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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第144話

トリスタを見て回ったリィンは帝都方面を見張っているヴァリマールに声を掛けた。



~トリスタ~



「―――ヴァリマール、お疲れ。」

「りぃんカ。」

「―――助かったよ。守りを買って出てくれて。まさか自分から言いだすとは思わなかったけど。」

「フフ、ソナタラノ影響ヲ多少ナリト受ケタラシイ。皆デ取リ戻シタ大切ナ場所……セメテ今宵ハ感慨ニ浸ルトヨカロウ。」

「はは、ありがとう。しかし……最初と比べるとどんどんスムーズに話せるようになっているよな。何だか威厳すらあるっていうか。」

ヴァリマールの答えに微笑んだリィンはヴァリマールと会話をし始めた当初と今のヴァリマールを比べながらヴァリマールを見つめていた。



「損傷シタ記憶素子ガ徐々ニ回復シテイルヨウダ。部分的デハアルガ”昔”ノコトモ思イ出セタ。」

「ほ、本当か……?それって、ヴァリマールが旧校舎で眠りにつく前だよな?」

「ウム、私ガ眠リニツイタノハ250年ト128日前―――以前ノ起動者ハどらいけるす・あるのーるトイウ。」

「ドライケルス・ライゼ・アルノール………”獅子心皇帝”……―――エレボニア帝国中興の祖。」

ヴァリマールの説明によって意外な事実を知ったリィンは精霊窟で見た幻影を思い出し

(……少々、面倒な事になりましたね。)

ある事に気付いたリザイラは真剣な表情でベルフェゴール達に念話を送った。

(どういう事よ、それ。)

(……ご主人様の”騎神”とやらはかつてのエレボニア帝国の偉大な功績を残した”英雄”にして”皇”。そのような”騎神”の乗り手であるご主人様の事がエレボニア帝国に知れ渡ればどうなると思いますか?しかもご主人様は内戦終結に貢献し続けているのですよ?)

(あ……リィン様がドライケルス皇帝の再臨だと騒がれる可能性が出て来てしまいますね……)

(………しかもリィンはエレボニア皇女であるアルフィンを娶る事になっているから、その子が次のエレボニア皇帝に……という声が出て来て再び内戦が起こるかもしれないわね……さすがにリィンをエレボニア皇帝にという事はないと思うのだけど……)

(それ以前にマスターはメンフィル帝国の貴族の上、”救済条約”でもアルノール家が望まない限りはお二人の子の皇位継承権はない為、内戦にまでは発展しないと思います。―――最も、アルノール家が望めば話は別ですが。)

ベルフェゴールの疑問に答えたリザイラの答えを聞いたメサイアとアイドスは複雑そうな表情をし、アルティナは真剣な表情で推測した。



「精霊窟での幻影(ビジョン)を見てもしかしてとは思ったけど……」

「”場ノ記憶”ト共鳴シタノダロウ。カツテどらいけるすモソナタト同ジク精霊窟ヲ訪レタ。ソコデ剣ノ霊石ヲ手二入レ帝都デノ決戦へ赴イタノダ。多クノ戦友(なかま)タチト共ニ。」

「そうか……そんな所まで同じなのか。さすがに伝説の皇帝と同じ立場なのは面映いけど……ちなみにどういう人だったんだ?」

ヴァリマールの話を聞いて考え込んでいたリィンはある事が気になり、真剣な表情で尋ねた。



「フム、豪放磊落ニシテ泰然自若トイウベキカ――――茫洋トシナガラモ大胆不敵……ドコマデモ懐ノ深イ男デアッタ。時ニ子供ノヨウナ目ヲシテイタガナ。」

「それは……規格外の人物みたいだな。うーん、俺にもそんな器があればよかったんだけど。そうすれば、もっとみんなを―――」

「ソノ必要ハアルマイ。」

「え。」

「目醒メテヨリ、ソナタノコトハ見テキタツモリダ。彼ニハ彼ノ、ソナタニハソナタノ持チ味トイウモノガアロウ。ソレハ、ソナタノ仲間タチニトッテ掛ケ替エノナイモノデアルハズ―――自分ガ自分デアルコトヲマズハ誇ルガイイ。」

