英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第180話
~鳳翼館~
「ほう。エレボニアが滅亡寸前である事は話には聞いていたが、そんな面白い事になっていたとはな。」
「もう、アインったら……”面白い”ですまされる出来事ではないわよ?」
リィン達の経緯を聞いて興味ありげな表情をしたセルナート総長の発言にルフィナは呆れた表情で指摘し
「ハハ、”試練”か。”影の国”の”試練”を思い出すな~。」
「………もしかしたらヴァイスさん達はあの”試練”を参考にしたのかも。」
ケビンとリースはそれぞれ苦笑しながら呟いた。
「う、う~ん……さすがにそれはないかと思いますけど……」
「でもそこの皇子と同じお気楽な性格をしているあの人ならやりそうなの。」
「フッ、そう褒めないでくれよ。照れるじゃないか♪」
「お兄様、褒めていませんわよ。」
リースの推測を聞いたナユタは困った表情で呟き、呆れた表情で呟いたノイの言葉に酔いしれた表情で答えたオリヴァルト皇子にその場にいる全員は冷や汗をかき、アルフィン皇女がその場にいる全員を代表して指摘した。
「フフ、ちなみにメンフィル、リベール、クロスベルのそれぞれが用意した強敵と戦ったって言ったけど、三国はそれぞれ一体誰を用意したんだい?」
「バリアハートの時はレオンハルト教官だったな。」
ワジの質問を聞いたガイウスは答えた後バリアハートに向かった面々を見回した。
「ああ………まさかあんな展開になるなんて、予想外過ぎたぞ。」
「サラ教官と戦った時より強すぎだよ……」
「ま、まあまあ……よく考えてみたらあの”試練”だけでメンフィル皇家が認めてくれたのですから、それで良しとしましょうよ。」
疲れた表情をしているマキアスとエリオットにセレーネは苦笑しながら諌め
「ホント、クレアがいなかったらヤバかったよね~。」
「フフ、私は大した事はしていませんよ。私からすればミリアムちゃん達がいたお蔭であの”試練”を乗り越える事ができたと思っていますし。」
ミリアムの言葉を聞いたクレア大尉は苦笑しながら指摘した。
「レオンハルト……”剣帝”ね。フフ、まさか彼に勝つ事ができるなんてね。」
「凄いな……あの人、相当な強さなのに……」
「ええ……人間の中では最強の部類なのによく勝つ事ができましたね。」
ガイウス達がレーヴェに勝った事にルフィナやアドル、エレナは驚き
「リベールは誰をお前達にぶつけたのだ?」
セルナート総長は興味ありげな表情で尋ねた。
「リベールはカシウス准将の教え子の一人にしてかつてリベールの”情報部”を率いていたリシャール殿です。」
「リシャールさんですか……カシウス准将ではなくてよかったですね。」
ラウラの答えを聞いたリースは目を丸くした後苦笑しながらラウラ達を見つめた。
「そりゃ”弟子”であれだけ苦戦したんだから、師匠の”剣聖”なんて出て来たら絶対負けていたし。」
「ア、アハハ……リシャールさんの時でもみんな、ギリギリだったしね。」
「うん。誰か一人でも欠けていたら多分負けていたわ。」
ジト目で呟いたフィーに続くように苦笑しながら答えたトワの推測にゲルドは静かな表情で答え
「フフ、”弟子”であの強さなんだから、”師匠”は一体どのくらいの強さなのか、怖いもの見たさで興味が出てくるよね。」
「や、止めた方がいいですよ?私達、一度だけ手合せをした事がありますけど、全くと言っていい程歯が立ちませんでしたから。」
「自ら勝てない相手に挑みたいというその気持ちは全然理解できないわ。」
アンゼリカの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいて指摘し、セリーヌは呆れた表情で呟いた。
「レーヴェさんにリシャールさん……アハハ、”影の国”に巻き込まれたメンバーばかりだね。」
「やっぱり”影の国”の”試練”を参考にしたんじゃないの?」
「……ナユタ、ノイ。その二人って兄さんやオルバス義父さんよりも強いの?」
ナユタとノイの会話を聞いていてある事が気になったクレハは不思議そうな表情で尋ね
「うん………シグナは勿論だけど、先生でもあの二人には多分勝てないと思う。」
「そんなに強いんだ……」
ナユタの答えを聞き、目を丸くした。
「それで?クロスベルでは誰が君達の相手をしたんだい?もしかして僕の知り合いもいたりする?」
ワジは興味ありげな表情でリィン達を見つめて尋ねた。
「知り合いも何もほとんど全員お前さんの仲間ばかりで、他は元々クロスベルにいたとんでもない使い手だったぜ……」
「しかも私達の時だけ4回も”試練”があったんですよ?」
ワジの質問にトヴァルは疲れた表情で答え、アリサはジト目で呟いた。
「へえ?1戦目は誰だい?」
「……1戦目の相手は”銀”と”キリングベア”よ。」
