英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~果たせぬ約束~後篇
~カレル離宮・式典の間~
「アリアンロード……何故”結社”を……”盟主”を裏切ってメンフィルに寝返ったのよ!?」
「―――今の私はかつてリウイ陛下達と共にあり、リフィアの祖母でもあるシルフィア・ルーハンスの生まれ変わり。よって、”影の国”で陛下達に約束した通りアリアンロードとしての”義理”を果たした後、陛下達の許に参上し、再び忠誠を誓ったからです。」
「何よそれ…………意味不明よ…………そんな訳のわからない理由で”盟主”を裏切るなんて、見損なったわ!」
自分の問いかけに答えたリアンヌの答えを聞いたクロチルダは肩を落とした後怒りの表情でリアンヌを睨んだ。
「うふふ、気持ちはわからなくはないけど、自分達の状況がわからないのかしら?”蛇の使徒”は貴女とメンフィルに寝返った”鋼の聖女”を除いて”全員死んだわよ”?」
するとその時レンがリウイ達の背後から現れ、凶悪な笑みを浮かべてクロチルダに問いかけた。
「!?どういう事よ、それは!?」
「―――リアンヌ殿より他の”蛇の使徒”達の目的や現在の居場所の情報の提供がされ、我らメンフィルは二大国侵攻の際の混乱に乗じてその者達全員も討ち取った。なお、”道化師”カンパネルラも”神殺し”セリカ殿達によって”月の僧院”にて討ち取られている。」
クロチルダの問いかけに対してゼルギウスは静かな表情で答え
「!!そ、そんな……………」
「クソッ…………ん?おい、ヴィータとそこの”槍の聖女”に似ている”蛇の使徒”以外の”蛇の使徒”は全員死んだって言ったよな?まさかオルディーネの修理をしているあの爺さんまで……!」
ゼルギウスの答えを聞いたクロチルダは絶望した表情をし、唇を噛みしめたクロウはある事に気付いて血相を変えて尋ねた。
「ああ、”蒼の騎神”?あれならクロスベル解放時にレンに殺されそうになったノバルティスが自分の身を守る為にその場に呼び寄せて自動操縦でも動けるように改造した事が原因で暴走した”蒼の騎神”に殺された後、レンやパテル=マテル、そしてロイドお兄さん達が協力して破壊してあげたわよ♪」
「…………ぇ………………」
「馬鹿なっ!?」
「何ですって!?あ、あの男……!あれ程”蒼の騎神”には何もするなって念を押したのに、やっぱり約束を違えていたのね!?」
心底おかしそうな様子で話すレンの説明を聞いたクロウは呆然とし、カイエン公爵は信じられない表情で声をあげ、クロチルダは怒りの表情で身体を震わせながら声を上げた。
「クッ……!来い―――オルディーネ!」
すると呆然としていたクロウは天井を見上げて自身の相棒の名を叫んだが何も起こらなかった。
「オルディーネ!俺の声が聞こえねぇのか!?オルディーネ!オルディーネ!オルディーネ――――ッ!!」
「……哀れですね。」
「奴の悲しみは互いを信頼し合う”魔導功殻”と”メルキア四元帥”……そのどちらかが失われた時と同じくらいの悲しみかもしれんな……」
「だっさ。あんな鉄屑を失っただけでそんなに取り乱すなんて、馬鹿じゃないの?」
必死に何度もオルディーネの名を叫ぶクロウの様子をアルは憐みの目で見つめ、ヴァイスは静かな表情で呟き、エヴリーヌは呆れた表情でクロウを見つめ
「リィンには悪い事をしたが……―――これは”戦争”だ。学生とテロリストの約束如きの為に国の決定は翻せんし、状況を聞く限りあの時あの場で破壊せねばクロスベルに甚大な被害が出ていた可能性が高かったそうだからな。民達の命には代えられん。」
