歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
233
愛しきし
君ぞ想いて
眺むれど
曇に隠れし
春の夕暮れ
愛しく彼を想いながら眺めた空には、薄い雨雲がかかっていた。
遠くの山並みも霞み、寂しさだけが辺りを覆っている…。
いかに恋しくとも…私がそれを口にすることは憚られる…。
生きる…とは、何とも無情なものだ…。
そんな春の夕暮れを、ただ独り…眺めた…。
想いても
時ぞ還らぬ
夕暮は
君なきけふを
刻みたりけり
どれだけ想いを募らせようと、叶わぬ恋…。
どれだけ恋い焦がれようとも…得られぬ愛…。
時を逆巻くことは出来ようもなく、ただただ過ぎ去るのみ…。
夕暮れ時には想いが胸へと押し迫り、自分の意味の無さを痛感する…。
日が沈めば今日も終わる…。
彼がいない今日…時はただそれだけを私へと刻み付けるだけなのだ…。
ページ上へ戻る