「……驚いた。片方でも僕やロイド達が苦戦する相手なのに、よくそのコンビに勝てたね?というか”キリングベア”は留置所にいるはずなのに……」
サラ教官の答えを聞いたワジは目を丸くした後不思議そうな表情をした。
「……”黄金の戦王”が俺達に奴をぶつける為に、奴に司法取引を持ちかけて、奴がその取引に応じたからだそうだ。」
「フッ、”司法取引”でマフィアの若頭を一時的に釈放するとはとんでもない度胸をしているな、クロスベルの皇帝とやらは。」
「フフ、局長ならやりそうだよ。それで2戦目は誰だい?」
呆れた表情で答えたユーシスの言葉を聞き、セルナート総長と共に口元に笑みを浮かべたワジは続きを促した。
「2戦目の相手は女神様の”眷属”の一人―――”神狼”ツァイト様です。」
「あら、ツァイトが……よく貴女達だけであの子に勝てましたね?」
エリスの口から出た予想外の人物の名に目を丸くしたエイドスは不思議そうな表情で尋ねた。
「勝てたというか……認めてもらえただけです。向こうは私達がどれだけ攻撃しても、全然平気そうでしたし……」
「フフ、私の”眷属”は私程ではないですが、常に”七耀脈”からの祝福を受けられますから、”人”の身で”眷属”に勝つのは相当難しいですものね。」
疲れた表情で答えたアリサの答えを聞いたエイドスは苦笑しながら説明し、エイドスの爆弾発言にその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ハ、ハハ……ちなみに三戦目の相手は”風の剣聖”―――アリオス・マクレインでした。」
「”風の剣聖”……!」
「へえ……留置所にいる”キリングベア”をぶつけた話を聞いて、”風の剣聖”もぶつけると予想していたけど、まさか本当にあの”風の剣聖”をもぶつけるとはね。局長も手加減なしだね♪それで最後の相手はまさかロイド達だったり?」
リィンの話を聞いたルフィナは驚き、ワジは静かな笑みを浮かべて笑顔になった後興味ありげな表情で尋ねた。
「ええ、その通りよ。」
「ちなみに最後はリィンとロイドの一騎打ちだったぜ。」
「フフ、僕も是非ロイドとの一騎打ちを見たかったよ♪」
サラ教官とトヴァルの話を聞いたワジは目を丸くした後笑顔で言った。
「そして皆さんはその”試練”を見事乗り越えたとの事ですが……何故、そこでエイドスが出てくるのでしょうか?」
その時ある事が気になっていたフィーナは真剣な表情でリィン達に尋ねた。そしてリィン達はエイドスを必要とする理由を説明した。
「……メンフィルとクロスベルも”空の女神”の意見は無視できないと判断しての事、か。」
「確かにその判断は間違ってはいないけど……」
理由を聞き終えたセルナート総長とルフィナは重々しい様子を纏って呟き
「う~ん、教会は基本どの勢力に対しても中立やし、戦争が起こった際は片方の国が和解を求めたら和解に向けて動くけど……」
「……七耀教会に話も通さなかった上面会の約束もせずに直接”空の女神”を訪ねて嘆願するのはどうかと思うのですが。」
疲れた表情で呟いたケビンの代わりにリースは真剣な表情でリィン達を見つめて指摘した。
「七耀教会に話を通さなかった事や面会の予約をしなかったのは時間が無かった為で故意ではない。必要ならこの場で謝罪するし、後で父上―――エレボニア皇帝自身がアルテリア法国に出向いて謝罪と依頼をしても構わない。」
「女神様、どうかわたくし達――――エレボニア帝国に御慈悲をお願いします……!」
リースの指摘に対してオリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って答え、アルフィン皇女はエイドスを見つめて頭を深く下げ
「…………………………」
「エイドス…………」
「”神”にすがりたい君達の気持ちはわからなくはないけど……」
「……難しい問題ですね。」
目を伏せて黙り込んでいるエイドスをフィーナは静かな表情で見つめ、アドルとエレナは複雑そうな表情をし
「それで?貴女はどうするんだい?」
ワジは真剣な表情でエイドスを見つめて問いかけた。
「―――前にも皆さんにも説明しましたように、私は皆さんが立ち向かう内戦や異世界の大国との外交問題に介入する”権限”はありませんし、そのつもりもありません。――――そしてその気持ちは今も変わりません。」
「そ、そんな……女神様はエレボニアの人々を見捨てるのですか……?」
「……エレボニアの人々は平和を願って、貴女に祈り続けているのに何故エレボニアを見捨てるのでしょうか?」
目を見開いて静かな表情で答えたエイドスの非情な答えに表情を青褪めさせたエリスは身体を震わせながら尋ね、ガイウスは複雑そうな表情で尋ねた。
「見捨てるとは人聞きが悪いですね。単に”国が滅ぶだけ”で多くの人々が傷つけられたりはしないのでしょう?そんな”些細な事”は今までの歴史で繰り返され続けています。」
