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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第151話(第二部終了)

~トールズ士官学院・グラウンド~



「な――――”十三工房”の統率者である”蛇の使徒”が”騎神”に自動戦闘ができるように手を加えたですって!?」

「仲間を裏切ってまで改造するとか、あの偏屈な爺さんといい勝負をしてんじゃねえのか……?」

「さすがにシュミット博士はそのような方ではないですよ……」

(フム……後で”蒼の聖典”に詳しい説明を聞く必要がありそうですね……)

説明を聞き終えたセリーヌは信じられない表情で声をあげ、厳しい表情で呟いたマカロフ教官の言葉を聞いたジョルジュは複雑そうな表情で指摘し、トマス教官は真剣な表情で考え込んだ。



「いつですか……一体いつオルディーネは破壊されたんですか!?」

その時リィンが血相を変えて尋ね

「オルディーネが破壊された日はちょうどクロスベルが解放された日にして”碧の大樹”が現れた日――――つまり、皆さんがバリアハートに寄って、補給や休憩等を行っていた日ですわ。」

シグルーンが静かな表情で答えた。



「!!」

「そ、そんなにも前からオルディーネが破壊されていたなんて……!?」

「何でその時に教えなかったのよ!?その口ぶりだと、あんたも知っていたんでしょう!?」

シグルーンの答えを聞いたリィンは目を見開き、アリサは信じられない表情をし、サラ教官は怒りの表情でシグルーンを睨んだ。



「―――軍事機密を”敵国”に教えるとお思いですか?」

「あ、あんたって奴は……!あんた自身が協力しているあの子達に対して、何も思わなかったのっ!?」

「絶望的な状況でありながら諦める事なく自分達ができる事をして少しずつ状況を翻し続けていた事には感心していましたが、”C”との”約束”とやらを重視している事に関しては正直呆れていましたわね。犯罪者―――それも”裏切り者”とした”約束”を守る為に内戦終結に専念するのではなく、武器の材料を探す事を専念していたのですから。そんな”下らない約束”等捨て置いて内戦終結に集中していれば、”戦争回避条約”で定められた猶予期間以内に内戦を終結させる可能性はあったと思いますわよ。現に昨日の作戦にて帝都解放の直前まで状況を翻したのですから。太刀の材料集めをしなければ、期間以内に内戦を終結させられる可能性が十分にあった証拠です。一番の障害となってくる”蒼の騎神”に関しては、皆さんが契約している異種族の方々に協力して貰えれば簡単に無力化できたでしょうから、”蒼の騎神”の対策も皆さんで十分取れました。」

「ッ!!あの”約束”は俺達”Ⅶ組”にとって大切な”約束”なんです!取り消してください!!それにクロウは犯罪者や裏切り者じゃありません!俺達の”仲間”です!!」

「あ、あんた……!言って良い事と悪い事の区別もつかないの!?」

シグルーンの口から出た非情な答えを聞いたリィンは唇を噛みしめた後声をあげ、サラ教官は全身に紫電を纏わせてシグルーンを睨み

「やめるのじゃ、サラ教官!ここで彼女に危害を加えた所で何の解決にもならぬし、シグルーン中将閣下は当然の事を言ったまでじゃし、メンフィル帝国の軍人として当然の事をしたまでじゃ!」

「そのくらいの事はわかっています!ですがっ!これでは生徒達が余りにも可哀想ではありませんか!?自分達が目指していた”大切な目標”に土足で踏み込んで台無しにした所か、それすらも黙っていたなんて!」

ヴァンダイク学院長に諭されたサラ教官は怒りの表情で反論してシグルーン達を睨んだ。



「”紫電(エクレール)”のバレスタイン、でしたね。かつて”猟兵”であった貴女にはわからないのですか?」

その時リアンヌが静かな表情でサラ教官を見つめて問いかけた。

「何よ!?」

「貴女達は”戦争”を”軽く見過ぎ”です。”戦争”は学生達の”約束”等歯牙にもかけず、決着が付くまで”理不尽な出来事が起こり続けるのが常”……―――それが”戦争”です。貴女達もその目にした筈です。内戦の影響によって猟兵達に襲撃されたユミルや焼討ちされたケルディック―――――”理不尽な出来事”を。」

