
「それはアイリからだ。いや普通アイリに話したら俺にも話が行くと思わないか?」
「くぁー! そうだったー!」
私が背後から抱っこしてるアリシアが暴れるから「アリシア、動かないで」注意する。アリシアの魔導師ランクもいよいよ陸戦Aに入ったけど、それでもまだ自力で空は飛べないからこうして誰かに運搬してもらわないといけない。以前まではアルフの役目だったけど、アルフはもう前線から離れたから、今は私が運搬役だ。
「お、見えてきたな。あそこが観測基地や」
しばらくの飛行を続けて、ようやく見えてきた最初の目的地。基地手前で降り立ってエントランスの方を見ると、「遠路お疲れ様です!」2人の局員が私たちを敬礼して出迎えてくれた。男の子と女の子って外見で、たぶん私たち学校組の年齢である15歳から2つ3つ年下かも。
(う~ん・・・、男の子の方は、初めて会ったはずなのに、どこかで会ったような既視感が・・・)
「本局・管理補佐官のグリフィス・ロウランです!」
「シャリオ・フィニーノ通信士です!」
「「「「「ロウラン・・・?」」」」」
私とアリシア、なのはとアリサとすずかは小首を傾げた。どこかで見た気がする外見、そしてファミリーネーム。頭の中で「あ・・・!」即座に答えを導き出す。
「うん、おおきにな、グリフィス君」
「久しぶりだな、グリフィス。少し見ない間に大きくなって」
「あはは。ルシルさんと最後に会ったのは4年前、僕が9つの時ですよ?」
「もうそんなになるのか」
「久しぶり~。レティ提督は元気?」
「お久しぶりです、シャルロッテさん。母は相変わらずお酒が大好きですけど元気です」
シャルに対するグリフィスの返答で「やっぱり! レティ提督の・・・!」息子だって確信した。グリフィスは「はい。はじめまして!」緊張からか少しぎこちない笑みを浮かべた。あ、なんか今の笑みはレティ提督に似てるかも。
「えっと、フィニーノ通信士とは初めまして、だよね・・・?」
少し蚊帳の外だったシャリオに私は声を掛ける。この子とは会ってないと思う、うん。シャリオは「はいっ! でもみなさんのことは、すごく知っています!」目をキラキラさせて羨望の眼差しで私たちを見た。
「チーム海鳴! 私、大ファンなんです! その数多くのご活躍に私、いつもすっごく胸を躍らせていたんです! 何百年と破壊不能とされたロストロギアを破壊、管理局設立以前より次元世界で活動していたリンドヴルムの壊滅などなど! 様々な事件を解決してきた、若手エリートチーム! みなさんと今日お会いできると聞いて、もう3日も前からドキドキして待っていたんです!」
「すみません。シャーリーの管理局入局の志望動機が、みなさんに憧れて、だったので。ですからずっと興奮しっ放しなんです」
愛称なのかシャーリーと呼ぶグリフィスが、上気しながら私たちに迫ってくるシャリオを押し留めた。そんなシャリオの熱弁に「にゃはは。なんか嬉しいね」なのはが照れ笑いを浮かべる。私としても、大ファンって言われたら悪い気はしないよ。
「ねえ、グリフィス。今、シャリオ通信士をシャーリーって愛称で呼んだけど、ひょっとして彼女~?」
「ち、違いますよ、シャルロッテさん! ただの幼馴染です!」
「さすがに幼馴染が結ばれるなんて、フィクションだけですよ♪ あまりに身近すぎて恋愛対象になりません♪」
「「・・・・」」
シャリオからそう返されたことでシャルとはやてが黙り込んだ。幼馴染に恋している2人にとっては耳が痛い話だ。
「幼馴染かぁ。ひょっとしたら知ってるかもだけど、私たちもみんな幼馴染なんだ。幼馴染の友達って貴重だから、大切にしないとね♪」
「「はいっ!」」
なのはの話に力強く応じるグリフィスとシャリオ。私たちは顔を合わせて照れ笑い。この縁は奇跡のようで、この繋がりはきっと断ち切れない。私たちの友情は間違いなく永遠だ。
