春の歩道
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7部分:第七章
第七章
19.サーカス
華やかな音楽と派手なアクロバット
サーカスが街にやって来た
朗らかなピエロにライオンの火の輪
そうしたものを見ていると寂しさを忘れる
けれどそれは一瞬で 舞台を去ると一層寂しい
耐えられないまでの寂しさを胸に味わう
華やかなものの側には寂しさが
いつもそっと身を寄せている
賑やかしいサーカスも一歩離れれば
侘しい静けさがそこにある
けれどそれがあるから華やかさを感じられて
一息つくこともできる
高らかなラッパと大きな太鼓
サーカスの音楽が響く
身の軽い女の子にナイフが投げられ
興奮と驚きが僕達を支配してしまう
しかしそれはうたかたで サーカスの外は寂しい
それまで明るかったのが夢のように
賑やかさが背景になってしまう
寂しさを胸に感じてここでは
華やかな騒ぎもそこから出てしまえば
まるで空虚の世界にいるよう
それを暫しの間一人で味わった後でまた
舞台に向かえばいい
賑やかしいサーカスも一歩離れれば
侘しい静けさがそこにある
けれどそれがあるから華やかさを感じられて
一息つくこともできる
20.夜のきざはし
あの人は今日は何処へ行ったのか
ここにいるのは私一人
想いは尽きないけれど想えば想う程
憂いもまた尽きないでいる
簾から見えるのは明るい月
それを見ているのは私だけ
いつも一緒にいれくれるあの人は
今は何処で何をしているのか
考えても仕方ないことを考えながら
月を見上げてきざはしで
硝子のグラスにワインを注いで憂いを紛らわす
あの人は勝手気ままに遊んで
私を置いてけぼりに
私の想いなんて全然考えもせず
憂いに任せるままにして
だから今は白い月を友人に
たった一人でワインを口に
あの人が私にくれた贈り物
けれど今はただの気晴らし
あの人のことを想えば切なくなって
月に何処にいるのか聞いても
それでもわかることはあの人の移り気だけ
考えても仕方ないことを考えながら
月を見上げてきざはしで
硝子のグラスにワインを注いで憂いを紛らわす
21.ダイアモンド
ジュエルショップにはじめて立ち寄って
買うのは白いダイアモンド
彼女の誕生石を今買って
勿論彼女へのプレゼントにする
思った通り高いものだけれど
それでもプレゼントには安く思えた
白くキラキラと輝くダイアモンド
彼女の指にはめたらそれは
どんなに奇麗に映えるだろうかと
あれこれ考えながら買うジュエル
何か僕の方が楽しんでいた
ジュエルショップは案外楽しくて
白いダイアモンドを見て
彼女に何を言おうか考える
彼女へのプレゼントだから当然だけど
それでも言う言葉が考える
何をどう言って喜んでもらうか
輝くダイアを見て一人笑う
彼女の左手で輝かせて
その美しさを見て笑いたい
それを思って買う白いジュエル
彼女より僕の方が楽しいかも
白くキラキラと輝くダイアモンド
彼女の指にはめたらそれは
どんなに奇麗に映えるだろうかと
あれこれ考えながら買うジュエル
何か僕の方が楽しんでいた
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