「………………―――ありがとう、ヴァリマール。そうだな……俺は、俺自身として強くならないと。みんなと未来を掴む為に―――”あいつ”と決着をつけるために。」

ヴァリマールの励ましによって決意を固めたリィンはヴァリマールの”太刀”を本格的に作っている場所に視線を向けた。



「………どうやら今晩中には”太刀”も完成するみたいだ。ひょっとしたら明日も力を借りるかもしれない。よろしく頼む、ヴァリマール。」

「ウム、任セテオクガイイ―――」

その後士官学院に向かい、士官学院を見て回ったリィンは校舎の屋上にいるトワ達を見つけ、声をかけた。



~トールズ士官学院・本校舎・屋上~



「先輩達……ここにいたんですか。」

「あ、リィン君。」

「やあ、いい夜だね。」

「はは、ちょっと寒いけど風が無いから気持ちいいかな。」

「そうですね……」

リィン達は夜の校舎やトリスタを見渡した。



「えへへ……取り戻せたね。」

「ああ…………感慨深いものがあるな。」

「ハハ、君は学院祭以来だから尚更だろうね。………………」

トワ達はそれぞれ物思いにふけって黙り込み

(そうか……本当だったらここには……)

トワ達はクロウがいない事で物思いにふけっている事に気付いたリィンはある事を決意したトワ達に声をかけた。



「……会長、ジョルジュ先輩、アンゼリカ先輩も。ありがとうございました。」

「ふえっ……?」

「……リィン君?」

「先輩達がいてくれたから……俺達Ⅶ組を、学院生全員をここまで引っ張ってくれたから……こうして士官学院を取り戻せたんだと思います。だから……どうもありがとうございました。」

「あ、あはは……お礼を言うのはこっちだよ。」

「君や、Ⅶ組のみんながいたから今回だって成し遂げられたんだ。」

「フフ、私に至っては親子喧嘩の手伝いまでしてもらったしね。」

リィンの感謝の言葉に対しトワとジョルジュは謙遜した様子で答え、アンゼリカはウインkウをした。



「いえ……やっぱり先輩達は俺達全員を引っ張っていってくれたと思います。”カレイジャス”という、士官学院生全員の希望を乗せる”翼”の担い手として。これからも……よろしくお願いします。」

「……ああ、わかった。」

「うん、任せてくれ。」

「えへへ……これからもみんなで頑張ろうね!」

「はい。それと……明日に知らされる正規軍の帝都解放作戦についてですが……それが成功しても、失敗しても……クロウとの対決は近い―――そんな予感がするんです。」

リィンの言葉にそれぞれ明るい表情で答えたトワ達だったが、クロウとの決戦の件が出るとそれぞれ顔色を変えた。



「あ……」

「……確かに。」

「こういう機を逃すようなヤツじゃあないからね。」

「ええ―――そして今度こそ俺はクロウに勝ってみせます。何とか学院に連れ戻して……先輩達と卒業させるためにも。」

「……っ!?」

「それは―――」

「……リィン君……」

リィンの決意を知ったトワとジョルジュは信じられない表情をし、アンゼリカは複雑そうな表情をした。



「それが難しいのは……もちろんわかっています。ですが俺は……多くの学院生達も先輩達4人が揃っているのをもう一度見たいと思っているんです。俺達Ⅶ組メンバーがクロウとプリネさん達を除いて全員揃ったように。だから……どうか恩返しさせてください。」

「………リィン君……うんっ……!どうかよろしくお願いするね!」

「フッ、そうなると明日以降からは相当気合いを入れる必要があるな。」

「ああ、僕も気合いを入れて太刀の仕上げを手伝わなきゃ!」

その後、トワは正規軍が帝都解放作戦を実施した際の”紅き翼”の面々によるユーゲント三世達の救出作戦を考えるためいったん生徒会室に向かい……ジョルジュ達は太刀製作用の機器と工具を取りに技術棟へと去るのだった。 
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