奇奇怪怪
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9部分:第九章
第九章
「ですから落ち着いて下さい。ミサイルは発射されていません」
「あっ、本当だ」
「確かに」
皆ここで携帯のニュースをチェックした。水族館の中でそれはマナーがいいとは言えなかったが状況が状況である。そうせざるをいずにいられなかったのだ。
確かに誤報であった。あの国は今は何もしてはいなかった。それがわかったのだ。
「それでは引き続き本館をお楽しみ下さい」
放送はこれで終わった。皆それに頷きそのうえでまた見歩くことになった。夏希達も何とか落ち着きを取り戻したのであった。
「全くな」
「一時はどうなるかって思ったけれど」
「誤報でよかったよ」
「本当にね」
皆落ち着いてから言うのであった。
「地震に核ミサイルってね」
「一度に合わさったら冗談じゃないけれど」
「本当に東京が終わるかって思ったよ」
「俺達もな」
そんなことを話していた。とりあえず危機が終わった。しかしなのだ。
夏希はその中でだ。一人思うのだった。その思うことは。
「私が思ったから何かがなるんじゃないのね」
このことを思うのであった。
「ただの偶然なのかしら」
そのことにも気付いたのだ。今度気付いたのはそれだった。
「何だ、そうだったの」
そしてまた言った。
「偶然だったの」
それでほっとしてだった。仕事に戻る。仕事は順調に終わった。
そしてだ。この日の野球である。彼女はまず先発を聞いてすぐに確信した。
「マー君だったら絶対に勝てるわ」
「おっ、勝てるか」
「勝てるのね」
「そうよ、勝てるわ」
こうおじさんとおばさんに話すのだった。
「マー君は今日も好投してくれるわ」
「マー君最近調子いいしね」
「いけるかもね」
それはおじさんもおばさんもわかっていた。それで笑顔で話すのだった。
「今日は完封かもな」
「期待できるわよね」
「マー君ならやってくれるわ」
彼女は笑顔でおじさん夫婦に話した。
「絶対にね」
「じゃあ今から観るか」
「そうね」
こうしていつもの様にリビングで観る。するとだった。
田中は打たれてしまった。四回に四点取られてそれが致命傷となった。そのまま負けてしまった。完全に負け投手となってしまったのだ。
「あれっ、今日は」
「負けたね」
「そうね」
夏希は残念な顔でおじさん夫婦に述べた。
「勝てるって思ったのに」
「まあそういうこともあるから」
「勝てる時もあれば負ける時もある」
「そうね」
夏希もその言葉に頷いた。
「負けることもあるわね」
「そうだよ。勝てる時もあれば負ける時もある」
「世の中そういうものよ」
「ええ。思い通りになる時もあればならない時もある」
おじさん夫婦の勝てる時もあれば負ける時もある、その言葉が頭の中でこう変換された。そうしてそのうえでまた話すのだった。
「そういうことよね」
「そうだよ。どんな時もあるから」
「世の中ってのはね」
「そうね」
おじさん夫婦のこの言葉に笑顔で応える。楽天が負けてしまったことは残念だったがそれでもほっとはしていた。さらにいいことがわかったからである。
奇奇怪怪 完
2010・2・8
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