「そうね……(兄様…………)」
リフィアは重々しい様子を纏って呟き、リフィアの言葉に頷いたエリゼは複雑そうな表情でリィンを思い浮かべていた。
「うふふ、そんなに会いたいのなら会わせてあげるわ♪―――はい♪」
するとその時レンが指を鳴らして異空間から現れたオルディーネの頭の部分の残骸をクロウの目の前に着地させた。
「………ぁ………………」
「ば、馬鹿な…………一体どうやって”騎神”を破壊したというのだ……?」
「ごめんなさい、クロウ…………あの男にオルディーネを貸さなければこんな事には……っ!」
オルディーネの成れの果てを見たクロウやカイエン公爵は呆然とし、クロチルダは身体を震わせて悔しそうな表情で肩を落としていた。
「さて……一応聞いておくがまだやるつもりなのか?”パンダグリュエル”での俺の言葉を忘れたとは言わせないぞ。―――”3度目はない”という言葉を。これ以上”無駄な抵抗”をするつもりなら命はないと思え。」
「――――るせぇ!俺とリィン達の”約束”に土足で踏み込んで台無しにした連中の言う事なんか誰が聞くか!俺は絶対に諦めねぇぇぇぇぇっ!!」
そしてリウイに問いかけられたクロウは怒りの表情で声を上げてダブルセイバーを構え
「……馬鹿じゃないの?クロウ一人でリウイお兄ちゃんたちに勝てる訳ないし。」
クロウの行動を見たエヴリーヌは呆れた表情で呟いた。
「―――リウイ陛下、もしよろしければ私に”C”の制圧許可をお願いします。兄様達を裏切った卑劣な愚か者とはいえ、かつては兄様達のクラスメイトであり、兄様達を支えていた方。せめてもの情けに”C”と”騎神”同士による決戦を”約束”していた兄様の妹である私がこの手で決着をつけたいのです。」
「……わかった。好きにしろ。」
するとその時リウイの許可を貰ったエリゼが太刀を鞘から抜いてクロウと対峙した!
「止めなさい、クロウ!貴方一人で”守護の剣聖”に挑むなんて勝率が限りなく低いし、例え”守護の剣聖”に勝てたとしても貴方一人で”鋼の聖女”や”英雄王”達には絶対に勝てないわ!」
「るせぇ!俺はあいつらとの約束を絶対に破る訳にはいかないんだよ―――――ッ!!」
完全に頭に血が昇っているクロウはクロチルダの制止の声を無視してエリゼに襲い掛かったが
「兄様達を裏切り、多くの人々を苦しめた貴族連合に加担した報い、今こそ受けなさい!荒ぶる心、無風なる水面(みなも)の如く、鎮まれ――――」
「あ―――――」
一気に詰め寄って神速の連続斬撃を解き放ったエリゼの攻撃によってダブルセイバーは真っ二つに折れ
「六の型――――無想神烈閃!斬!!」
「グアアアアアアッ!?」
クロウの背後へと駆け抜けたエリゼが太刀を一振りすると居合い斬りがクロウの背中に刻み込まれ、クロウは背中から大量の血を噴出しながら地面に倒れた!
「――――勝負あったな。”C”を拘束しろ!」
「ハッ!」
「畜生……畜生―――――――ッ!!」
そしてゼルギウスの指示によって兵士達は悔し涙を流しながら喚き続けるクロウを拘束し
「お前もまだ足掻くつもりか、”蒼の深淵”?」
「……『幻焔計画』どころか『盟主』が崩御して『結社』が崩壊した以上……もうどうでもいいわ…………煮るなり焼くなり好きにしなさい…………」
リウイに問いかけられたクロチルダもリウイ達の足元に杖を捨てて無気力な様子で地面に崩れ落ちて肩を落とした状態で抵抗する事なく兵士達に拘束された!
