英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第228話
1月15日――――
~トリスタ・郊外~
二日後リィン達は郊外で自分達に合流するリフィア達を待っていた。
「もうそろそろリフィア殿下達がいらっしゃる時間ですよね、姉様。」
「ええ。戦艦でこっちに来るって言っていたわ。」
「せ、”戦艦”って事は……」
「ユミルに現れたあの戦艦の部隊のどれかなんだろうな……」
エリスの質問に答えたエリゼの答えを聞いたエリオットとマキアスはそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「……戦艦で思い出したが……―――プリネ姫。確か”リベールの異変”時のメンフィル軍が保有する最大兵器は”モルテニア”だったよね?メンフィルは一体いつの間にあれ程の凄まじい”力”を手に入れたんだい?」
「………皆さんがその目にした戦艦の部隊。あれらはヴァイスさん達――――クロスベルの技術提供によって、開発、量産されたんです。」
「何ですって!?」
「クロスベルがあんなとんでもない兵器の技術を提供しただと!?」
「一体いつの間にクロスベルはあれ程の技術を手に入れたのでしょう……」
オリヴァルト皇子の質問に答えたプリネの答えを聞いたサラ教官とトヴァルは血相を変え、クレア大尉は真剣な表情で考え込んでいた。
「クロスベルというかヴァイス達だけどね。」
「以前にも軽く説明したと思いますがヴァイスさん達は”転生者”で、前世の記憶を持っているんです。それで転生し、前世の記憶を持っているヴァイスさん達の仲間の中には技術者もいまして。その方達が当時の戦争の最中で開発した技術を提供してくれたのです。」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待って!”前世の頃”の記憶って事は……!」
「――――異世界では遥か昔にあの戦艦を使うような戦争があったという事ですわね。」
「ほええ~……なるほどね~。それじゃあメンフィルはあんなとんでもない戦力を手に入れる事ができると知って、クロスベルと一緒にカルバードを攻めたんだ~。」
エヴリーヌとツーヤの説明を聞いてある事に気付いたアリサは驚き、シャロンは真剣な表情で推測し、ミリアムは呆けた表情で呟いた。
「あ、あんなとんでもない戦艦の部隊を使った戦争が遥か昔にあったなんて………」
「今回の内戦……いや”百日戦役”ですら比べ物にならないくらいの凄まじい戦いだったのは間違いないだろうね。」
「………………」
トワは表情を青褪めさせ、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟き、ジョルジュは複雑そうな表情で黙り込み
「あんな兵器が猛威を震えば間違いなく街とか灰燼と化しただろうね。」
「それをしなかったという事はメンフィルはエレボニアに対して怒りを抱いていても、”最後の一線”は守ってくれていたという事になるな。」
「ああ……ケルディックの焼き討ちの件を考えればバリアハートを爆撃してもおかしくなかったしな。ゲルドには本当に世話になったな……」
「……私はあくまで”未来を変えられる可能性”に賭けただけよ。」
フィーの推測にラウラは頷き、ユーシスに視線を向けられたゲルドは静かな表情で答えた。
「―――言っておくが技術提供をしたのは”魔導技術”だけでなく、魔物配合を含めた魔術を使った技術も含めてある。」
「ま、”魔物配合”ですか………?」
「―――聞いた事がある。メンフィル帝国の魔術研究の一環として魔物同士を配合させて”合成魔獣”を生み出し、それを戦力としているそうだ。」
レーヴェの口か出た不穏な言葉を聞いたセレーネが不安そうな表情をしている中、リィンは真剣な表情で答えた。
「”合成魔獣”ですって!?」
「そ、そんな……幾ら魔物とは言え、命を弄ぶその技術は人が決して手を出してはいけない”禁忌”の一つですよ!?」
「……確か例の”教団”も似たような事をしていた筈よ。」
リィンの答えを聞いたセリーヌとエマはそれぞれ血相を変えて声をあげ、クロチルダは真剣な表情でプリネを見つめ
「残念ですが………”合成魔獣”を作りだす技術は私達の世界にとっては”禁忌”でない所か、強力な戦力を生み出す技術として世界各国でも使われている技術なのです。」
