Blue Rose
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第十一話 嵐の中でその一
第十一話 嵐の中で
教室で優花の顔を見てだ、龍馬は彼に言った。
「少しだけれどな」
「どうしたのかな」
「ああ、顔がな」
それがというのだ。
「明るさ戻ってきたな」
「そうかな」
「昨日と比べてもな」
「うん、ちょっとね」
「ちょっとってどうしたんだ?」
「決めたから」
それ故にという返事だった。
「だからね」
「決めたって何をだよ」
「ちょっとね、とはいっても」
ここで少しだけ笑って言った優花だった。
「まだ完全に決めてはいないよ」
「完全にはか」
「だからその分だけは」
どうにもという口調でだ、優花はまた言った。
「まだ暗いよ」
「まあ戻って来たっていってもな」
「実際には、だよね」
「まだ暗いな」
龍馬も言った。
「確かに」
「うん、どうしてもね」
「まだ暗いな」
「それでもな」
まだ言う龍馬だった。
「戻ってきてるよ」
「そうなんだね」
「ああ、それとな」
「それと?」
「顔だけじゃなくて雰囲気もな」
それもというのだ。
「よくなってきたな」
「明るくだね」
「本当にこの前まではな」
それこそというのだ。
「どん底だったな」
「凄く暗かったね、僕」
「見ていて心配だったよ」
そこまでだったとだ、龍馬は正直に言った。
「けれどそれでもな」
「少しずつだね」
「戻ってきたからな」
その明るさがというのだ。
「よかったよ」
「そうなんだ」
「完全じゃないにしてもな」
それでもというのだ。
「やっぱり明るいに越したことはないさ」
「そうだよね」
「しかし、決めたのか」
「うん、完全じゃないにしても」
「何を決めたかはな」
優花のその目を見てだ、龍馬は考えてから答えた。
「聞かないな」
「そうしてくれるんだ」
「言いたくないならな」
優花の心を気遣っての言葉だ。
「人の心には土足で踏み込むな」
「お祖父さんの言葉だね」
「そう言われてるからな」
それだけにというのだ。
「俺は聞かないからな」
「有り難うね」
「礼はいいさ」
それは、というのだ。
「俺がそうしているだけだからな」
「そうなんだね」
「ああ、とにかくこのままな」
「明るさをだね」
「取り戻していけよ」
「うん」
優花は龍馬に微笑んで、まだ微かだがそれでも本当に微かに笑って頷いた。
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