「っ!!」

「そ、それは…………」

「……確かにその通りじゃな。」

「”獅子戦役”と比べれば、今の状況はまだマシなんでしょうね……」

「――――!サラさん、止めて!そんな事をしても貴女では彼女に勝てないし、何の解決にもならないわ!」

「ゲ、ゲルドさん……?」

リアンヌの正論にサラ教官は目を見開いて唇を噛みしめ、セレーネは辛そうな表情をし、ヴァンダイク学院長やトマス教官は重々しい様子を纏って呟き、予知能力によってある光景が見えたゲルドの警告に気付いたアルフィン皇女が戸惑ったその時

「……れでも……それでもあたしは”Ⅶ組”の担任としてあんた達がした事が絶対に許せないのよっ!!」

サラ教官が怒りの表情で武器を構えた!



「サ、サラ教官!?まさかシグルーン中将達と戦う気じゃ……!?」

「そんな事をしても無駄ですのに……」

「―――仕方ありませんね。」

サラ教官の行動にエリオットが驚き、シグルーンが呆れた表情で鞘から細剣を抜いたその時リアンヌが異空間から巨大な槍を召喚して構えた!

「中世の騎士達が使っていた騎兵槍(ランス)……!」

「止めなさい!いくらアンタでも、”鋼の聖女”には”絶対に勝てない”わ!」

リアンヌが持つ槍を見たラウラは目を見開き、セリーヌは警告したが

「ハァァァァァァ―――――ッ!!」

サラ教官はセリーヌの警告を無視してリアンヌ達に襲い掛かった。しかし、リアンヌは一瞬でサラ教官の正面に現れて高速の連続突きを放った!

「な―――――カハッ!?」

超高速の連続突きを終えたリアンヌがサラ教官から離れて元の位置に戻るとサラ教官は大ダメージを受けて吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた!



「きょ、教官!?大丈夫ですか!?」

「今、治療しますわ!」

「私も手伝います!」

それを見たエマやセレーネ、エリスは慌ててサラ教官に駆け寄ってサラ教官に治療を施し始めた。

「な――――」

「な、なんなの今の~!?」

「凄まじい速さの突きを放ったようだが……」

「ほ、ほとんど何も見えなかったわよね!?」

「超高速の突きを一呼吸で数十放ったのじゃ……とても人間業とは思えん。」

「250年以上も生きている時点で”人間”じゃないと思いますがね。」

「ア、アハハ~……伝承……いえ、伝承以上の強さですね……」

リアンヌの圧倒的な攻撃にラウラは絶句し、ミリアムは混乱し、ガイウスは呆け、アリサは信じられない表情で声をあげ、重々しい様子を纏っているヴァンダイク学院長にマカロフ教官は疲れた表情で指摘し、トマス教官は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「こ、これが”槍の聖女”……!」

「クッ、”化物”が……!」

「つ、強すぎるよ……」

「戦闘能力不明……下手したらあの”劫炎”よりも上かも……」

「やれやれ……ただでさえメンフィルは”英雄王”を始めとしたとんでもない”化物”だらけだって言うのに、そこに”槍の聖女”まで加わるなんて……メンフィルは一体どれだけ強くなれば気がすむんだい?」

マキアスは目を見開き、ユーシスは唇を噛みしめ、トワとフィーは不安そうな表情をし、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐いた。



