英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第195話
~エルベ離宮~
「―――お待ちしていましたわ。殿下がお待ちです。どうぞ、中へ。」
「失礼します。」
「殿下の警備、お疲れ様です、シグルーン中将閣下。」
シグルーンに会釈したクレア大尉とリィンは仲間達と共に部屋の中へ入っていった。
「うむ、よく来たな!まずはせっかくの休憩中の所を急に呼び出してすまなかったな。」
「いえ、恐れながら殿下のお呼び出しは自分達にとっては渡りに船でしたので正直助かりました。」
「リウイ陛下達はいらっしゃらないようですが……」
リフィアの謝罪に対してユーシスが静かな表情で答え、リフィアとエリゼしかいない事に気付いたラウラは不思議そうな表情をした。
「陛下達はクロスベルとエレボニアを除いた各国のVIPの方々に挨拶をしている最中です。」
「うむ、そう言う事じゃ。それにお主達にとってもリウイがいない方が余計な緊張をしなくていいから楽じゃろう?」
「……そうなの?」
エリゼの話に頷いたリフィアの言葉を聞いたゲルドは不思議そうな表情でリィン達に尋ね
「そ、それは……」
「いつも凄まじい”風”を纏っている人なのは間違いないな。」
ゲルドの問いかけにリィンは表情を引き攣らせ、ガイウスは苦笑しながら答えを濁した。
「恐れながら殿下。殿下の貴重な休憩時間を余り消費したくないので、早速ですが私達をお呼びした理由を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「うむ、そうじゃな。―――まずは座るがよい。勿論同行者の者達も遠慮なく座ってよいぞ。」
クレア大尉の申し出に頷いたリフィアはリィン達にソファーに座るように促し
「失礼します。」
リフィアに促されたリィンは頭を下げた後仲間達と共にソファーに座り
「エリゼ、皆に紅茶を。」
「わかったわ。」
リフィアの後ろに控えていたエリゼはリフィアの指示に答えた後、全員分の紅茶を用意し、エリゼが紅茶が入ったカップを置き終えてリフィアの後ろへと戻るとリフィアは話し始めた。
「さてと。お主達を呼びつけた用件じゃが……まずはゲルド。お主に改めて礼を言いたいと思ってな。」
「私に??」
「うむ。――――お主の予知能力による警告のおかげでケルディックの被害を最小限に抑えられた上、焼き討ちの後にはお主自身が歌を歌って民達の心を癒したと聞いている。ケルディックを陰から守った上焼き討ちによって傷ついた人々を癒してくれた事、心から感謝している。」
「ケルディックを救って頂き、本当にありがとうございます。」
ゲルドを見つめて頭を下げたリフィアに続くようにエリゼも頭を下げた。
「……私は大した事はしていないわ。未来を変えられるかはその人達次第だし、ケルディックの人達の心を癒したのは何も私の歌だけじゃないわ。ケルディックの人々の為に演奏会をする事を決めたロジーヌや演奏会が開けるように手伝ったリィン達”Ⅶ組”を始めとした協力してくれた人達のおかげよ。」
「ゲルド……」
「フフ、演奏会の件は私も話には聞いています。何でもあの演奏会のお蔭で意識を失っていた人々も目を覚ましたとか。」
「ハハ、たまたまですよ。」
ゲルドの答えにラウラは呆け、クレア大尉に微笑まれたリィンは苦笑し
(……まあ、ゲルドの歌が全く関係していないと言えば嘘になるな。)
(……確かにそうだな。演奏会の時にゲルドが歌った歌は治癒魔法の歌だとの事だからな。)
ユーシスの小声の言葉にガイウスは静かな表情で頷いた。
「……リフィア殿下。ゲルドへの用事はケルディックの件についてだったのでしょうか?」
「それもあるがケルディックを救った件に関する報酬で与えるゲルドに与える貴族の家名が決まったのでな。ちょうどよい機会じゃから今の内に教えておこうと思っていたのじゃ。」
「ゲルドに与える貴族の家名……?」
「……そう言えば以前レオンハルト教官が予言でケルディックの被害を最小限に抑えたゲルドへの報酬に貴族としての爵位を与えるという話があったな。」
リィンの質問に答えたリフィアの話を聞いたガイウスは首を傾げ、ユーシスはレーヴェの説明を思い出した。
ゲルド・フレデリック・リヒターの”予言”通りになってしまったが、”最悪の事態”――――犠牲者を出す事だけは防げた。その功績を評して状況が落ち着いた後メンフィルはリヒターに”報酬”を与えるとの事だ。……その中には出身不明かつ記憶喪失のリヒターに貴族の爵位を授けるという”報酬”もある。
「あ…………」
「それでゲルドに与える貴族の家名は何という名なのでしょうか?」
「……もしやルクセンベール卿同様メンフィル皇家に縁がある貴族ですか?」
「………………」
ケルディックでのレーヴェの話を思い出したリィンが呆けた表情をしている中、ラウラとクレア大尉はそれぞれ質問し、ゲルドは静かな表情で黙り込んでいた。
「うむ。”パリエ”。―――それがゲルドに与える予定となっている貴族の家名じゃ。」
「なっ!?”パリエ”ってまさか……!」
「”癒しの聖女”――――ティア神官長の家名ですか……!」
「それにクロスベルのウルスラ病院で出会ったリウイ陛下の側室の一人であるセシル様の家名でもあるな……」
リフィアの答えを聞いたリィンとラウラは驚き、ユーシスは真剣な表情で呟き
「なおゲルドさんの件を知ったセシル様達よりゲルドさんが希望するのならば、養子縁組をしても構わないとのお言葉も頂いております。」
