英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第102話
~カレイジャス・甲板~
「――――よし、有志のみんなも準備はできているみたいだ。さっそく行って来るよ。」
いつものライダースーツに着替えたアンゼリカは下にいる自分に協力する領邦軍の部隊を確認した後リィン達を見回した。
「先輩、どうかお気をつけて。」
「アンちゃん……絶対に無理しちゃ駄目だよ?」」
リィンとトワはそれぞれ今から決戦に向かうアンゼリカに応援や心配の言葉を送った。
「ああ、心配しないでくれ。例えしくじって地獄に落ちても、這い上がって来るつもりさ。トワや皇女殿下たち可憐な少女の待つ桃源郷がここにある限りはね♪」
いつもの様子で答えたアンゼリカの答えにリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ふふ、アンゼリカさんったらお兄様みたいなことを仰って。」
「どうやら心配は無用の用でしたわね。」
「もう、本気心配しているのに……」
「アン、冗談抜きに気を引き締めていきなよ。たとえお父さんが相手でもこれは”戦争”なんだから。」
アルフィン皇女とシグルーンは苦笑し、トワは肩を落とし、ジョルジュは真剣な表情で忠告した。
「………ああ、わかってる。父も私が相手といえど―――いや、だからこそ本気で迎え撃ってくるはずだ。せっかく会えた君達や色々と便宜を図ってくれたレン君と今生の別れにならないためにも、全力を尽くしてくるまでさ。」
「……そうか。わかってるならいい。」
「絶対に帰ってきてね、アンちゃん……!!」
「健闘をお祈りしています……!」
「女神の加護を……!」
ジョルジュの後にトワやアリサ、エリスはそれぞれ激励の言葉をアンゼリカに送った。
「ああ、ありがとう。」
激励の言葉に頷いたアンゼリカはリィン達を見回して自分の拳を合わせた。
「―――ここから先は私の喧嘩だ。どうか君達は見届けてくれたまえ!」
「はいっ……!!」
アンゼリカはリィン達に見送られながら甲板から跳躍した!
「はッ!!」
跳躍したアンゼリカは漆黒の”シュピーゲル”の操縦席の近くに着地した後操縦席に乗り込んでシュピーゲルを軽く動かした。
「よし―――問題なく動かせそうだ。」
「姫様……!」
「―――全軍、これより黒竜関への進撃を開始する!ノルティアの勇士たちよ、どうか力を貸したまえ!我が父の目を覚まし、領邦の未来を勝ち取るためにも!」
「イエス・マム!!」
領邦軍に号令をかけたアンゼリカはシュピーゲルを動かして領邦軍と共に自身の決戦の地である”黒竜関”へと向かい、カレイジャスもその後を追って行った。
~黒竜関~
一方その頃砦の屋上ではログナー侯爵がルーレ方面を見つめていた。
「こ、侯爵閣下!」
するとその時慌てた様子の領邦軍の兵士が現れ、ログナー侯爵は振り向いて静かな表情で問いかけた。
「なんだ、騒々しい。」
「ほ、報告に上がりました!ラインフォルト本社ビルが襲撃され、ハイデル様が拘束された模様!!」
「なに……!それは確かか!?」
「ハ、ハッ……!また、アンゼリカお嬢様が機甲兵部隊を率いてこちらに進軍してきているとのことです!おそらく命令を無視している一部の兵士が決起したのだと……」