「あの、ご休憩の準備をしておりますのでどうぞ中へ。お茶とお菓子を用意していますので」
「「お菓子♪」」
アイリとリインがお菓子に釣られた。それを見たシャリオが「アイスクリームやケーキもあるんですよ♪ 」さらに畳みかけてきた。まぁお菓子大好きな2人は顔を輝かせて、じゅるりと涎を啜った。
「お前たち・・・」
「しゃあねぇなぁ・・・」
シグナムとヴィータが呆れを見せた。私たちも苦笑いを浮かべて、「とりあえず、クロノ達に連絡を取ってみるよ」私は今回の任務の責任者であるアースラ艦長、クロノに連絡を入れる。
『はいはーい。アースラで~す』
「あ、エイミィ? クロノは・・・?」
『どうした?』
発掘現場に行く前に最寄りの基地で少しばかり休憩する旨を伝えると、『しょうがないな。まぁ何十kmという距離を飛び続けるのも大変だろう。判った。だが長いのはよしてくれ』OKを貰えた。私はみんなに人差し指と親指で輪を作ってサイン。
「「やったー!」」
そういうわけで少しだけ基地で休憩していくことになって、グリフィスとシャリオの案内で休憩室へ。早速リインとアイリはケーキを頬張って、「お味はどうですか?」シャリオにそう訊かれると「美味しいぃ~♪」2人は満面の笑顔を浮かべた。私たちも「いただきます!」クッキーやケーキなどを頂く。
「今回はたまたま一緒に同じ任務を務めることになったが、はやて達が学校を卒業すると今まで以上に同じ空は飛べなくなるんだろうな。卒業したら進学をしないでそのまま正式に局入りするんだろ?」
クッキーを食べているルシルがそう訊いてきた。卒業と同時に私たちは嘱託から正式な局員となる。それぞれが歩んでいる進路のさらに深くまで突き進む時間が出来るから、今日みたいな勢揃いした任務はもう無いと思ってもいい。
「うん。私は戦技教導隊として今まで以上に他の世界に赴くことが多くなるかな。だから海鳴市から離れて、ミッドのどこかに一軒家を持とうかな~なんて」
「あっ、あたしも一軒家を購入予定よ。あたしはミッド地上部隊の陸士隊から離れないと思うから、中央区画のどっかにしようと思ってるわ」
「わたしら八神家も、卒業と同時期にミッドにお引越し予定や。クラナガンの南側・・・出来れば海の近くがええなぁって思うてるんよ」
「ですけどミッドへのお引っ越しもいろいろと不安なのよね。家賃や間取り、ご近所付き合い、交通の便利性とか・・・」
「勘忍な、シャマル。物件探しを任せてもうてて」
「いえ。みんなの家ですから、手抜きはしたくありませんし。大変でも徹底的に拘ります!」
「私は、スカラボの居住区に部屋を造ってもらうことになったよ。まぁ所属は第4技術部のままなんだけど」
卒業後、チーム海鳴メンバーの全員が海鳴市から離れることになる。それが寂しくもあるけど、未来へ向かうための必要なステップでもある。
「あや? はやて、ルシルに一緒に住もうって誘わないの?」
「う~ん。アイリの言うように最初は誘おうとしたんやけど、まず間違になく断られるのは判ってるからな。もう諦めてるんよ。中学生のわたしの成長にドキドキするくらいやし、これからの成長にはさらにドキドキするやろうから、やっぱ断るんやろ? ・・・ルシル君のエッチ~❤」
「ぶふっ!? げほっ、ごほっ、ぐっ、かはっ・・・!」
お茶を飲んでた最中で、品を作ったはやてからそんなことを言われたルシルが激しく咽だした。はやてが慌てて「ごめん! ごめんな!」ルシルの背中を擦る。そしてなんとか呼吸を整えたルシルは「死ぬかと思った・・・」って最後に大きく深呼吸。
「ふぅ。・・・理由は明確にはしないが、確かに俺ははやての家に行くことはない。すまないな」
「ほらな~。でも、たまには遊びに来てな? 今はもう名乗ってへんけど、ルシル君は今でも八神家の一員なんやからな」
「・・・ああ。その時は世話になるよ」
