英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第141話
同日、12:00―――――
近郊都市トリスタ――――
トリスタの東側の出入り口付近を守っていた貴族連合軍は空から聞こえてくる駆動音に気付いて空を見上げた。
「なっ――――!?」
「フン、やはり現れたか!」
トリスタの上空に現れたカレイジャスを見た兵士は驚き、隊長は鼻を鳴らしてカレイジャスを睨んでいた。
~カレイジャス・甲板~
甲板にはヴァリマールとトワを始めとしたA班、そしてジョルジュとシュミット博士がいた。
「定刻を回った―――作戦を開始するよ!」
「はいっ……!」
トワの号令にマキアスは力強く頷いた。
「ヴァリマールも準備はいいか?」
「イツデモ出撃デキル―――!」
「フン、お手並み拝見と行こう。」
「どうか気を付けてくれ。」
「―――伏せろ、みんな!」
何かに気付いたガイウスが警告したその時砲撃が放たれた!
「くっ……!?」
「ど、導力砲の長距離射撃……!?」
「―――あちらからだ!」
突然の攻撃にアリサ達が驚いている中、何かを見つけたヴァリマールからリィンの声が聞こえたその時、ゴライアスとケストレルがトリスタの前に着地した!
「学生ども、我らが相手になろう!」
「墜ちるがいい、紅き翼!!」
「あの青い機体は……!」
「あ、あれって確か……!?」
「帝国解放戦線の二人が使っていた!?」
「間違いない―――!」
見覚えのある機甲兵達の登場にリィン達が驚いている中、ゴライアスは次々と砲撃を放ち、カレイジャスは移動しながら砲撃を回避していた。
「ちょこざいな……!確かこの艦にはメンフィルの技術の結界による防壁も搭載されていたはず……念の為にそれも展開してくれ!」
「はい!」
「―――行くぞ、ヴァリマール!」
「応――――!」
最初の障害を排除する為にヴァリマールは跳躍して飛行し、機甲兵達の前に着地した!
「灰色の騎士人形……現れると思っていたぞ!貴族連合の誇りにかけて、ここは絶対に通さん―――!」
「ゴライアスとケストレル―――剛と柔の最新機体で圧倒してくれる!」
「マズイわね……模造品とはいえ騎神を圧倒する力と速度だわ。連携されると厄介よ?」
ヴァリマールの中にいるセリーヌは目を細めてリィンに問いかけた。
「問題はない―――あの二人(”V”と”S”)より練度は低い!押し切るぞ、ヴァリマール!!」
「イイダロウ――――!新タナル”チカラ”存分ニ振ルウトシヨウ!」
そしてヴァリマールはゼムリアストーンによって創られた試作品の太刀を構えて2体の機甲兵達との戦闘を開始した!2体の機甲兵達は能力としてはそれぞれ秀でていたが帝国解放戦線の幹部たちが操縦していた程練度は高くなく、また試作品とはいえゼムリアストーンで創られた太刀は圧倒的な威力があり、ヴァリマールは不利な状況でありながらも苦も無く2体の機甲兵達を戦闘不能にした!
「――――うおおおおおおっ!!」
ヴァリマールの一閃により、2体の機甲兵達に無数の斬撃が刻み込まれた後2体の機甲兵達は爆発を起こしながら地面に膝をつき、斬撃によって破壊された部分は地面に落ちた!
