龍が如く‐未来想う者たち‐
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冴島 大河
第二章 裏切者
第四話 合図
東城会本部。
神室町からタクシーを走らせないと、少し遠い場所にある。
東を征する団体だからこそ大きく構え、アピールをしているのだ。
東城会はここだぞ、と。
夜も深くなり深夜を迎えようとする時、3人の男はここにいた。
東城会6代目、堂島大吾。
6代目補佐兼東城会直系真島組組長、真島吾朗。
そして東城会幹部宮藤組組長、宮藤宏明。
ふんぞり返りソファーに座る宮藤に対し、大吾は真島に両腕を掴まれ動けないでいた。
まだ信じられないという顔を見せる大吾だが、それを冷ややかな目で真島は睨む。
「真島、冴島さんに連絡したか?」
「したわ。堂島大吾はミレニアムタワーにいるってな」
真島は携帯をポケットにしまい、ニヤリと笑う。
宮笑いを堪えきれない宮藤は、閉じた口から声が漏れた。
「ミレニアムタワーには、俺の部下が待ち構えている。あいつらは一貫の終わりだ」
大吾の顔が歪む。
怒りに満ちた顔で、まるで野生の獣のよう。
だが何も出来ず歯をくいしばると、それを嘲笑う宮藤の声が聞こえる。
「6代目、もう充分仕事はこなされたじゃないですか。そろそろ座を明け渡してくださいよ」
「それは、お前らが決めることじゃない。俺が本当に7代目に相応しいかどうかを見極めて……」
「それがまどろっこしいんだよ!!」
今度は、宮藤が怒りに歪む。
大きく息を吐いて立ち上がると、近くの机を蹴り上げた。
ガシャーンと大きな音が鳴り響くが、今本部には誰もいない。
誰もこの異常に、気付くはずがなかった。
「力ある者がトップに相応しい……違うか!?」
「俺は4代目、桐生さんに教わったんだ。力がある、賢い、お金を沢山持ってる。それだけじゃ、東城会はすぐに崩れ落ちる」
桐生の背中を思い出す。
かつてはその背中に憧れ、追いかけたこともあった。
だけどその背に追いつくどころか、どんどん離されていく。
桐生が持つのは、力だけではない。
東城会のトップに相応しい、大きな器を持っている。
だからこそ、桐生から6代目を託された時は不安な反面嬉しかった。
大吾は決めていた。
次にトップを託せる、男の名を。
彼に引き継ぐまでは、大吾も引き下がる訳にはいかなかった。
「なぁ、宮藤」
口を開いたのは、後ろに立っていた真島だった。
大吾の背を突き飛ばし、バランスを崩した大吾は床に倒れこむ。
だが真島は、宮藤だけを見ていた。
「悪いなぁ、ワシは誰かに動かされんの好きちゃうねん」
「何……!?」
その言葉を合図に、唯一の出入口が勢いよく開く。
何事かと把握する前に何者かの拳が顔に突き刺さり、後ろへ大きく吹っ飛んだ。
驚きの余り、呆然と座り込んだまま動けない。
さらに目の前に現れた人が見えた瞬間、声が出ない程さらに驚いた。
「お前……!!」
「悪いな、宮藤。6代目を返してもらうで」
そこには、いるはずのない秋山と冴島の姿があったのだ。
「兄弟、一瞬ヒヤッとしたで」
「でもワシのお陰で、宮藤追い詰めたやんけ」
「まぁまぁお二人とも、とりあえずは目の前を処理しましょう」
再び宮藤に向き直る冴島だが、宮藤から闘志を感じなかった。
感じるのは、何かからの恐怖。
半ばヤケクソになった目で、宮藤はこちらを睨んでいたのだ。
「桐生の居場所吐かんかい」
「くそ……もう少しなのに……!!」
宮藤はポケットからナイフを取り出し、苛立ち混じりに突き出す。
相変わらず刃物に慣れない秋山は後退るが、冴島と真島は大吾を護るように前に飛び出した。
「桐生はな、神室町郊外にある山の中だ。俺の別荘が、そこにある」
「別荘って……あの山には何もないですよ?何でまた……」
「何も無いからこそ、隠れ家にはうってつけなんだよ」
成る程と頷く秋山に対し、冴島は納得いかない事があった。
「何で今更教えたんや」
「へへっ、桐生はもういらない……ここで6代目を殺ればそれでいいんだよっ!!」
宮藤はナイフを振りかざし、襲いかかる。
慌てて真島は懐に持っていたドスを抜き、ナイフに対抗した。
「あの人が……あの人の期待に応えなきゃならねぇんだよ!!」
「あの人って誰や!?ワシらの知ってる奴か!?」
口元がつり上がる。
答える気は無いと言いたげな表情に、真島は宮藤から距離をとった。
「とりあえず宮藤止めるぞ、真島」
「わかっとるわボケェ!!」
宮藤は、腹の底から不気味な笑い声をあげた。
後書き
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