「……アンタ、第七柱直属の騎士達―――”鉄機隊”はどうするつもりなのよ。」

「彼女達に”鉄機隊”の解散を伝えた所、それでも私に仕えたいとの申し出があったので、彼女達は今後は私の部下として私と共に陛下達をお守りして頂きます。」

「!という事はあの”神速”とやらを含めた”鉄機隊”に所属している騎士達もメンフィルに……!」

「本当に一体どこまで戦力過剰にすれば気がすむの、メンフィルは。」

(”剣帝”に続いて”鋼の聖女”と”鉄機隊”までメンフィルに所属するなんて…………メンフィルが暴走した時、”私達”を含めたゼムリア大陸全土の様々な勢力が協力しても止められるかどうかわかりませんね……)

セリーヌの問いかけに答えたリアンヌの話を聞いたラウラは目を見開き、フィーはジト目になり、トマス教官は目を細めて考え込んでいた。



「レン姫……どうして……どうしてオルディーネを戦闘不能に留めずに破壊したんですか!?」

「リィン…………」

ヴァリマールから聞こえて来た悔しそうな様子のリィンの声を聞いたゲルドは辛そうな表情をし

「あのねぇ……暴走した騎神――――巨大人形兵器をそんな”中途半端”なやり方で無力化できる訳がないでしょう?それとも何?リィンお兄さんはクロスベルに住む大勢の民達の命より、テロリ――――いえ、クラスメイトとの”約束”の方が大事だって言いたいのかしら?オルディーネが現れた場所はオルキスタワーの屋上よ。暴走したオルディーネがオルキスタワーを破壊してその結果オルキスタワーの中にいる人達もタワーの崩壊に巻き込まれて多くの犠牲者を出す可能性も考えられたし、そのまま町に飛び出て暴走を起こして更に多くの犠牲者や被害を出す可能性だって十分に考えられたのよ?しかもあの場にはクロスベル解放の為にロイドお兄さん達に協力していたリィンお兄さんにとって大切な家族のエリゼお姉さんもいたのよ?家族のエリゼお姉さんやクロスベルに住む大勢の罪なき人々の命と比べても、”C”との”約束”の方が大切だって言うのかしら?」

「それは…………ッ…………!ならせめてその時俺達を呼んでくれれば破壊する必要はなかったかもしれなかったのですよ!?」

「レンのお話は聞いていた?普通に考えて暴走した騎神相手に”破壊”ではなく”時間稼ぎ”を目的に戦うなんて相当至難な戦いになるし、そもそもオルディーネが現れたのはエレボニアではなく”他国”――――クロスベルよ?暴走したオルディーネをどうするか決めるのはリィンお兄さん達じゃなくて、ヴァイスお兄さんやロイドお兄さん達――――”クロスベル帝国”よ。クロスベルで起こった出来事だから”他国”の学生のリィンお兄さん達を呼ぶ為に時間稼ぎをする意味はない上そんな義理もないし、クロスベルが被害や犠牲を出す可能性が高いという”リスク”を背負ってまで”他国”のリィンお兄さん達が駆け付けるのを待ってリィンお兄さん達にクロスベルの脅威を任せるなんて事をしたら、それこそリィンお兄さん達がいつも言っているように”筋が通らない”でしょう?ま、恨むのならオルディーネを改造した既に死んだノバルティスっていう”蛇の使徒”とそんな人にオルディーネを預けた”C”の短慮な行動を恨む事ね。」

「……ッ……!!くっそおおおおぉぉぉぉっ!!」

「リィン…………」

レンの正論に反論できず、ヴァリマールの操縦席の中で両手で操縦席を叩いてやり場のない怒りによって悔し涙を流して声を上げるリィンを心配するかのようにアリサは辛そうな表情でヴァリマールを見つめた。



「レン君……君にはそのパテル=マテルがあるのに、暴走したオルディーネを破壊する以外で止める方法は本当になかったのかい?それにその口ぶりだと君はリィン君とクロウの”約束”を知っていたんだよね?それをわかっていて何故……」