はやてとルシルが微笑み合っているところで、「はぁ。やっぱりみなさんはすごいですよね~」シャリオが感嘆の声を漏らした。何がすごいんだろうって小首を傾げていると・・・
「メンバーの大半が入局6年で尉官クラスで、その上なのは教導官、アリサ捜査官、はやて特別捜査官はまだ15歳なのに一軒家を持とうとしていて。わたしと2つしか歳が変わらないのに、すごいです・・・!」
とのことだった。確かに一軒家を持つなんてかなりすごいことだと思う。同じチームメンバーとしても尊敬するかも。それからグリフィスやシャリオと他愛ない会話をして、「はふぅ。ごちそうさまですぅ~」リインと、「美味しかったね♪」アイリが満足そうに手を合わせた。
「お替りはどうですか? リインさん、アイリさん♪」
「「お替り♪」」
「あー、シャリオ。心遣いは感謝なんやけど、もうそろそろ発つわ。発掘されたんがロストロギアってことやしな」
「ロストロギアを狙う数ある組織の最大手であるリンドヴルムは潰したが、それでもなお狙う犯罪者も多くいる。そんな連中にも警戒しないといけないからな。今回の発掘が漏れていないとも限らない。可能な限り回収を早めた方が良いと思うんだ」
「そ、そうですね。リインはごちそうさまです」
「じゃあアイリもごちそうさま~」
はやてとルシルの話には賛成できるから、リインとアイリもお替りを断った。そういうわけで私たちもすぐに基地から発つことを選択した。グリフィスとシャリオから発掘現場の座標を聴き、そこまでナビゲートしてもらうことになった。
「あー、ここでなのは達と一旦お別れか~」
基地の外に出て改めて防護服に変身したところで、シャルがそう言ってなのはの肩に頬擦り。なのはは「にゃはは~」そんなシャルの頭を撫で撫で。2人ってチーム海鳴の中でも特に仲が良いんだよね。ちょっと妬けちゃうかも。
「それじゃあ行こうか。はやて達も気を付けてな」
「うん。ルシル君たちも、気を付けてな」
はやてとルシルがコツンと拳を突き合わせて、「みんな。アリシアのことお願いね」私はチーム分けで別々になったお姉ちゃんのことをお願いする。いつもは私が後ろから抱っこして運搬するんだけど、今日は私とは別だから。
「ん~。だ~れ~に~し~よ~お~か~な~♪」
アリシアが鼻歌交じりに運搬役の選択に入った。なのは、アリサ、ヴィータ、アイリ、シャマル先生、そしてルシル。鼻歌が終わると同時にアリシアの人差し指が止まった。
「ルシル! 抱っこ!」
「しゅ~つげ~き」
――我を運べ、汝の蒼翼――
アリシアが両手を伸ばして抱っこしてポーズをした途端、ルシルは背中から剣翼アンピエルを展開して真っ先に空に上がった。ポツンと取り残されるアリシアが「あ、こらー、逃げるなー!」なんて言って怒るけど、「こればっかりは・・・」私は呆れた。
「アリシアちゃん。私が抱っこするわ」
「ふやっ?」
シャマル先生がアリシアの運搬役を買って出てくれた。抱え上げられたアリシアは「はふぅ。シャマル先生。柔らかいし良い匂いだし、落ち着くぅ~」体を弛緩させて、シャマル先生に全身を委ねた。
「あらあら♪ それじゃあ行くわね・・・!」
「おー!」
シャマル先生とアリシアも飛び立ったことで、私たちも空へと上がる。そして私、シャル、すずか、はやてとリイン、シグナム、ザフィーラのBチームと、アリシア、なのは、アリサ、ルシル、ヴィータとアイリ、シャマルのAチームは、それぞれが目指す遺跡発掘現場へと向かった。
後書き
フーテ・モールヘン。フーテ・ミッタ-フ。フーテ・ナーフオント。
コミック版Strikers第1巻のレリックとの初邂逅ストーリー、その前編をお送りしました。次回は後編であるレリック回収と同窓会パーティになる予定です。
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