「な、なんだとおおおっ!?」
「そ、その剣は一体……!?」
戦闘不能になった機甲兵達からはそれぞれ信じられない様子でいる貴族連合の兵士達の声が聞こえて来た。
「やったあっ、リィン君!」
「ゴライアスとケストレルを同時に退けたか。フン、どうやら試作品の手応えは十分のようだな。後は境界面の処理だけか。まったく、あやつがおれば……」
トワ達がヴァリマールの勝利に喜んでいる中シュミット博士はその場から去り
「ちょっと博士!?ああもう……!」
シュミット博士の行動を見たジョルジュは声を上げた後呆れた表情をした。
「お、おのれ……!ええい撤退だ!帝都方面の部隊に合流せよ!」
「は、はッ!」
そして貴族連合の隊長が指示をしたその時、無線機による通信が聞こえて来た。
「―――お、応答せよ、応答せよ!こちら帝都方面部隊!」
「む……!?なんだ、こんな時に!!」
「メンフィル・クロスベル連合軍が両方面より急襲してきた模様!更に防衛部隊にメンフィル兵が紛れ込んでいた為、各部隊は大混乱に陥っている!至急援軍を――――ギャアアアアアアア――――ッ!?」
「な――――おい、応答せよ、応答せよ!クッ……!一体どうやって我らの警戒を掻い潜って何時の間に帝都に……!こうしてはおれん!すぐに帝都防衛の援軍に向かうぞ!」
「ハッ!!」
通信内容を聞いた隊長は顔色を変えた後指示をし、貴族連合軍は慌てた様子でトリスタから撤退して行った!
こうしてトリスタに残っていた貴族連合の部隊は撤退していった。その後ヴァリマールから降りたリィンは降下したトワ達A班と合流―――士官学院の裏門へ迂回するカレイジャスとB班を見送ってから、トリスタへと足を踏み入れたのだった。
~トリスタ~
「ふうっ、なんとか無事にトリスタに入り込めたね。」
「ええ、なんだか静まり返っていますが……」
仲間達と共にトリスタに潜入したリィンは第三学生寮を見上げた。
「……はは……懐かしいな。俺達の”第三学生寮”……そうか、本当に―――本当にこの街に帰ってこられたんだな。」
「はいっ……!」
「ホント、久しぶりよね……」
「シャロンやクロウ、プリネ達もまだ帰ってこれてないけど……」
「うんっ……みんな、もうひとふんばりだよ!このまま一気に――――」
「フン、お前らだったか。」
第三学生寮を前にリィン達が決意を改めていると交換屋の店主――――ミヒュトがリィン達に近づいてきた。
「ミヒュトさん……!」
「無事だったんですね……!?」
「ああ、お前達もついに帰ってこれたみたいだな。街のヤツラも変わりないぜ。」
ミヒュトが町に視線を向けると市民達が次々と家や建物から出て明るい表情でリィン達に声を掛けていた。
「トリスタの皆さん……!」
「お、お久しぶりですっ!」
トリスタの市民達が無事だった事にリィンとトワはそれぞれ明るい表情をした。
「いやあ、街の近くでドンパチが始まったからみんなして避難してたんだが……」
「さっき、貴族連合軍が慌てて撤退していったからもしかしてと思って来てみたんだ。」
「しかし、本当によく無事にここまで辿り着いたもんだ。」
「ふふ、ミヒュトさんから聞いた通りでしたね。」
「も、もしかしてトリスタには事前に連絡が?」
市民達の話を聞いてある事を察したトワは驚きの表情で尋ねた。
「ああ、トビー―――トヴァルの奴から連絡があってな。そろそろお前らが士官学院を取り戻しに来るだろうから、出迎えてやれってな。」
「そうだったんですか…………どうやらクレア大尉経由で情報が伝わっていたみたいですね。」
「これからいよいよ士官学院に乗り込むんだろう?”トールズ魂”をしっかり見せて来やがれ!」
「はいっ……!」
「ありがとうございます。みんな、万全の態勢で士官学院に突入するぞ!」
「おおっ!!」
その後準備を整えたリィン達は士官学院の前で立ち止まってトールズ士官学院を見つめた。
「トールズ士官学院……俺達Ⅶ組も、ここから始まったんだよな。」
トールズ士官学院を見上げたリィン達はそれぞれ士官学院での思い出を振り返った。
「オズボーン宰相が狙撃され、帝都が占領されたあの日から……」
「あれから2ヶ月くらいしか経っていないんですよね……」
「……なんだか、ずいぶんと遠いところまで来た気がするわ。」
マキアスやエマ、アリサはそれぞれ士官学院を見上げて物思いにふけった。
「士官学院を―――俺達Ⅶ組の始まりの場所を。何としても、俺達の手で掴みとってみせるぞ!」
「行こうっ、みんな!」
「はいっ!!」
リィンとトワの号令に答えたA班の面々はトールズ士官学院に突入した!