「ちなみに”合成魔獣”の元となっているのは”混沌の女神”が伝えている合成儀式だよ。」
重々しい様子を纏っているプリネの後にエヴリーヌが静かな表情で答えた。
「お、おいおい……”混沌の女神”って事は……」
「ま、まさかペテレーネ神官長もその”魔物配合”に関わっているのですか……?」
エヴリーヌの話を聞いてある事に気付いたクロウは目を丸くし、アルフィンは信じられない表情でプリネに尋ねた。
「―――はい。戦時になれば合成魔獣を生み出す研究部門にも顔を出して助言をしていると聞いた事があります。”混沌の女神”の”神格者”であるお母様は”混沌の女神”の知識を豊富に持っていますので。」
「なるほどね……今の話を聞く限り言葉通り”闇の聖女”ね。」
「ああ……まさしく”闇”を象徴する事に深く関わっているしな。」
「フフ、”蒼の深淵”と呼ばれた私ですらも敵わない”深淵”ね。」
「”星杯騎士”の連中が知ったら、普通なら絶対”外法”扱いするぞ………」
プリネの答えを聞いたセリーヌは静かな表情で呟き、ガイウスは真剣な表情で頷き、クロチルダは苦笑し、トヴァルは疲れた表情で呟いた。
「け、けどレオンハルト教官がさっき、クロスベルから提供されたのはあの戦艦の技術だけでなく、その”魔物配合”という技術もそうだって言っていたよね……?」
「ま、まさか”六銃士”の人達は遥か昔にその技術も使って戦争していたのか!?」
その時ある事に気付いたエリオットとマキアスは表情を青褪めさせ
「ええ。ユミルの時には現れませんでしたが”歪竜”を始めとした強力な魔物が既に量産化されています。」
「”歪竜”…………?」
「ま、まさか”竜”をも創りだしたのですか!?」
ツーヤの話を聞いたゲルドが首を傾げている中、エマは血相を変えて尋ねた。
「そだよ。まあ、正確に言えばヴァイス達の仲間達が提供したけど。確か技術提供の報酬の代わりに”歪竜”を始めとした量産した魔物もクロスベルにあげたはずだよ。」
「という事はクロスベルもその”魔物配合”とやらで量産した強力な魔物を所持しているのですか……!?」
エヴリーヌの話を聞いて何かを察したクレア大尉は血相を変え
「はい。ちなみに”歪竜”は飛行型の”竜”で、そのブレスは山を簡単に塵と化させる程の威力です。」
「や、山をも簡単に塵と化させるって……!」
「話を聞く限り”列車砲”よりも威力は遥かに上でしょうし、飛行型というのも脅威ですわね……」
プリネの説明を聞いたアリサは表情を青褪めさせ、シャロンは真剣な表情で呟いた。
「うわぁ~……話を聞く限り完全に西ゼムリア大陸の国家間の力関係が変わったよね~……」
「……かつては”大陸最強”と称えられたエレボニアは衰退し……自治州であったクロスベルは大国へと成り上がり、更にあのメンフィルに次ぐ程の強力な戦力を手に入れたと言っても過言ではないな。」
「………………」
ミリアムとラウラの話を聞いたユーシスは辛そうな表情で黙り込み
「……”技術”でそんなとてつもないものを創りだした人達は一体どんな気持ちで創りだしたのだろう……」
「ジョルジュ君………」
「………………そう言えば少し気になっていたのだが。今回の戦争でクロスベルは”ラインフォルトグループ”を傘下に入れた事になるけど……まさか今後は”ラインフォルトグループ”と協力して先程の話にあった戦艦や歪竜とやらを量産するつもりなのかい?」
辛そうな表情で答えたジョルジュの言葉を聞いたトワは心配そうな表情をし、アンゼリカは目を伏せて黙り込んでいたがある事に気付き、プリネ達を見つめて尋ねた。
「あ…………」
「そう言えば以前エリィさんがクロスベルは”ラインフォルトグループ”の工場等を欲していた事を言っていたな……」
「十中八九そうするんじゃねえか?魔物配合の方はラインフォルトは完全に専門外の上七耀教会の連中もさすがに黙っていないだろうが、戦艦や兵器の量産の方はラインフォルトの専門だろうし、新しい兵器の開発に携われる事はラインフォルトグループ(向こう)にとっても渡りに船だと思うぜ。」
「………………」
「アリサ…………その、シャロンさん。実際の所はどうなのですか?」
