英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第207話
~エルベ離宮・紋章の間~
「え――――――」
「そ、そんな!?貴方は……!」
「―――宰相閣下!?生きてらしたのですか!?」
突然現れたオズボーン宰相にリィンは呆け、クローディア姫は信じられない表情をし、クレア大尉は驚きの表情で尋ねた。
「いや、この”気配”は”死者”だな。しかしこの凄まじい負の霊圧は一体……?」
しかしクレア大尉の言葉を否定するかのように答えたセルナート総長は真剣な表情でオズボーン宰相を見つめながらいつでもエイドスを守れるように迎撃態勢の構えをし
「―――下がりなさい!その者はもはや人間ではなく”怨霊”の類ですわ!」
フェミリンスは神槍を構えてアリシア女王達に警告した。
「エステル、ミント!」
「う、うん!」
「VIPの人達は壁際まで下がって下さい!その人は危険です!」
フェミリンスの警告を聞いた瞬間すぐに判断したヨシュアに促されたエステルとミントは各国のVIPに警告をして席から離れさせ、異変を感じたリベール王国親衛隊が会議室に突入してそれぞれのVIPを守っている中オズボーン宰相を包囲した。
「フフ、お久しぶりですな、オリヴァルト殿下、アルフィン殿下。お二人ともご無事で何よりです。」
「オズボーン宰相……」
「ハハ……クレア大尉の情報を聞いてまさかとは思っていたけど本当に亡霊になっていたとはね。―――それで今更”死者”が何の用だい?」
オズボーン宰相に視線を向けられたアルフィンは不安そうな表情をし、疲れた表情をしたオリヴァルト皇子はすぐに気を引き締めて厳しい表情でオズボーン宰相を見つめた。
「これはおかしな事を。エレボニアの存亡を決める会議に”宰相”の私が出席しない方がおかしい事かと。」
「―――戯言を。貴様は”死者”。貴様が死亡した時点で貴様の”宰相”の位も消滅している事もわからんのか?それにエレボニア宰相の位はオリヴァルト皇子が引き継ぐ事が先程決定した。未来のエレボニアにとって”過去の亡霊”である貴様の居場所はどこにもない。」
オズボーン宰相の言葉を聞いたヴァイスは厳しい表情で指摘した。
「……逆に聞くがかつてない衰退が待っている未来のエレボニアを祖国であるエレボニア帝国がゼムリアの覇権を握る為に努力し続けて来たこの私が受け入れると思っているのか?」
「”死者”の分際で傲岸不遜な……オリヴァルト皇子を始めとしたエレボニア皇族である”アルノール家”が受け入れたのですから、例え貴方が”宰相”だとしても貴方の意志は全く関係ありません。」
怒りの表情をしているオズボーン宰相の言葉を聞いたエルミナは呆れた後厳しい表情で指摘した。
「確かにその通りだが……私の息子――――リィンがアルフィン殿下を娶ったのだから私もエレボニア皇族の一員になるのだが?」
「っ!!………………」
「リィンさん………」
不敵な笑みを浮かべるオズボーン宰相の言葉を聞き、辛そうな表情をしているリィンをクレア大尉は心配そうな表情で見つめていた。
「幼い兄様をユミルの雪山に捨てたのに今更兄様の父親を申し出るなんて、そのような都合のいい事がまかり通ると思っているのですか!?”今の兄様”はシュバルツァー家の長男!兄様は貴方の息子ではなく、父様と母様――――シュバルツァー男爵夫妻の息子です!」
「エリゼ………………―――オズボーン宰相。本人である貴方がそう仰るなら俺は貴方の息子かもしれない。―――だがエリゼの言う通り今の俺の”家族”はシュバルツァー家のみんなで故郷はユミル……―――それがレン姫から俺の出生を知らされた時からずっと考え、出した”答え”だ!」
怒りの表情でオズボーン宰相を睨んで太刀を構えているエリゼの反論で我に返ったリィンは決意の表情でオズボーン宰相を見つめて言った。
「まさか実の息子が父親の存在を即否定する上男爵家の令嬢如きがこの私に真っ向から歯向かうとはな……これも”零の御子”の仕業と言った所か。」
「……その口ぶりですと貴方はまさかこの世界の”真実”にも気付いているのですか?」
リィンの決意を知って不愉快そうに口元を歪めるオズボーン宰相にエイドスは厳しい表情で尋ねた。
「”結社”とやらから”碧き零”計画の詳細についても聞いているのだから、その程度の事を推測する等容易い事だ、”空の女神”よ。当然貴方のゼムリア大陸の降臨も”零の御子”の仕業である事にも気付いている。」
「……………………話は変わりますが、一つ聞きたい事があります。先程から貴方から感じている覚えのある忌々しい”気配”。まさか貴方は遥か昔に私や多くの仲間達、そして当時のゼムリアの人々の協力によってようやく封じ込める事ができた”ユリス”を復活させたのですか!?」