~トールズ士官学院~
「待っていたぞ―――特科クラス”Ⅶ組”。」
「あ……!」
士官学院に突入したリィン達は正面門の前で立ち塞がっているパトリック、フェリス、パトリックの執事セレスタン、そして貴族上級生のエーデルに気付いた。
「―――パトリック……!」
「久しいな、シュバルツァー。貴様なら―――貴様たちなら必ず来ると思っていたぞ。」
驚いているリィンに対し、パトリックは髪をかき上げて不敵な笑みを浮かべた。
「フフ……よくぞここまで辿り着かれましたね。」
「第一学生寮のセレスタンさん……!」
「ふふ、アリサも変わりないようですわね?」
「フェ、フェリス……!」
「ふふ、皆さん元気そうですよね。」
「―――迎え撃つ準備は万端か。どうやら、俺達が来るのをある程度読んでいたみたいだな?それも、東の街道で戦闘が起こるずっと前から。」
見覚えのある人物達の登場にトワ達が驚いている中、リィンは静かな表情で問いかけた。
「フン―――当然だろう。君達”Ⅶ組”のことは僕らが誰よりもわかっている。この状況下で君達が動かないわけがないからな。」
「ふふ、”裏門”の方も対策をとらせていただきました。」
「あ……!」
セレスタンの言葉にトワが驚いていたその頃、アンゼリカ達B班も裏門への潜入を成功させていた。
「よし……なんとか潜入できたか。」
「ニシシ、裏門は予想通り警戒が薄いみたいだねー。」
「リィン達の方は大丈夫かな……」
「ひょっとしたら既にパトリックさん達との戦闘を開始しているのかもしれませんわね……」
裏門への潜入を果たしたアンゼリカは安堵の表情をし、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、エリオットとセレーネは不安そうな表情をしていた。
「フフ、そう易々と立ち入れるとでも。」
裏門への潜入を果たした事に安堵していたアンゼリカ達だったが自分達の目の前に立ち塞がる貴族上級生達とメイドを見て顔色を変えた。
「久しいな、麗しのライバル、アンゼリカ・ログナーに麗しの姫、セレーネ・アルフヘイム・ルクセンベールよ。そして青々しく実った果実、特科クラスⅦ組諸君。このヴィンセント・フロラルドの禁断の聖域によくぞ来たッ!」
フェリスの兄であるヴィンセントが高々と叫ぶとアンゼリカ達は冷や汗をかいて脱力した。
「ヴィ、ヴィンセントさん……」
「フフ……誰かと思えば君達だったか。どうやら裏門からの潜入はバレバレだったみたいだね?」
ヴィンセントの言葉を聞いたセレーネは表情を引き攣らせ、アンゼリカは苦笑しながら問いかけ
「ええ、左様にございます。」
アンゼリカの問いかけにヴィンセントとフェリスの実家である”フロラルド伯爵家”のメイドであるサリファが静かな表情で答えた。
「ハーッハッハ!我が華麗なる頭脳に心の底から感服するがいい!」
「……懐かしい顔がそろい踏みのようだな。」
「フハハ、よくぞ来た、ユーシス君!!」
「プリネ達は当然として、ロギンス君やアラン君はさすがにいないか。まあ、代わりに楽しめそうなメンツが揃っているみたいだけど。」
「フェンシング部のフリーデル先輩……2年生最強の剣士までもか。」
「やれやれ、どうやら一筋縄ではいかないようだね。」
ユーシスは自分が入っているクラブの部長でもある貴族上級生―――ランベルトを目を細めて見つめ、ラウラはフェンシング部の部長である貴族上級生―――フリーデルを警戒し、アンゼリカは苦笑しながら貴族上級生の面々を見回した。
「ニシシ、いい事を思いついちゃった♪セレーネ、これを機会にヴィンセントをボコボコにして、2度と自分に言い寄らないで下さいって言えば~?確かセレーネ、大人に成長してからヴィンセントにもわりと声をかけられていたよね~?」
