英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第145話
学院内を見て回っていたリィンは花壇にいるフィーを見つけて声を掛けた。
~トールズ士官学院・花壇~
「フィー、もしかして世話をしていた花の様子を見に来ていたのか?」
「ん。学院を出る前に植えていた花……元気でいてくれた。残ったエーデル部長が熱心に世話してくれていたみたい。」
「そっか……よかったな。ちゃんとお礼は言ったのか?」
「ん。……本当に色んな支えがあってこの花は今も元気に咲いている。わたしたちも同じ……忘れないようにしないとね。」
「ああ……本当にな。」
自分の言葉に静かな表情で頷いているリィンをジッと見つめたフィーはある事を口にした。
「話は変わるけど……ギリギリになったけど、何とかメンフィルのあの”条約”の”期間”以内に内戦を終わらせそうだね。」
「ああ…………そしてクロウとの決着ももうすぐだ。」
フィーの言葉にリィンは決意の表情で頷いた。
「ん。……………けどクロウ、戻ってくるつもりはあるかな?」
リィンの言葉に頷いたフィーは不安そうな表情でリィンから視線を逸らして呟いた。
「……あいつはあいつで譲れないものがあって、貴族連合に協力している。取り戻すとは誓ったけど並大抵のことじゃないだろうな。けど……絶対にやり遂げて見せる。」
「……そだね。戦って乗り越えないと。……本来だったらそこにクロウの協力者だったゼノとレオも入るけど……」
「……やっぱり辛いか?もといた場所の……しかも”家族”同然の人達だったんだろう?」
「ん。……だからこそ、クロウまでゼノやレオのように失う訳にはいかない。」
リィンに問いかけられたフィーは静かな表情で頷いた後決意の表情をした。
「そうか……そうだな。」
「………………」
リィンをジッと見つめていたフィーはふと話し始めた。
「わたしは……ずっと”家族”を求めていた。いつの間にか戦場を彷徨っていたあの頃から……そんなわたしを、西風のみんなが拾ってずっと守ってくれていた。自分の帰る”家”がある……そんな温かさを教えてくれた。」
「家……そして家族、か。」
「でも、団長がいなくなって……西風のみんなに置いていかれて。わたしは自分の”弱さ”を改めて思い知った。結局、自分一人では何もできないんだってことを。」
「…………フィー…………」
複雑そうな表情をしているフィーの話をリィンは聞き続けていた。
「団のみんなにはただ、守られてばかりだった……でも―――サラに拾われて、このⅦ組に来て。みんながわたしを必要としてくれたから、ようやく気付く事ができた。どちらか一方が守るんじゃなく、支え合って生きていく。団とは違う……こういう”家族”の形もあるんだって。……Ⅶ組のみんなと……―――リィンと過ごしたおかげで。」
「…………あ………………」
フィーの言葉を聞いたリィンは呆けた表情でフィーを見つめた。
「ゼノやレオに自慢したかったな……わたしが新しく手に入れた”家族”を……」
「フィー……」
そして寂しげな笑みを浮かべたフィーの言葉を聞いたリィンは複雑そうな表情で見つめた。
「……話は変わるけどリィンには別の形の”家族”になって欲しいと思う。」
「え……?」
(へえ~?)
(ふふふ、”別の形の家族”、ですか。)
(フフッ、一体どんな意味の”家族”なのかしらね。)
(……もはや答えはわかったも同然かと。)
(な、何となくそんな予感はしていましたけどフィーさんもですか……)
フィーの言葉にリィンが呆けている中、ベルフェゴール達は微笑ましそうに見守り、アルティナはジト目になり、メサイアは疲れた表情をした。
「アリサやラウラやエマ、サラやプリネ、ツーヤがお姉さんで、ミリアムやエヴリーヌ、セレーネは……微妙だけど妹……お兄さんはマキアスやユーシス、ガイウスやレーヴェ。それと……クロウもかな。でもリィンだけは―――たぶん、わたしにとってもっと深い何かだと思う。……その、あまり上手く言葉にできないけれど。」
「え、えっと、それってもしかして…………」
フィーの言葉の意味からある事を察したリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
(何気に先程の話の中にエリオットさんの名前だけ出て来なかったのですけど……)
(………言われてみればそうですね。)
(うふふ、そんな細かい事はどうでもいいじゃない♪)
(そうですね。気になるのはここからの展開ですね。)
(フフ、そうね。)
苦笑するメサイアの念話を聞いてある事に気付いて目を丸くしたアルティナにベルフェゴールとリザイラはそれぞれ指摘し、アイドスは微笑ましそうに二人を見つめていた。
「……リィンが学院を去るまで。」
「へ?」
リィンが答えに困っているとフィーがふと呟いた。
「……内戦が終わってまた”かけがえのない毎日”が始まっても……リィンが士官学院にいれるのは後少しだけでしょ?」
「…………ああ。俺がⅦ組に……トールズ士官学院にいられるのは1年の間だけだ。その後はプリネさん達の許で…………」
フィーの言葉に頷いたリィンは複雑そうな表情をした。
「……リィンが学院を去るまでに必ずわたしにとってリィンが”どんな家族”になって欲しいのか答えを出して、それを言うね。……だから、それまで待ってて。」
「フィー…………ああ、わかった。」
フィーの言葉を聞いたリィンは静かな表情で頷いた。
(チッ、中途半端な終わり方をしてくれたわね~。)
(ふふふ、ですが猶予はまだあるのですから、その間に私達が彼女に”助言”をして自覚させればよろしいのでは?)
一方その様子を見守っていたベルフェゴールは舌打ちをした後不満げな表情をし、リザイラは静かな笑みを浮かべて提案し
(あ、それはいい提案ね♪)
リザイラの提案を聞いたベルフェゴールはからかいの表情で頷いた。
(ちょ、ちょっとお二人とも!?まさかフィーさんに色々と不味い事を吹きこんで焚き付ける気ですか!?)
(不味い事を吹きこんで焚き付けるとは、心外ですね。私達は”助言”をするだけですよ。)
(そうよ、ただの”助言”よ♪)
(別にそこまでする必要はないと思うのだけど……)
(……どちらにしても、これで被害者がまた一人増える事が確定したようなものですね。)
慌てているメサイアに説明している二人の念話を聞いたアイドスは苦笑し、アルティナは呆れた表情をしていた。
その後フィーと一端わかれたリィンは再び学院を見て回っていたが自分のARCUSに来た連絡――――トワから話したい事があるから第二学生寮に来て欲しいと言う頼みを聞く為に第二学生寮に向かった。
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