普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ソードアート・オンライン】編
143―Ex.ちょっとした閑話集
前書き
【SAO】編のちょっとした閑話です。
<突っ込んだ話>
SIDE 升田 真人
「〝神器(セイクリッド・ギア)〟ではなく能力──か」
<……少なくとも“赤龍帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツイン・ギア)”──俺の〝器〟が相棒の中に存在していないのは間違いない>
「……ドライグの〝器〟は多分〝幻想郷〟の──〝分神〟の方だよなぁ」
あの最悪の事件──〝【SAO】事件〟から数ヶ月。〝対外的な〟リハビリが終わった頃。……“腑罪証明”で転移した──いつぞやの無人世界に居る俺は、ドライグとそんなことを語り合っていた。
ミネルヴァさんは〝赤いドラゴン〟──ドライグは俺の魂と融和していると言っていた。……それで、ドライグの〝器〟である“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツインギア)”は、この〝【ソードアート・オンライン】の世界〟には持ち込めなかったようだ。
(……まぁ、大体理由は予想出来てるんだけどな…)
思い付けるのは主に2つ。
1つ、〝“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツイン・ギア)”は単一の〝神器(セイクリッド・ギア)〟として認めてられてないから〟。
元々“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツイン・ギア)”は“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”と云う単一の〝神器(セイクリッド・ギア)〟だったが、かつて打倒したアルビオンとヴァーリから譲渡された“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”を混ぜ合わせただけの物。
……それが〝〝所持出来る〝神器(セイクリッド・ギア)〟は原則1つ〟と云うルールに抵触しているのかもしれない〟──と云う考察が1つ。並びに、“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツインギア)”──は兎も角として、“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”と“絶霧(ディメンション・ロスト)”が使えないのも、そこらに起因している模様。
2つ、〝ミネルヴァさんが某かの細工をしたから〟。
ミネルヴァさんは俺を〝この世界〟に転生させる際、〝過干渉したくない理由がある〟とは言っていた。
……故に〝俺の〝分身〟に〝神器(セイクリッド・ギア)〟を残したまま転生させた〟──と云うのが2つ目の考察。……ちなみにドライグが居るのは、〝“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツイン・ギア)”──〝ドライグの器〟は持って来れなかったが、〝ドライグの魂〟だけは俺の魂に一緒に引っ付いてきた〟──と云うのが2つ目の考察の註釈である。
……多分“別魅”──〝分神〟の方は〝倍加〟や〝譲渡〟、〝半減〟──そして、〝鎧〟に〝外套〟を使えたとしても〝覇龍(ジャガーノート・ドライブ)〟は使えないだろうと云う事も想定している。……〝本体〟にドライグの魂が在る以上、〝分身〟の方は殆ど〝脱け殻〟に近い状態になっているだろうから。
閑話休題。
「……唯一持ち込めた〝神器(セイクリッド・ギア)〟──もとい〝能力〟が〝これ〟だもんなぁ…」
そんな風にボヤいては、足元に落ちていた拳大ほどの石を拾う。
<……ぐっ、俺の〝倍加〟が使えないのに──どうして〝それ〟が…っ>
「まぁまぁ」
憤然としているドライグを宥め、今さっき拾ったその石に“魔獣想像(アナイアレイション・メーカー)”を使う時の様な意思を籠める。
すると数秒も経たずにその石は雀程度の大きさの鳥──魔力を秘めているので正しくは〝魔鳥〟に変化した。
本来“魔獣想像(アナイアレイション・メーカー)”は〝所持者のイメージした魔獣を生み出す〟と云う〝神器(セイクリッド・ギア)〟なのだが──明らかに、今しがた俺が起こした現象は異質である。
……それは、〝無(0)〟から〝有(1)〟を生み出す〝想像〟ではなく、〝有(1)〟を〝有(A)〟に書き変えると云う──〝変化〟だったから。
(あっ)
そんな風に考えていると、ふと、とある漫画で読んだ──よくよく考えれば、似ていないこともない能力を思い出す。
「……これあれじゃん。【うえきの法則】に出てきたバンが持っていた能力──“無生物を生物に変える能力”の互換バージョンじゃん」
【うえきの法則】と云う能力バトル漫画に出てきた、バン・ディクートと云うキャラクター持っていた異能が、俺が洩らした──“無生物を生物に変える能力”と云う能力だった。……その能力は読んで字が如くで無生物を生物に変えられる能力だった。
……もちろん〝互換バージョン〟──なんて、ちゃっかりと註釈をいれた様に差異もある。
(〝戻れ〟…)
俺は、俺を見上げて小首を傾げている〝魔鳥〟に意識を向けて〝元に戻れ〟と念じる。……すると今度は、先ほどの光景を逆再生にしているかの様に拳大の石に戻った。……そう──〝魔獣〟に変えた物体を随意で元の無生物に戻せるのだ。