「幾らパテル=マテルでも暴走した”騎神”を破壊以外の方法で止めるなんて無理よ。そもそもオルディーネを破壊する事を決めたのはクロスベル――――ヴァイスお兄さん達だし。レンはクロスベル皇帝でもあるヴァイスお兄さんとギュランドロスおじさんに要請されて、クロスベルと同盟を結んでいる”メンフィル皇女として”オルディーネ破壊を手伝ったのよ。」

「……どうだか。内心エレボニア帝国に侵攻する際に邪魔になるオルディーネを破壊できる絶好の機会が巡ってきてこれ幸いと思って破壊したんじゃないの?」

アンゼリカの問いかけに答えたレンの話を聞いたフィーは厳しい表情でレンを見つめて呟き

「クスクス、ご想像にお任せするわ。それとアンゼリカお姉さん。貴女の指摘はレンやクロスベルの民達の”命”をチップにしてまでテロリストとの”約束”を守る為にオルディーネを壊さないで欲しかったって言っているようなものよ?レン達が貴女達の”約束”の為にそこまでする必要がある説明があるならしてよ。ちゃんと納得できるような説明だったらレンも謝るわよ?」

「………………」

フィーの言葉に対し答えた後のレンの指摘に反論できないアンゼリカは黙り込んだ。

「それと確かにレンやパテル=マテルもオルディーネと戦ったけどオルディーネに止めを刺したのはエリゼお姉さんよ?」

「ええっ!?」

「ね、姉様が!?一体どうやって――――」

更なるレンの説明にエリオットが驚き、エリスが信じられない表情で声を上げてレンに問いかけようとしたその時

「アルフィン!」

その場にいる多くの者達にとって聞き覚えのある声が聞こえ、その方向に振り向くとそこにはセドリック皇子やユーゲント三世達がいた。



「セドリック!?それにお父様達も……!」

「父さん!?」

ユーゲント三世達の登場にアルフィン皇女やマキアスは驚き

「アルフィン……!貴女が無事で本当によかった……!」

「お母様……!お母様こそよくぞご無事で……!」

アルフィン皇女に駆け寄ってプリシラ皇妃はアルフィン皇女と互いを抱きしめ合った。



「父さん………すまない!エレボニア帝国が……!」

「……お前達は悪くない。悪いのはこのような状況に陥ってしまった原因を作ってしまった私達だ。お前が内戦を経験した事によって立派に成長した事、誇りに思うぞ。」

悔しそうな表情をしているマキアスを慰めるかのようにレーグニッツ知事は寂しげな笑みを浮かべて答え

「……トールズの”Ⅶ組”だったか。エレボニア帝国の為に今までよく動いてくれた。だが……私達――――”アルノール家”はエレボニア帝国が滅亡する事を受け入れる所存だ。だからもうこれ以上お主達がエレボニアの為に無理をする必要はない。……今までエレボニア帝国の為にアルフィンと共によく動いてくれた……心より感謝する。」

「へ、陛下…………」

「……………………」

ユーゲント三世の言葉を聞いたトワは悲痛そうな表情をし、ヴァンダイク学院長は重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。



「うふふ、レン達はお邪魔虫みたいだから、そろそろ失礼するわね♪」

「現在バリアハートにある統括領主の館が連合の総督府の代わりにもなっています。我々連合軍に何かご用があれば、そちらを訪ねてください。―――それでは私も失礼しますわ。」

「今自分達に”何ができる”のか……それを考えて行動するように願っていますよ。」

そしてレンやシグルーン、リアンヌはそれぞれ別れの言葉を告げた後レンはパテル=マテルの片手に乗り、シグルーンは愛馬であるルチアに乗ってそれぞれ飛び去り、リアンヌは転移術で去って行った。



その後ヴァンダイク学院長やマカロフ教官達はユーゲント三世達と共に学院の中へと向かい……リィン達は今後どうするかを話し合う為にカレイジャスに戻って行った……… 
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