「後は貴様だけか、カイエン公。」
「貴方を守る協力者達は全員戦意を喪失したか、無力化しました。それでもまだ諦めないのですか?」
「”四大名門”の当主であり”貴族連合”の”主宰”ならば自らの罪を認め、潔く縛につくのが貴様の務めだ!」
「ふ、ふざけるな―――――っ!私はオルトロス・ライゼ・アルノールの……エレボニアの真の皇帝の血を引く者だぞ!?忌々しきドライケルスの血を引く者達よりも遥かに高貴な血を引く私に危害を加えていいと思っているのかっ!?」
ヴァイスやアル、リフィアに視線を向けられたカイエン公爵は喚き
「な……っ!?」
「ええっ!?」
「カ、カイエン公が……あの”偽帝”オルトロスの子孫だなんて……」
「…………私達を幽閉の身にし、帝都を制圧した真の狙いはバルヘイム宮地下に封印されてある”災厄”をその手にし、その”災厄”を使ってエレボニアを……いや、世界を掌握する為だったのか……!」
カイエン公爵の声を聞いたレーグニッツ知事やセドリック皇子は驚き、プリシラ皇妃は信じられない表情をし、ユーゲント三世は厳しい表情でカイエン公爵を見つめた。
「――――下らん。民が真に求める”皇”は血統ではなく、民達の生活に考え、民達が住む国の平和を保つ”皇”だ!」
「民達を蔑ろにする所か自らの欲望の為に民達を傷つけた貴様に”皇の資格”はない!」
「え―――――――ギャアアアアアアア――――ッ!?わ、私の腕が……!?」
そしてリウイとヴァイスは同時に剣を振るってカイエン公爵の両腕を斬り落とした!
「カイエン公も拘束して”C”や”蒼の深淵”共々それぞれ艦内の牢屋まで連れて行き、拘禁しておけ!」
「ハッ!!」
ゼルギウスの指示によって兵士達は両腕から血を流して喚いているカイエン公爵を拘束して既に拘束を終えたクロウ達と共にその場から去り
「私の夢が……先祖代々の悲願が……消えて行く……ハ、ハハハハ…………これは夢だ…………夢に違いない…………」
「ごめんなさい、クロウ……こんな結果になってしまって…………”起動者”の”導き手”として失格ね……これならまだエマの方が私より上ね……フフ…………」
兵士達に連れて行かれるカイエン公爵は肩を落として小声でブツブツ呟いて現実逃避を始め、クロチルダは申し訳なさそうな表情でクロウを見つめて呟いた後肩を落として寂しげな笑みを浮かべ
「ち……く………しょう……!お前達との”約束”……果たせなくなっちまったぜ………!………悪ィ……リィン…………トワ…………ゼリカ…………ジョルジュ……ッ!」
「……………………」
悔し涙を流しながら兵士達に連れ去られて行くクロウの言葉を聞いたエリゼは目を伏せて黙り込んでいた。
「―――エヴリーヌ、もういいぞ。セドリック皇子をユーゲント三世達に返してやれ。」
「は~い。」
リウイに視線を向けられたエヴリーヌはセドリック皇子と共にユーゲント三世達の前に転移した。
「え…………」
突然の出来事にセドリック皇子は呆け
「さっさと家族の所に行けば?エヴリーヌ達はお前の事なんてどうでもいいし。」
エヴリーヌは興味なさげな様子でユーゲント三世達に視線を向けて指示をした後その場から離れてリウイ達の元へと向かい
「セドリック!よかった……無事で……!」
エヴリーヌがセドリックの傍から離れるとプリシラ皇妃が駆け寄って涙を流しながらセドリック皇子を抱きしめた。
「―――今更だが一応聞いておく。エレボニア皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノール。このような状況になってもなお、足掻くのか?」
「………………そのようなつもりはない。我々も降伏する。私はどうなっても構わん。だが、プリシラ達やレーグニッツには手を出さないで頂きたい。」
「へ、陛下!?」
「父上、一体何を!?」
「リウイ陛下!せめてユーゲント陛下達の命は奪わないで下さい!」
リウイに問いかけられたユーゲント三世が重々しい様子を纏って答えるとプリシラ皇妃とセドリック皇子は表情を青褪めさせ、レーグニッツ知事が必死の表情で嘆願した。