「……リウイ陛下の側室の方やその家族の人達が養子縁組をしてもいいという事は……」
「ゲルドさんもルクセンベール卿やセレーネさん同様メンフィル皇家の一員になる事ができるという事ですね。」
「えっと、その……私に”家族”ができるのは嬉しいけどその人達もそうだけど、リフィア皇女達にとっても迷惑じゃないの……?セレーネみたいに遠い親戚にはなるとはいえ、見ず知らずの私までメンフィル帝国の皇族の人になってしまう事になるけど……」
エリゼの話を聞いたガイウスは目を丸くし、クレア大尉は真剣な表情でゲルドを見つめながら呟き、ゲルドは戸惑いの表情で尋ねた。
「お主は予言をプリネ達に伝える事でケルディックの民達の命を救ったのじゃ。メンフィルは受けた恩を決して忘れん。むしろ余は足りないくらいだと思っているのじゃぞ?民達の命は何物にも代えられんからな。」
「リフィア殿下……」
「民達の命は何物にも代えられない……まさにその通りですね…………」
「ユーシス…………」
リフィアの口から出た意外な発言にリィンは驚き、ユーシスは処刑されたアルバレア公爵と目の前のリフィアを比べて辛そうな表情で頷き、ユーシスの様子に気付いたガイウスは心配そうな表情をした。
「―――逆に受けた恩を仇で返すような愚か者達には相応の”報い”を受けさせるがな。」
「……ッ……!」
「………………」
「…………貴族連合―――いえ、エレボニア帝国による2度に渡るユミル襲撃やケルディック焼き討ちの件ですか。」
そして突如厳しい表情に変えたリフィアの言葉から遠回しにアルバレア公爵や貴族連合の愚行を指摘している事に気付いていたユーシスは辛そうな表情で唇を噛みしめ、クレア大尉とラウラは複雑そうな表情をし
「……リフィア、さすがに言葉が過ぎるわよ。この場にはあの件によって言葉通り”家庭を失った”ユーシスさんもいるのよ?」
エリゼは複雑そうな表情でリフィアに指摘した。
「そうじゃったな……―――すまなかったな、お主の事を考えていない非礼な発言をしてしまって。」
「……私の事はどうかお気になさらずに。本来なら私も父達同様処刑されてもおかしくない立場であったにも関わらずメンフィル帝国やシュバルツァー家の方々に対する償いの機会を与えて頂いた所か、貴族の爵位まで与えて頂いたご恩は今でも忘れていません。」
リフィアに謝罪されたユーシスは静かな表情で会釈をして答えた。
「うむ、お主の未来については余も期待しているから今後も精進するのじゃぞ。」
「はい。」
「―――それでゲルド、先程のエリゼの話――――お主がセシル達と養子縁組を組む事に関しては受け入れるのか?何なら今この場で返事をしても構わんぞ。」
「……そのセシルやティアって人はどんな人なの?」
「お二方とも”聖女”と称えられる程誰よりも他人を労わる心を持つとても優しい性格をしている方々じゃ。」
「………………できればその人達に実際に会って話をしてみたいわ。」
リフィアの話を聞いて少しの間考えてやがて答えを口にし
「うむ、確かに家族になるかもしれないのじゃから養子縁組を組む話に関しては当人同士が直に会って話をしてからじゃな。」
ゲルドの答えを聞いたリフィアは納得した様子で頷いた。
「……それでリフィア殿下。俺をお呼びした理由は一体何なのでしょうか?」
ゲルドの件が終わった事を察したリィンは真剣な表情でリフィアに問いかけた。
「ようやく”本題”に入れるな。お主を呼んだ理由……それは見事三国が課した”試練”を乗り越えたお主を始めとした”Ⅶ組”に対する褒美をやろうと思ってな。その為に”Ⅶ組”の代表者であるリィン。お主を呼んだ。まあ、他の面々も同行する事はわかってはいたが。」
「”褒美”……ですか?」
「それは一体どのようなものなのですか?」
リフィアの説明を聞いたリィンは戸惑い、ガイウスは不思議そうな表情で尋ねた。
「それは勿論エレボニア帝国が一番知りたいと思っている我らメンフィルの思惑じゃ。お主達もそれが目的で余に会いに来たのであろう?」
リフィアは不敵な笑みを浮かべてリィン達に問いかけ
「な―――――」
「フウ……もう少し遠回しな言い方はできないのかしら?」
「……リフィア殿下のご慧眼通りです。」
リフィアが自分達の目的を理解していながらもわざわざ話をする事を決めたリフィアの豪胆さに仲間達と共に驚いたクレア大尉は絶句し、リィン達の様子を見たエリゼは呆れた表情で溜息を吐き、ユーシスはすぐに表情を戻して答え
「その……リフィア殿下。メンフィル帝国の思惑と仰いましたが……」
「後半の会議でエレボニアを許して領地をある程度返してくれることについてでいいの?」
ラウラが答えを濁しながら続きを言おうとしたその時、ゲルドは静かな表情で問いかけた。
「うむ。」
「その……リウイ陛下達やヴァイスハイト陛下達はリフィア殿下の意向についてご存知なのでしょうか?」
ゲルドの答えにリフィアが頷くとリィンは戸惑いの表情で尋ねた。
「無論承知しておる。さて……時間は有限じゃ。余が答えられる範囲の答えがお主達が求めている答えかどうかは知らぬが嘘偽りなく正直に答えるつもりじゃ。―――何が聞きたい?」
「では率直に聞かせて頂きますが、メンフィルがエレボニアを許し、制圧した領地を返還する可能性はあるのでしょうか?」
リフィアの問いかけを聞いたリィン達は互いの顔を見合わせて頷いた後リィンが仲間達を代表して尋ねた。
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