英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第148話
その後トリスタや士官学院の見回りを終えたリィンは第三学生寮に向かい、見回りの最中に共に第三学生寮を見て回ろうと約束していたアリサを待つために第三学生寮の中へと入って行った。
~第三学生寮~
「―――リィン、待たせたわね。」
寮の中に入ったリィンが周囲を見回しているとアリサが寮に入って来た。
「アリサ……いいや、俺も今来たところさ。ラクロス部の方はもういいのか?」
「ええ、もう存分に再会を喜び合えたから。それはともかく……第三学生寮……ようやく帰ってこれたのね。あなたや、Ⅶ組のみんな……サラ教官やレオンハルト教官、そしてシャロンと過ごした私達Ⅶ組の大切な場所に。」
「……ああ、ようやくな。久しぶりに中を見て回らないか?部屋の方も気になるし。」
「ふふ、そうしましょうか。」
その後二人はそれぞれの部屋を順番に見た後クロウの部屋を見て、廊下で話し始めた。
「……不思議な感じだわ。たったの2ヶ月ぶりなのに、まるで何年も暮らした故郷に帰ってきたみたいな……」
「それだけ俺達の大切な場所になっていたんだろう。歩いているだけで……ここで過ごした何もかもが思い出されるみたいだ。」
「ふふ、そうね……それだけにクロウやプリネ達がいないのは……」
リィンの言葉に微笑んだアリサは複雑そうな表情をした。
「……ああ、あいつもプリネさん達も俺達の大切な仲間だ。この先どうなるかはわからない……でもクロウは必ず取り戻さないといけないし、機会があればプリネさん達にも戻ってもらわないとな。」
「ふふっ……あなたって最初の頃からずっとそうだったわよね。いつでも他人の事を思いやってⅦ組のみんなを導いてくれて……そんなあなたのことをみんな、感謝していると思う。もちろん、私もね。」
決意の表情をしているリィンを見たアリサは苦笑した後微笑んだ。
「アリサ……」
「…………」
リィンと互いの目を見つめていたアリサは目を閉じて口を開いた。
「……ねえ、リィン?この学院で、最初に会った日の事、覚えてる?」
「え……」
アリサの言葉を聞いたリィンはアリサとの出会いや旧校舎のオリエンテーリングでの出来事を思い出した。
「……忘れられる訳、ないさ。ライノの花咲く駅前と―――旧校舎地下でのアレだろう?アリサには釘を刺されたけど、悪い、さすがに忘れられなかった。」
「……ま、まったくもう……顔から火が出そうになるくらい恥ずかしくてサイテーの流れよね。せっかくの良い出会いが変に上書きされたっていうか……」
リィンの言葉である出来事を思い出したアリサは頬を赤らめて呆れた表情をし
(ほえ?一体どんな事があったんだろう~?)
(うふふ、本当に何があったのか気になるわよねぇ?)
(ふふふ、全くです。叶う事なら過去に遡りたいですね。)
(まあ、何となくどういう事があったのか想像できるけどね……)
(……あの様子では不埒な出来事だったのは間違いないでしょうね。)
(す、すみません、リィン様……”そういった疑い”に関しては、フォローのしようがないです……)
二人の会話を聞いていたミルモは首を傾げ、ベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をし、アイドスは苦笑し、ジト目になったアルティナの念話を聞いたメサイアは冷や汗をかいて疲れた表情をしていた。
「いや、本当に面目ない。」
「ふふ……でも、あれがきっかけだった。あの日から私は、気になって仕方なくなっていったんだもの。リィン―――あなたのことが。」
リィンに謝られたアリサは苦笑した後優しげな微笑みを浮かべた。
「あ…………………」
「ほとんど初対面だったあなたが、あんなふうに庇ってくれて……一体どういう人なんだろうって、ずっと考えるようになった。そしたら、なんとなくあなたを目で追う事が多くなって……もっともっと、あなたのことが知りたくなった。あの真っ直ぐな瞳は、一体どこを見ているんだろうって。」
アリサは呆けているリィンを辛そうな表情で見つめた。
「―――俺も、同じだ。負けず嫌いで、努力家で、貴族に負けないほど誇り高くて―――そして、自分よりも他人の事を第一に思いやれるような優しさを併せ持った女の子。アリサのことが、ずっと気になっていた。多分……最初に駅でぶつかったときから。」
「…………リィン…………」
「それから、一緒に数々の試練を乗り越えて行く中でアリサの人となりや過去を知って……俺はいつの間にか強く願うようになっていたんだ。アリサが見出そうとしている自分自身の”道”―――それが俺の”道”といつか交わることを。」
「…………それって…………」
「―――愛している、アリサ。たとえ何があったとしても、君だけは絶対に離したくない。」
「………リィン…………フフッ、ようやく貴方の方から私の事、”好き”……ううん、”愛している”って言ってくれたわね……!嬉しい……!」
「ああ……待たせてすまない……」
リィンの告白に微笑んだアリサはリィンと抱きしめ合った。
「悩んで、苦しみながらも、どこまでもまっすぐに、”前”を向いている……そんなあなたと一緒だったから……道を見出す勇気を掴むことができた。そしてそんなあなたに恋焦がれる娘達がたくさんいるから、私はとても焦っていたわ……いつか誰かにあなたを取られるんじゃないかって…………だからあんな”強引な方法”を使ってでも、あなたを繋ぎとめておきたかった…………」
「アリサ…………」
「リィン……私も愛しているわ……!ん…………」
(えへへ、よかったね、アリサ♪)
(うふふ、アリサの判断は間違っていないわね♪)
(ふふふ、全く持ってその通りですね。)
(普通の女の子なら誰でも焦るでしょうね……)
(ア、アハハ……”あの件”は私も要因の一つですから、私は何も言えませんわね……)
(……マスターはアリサ・ラインフォルトを含めたマスターを想う女性達の寛大な心に感謝すべきですね。)
二人が深い口付けを交わしている中、ミルモやベルフェゴール、リザイラは微笑ましそうに見守り、アイドスとメサイアは苦笑し、アルティナはジト目になっていた。
「はは……何度もしているとはいえ、やっぱりちょっと照れるな。みんなで過ごした場所で、こんな……」
「ふふっ……私も。何度も身体も重ねたはずなのに、あの旧校舎のとき以上に恥ずかしくてたまらないわ。」
「あ………………」
アリサの言葉を聞いた瞬間、アリサと愛し合った日々を思い出したリィンは強い興奮を覚えた。
「やだ……今の言葉だけで興奮しちゃったの?」
「す、すまない……」
「フフ、気にしないで。それに私も今夜は貴方と一緒に夜を過ごすつもりだったから……」
「アリサ…………その、ここだといつみんなが来るかわからないし、俺の部屋に行くか?」
「うん……っ!」
(うふふ、今夜は結界日和ね~♪)
(そんな言葉はありませんわよ……)
アリサと手を繋いで自分の部屋に入るリィンの様子を微笑ましく見守りながら、二人が部屋に入った瞬間結界を展開するベルフェゴールの念話を聞いたメサイアは疲れた表情で指摘した。
その後互いを何度も求め合った二人は生まれたままの姿で互いを抱きしめ合いながら夜を過ごし、翌朝目覚めたカレイジャスに向かって行った。
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