「くッ……―――あの馬鹿娘が!!」
報告を聞いて唇を噛みしめたログナー侯爵は声を上げた後その場から立ち去ろうとした。
「おや、どちらに行かれるんで?」
その時エレベーターの近くにいたヴァルカンがログナー侯爵を呼び止めた。
「おぬしは……」
「いよいよ娘さんと決着をつけるわけですかい?わざわざ来たんだ、加勢させてもらいますぜ。」
「フン、手出しは無用だ。今回に限っては貴族連合もメンフィルも関係ない……あの愚かな放蕩娘に父として教育を施すまで!おぬしはノルド方面の第三機甲師団かユミル方面のメンフィル軍に備えて待機しているがいい!!」
ヴァルカンの申し出を鼻を鳴らして蹴ったログナー侯爵はヴァルカンを睨んで指示をし、兵士と共にエレベーターに乗り込んだ。
「ハハ……熱いねぇ。嫌いじゃないぜ、そういうの。」
ログナー侯爵が乗り込んだエレベーターを苦笑しながら見つめていたヴァルカンはアンゼリカ達が進撃して来るルーレ方面を見つめた。
「親子喧嘩に水を差すのも何だが……―――ま、せいぜい利用させてもらうとするか。」
ルーレ方面を見つめたヴァルカンはある決意を胸に抱いて口元に笑みを浮かべて呟いた。
数刻後――――
数刻後”黒竜関”の上空に到着したカレイジャスは互いに対峙する領邦軍を見守っていた。
(ゴクッ……)
「まさしく一触即発か……」
「いつ戦端が開かれてもおかしくないって感じね。」
「アンゼリカ先輩……」
リィン達が甲板からアンゼリカ達の様子を見守っていると砦に動きが起こった。
「姫様、砦に動きが……!」
「……あれは…………」
砦の門が開くと真紅の”ヘクトル”が”ドラッケン”を引き攣れて姿を現した!
「―――聞こえるか、我が娘アンゼリカ・ログナーよ!!」
「父上か……!」
「ハイデルを押さえ、ここまで辿り着いた事は素直に褒めてやる!だが、これ以上お前を調子付かせるつもりはない!これまでの数々の不始末を合わせ、この父が自ら鉄槌を下してやろう!」
「こ、侯爵閣下……!」
ヘクトルに乗り込んでいるログナー侯爵の宣言―――ログナー侯爵とアンゼリカの”一騎打ち”の宣言はその場にいる全員を驚かせる発言だった。
「そ、それって……」
「”一騎打ち”ということか……!」
「”将”同士による決着ですわね……」
ログナー侯爵の宣言を聞いたアリサは目を見開き、ラウラとセレーネは真剣な表情で呟いた。
「フッ、やはりそう来ると思っていたよ。――――いいでしょう、父上!今こそ決着をつける時だ!」
そしてアンゼリカが操縦するシュピーゲルとログナー侯爵が操縦するヘクトルは互いに対峙し
「「参る(ゆくぞっ)――――!!」」
互いの拳を互いの機体にぶつけて戦闘を開始した!
「おおおおおおおっ!!」
衝撃からすぐに立ち直ったヘクトルは強烈な一撃をシュピーゲルに放ち
「くっ……!!」
シュピーゲルは両腕を前に組んで強烈な一撃をガードした。
「どうした娘よ!修めたという東方の武術もその程度のものだったか!?」
「ッ――――――はあああああああっ!!」
ログナー侯爵の怒鳴りに応えるかのようにアンゼリカは咆哮を上げながらシュピーゲルを操作してヘクトルを吹き飛ばした!
