真田十勇士
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巻ノ四十三 幸村の義その十三
「間違いなくな」
「ですな、確かに」
「兵糧は幾らあろうともです」
「必ずです」
「尽きまする」
「そうじゃ、だからな」
それでというのだ。
「大坂におってはな」
「くれぐれもですな」
「籠城はせずに」
「どう外で戦うか」
「そのことが肝心ですな」
「関白様はわかっておられる」
秀吉はというのだ。
「無論な」
「ですな、確実に」
「そのことはですな」
「だからですな」
「あの方は外で戦う」
「そのやり方もご存知ですか」
「しかし大坂城の堅固さに頼ってばかりでおると」
この場合は心が、である。大坂城が難攻不落でありそこにいればそれだけでいいと考えていればそれでというのだ。
「それを見誤る」
「城の堅固さに」
「それに」
「そして滅ぶ」
そうなるというのだ。
「篭ってばかりではな」
「戦にですな」
「到底なりませぬな」
「思えば上田の戦でもでしたな」
「篭ってばかりではいませんでした」
「戦は城だけでするものではない」
こうも言った幸村だった。
「そのことは御主達もわかったな」
「はい、よく」
「それがし達もです」
「そのことはです」
「よくわかっておるつもりです」
「城だけで戦が出来ては何と楽か」
こうまで言った幸村だった。
「戦はそうしたものではない」
「だからですな」
「この度は外も見たのですか」
「大坂の地自体を」
「この地を」
「うむ、あらゆる地を見ておかねば」
それこそというのだ。
「戦にならぬ」
「勝てぬ」
「左様ですな」
「そうじゃ、勝つ為にはな」
まさにというのだ。
「そうしたこともわかってこそじゃ」
「では」
「大坂にいられる限りですな」
「この地のことも見ておきますか」
「時が許す限り」
「そうしようぞ」
こう話してだ、実際にだった。
幸村は大坂に留まる間大坂の地を見て回った、それも馬で遠くまで出たりしたうえでかなり徹底してだった。
そうして見てだ、そのうえで。
兼続にだ、こう言われたのだった。
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