アンゼリカの言葉を聞いたエリスは呆けた声を出し、ガイウスは重々しい様子を纏って呟き、クロウの推測を聞いて複雑そうな表情で黙り込んでいるアリサをリィンは心配そうな表情で見つめた後シャロンに尋ねた。
「クロウ様が仰いましたように既にクロスベル帝国政府から兵器の量産の契約等の申し出があり、会長はその契約を承諾しました。」
「え……そ、それじゃあ”ラインフォルトグループ”はメンフィルやクロスベルが保有しているような凄まじい兵器の量産化を始めているのですか……!?」
シャロンの答えを聞いたアルフィンは表情を青褪めさせて尋ね
「いえ。今の所は”機甲兵”や”アハツェン”等の既存の兵器の注文だけですわ。ただ将来はクロスベル帝国やクロスベル帝国が吸収した”十三工房”と協力して新たな兵器を始めとした様々な”新製品”を開発する話なども既にクロスベル帝国が提案し、会長は重役達と話し合って考案中です。最もわたくしの予想では恐らく受けると思いますわ。”ラインフォルトグループ”にとっても未知の製品を開発、販売できる事は将来とてつもない利益が出る事が見込めるでしょうし、何より”新たな祖国”となったクロスベル帝国が大口のお客様になるのですから、クロスベル帝国とは今後も密接な関係になるべきでしょうし。」
「……………………」
シャロンの説明を聞いたアリサは複雑そうな表情で黙り込み
「”ラインフォルトグループ”がクロスベルに取られた事も結構痛いんだよね……兵器の開発を始めとした重工業は”ラインフォルトグループ”任せだったけど、これからは”ラインフォルトグループ”にとって最優先の”お客”はクロスベルになるだろうから、エレボニアの注文は間違いなく後回しにされるだろうしね……」
「”ラインフォルトグループ”に代わるエレボニア王国と密接な関係になって貰う重工業メーカーと契約する事も今後のエレボニアの”課題”の一つでもありますね。」
「帝国最大の重工業メーカーであった”ラインフォルトグループ”に代わりになる企業等あるのでしょうか……?」
疲れた表情で語ったオリヴァルト皇子の話に続いたクレア大尉の説明を聞いたエリスは辛そうな表情で呟いた。
「”ラインフォルトグループ”と並ぶ重工業メーカーと言えばリベールの”ZCF(ツァイス中央工房)”かカルバードの”ヴェルヌ社”だけど……」
「”ZCF”は元々リベール王国と密接な関係だから無理だし、カルバードの”ヴェルヌ社”は……」
「――――メンフィル・クロスベル連合の二大国侵攻によって吸収されているだろうね。ちなみにプリネ君、”ヴェルヌ社”はメンフィルとクロスベル、どちらが吸収したんだい?」
重々しい様子を纏って呟いたジョルジュの後にトワは辛そうな表情で呟き、アンゼリカはプリネに視線を向けて尋ねた。
「”ヴァルヌ社”はメンフィル帝国が吸収しました。ですからアンゼリカ先輩の働き次第では将来”ヴェルヌ社”とエレボニア王国を密接な関係にできるかもしれませんね。」
「アンゼリカ先輩の働き次第って…………」
「あ、そっか~。メンフィル皇女の”殲滅天使”の秘書兼護衛をやっていたらメンフィルが契約している大企業の人達と面会できるチャンスとかできるだろうね~。」
プリネの話を聞いたリィンが目を丸くしている中、ある事に気付いたミリアムは興味ありげな様子でアンゼリカを見つめ
「あ……っ!」
「た、確かにその可能性は十分に考えられますね。」
「フフッ、なるほどね。メンフィルを納得させつつ、ヴェルヌにエレボニアと大口の契約を結ばせる……レン君の元に戻った時の私の第一目標にすべきかもしれないね。」
ミリアムの話を聞いたエリオットは声をあげ、エマは驚きの表情でアンゼリカを見つめ、アンゼリカは口元に笑みを浮かべた。
「フフ、影ながら応援させて頂きます。」
「ったく、転んでもタダじゃ起きない所とかゼリカらしいな……」
「えへへ……アンちゃんなら、絶対にできるよ!」
ラウラは静かな笑みを浮かべてアンゼリカを見つめ、クロウは呆れた表情をし、トワは無邪気な笑顔を浮かべた。するとその時空から機械音が聞こえて来た。
「この機械音は………」
「―――どうやら来たみたいだね。」
音に気付いたガイウスとフィーは空を見上げ、リィン達もつられるように空を見上げると何と”パンダグリュエル”が上空から現れた!
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