「むうっ!?」
「ハハッ、父上こそ耄碌したのでは!?力押しで抑えこめるほど”泰斗”は甘くないよ!」
「くっ、小癪な!」
「こ、侯爵閣下ッ!」
「姫様――っ!どうか頑張ってください!」
両陣営の兵士からそれぞれに対する激励の言葉がかけられていた。
「……完全に親子喧嘩のノリだね。」
「さ、さすがにこんな親子喧嘩、普通はしないと思うけど……」
一方その様子を見守っていたフィーは呆れ、エリオットは苦笑し
「フフッ、リィンさんはエリゼと兄妹喧嘩したらどちらが勝つでしょうね?」
「?リィンはエリスの双子の姉とは仲が悪いの??」
ある事に気付いたシグルーンは微笑みながらリィンを見つめ、シグルーンの言葉が気になったゲルドは不思議そうな表情でリィンを見つめ
「アハハ……仲は勿論いいわよ?でも……」
ゲルドの疑問に苦笑しながら答えたアリサは言葉を濁した。
「……その時が来れば勿論私は姉様に加勢させて頂きます。」
エリスは静かな表情で呟いてリィンを見つめ
「う”っ……というか何でそこでエリスまで加わるんだよ……」
「そ、そのお兄様。怪我はわたくしが跡形もなく治療しますので、その時になれば治療致しますね。」
シグルーンとエリスの言葉を聞いたリィンは表情を引き攣らせた後疲れた表情で肩を落とし、セレーネは苦笑しながらリィンに慰めの言葉を送った。
「まあ、拳であっても語り合えるだけいいだろう。」
「領邦軍のみなさんも完全に魅入っていますし……」
「しかし、打撃力や強度だけなら侯爵の重装機甲兵が上だけど……アンも機甲兵で泰斗流が使えるよう訓練していたみたいだ。」
「ええ、もしかするとこの勝負……一瞬の見極めの差で決着がつくのかもしれません。」
「アンちゃん……―――ああっ!!」
リィン達が勝負の行方を見守っているとアンゼリカが操縦するシュピーゲルがログナー侯爵が操縦するヘクトルの強烈な一撃を受けて吹っ飛ばされて地面に膝をついた!
「くっ……!!」
地面に膝をついて立ち上がらないシュピーゲルにヘクトルはゆっくりと近づいてきた。
「はあっ、はあっ……いい加減諦めるがいい!このヘクトルに殴り合いで敵う訳がないのだ!下手をすれば機体ごと粉々になってしまうぞ!?」
ヘクトルからは息を切らせて疲労困憊の様子のログナー侯爵の忠告の声が聞こえて来た。
「フッ、勝負は最後の勝負までわからないもの………あるギャンブル好きの友人にそう教えてもらいましたからね。父上のほうこそお歳なのだからあまり無理はなさらないことだ。」
絶体絶命のはずのシュピーゲルからは未だ余裕を残しているかに見える様子のアンゼリカのログナー侯爵に対する忠告が聞こえて来た。
「クッ……この不良娘が!いいだろう、ならば止めを刺してくれる!うおおおおおおおっ!!」
そしてヘクトルが溜めの動作で拳を構えたその時!
「ここだ!!」
シュピーゲルが瞬時に立ち上がって繰り出されるヘクトルの拳を片手で受け止めた!
「な、なにいいいっ!?」
「――――ハアアアアアッ!!」
更にシュピーゲルは零距離で強烈な拳をヘクトルの中心部に叩きつけ
「ぐわああああああっ!?」
強烈な一撃を零距離で受けたヘクトルは吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた!
「あ、あのデッカイのを吹き飛ばしたー!?」
「アンゼリカ先輩の零頸(ゼロ・インパクト)……!!」
「ん、勝負アリだね。」
地面に倒れたヘクトルにシュピーゲルはゆっくりと近づいてきた。
「間一髪だったが……なんとか届いたか。」
「……フン、まさかあのような切り札を隠し持っていたとはな。それも前の家出の時に身につけたという技か。まったく……つくづく貴族らしからぬ放蕩娘よ。レン姫の許で大人しく帝国貴族の子女として振舞っていればよいものを……」
アンゼリカの話を聞いたたログナー侯爵は呆れた表情で呟いた。
「叔父上も言っていたがきっと貴方に似たんでしょう。『真の帝国貴族こそまずは己の足で立つ事を知るべし』幼い頃にそう教えてくれたのは他でもない父上でしょう?」
「フン……どうやら此度については敗北を認めるしかないようだな。」
ログナー侯爵の敗北宣言を聞いたシュピーゲルはヘクトルに手を差し伸べた。
「フフ、一件落着か。」
「よかった、これで―――」
その様子を見ていたガイウスとトワが安堵の表情で呟いたその時!