オズボーン宰相から感じる霊圧から何かを察していたエイドスは怒りの表情でオズボーン宰相を睨んで問いかけた。
「フッ、一目で見抜くとはさすがは空の女神。」
「!!一体どうやって封印を解いたのですか!?あの封印は私以外には解けないはずです!」
オズボーン宰相の答えを聞いて血相を変えたエイドスは厳しい表情で問いかけた。
「例え女神の封印とは言え、時間が経てば弱まるというもの。―――かの”ノーザンブリア異変”のように。」
「”ノーザンブリア異変”――――”塩の杭”か………」
オズボーン宰相の答えを聞いてある事を察したセルナート総長は真剣な表情で呟き
「例えそうだとしても余程の”負”の感情が世界に充満しない限りそう簡単に封印が解ける訳が――――!!」
エイドスは反論したがある事に気付いて血相を変えた。
「その点に関しては感謝するぞ、”六銃士”にメンフィル帝国。貴様らが起こした戦争によって先程”空の女神”が言っていた負の感情とやらが高まったのだからな。」
「二大国侵攻の件か……」
「………オズボーン宰相。エイドス様が仰っていた”ユリス”とやらを復活させて何をするおつもりなのです?」
オズボーン宰相の答えを聞いたリウイは重々しい様子を纏って呟き、複雑そうな表情で黙り込んでいたイリーナは気を取り直して真剣な表情で尋ねた。
「―――知れた事。この”力”で”零の御子”によって改変された忌々しきこの世界を一度破壊し、エレボニア帝国の名の元に再生する。勿論メンフィルを始めとした異世界もその中に入っている。」
イリーナの問いかけに対し、オズボーン宰相は不敵な笑みを浮かべて驚愕の言葉を口にした!
「な―――――オ、オズボーン宰相!ま、まさか貴方はこのゼムリアだけでなくディル=リフィーナまでも手中に納めるおつもりなのですか!?」
「何という事を……!」
「…………………」
オズボーン宰相の話を聞いたユーディットとアルバート大公は信じられない表情で声をあげ、アリシア女王は真剣な表情で黙り込み
「”人”の身で世界どころか神々にまで喧嘩を売るとは愚かとしか思えん行為じゃな。」
「俺達や各国もそうだが、ディル=リフィーナの神々がそのような事を黙って見過ごすと本気で思っているのか?」
リフィアは呆れた表情で呟き、リウイは真剣な表情で問いかけ
「ふ、ふざけないで下さい!わたくし達は……”アルノール家”を始めとしたエレボニアの人々はそのようなおぞましい事を望んでおりません!」
「閣下……」
「そのような事をして貴方が仕えている父上が許すと思っているのか?」
アルフィンは怒りの表情で反論し、クレア大尉は辛そうな表情で肩を落とし、オリヴァルト皇子は厳しい表情で問いかけた。
「―――もはや役に立たない”駒”は必要ない。当然息子でありながら親であるこの私に歯向い、更には”駒”としても役立たずなリィンもそうだが、ルーファス以外の”子供達”も不要だ。」
「っ!!」
「……貴方に絶対の信頼を置いていたユーゲント陛下すらも”駒”として見ていたのですか……」
「あ、貴方という人は……!」
「あんた直属の部下のクレア大尉達どころかエレボニアの皇帝まで”駒”扱いする上しかも捨てるなんて、どこまで根性が腐っているのよ、あんたは!」
「酷すぎるよ……!」
オズボーン宰相の口から出た信じられない答えにクレア大尉は息を呑み、アリシア女王は重々しい口調で呟き、クローディア姫とエステル、ミントは怒りの表情でオズボーン宰相を睨んだ。
「待ってください!先程の話を信じるならまさかルーファスさんもオズボーン宰相の元にいるんですか!?」
「―――無念の死を遂げたルーファスは私同様亡霊となり、私の”最後の悪あがき”に付き合ってくれて感謝している。無論”零の御子”の仕業によって”運命”が改変された者達もその中にいる。―――例えばユミルで無念の死を遂げた者達等もそうだな。」
血相を変えたリィンの言葉にオズボーン宰相は不敵な笑みを浮かべて答え
「……と言う事はあの時滅した”執行者”達も亡霊と化し、この世に留まっているのか。」
「下手をすれば”赤の戦鬼”を始めとした”赤い星座”やマリアベル・クロイスもいるかもしれないな……」
(……マスターと出会わなければ私もその中に入っていたかもしれませんね……)
オズボーン宰相の答えからある事を推測したリウイとヴァイスは厳しい表情で考え込み、アルティナは複雑そうな表情をしていた。
「―――そう言えばこの会議の映像は”殲滅天使”の手によってクロウ・アームブラストも見ているのだったな……―――丁度いい。クロウ・アームブラスト、これが私を殺した”報復”だ。その目でしかと見て、自分の無力さを思い知るがいい――――」
そしてオズボーン宰相が不敵な笑みを浮かべると突如オズボーン宰相の背景にどこかの都市の映像が映った!