俺がやった事は瞭然。……〝〝石(1)〟を〝鳥(A)〟〟に書き換えた様に、〝〝鳥(A)〟を〝石(1)〟〟へと書き直しただけである。
……しかし、これまでいろいろと考察を重ねてみて判明した事ではあるが〝魔獣〟になった以上、それはもう〝無生物〟ではなくなるからか──〝〝鳥(A)〟をそのまま〝鼠(B)〟〟に変えるのは不可能だった。
俺がこの能力を〝“無生物を生物に変える能力”の互換バージョン〟と嘯いたのはそこに起因している。
もう1つ、デメリット(?)として──もしくは当たり前のだが、変化させられる大きさの度合いは〝〝1(いし)〟=〝χ(いきもの)〟かつ〝1(いし)〟>〝χ(いきもの)〟〟──で、変化前の物体より大きい生き物には変化させられない。
(……何だかなぁ…)
〝魔鼠〟をまた石に戻しては、〝犬──ただし手のひらサイズ〟〝蛇──ただし手のひらサイズ〟〝猫──ただし手のひらサイズ〟〝蛙──ただし手のひらサイズ〟〝鼬──ただし手のひらサイズ〟〝狐──ただし手のひらサイズ〟に、石を無意味に変化させる。
「……とりあえず、今日はこんなもんか…」
他にも〝衣類を含めた身体の一部が触れていなければならない〟や──〝健常な他者も視認出来るものでなければならない〟といった〝縛り(ルール)〟もあったが、今日のところは“魔獣想像(アナイアレイション・メーカー)”の大まかな考察を終了とした。
……あんまり急いで自分の能力を把握しようとしなかったのは〝【ソードアート・オンライン】な世界線〟──今俺が身を寄せているが割りと平和な世界線だからだ。……割りと平和な世界線万歳である。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
<みんなのそれから>
SIDE 升田 真人
今日の日付は2032年も終わりかけの11月30日。……今日は〝後に結ばれるとあるカップル〟が初めて出逢った日から10年が経過した日付。……そして神父──を通じて神に永遠の愛を誓う日とも相成った。
湾曲させて云うのなら、明日奈が〝升田家〟に嫁ぎ、〝結城 明日奈〟が〝升田 明日奈〟になったのを対外的にアピールする式で──直截的に云うのなら、今日は和人と明日奈の結婚式である。
(ひぃ…ふぅ…みぃ──おっふ…)
出席者している錚々たるメンバーを〝聲〟と併せて見てみれば、内心でだが変な声で吹き出してしまう。……そこら辺のMMOのフロアボスなら簡単に踏破してしまいそうな名傑達が居たのだから、然もありなんと──〝それもそうだ〟と云ったかんじだ。
和人と明日奈の親族である俺や乃愛は当然として、中学時代からの和人の友達であるヤス君に、アインクラッドを轡を並べて駈けたアンドリューとアンドリューの妻であるミルズ夫人。珪子ちゃんなどの≪異界竜騎士団≫の名々。そして、最早〝和人の親友〟と云っても差し支えがない遼太郎──と、その妻である直葉。
……そう、遼太郎は直葉と結婚した。それも──俗に云う〝できちゃった結婚〟で。……もちろん〝遼太郎が直葉に手を出した〟──とかではななく、寧ろその逆で、〝直葉が遼太郎を繋ぎ留めた〟のだ。
直葉が18になったくらいの時から交際していたようで、結婚は20になってすぐの事だった。贔屓目に見ても美しく──〝どこが〟とは云わないが、大きくなったので遼太郎も満更でもなかった模様。
しかも遼太郎のその人徳故か、両親ともわりと直ぐに打ち解けた。……遼太郎が〝升田家〟に来た時、直ぐ葉は19で──〝20目前の娘に浮いた話が1つも無かった直葉に、両親が軽く焦っていた〟──と云う話があったのは、きっと直葉へは秘密にしておいた方が良いだろう。
……しかし、こう云ってはなんだが、遼太郎は〝玉の輿〟に乗った事にならない事もない。更に、続柄的に俺──は兎も角として〝親友〟とも呼べる男が妹に嫁ぎ、〝歳上の弟〟になったので和人からしたら微妙な気分になったのは想像に難くない。
閑話休題。
……ちなみにアインクラッド時代の元≪風林火山≫のメンバーのリアクションは、総じて以下の通り。
〝リーダー、9つの歳の差婚とか──通報しました〟
〝しかも〝できちゃった結婚〟だからな──通報しました〟
〝見ろよあのお腹を大事そうに撫でるリーファちゃんの幸せそうな顔──通報しました〟
〝仕方ないここは俺が一肌脱いでリーダーを爆発させてやろうじゃないか。まず要るのは硝石に木炭だろ、そして後は──通報されました〟
……以上が遼太郎に向けられたからかいまじり祝言で、云うほど≪風林火山≫の皆も遼太郎を蔑視しているわけでもないらしかった。……遼太郎の社会人だったし──直葉が既に成人していたと云うのも手伝ったかもしれない。
軈て誓いの言葉まで式は移ろう。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「「誓います」」
(一番驚いたのはやっぱり〝こいつ〟だよなぁ…)
俺は神父──グリムロックを見ながらしみじみと思う。……何を思ったのかグリムロック──木下 明久は愛を説く職業である神父になっていた。……どうにもアインクラッドで俺が言った言葉に思うところがあったとか。
……式は恙無く進行して──間違いなく最良の結婚式となったのは、和人と明日奈の輝かしいばかりの笑顔を見れば明らかだった。
SIDE END
後書き
グリムロックの本名はテキトーです。
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