「―――悪いが、そうはいかねえな。」
聞き覚えのある豪胆な声が聞こえて来た!
「なに……!?」
声を聞いたシュピーゲルが振り向いたその時砦の上空から巨大な機甲兵――――”ゴライアス”が現れ
「しまっ―――ぐあっ!?」
「ア、アンちゃんっ!?」
シュピーゲルの目の前で着地し、シュピーゲルを吹っ飛ばして地面に叩きつけた!
「また新型の機甲兵!?」
「なんて大きさ……!」
「―――”ゴライアス”。”ヘクトル”をも上回り、更に火力も高い重装機甲兵ですわ。」
ゴライアスの登場にアリサは驚き、サラ教官は厳しい表情をし、シグルーンは真剣な表情で呟いた。
「よう、侯爵閣下。悪いが水を差させてもらいますぜ。」
「おぬし―――どういうつもりだ!?加勢は無用だと言ったはずだ!それに勝負はすでに―――」
「あの”紅き翼”が出て来た以上、俺もいつまでも高みの見物をしてるわけにはいかなくてねぇ。仕事を果たさせてもらうぜ―――この巨大機甲兵”ゴライアス”でなァ!!」
カレイジャスに砲撃をしようとするゴライアスにアンゼリカが率いる領邦軍、ログナー侯爵が率いる領邦軍の双方の機甲兵がゴライアスを包囲した。
「貴様、よくも姫様を!!」
「不敬であるぞ!侯爵閣下から離れるがいい!!」
「ケッ、三下に用はねえよ。死にたくなきゃあ引っ込んでな!!」
機甲兵は挟み撃ちでゴライアスに襲い掛かったが
「うわああああっ!?」
「ぐああああっ!?」
ゴライアスは巨体の腕を振り回して一撃でドラッケン達を吹き飛ばして戦闘不能にした!
「な、なんて破壊力……」
「だが、いくらなんでもあの巨体であの動きは……!」
「!………………みんな!あの人を何とか止めて!あの人は―――」
その様子を見ていたアリサは驚き、ある事に気付いたジョルジュは真剣な表情をし、予知能力によってある光景が”見えた”ゲルドは血相を変えてリィン達に警告しようとしたがヴァルカンの怒鳴り声がゲルドの警告を掻き消した。
「この期に及んで高見の見物ってのはムシが良すぎるんじゃねえか!?次は俺達の番と行こうぜ―――肚ァくくれや―――”灰”の起動者、リィン・シュバルツァー!!」
「くっ、乗っているのはやはり……!」
「帝国解放戦線”V(ヴァルカン)”……!」
「クロウ君の”仲間”……」
「どうやら前回の鉄鉱山での借りを返すつもりみたいだね。」
「リィン……どうするの!?」
「ヴァリマールの準備はできているけど……」
「……このまま見物しているわけにはいかなさそうだ。ケリを付けてくる!」
そしてリィンとセリーヌは光に包まれてヴァリマールに乗り込んだ!
「リィン、気を付けて……!」
「兄様………どうか無理だけはなさらないで下さい……!」
「規格外の相手だ!くれぐれも気を付けてくれ!」
「了解です!」
仲間達の激励の言葉を受けたヴァリマールは跳躍し
「来やがったか……!!」
「あれが―――”灰色の騎士人形”!」
跳躍したヴァリマールはゴライアスと対峙した。
「……ハハ、真打ち登場だね。後は頼む、リィン君……!」
アンゼリカがリィンに激励の言葉をかけたその時、ヴァリマールは剣を構えた!
「行くぞ―――ヴァリマール!!全力を持ってあの大型機甲兵を無力化する!!」
「応―――!!」
「……クク、この日をどんなに待ちくたびれたか。邪魔の入らねぇ最高の舞台―――まさに”おあつらえ向き”じゃねえか。――――思う存分やらせてもらうぜ、シュバルツァアアアアアア!!」
そしてヴァリマールはゴライアスとの戦闘を開始した!
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