「あの都市は一体…………」
「!!あの都市は……”ジュライ特区”!」
都市の映像を見たアルバート大公が不思議そうな表情をしている中、見覚えがあるクレア大尉は血相を変えて声を上げた。すると映像に映っている都市―――”ジュライ特区”に突如大地震が起こり、大地震によって建物が次々と崩壊している中”ジュライ特区”の中心地に異形の巨大な城が地面から現れた!
「な、何と言う事を……!」
「そ、そんな……”ジュライ特区”が……―――閣下!御自分が何をしたのか理解しておられるのですか!?」
崩壊していく”ジュライ特区”を見たユリア准佐は怒りの表情でオズボーンを睨み、呆然としていたクレア大尉は悲痛そうな表情でオズボーン宰相を見つめて問いかけ
「エレボニア帝国を混乱に導いた挙句存亡の危機にまで陥らせたテロリストに対する”報復”をしたまでだ。直接その身に味あわせるよりこちらの方が効果的だろう?」
オズボーン宰相は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「―――エステル!敵に対しても慈悲の心を持ち、生きて己の罪を償わせる事を心情としている貴女には申し訳ありませんが、私はかつての”王”として……”女神”として……そして何よりも一人の”人”としてこのような外道をこれ以上生かしておくわけにはいきませんわ!」
「わかっている!あたしもさすがに今回ばっかりはぶっ飛ばして目を覚まさせるとかそんな甘い事を言う気はないわ!ヨシュア、ミント!行くわよ!」
「了解!」
「うん!」
怒りの表情をしたフェミリンスに視線を向けられたエステルはオズボーン宰相を討ち取る覚悟を示すかのように棒から神剣に持ち替えてヨシュアとミント、そしてフェミリンスと共にオズボーン宰相に襲撃したが攻撃が届く瞬間、オズボーン宰相は転移魔術らしきもので消えた後天井に現れた!
「フッ、お前達の役割は会議の安全保障なのだろう?ならばお前達は自分達の役割を果たすがいい――――!」
オズボーン宰相が片手を掲げると何とオズボーン宰相が最初に現れた場所に大量の不死者達が現れた!
「こ、これは……!」
「ゾ、ゾンビ……?」
不死者達を見たアルバート大公は驚き、クローディア姫は不安そうな表情をし
「オォォォ……」
「イヤダ……シニタクナイ……!」
「なっ!?ま、まさか領邦軍の不死者……!?」
不死者達の甲冑を見て領邦軍だと判断したユーディットは信じられない表情で声を上げた。
「!!―――死した魂をも冒涜したのですか、貴方は!?」
「その者達も改変された”運命”の犠牲者達。この改変された世界による同じ”犠牲者”として彼らの無念を晴らしたいという気持ちをくみ取ったまでの事。」
ある事を察したエイドスは怒りの表情でオズボーン宰相を睨みつけ、オズボーン宰相は不敵な笑みを浮かべながら答えた後漆黒の闇に包まれて消えようとした。
”真・煌魔城”の屋上にて待つ。双界を救いたければ”ユリス”を飲み込んだこの私を消す事だな。かつてメンフィルがエレボニアに与えた”猶予期間”同様2週間の”準備期間”をやろう。そして全ての準備が整ったその時、始めようではないか。世界の命運をかけた決戦という名の”遊戯”を―――――
その場にいる全員に自身の意志を伝えたオズボーン宰相はその場から消えた!
「こ、この~!言いたい事だけ言って逃げるなんて……!」
「―――話は後だ、エステル!今は会議場の安全保障が最優先だ!」
オズボーン宰相が消えた場所を悔しそうな表情で睨んでいるエステルにヨシュアは指摘した。
「わかっているわよ!ユリア准佐達は念の為にVIPの人達を守りながら増援が来ないか警戒して!あたし達が速攻でゾンビ達を殲滅するわ!」
「承知した!女王陛下達の身は我々が命に代えても守る!君達は後ろを気にせず、ゾンビ達を!」
「了解!みんな、速攻で決めるわよ―――――!」
その後不死者達はエステル達によって電撃的な速さで掃討され、全て消滅した!
オズボーン宰相が残した不死者達の消滅後、リウイは”ジュライ特区”の状況を確認する為に一時退席し……他のVIP達は今後についての話し合いを始めた。
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