「……そうね。そして人々は争いをいずれ忘れて生きて行き、いつかまた争いを始め、争いが終わればまた忘れて生きて行く……という繰り返しをし続けて行くのでしょうね……」
「クレハ様……」
「………………」
エイドスの答えに悲しそうな表情で同意したクレハをノイは辛そうな表情で見つめ、ナユタは複雑そうな表情で黙り込んだ。
「く、”国が滅ぶ事が些細な事”って……!」
「確かに直接傷つけられる事はないと思いますけど……心に傷は負うと思いますよ?」
エイドスの非情な答えにトワは信じられない表情をし、アンゼリカは真剣な表情で問いかけた。
「そうですね。ですがそれも一時的な傷。10年、20年と長い年月と共に人々はやがて祖国が滅んだという記憶を忘れ、平和な暮らしに満足するでしょうね。一応私も現在の世界情勢をある程度ケビンさん達から聞いています。確かエレボニア帝国の暗殺された宰相も実際にそれを行い、それが原因で”帝国解放戦線”――――テロリストが産まれたそうですね?」
「そ、それは…………」
「……………………」
「まあそれはそうだけど、だからと言ってエレボニアが滅びていい理由にはならないと思うんだけど~。」
エイドスの指摘に反論できないマキアスは言葉を無くし、クレア大尉が辛そうな表情で黙り込んでいる中、ミリアムは真剣な表情でエイドスを見つめた。
「そもそも”権限”がないってアンタは言ってるけど、その”権限”ってどういう意味なのよ。」
「セ、セリーヌ。お願いだからもっと、丁寧な言い方で尋ねて……」
目を細めるセリーヌにエマは冷や汗をかいて指摘し
「口調の事で私は気にしていないので心配無用です。―――セリーヌさんの疑問についてですが………クロスベルで”零の至宝”の件等を知った皆さんなら既にお気づきと思いますが私は”過去の存在”です。”過去の存在”が異なる時代―――”未来”で”その時代の本来の歴史”を変えるような事は”禁忌”です。ましてや政に介入する等以ての外です。」
エマを制したエイドスは静かな表情で答えた。
「……しかし、その答えでは矛盾が生じてしまいますが。」
「未来の歴史を変えちゃいけないって言ってますけど、女神様自身が思いっきり変えていますよね……?」
「ん。”六銃士”や”特務支援課”に肩入れしたじゃん。」
「何故クロスベルはよくて、エレボニアはダメなのでしょうか……?」
エイドスの答えに疑問が生じたラウラは真剣な表情をし、エリオットは不安そうな表情で尋ね、フィーはジト目でエイドスを見つめ、セレーネは悲しそうな表情で尋ねた。
「彼らに助力したのは”零の至宝”が改変してしまった”歴史の正しい流れを護る為”であり、ゼムリア大陸の歴史の流れを歪ませてしまった”原因”である”零の至宝”の誕生の元となった”幻の至宝”をクロイス家に託した私の責任を取る為とこれ以上”零の至宝”もそうですがクロイス家にゼムリア大陸の歴史を歪まさせない為です。」
「だ、だからと言ってエレボニアは滅びろって言うんですか!?」
「貴女は”女神”でもあるのよね……?どうして女神なのに、人々を助けてくれないの……?」
エイドスの答えを聞いたアリサは悲痛そうな表情で指摘し、ゲルドは不安そうな表情で尋ねた。
「先程ゼムリア大陸の歴史の流れを歪ませてしまった責任を取る為と言ったが……その件で被害を受けたエレボニアの件も貴女が責任を取って、何とかするべきではないのか……!?」
「……まさかとは思うけどエレボニアが滅ぶのも”改変した歴史の正しい流れ”って言うつもりかしら?」
「……だとしたら、余りにも酷すぎだろ……」
ユーシスとサラ教官が厳しい表情でエイドスを見つめている中、トヴァルは疲れた表情で呟き
「お願いします。ただ、二国に情状酌量を認めるように意見して下さるだけでいいんです……!」
リィンは頭を深く下げて懇願した。
「―――あくまでこれは”私個人”の意見ですが、エレボニア帝国の滅亡を防げたとしてもその先の”未来”を考えれば正直な所、今滅亡した方がエレボニア帝国に住まう人々の為にもなると思うのですが。」
「”滅亡を防いだ後の未来”……?」
「え…………そ、それは一体どういう事なのでしょうか……!?」
「……………………」
エイドスの意見を聞いたトワは不思議そうな表情をし、アルフィン皇女は信じられない表情で尋ね、ある程度察しがついていたオリヴァルト皇子は複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「――”ハーメルの悲劇”、でしたか。リウイ陛下からその件を聞きましたが、エレボニア帝国はメンフィル帝国が要求した”戦争回避条約”の件がなければ世界中に公表するつもりはなかったとの事ですよね?」
するとその時エイドスは目を細めてオリヴァルト皇子とアルフィン皇女を見つめて問いかけた。
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