「ミ、ミリアムさん……さすがにそれはやり過ぎですし、ヴィンセントさんにはわたくしには既に心に決めた人がいる為、それ以前にヴィンセントさんから告白された時ヴィンセントさんの気持ちには応えられないとその場でハッキリと断っていますよ?」
「ええっ!?そ、そんな事があったの!?」
「驚愕の事実だね。何で教えてくれなかったの?」
「ほう?”成竜”と化した事で一気に大人へと成長した事によって魅力的な女性へと変貌したセレーネに想いを寄せる男子生徒達が多い事は小耳に挟んでいたが……まさか”フロラルド伯爵家”の跡継ぎにまで想いを寄せられていたとはな。」
「フフッ、これは面白い事を聞いたねぇ?」
それぞれが闘志を高めている中、からかいの表情をしているミリアムに視線を向けられたセレーネは苦笑しながら答え、セレーネの答えを聞いたエリオットは驚き、フィーとユーシスは静かな笑みを浮かべて口元をニヤニヤさせているアンゼリカと共にヴィンセントを見つめ
「グハッ!?クッ、精神攻撃とは中々やるではないか……!」
セレーネの言葉によって突如胸の痛みを感じて呻き声を上げたヴィンセントは口元に笑みを浮かべてアンゼリカ達を見つめ、それを見たその場にいる多くの者達は脱力した。
「……そろそろあちらでも”始まる”頃合いですね。」
「ちょうどいいタイミングだな。」
一方リィン達と対峙していたパトリック達はそれぞれの武器を構えた!
「……やっぱり……」
「……戦うつもりか。」
「フッ、僕達は曲がりなりにもここの管理を任された身。”騎士団”メンバーとして外敵を退ける義務があるからな。」
「……士官学院の管理を命じた貴族連合軍は撤退していった。今更学生同士で争う必要など―――」
「シュバルツァー、勘違いするな。これは、僕らの貴族生徒の”意地”さ。」
パトリックの口から出た意外な言葉にリィンは目を丸くした。
「帝国西部にいる父上―――ハイアームズ候や貴族連合の思惑も関係ない。貴族生徒としての誇りと矜持―――それをどこに置くべきか僕らは見極めたいんだよ。すでに己の答えを見出しつつある、君達と剣を交えることでな。」
「パトリック君……」
「貴族生徒としての意地……か。」
「今のオレなら、その気持ちはわからないでもないが。」
「……俺達にも譲れないものがある。トールズ士官学院を―――俺達自身の居場所を取り戻すという目的が。そこに、あなた達が立ちはだかるというのなら!」
「うん………!意志を貫くためにも、どうしてもぶつかり合う時だってあるよね……!わたしたちは、そのために士官学院に帰ってきたんだから!」
パトリック達と戦う事を決めたリィン達はそれぞれ武器を構えた。
「フッ、それでこそハーシェル会長。そして、それでこそⅦ組。我が好敵手足りうる者たちだ!―――行くぞ、セレスタン!」
「承知しました、坊ちゃま!」
パトリックが号令をかけたその時、パトリック達はそれぞれ戦術リンクを結んだ!
「こ、これって……!」
「ARCUSの戦術リンク―――何時の間に!!」
「フフン、アリサ。ようやくあなたとの長い戦いに決着をつけられそうですわね。容赦はいたしませんわよ………!」
「フェリス……こっちこそ!」
「士官学院生としての実力、そして誇りと矜持……どちらが上か決着をつけようじゃないか!リィン・シュバルツァー!」
「望むところだ―――パトリック!」
そしてA班、B班はそれぞれの道を阻む”騎士団”の面々との戦闘を開始した。上級生もいる貴族生徒達に加え、それぞれの家の執事とメイドである二人も中々の使い手だったが、多くの実戦を潜り抜け、カレイジャスの中でもサラ教官と皇族の親衛隊の副長を務めるシグルーンに鍛え上げられ、幻獣やデュバリィを始めとした多くの強者達との戦いも経験し、更に数的有利もあるリィン達にとっては大した脅威ではなく、それぞれ連携して”騎士団”の面々を無力化した!
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