「安心しろ。エレボニア帝国が滅びてもユーゲント三世を始めとした”アルノール家”の者達に危害を加えるつもりはない上、レーグニッツ知事に関しては本人が希望するのならばエレボニア帝国滅亡後もヘイムダルの知事として続投するつもりだ。」
「…………ならば、私達をどうされるおつもりか。」
レーグニッツ知事の嘆願に対して答えたリウイの言葉を聞いたユーゲント三世は重々しい口調で問いかけた。
「陛下、少々よろしいでしょうか?」
「何だ?」
するとその時ゼルギウスがリウイにある事を耳打ちをした。
「……そうか。ユーゲント三世以下アルノール家の者達並びにレーグニッツ知事。お前達は本日はカレル離宮にて”待機”してもらう。明朝には先程アルフィン皇女率いる”有角の若獅子”達が奪還したトリスタにお前達を送り届ける故、そこで我らがエレボニア帝国全土を完全に制圧するまで待機し、エレボニア帝国全土の制圧が完了し、状況が落ち着けばお前達の”今後”を知らせる。」
ゼルギウスからある話を聞いたリウイは頷いた後ユーゲント三世達を見回して説明した。
「え…………」
「ぼ、僕達をアルフィン達の元に送り届けてくれるのですか………?でも何故明日にですか……?」
リウイの説明を聞いたプリシラ皇妃は呆け、セドリック皇子は戸惑いの表情で尋ねたが
「……もしや彼ら”Ⅶ組”を始めとした士官学院生達の悲願であったトリスタを……トールズ士官学院を奪還した彼らを気遣って、せめて奪還した一日だけは彼らに”エレボニア帝国が滅亡した事を知らせない為”に私達をこの場に留めておくのでしょうか?」
「そうだ。」
「あ…………」
複雑そうな表情をしているレーグニッツ知事の質問に答えたリウイを見たセドリック皇子は辛そうな表情で黙り込み
「………………承知した。敗戦国の皇族である私達やエレボニア帝国滅亡阻止の為に抗い続けて来たアルフィンやオリヴァルト、そして”有角の若獅子”達を気遣っての寛大な心遣い、心から感謝する。」
重々しい様子を纏って黙り込んでいたユーゲント三世はリウイ達に頭を下げた。
「礼は不要だ。俺はトールズ士官学院の”常任理事”の一人としてせめてもの”情け”を与えたまでだ。」
「アル、兵士達に命じて離宮内で今すぐ使える客室を見つけた後そこにユーゲント三世達を案内し、待機してもらっておけ。わかっているとは思うがユーゲント三世達を連れて行くときはくれぐれも手荒な真似はするな。それと可能な限り、ユーゲント三世達の希望にも応えておくように。」
「ええ、わかりました」
ユーゲント三世の感謝の言葉に対して答えたリウイは外套を翻してアルに命令したヴァイス達と共にその場から去り
「私達もいきますよ。―――アイネス、エンネア。デュバリィの事をお願いします。」
「ハッ!エンネア、私はデュバリィを運ぶからお前はデュバリィの武具を頼む。」
「わかりましたわ。全く……相変わらず世話が焼ける”筆頭”ですこと。」
リアンヌは気を失ったデュバリィを背負うアイネスとデュバリィの武具を回収したエンネアと共に去って行った。
「……余達も行くぞ、エリゼ。」
「ええ。……リフィア、頼みがあるのだけど……後で話だけでもいいから聞いてくれるかしら?」
リフィアに促されたエリゼは静かな表情で頷いた後真剣な表情でリフィアを見つめ
「ム?一体何じゃ?」
「……状況が落ち着いた後に話すわ。―――行きましょう。」
そしてリフィアに問いかけられたエリゼは答えを誤魔化してリフィアとその場でまだ留まっていたゼルギウスと共にその場から去って行った。
こうして……メンフィルとクロスベルの連合により、僅か1日で帝都は制圧され……ノルティア州は全面降伏し……サザーランド州も連合軍侵攻に対する領邦軍の防衛部隊の壊滅を知り、自身の敗北を悟ったサザーランド州の統括領主であるハイアームズ侯爵がこれ以上の被害を出さない為にメンフィルに降伏し……残りは未だ降伏の意を示さないラマール州のみとなり、そのラマール州も帝都制圧を果たした連合軍の本隊――――リウイ達やヴァイス達が合流する12月31日に一気に進軍してラマール州全土を制圧し、年内にエレボニア帝国全土の制圧が完了する予定となっていた…………
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